いわゆる「ハメ撮り」の罪数について相変わらず、最決H21.10.21に反論するわけですが、最判S49のいう「法的評価をはなれ構成要件的観点を捨象した自然的観察のもと」というのがくせ者です。
製造(撮影行為)というのは、「わいせつ行為」(刑法176条)であって、児童淫行罪は性交又は性交類似行為で、性交も性交類似行為も「わいせつ行為」。但し、性交は強姦罪として特別の類型になっている。
とすると、撮影も性交も性交類似行為も、強制わいせつ罪を検討しているときには「わいせつ行為」という社会的見解上一個の行為と評価を受けている。
「法的評価をはなれ構成要件的観点を捨象した自然的観察のもと」というのだから、罪名を離れて、行為は一個なわけです。
実際、被害者が13歳未満に児童淫行罪+3項製造罪+強制わいせつ罪を立てれば、観念的競合になるはずです。少年法37条があったのでこの組み合わせは稀でしたが。
最高裁大法廷昭和49年 5月29日
事件名 道路交通法違反・業務上過失致死被告事件
しかしながら、刑法五四条一項前段の規定は、一個の行為が同時に数個の犯罪構成要件に該当して数個の犯罪が競合する場合において、これを処断上の一罪として刑を科する趣旨のものであるところ、右規定にいう一個の行為とは、法的評価をはなれ構成要件的観点を捨象した自然的観察のもとで、行為者の動態が社会的見解上一個のものと評価をうける場合をいうと解すべきである。
ところで、本件の事例のような、酒に酔った状態で自動車を運転中に過って人身事故を発生させた場合についてみるに、もともと自動車を運転する行為は、その形態が、通常、時間的継続と場所的移動とを伴うものであるのに対し、その過程において人身事故を発生させる行為は、運転継続中における一時点一場所における事象であって、前記の自然的観察からするならば、両者は、酒に酔った状態で運転したことが事故を惹起した過失の内容をなすものかどうかにかかわりなく、社会的見解上別個のものと評価すべきであって、これを一個のものとみることはできない。