児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

児童淫行罪と3項製造罪は併合罪(東京地裁h21.1.28)

 いやまあ、判例(東京高裁、札幌高裁)は観念的競合説です。撮影行為と性交とが一個の行為だというのです。
 これ、一審では初めての判断です。だって、これまでは検察官は家裁に児童淫行罪+製造罪(目的製造罪も含む)を起訴して、家裁もそのまま審理してきたので、誰も文句言わなかったんです。
 それを、ある日突然、地裁に起訴するというのは、これまでの実務が間違っているということになります。

東京地裁h21.1.28
刑法54条1項前段の「一個の行為」とは,法的評価をはなれ構成要件的観点を捨象した自然的観察のもとで,行為者の動態が社会的見解上一個のものとの評価を受ける場合をいう。
これを本件についてみるに,なるほど,本件淫行のように自らを相手に児童に性交させる行為は,同時に,児童を相手方とする性交に係る児童の姿態(児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律2条3項1号。)をとらせる行為でもあるといえる。また,上記のような性交の機会に児童の陰部を触り,あるいは,その際,児童が全裸ないし半裸の状態であった等の場合には,その性交の機会に法2条3項2号や3号に該当する児童の姿態をとらせる一場面があるといえよう。
しかし,法7条3項の児童ポルノ製造罪は,所定の姿態をとらせるだけではなく,その姿態を写真,電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写する行為が付け加わって初めて成立する犯罪であるところ,描写行為は,それが静止画を記憶させるカメラによると動画を記憶させるビデオカメラによるとを問わず,たとえ上記のような性交と同時並行的に,かつその一部始終について行われていたとしても,それとは別個の行為であることは明らかである。また,上記のような性交に描写行為が必然的に伴うとはいえないし,逆に,淫行罪の成立には児童か淫行することに原因を与えあるいはこれを助長する事実上の影響力のある行為の存在を要件とするのが一般であるところ,法2条3項1号に該当する児童の姿態の措写行為があるからといって,これに必ず上記のような事実上の影響力のある行為が伴うともいえない。そうすると,法的評価をはなれ構成要件的観点を捨象した自然的観察のもとでは,撮影行為と淫行は社会的見解上別個のものと評価すべきであって,これを「一個の行為」とみることはできない。したがって,いずれも刑法54条1項前段の観念的競合の関係ではなく,併合罪の関係にあるものと解するのが相当である。

 奥村もこんなこと主張したんですが、札幌高裁でボロカスにされました。毎度、奥村が観念的競合といえば裁判所は併合罪、奥村が併合罪だといえば裁判所は観念的競合。

 製造罪のポイントは描写行為にあるらしいですよ。新説。