児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

渡辺卓也「児童ポルノ処罰法における目的犯規程の意義」姫路・ロージャーナル第4号(2010.8月発刊)

 名古屋の輸出罪の判例です。

http://www.himeji-du.ac.jp/contents/lawschool/himeji-LJ/pdf/lawj4_watanabe.pdf
論 説】
児童ポルノ処罰法における目的犯規定の意義
第一章 問題の所在
 本稿では、児童買券、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(以下、「児童ポルノ処罰法」という)における、目的犯規定の意義について検討する。
 児童ポルノ処罰法は、「性的搾取及び性的虐待」から「児童の権利を擁護することを目的とする」法律である(同法1条)。同法においては、そのために、まず、「児童買春」やその「周旋」(4条以下)という児童の性的搾取・虐待それ自体や、その準備行為が規制されている。他方で、「児童ポルノ」の規制については、「児童」を利用したその「製造」の規制よりも、むしろ、その「提供」を中心とした拡散規制に重点が置かれているといえる(7条)。 しかし、児童ポルノの拡散が、上述の児童ポルノ処罰法の目的との関係で如何なる意義を有するのかは、必ずしも明らかではない。
 また、児童ポルノ処罰法は、「提供」のような、児童ポルノの拡散に直接関係する行為だけではなく、それを目的とした「製造」、「所持」ないし「保管」、「運搬」、「輸入」、及び「輸出」といった行為についても処罰の対象としている。これらの行為の規制は、児童ポルノの拡散との関係で、処罰を早期化したものと理解可能である。しかし、各々の行為態様の具体的位置付けにっいては、必ずしも明らかではない。また、目的要件の具体的解釈についても、なお、論すべき点が残されているといえる。
 そこで以下では、まず、児童ポルノ処罰法の目的との関係での拡散規制の意義を明らかにする。次に、近時、目的犯規定の解釈が問題とされた判例を紹介し、その分析を通じて、児童ポルノ処罰法における目的犯規定の意義を検討することとする。