児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp3@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

量刑の二重評価(併合の利益 併合審理の審理)↑→

 併合審理の利益を説明すると、

  1. 一般情状は共通なので集約される。
  2. 個々の罪について考慮されている行為者の要素(常習性、共犯、営利性)の部分(黄色の部分)は、犯罪の性質によっては、大きく共通するし(同種事案の場合)、共通しない場合もある(罪質が異なる場合)であろうが、共通する部分は集約される。

ということですよね。
 原田会員の報告では、こんなの、事件を併合しなくても、手続きを併合すれば(同一部に係属すれば)解消できる。(「併合の利益」ではなく、「併合審理の利益」)とのことです。

 そんなのは、窃盗と殺人、覚せい剤と業過死とかでも、起訴のタイミングで出てくる問題のはずですが、児童ポルノ・児童買春と児童福祉法違反(淫行させる行為・児童淫行罪)の場合に特に問題になるのは、児童に対する性犯罪という点が大きく共通であって、具体的量刑理由として社会的法益の侵害であるとか、犯人の小児性愛傾向とか重く評価される要素がダブるからです。


 両事件は相互に影響し合ってともに実刑判決となっており、影響し合っている部分については量刑上、二重に評価されており、被告人の併合の利益を害している。
 原田判事によれば、量刑事情は次のように分類される。

原田國男量刑判断の実際(増補版)P8
2 個々の量刑事情
(1) 犯罪の動機,方法及び態様
(2) 犯罪結果の大小・程度・数量
(3) 被告人の性格
(4) 被告人の一身上の事情
(5) 被告人の前科・前歴
(6) 余罪
(7) 被告人の反省
(8) 損害賠償
(9) 自白・否認
(10) 社会の処罰感情(処罰要求)
(11) 社会的影響
(12) 社会的制裁

 このうち、

(1) 犯罪の動機,方法及び態様
(2) 犯罪結果の大小・程度・数量
(8) 損害賠償
(9) 自白・否認
(13) 被害者側の事情

はそれぞれの事件に関して考慮される事項である。
 これに対して、

(3) 被告人の性格
(4) 被告人の一身上の事情
(5) 被告人の前科・前歴
(6) 余罪
(7) 被告人の反省
(10) 社会の処罰感情(処罰要求)
(11) 社会的影響
(12) 社会的制裁

という事情は個々の事件には直接関係ない事情である。
 別々に審理されると一般情状が二重に評価されるが、まとめて審理されると二重評価がないので、量刑が軽くなるというのが併合の利益・併合審理の利益である。
 弁護人の理解を示す。

 このうち個々の罪について考慮されている行為者の要素(常習性、共犯、営利性)の部分(黄色の部分)は、犯罪の性質によっては、大きく共通するし(同種事案の場合)、共通しない場合もある(罪質が異なる場合)であろうが、共通する部分は集約される。
 一般情状については、各罪について共通なので、ほとんどが集約される。
 これは併合罪の扱いについて刑法が加重単一刑主義をとっていることからも明らかである。

 このような併合の利益は最高裁判例においても尊重されている。
最高裁判所大法廷判決昭和28年6月10日

 被告人は昭和二四年五月二四日東京地方裁判所で賍物故買により懲役一〇月(三年間執行猶予)及び罰金一万円に処せられ右判決は確定した。被告人の本件賍物故買は前記確定判決よりも前である昭和二三年一一月四、五日頃に犯したものであることは第一審判決の確定したところであるから、この二つの罪は刑法四五条後段の併合罪の関係に立つこと明である。かような併合罪である数罪が前後して起訴されて裁判されるために、前の判決では刑の執行猶予が言渡されていて而して後の裁判において同じく犯人に刑の執行を猶予すべき情状があるにもかかわらず、後の判決では法律上絶対に刑の執行猶予を付することができないという解釈に従うものとすれば、この二つの罪が同時に審判されていたならば一括して執行猶予が言渡されたであろう場合に比し著しく均衡を失し結局執行猶予の制度の本旨に副わないことになるものと言わなければならない。それ故かかる不合理な結果を生ずる場合に限り刑法二五条一号の「刑ニ処セラレタル」とは実刑を言渡された場合を指すものと解するを相当とする。従て本件のように或罪の判決確定前に犯してそれと併合罪の関係に立つ罪についても犯人の情状次第によつてはその刑の執行を猶予することができるものと解すべきである。それ故かかる場合においては刑法二六条二号にいう「刑ニ処セラレタル」という文句も右と同様に解し後の裁判において刑の執行猶予が言渡された場合には、前の裁判で言渡された刑の執行猶予は取消されることがないものと解するのが相当であると言わなければならない。以上の観点から原判決を見ると、原判決が「本件につき原審裁判言渡当時は勿論現在も尚猶予期間中であり被告人に対しては更に刑の執行を猶予すべき法定の要件を欠く」と判示したのは執行猶予の要件に関する法令の解釈を誤つた法令違反があるものと断ぜざるをえないのである。

東京高裁H17.12.26も併合の利益を失われないことを求める。

ただ,そうした場合には,児童ポルノ製造罪と別件淫行罪とが別々の裁判所に起訴されることになるから,所論も強調するように,併合の利益が失われたり,二重評価の危険性が生じて,被告人には必要以上に重罰になる可能性もある。そうすると,裁判所としては,かすがいになる児童淫行罪が起訴されないことにより,必要以上に被告人が量刑上不利益になることは回避すべきである。
そこで,児童ポルノ製造罪の量刑に当たっては,別件樫行罪との併合の利益を考慮し,かつ,量刑上の二重評価を防ぐような配慮をすべきである。そう解するのであれば,かすがいに当たる児童樫行罪を起訴しない検察官の措置も十分是認することができる。

 また、東京高裁平成18年1月23日によれば、裁判官が同一の時は、他方の判決を考慮しないと量刑不当となるという。

東京高裁平成18年1月23日
平成17年(う)第2477号
3量刑不当の論旨について
論旨は,他の同種類似事案や周旋相手の量刑との均衡や被告人に有利な情状を十分にしん酌していないとして,原判決の量刑判断を論難するほか,本件においては併合審理の利益がない上,原判決は,別件地裁事件でも判断される不利な情状について二重に評価して量刑をしている不当があるなどというのである
児童買春周旋罪と評価すべきであるとして量刑不当をいう論旨は,前記のとおり,前提を欠き失当である。)。
そこで検討するに,本件において量刑上考慮すべき事情について,原判決が「量刑の理由」の項において説示する内容はおおむね是認し得るところである。本件事案内容,各被害児童の年齢や本件が児童らの健全な成育に与えた悪影響の大きさなどの犯情に照らせば,被告人の本件刑事責任は到底看過し得るものではない。
なお,所論のように二重評価の危険を防ぐ必要があるとしても,それは同様の事情が二重に評価されることを避けるべきことをいうのであって,当該事情が双方の裁判所で考慮されないことを認めるものではない。そうすると,先行する裁判所において,後行する裁判所がどのように量刑事情を考慮するかをあらかじめ予測することは困難であるから,裁判官が同一であるときなどは別として,先行する裁判所において,当該事件について考慮すべき量刑事情を量刑判断の前提に含めることは当然許されるのであって,復行する裁判所において,先行する裁判所の判断を十分考慮し,同一事件の二重評価を避けるべきなのである。こうした観点からすれば,先行する裁判所である原判決の量刑判断に対して二重評価をしたとの批判は当たらないのである。そうすると,他の同種類似事案の量刑との均衡等所論の指摘を十分に勘案してみても,原判決時において,被告人を懲役2年(求刑・懲役3年)に処した原判決の量刑判断はまことにやむを得ないものであって,これが重過ぎて不当であるなどとはいえないところであった。
しかしながら,当審で取り調べたところ,別件地裁事件について,被害児童乙に対する児童買春の罪のみを認定した上,被告人を懲役年月(執行猶予3年)に処する旨の判決が言い渡されたという事実が認められるところ(なお,この判決についても被告人から控訴の申立てがなされている。),本件の実刑判決の確定により,同執行猶予が取り消されることが十分見込まれる。このような原判決後の事情のほか,・・・など,これらの被告人のためにしん酌し得る事情をなお十分に勘案してみると,現時点においては,原判決の量刑を維持することはやや酷に失し,本件犯情に照らし執行猶予を付するまでには至らないものの,刑期の点については,これを若干軽減するのが相当である。

 特に、児童福祉法違反の場合の併合の利益については、池本裁判官も指摘しているところである。

池本「児童の性的虐待と刑事法」判例タイムズ1081号
2 審理上の難点
 前記の家庭裁判所の専属管轄の定めは、反面他の事件は家庭裁判所では審理できないのであるから、審理に当たって、事件の併合ができず、思いがけぬ不都合が生じることがある。同一の被告人が、例えば覚せい剤使用と淫行罪で逮捕された場合に、覚せい剤取締法違反事件は地方裁判所に、児童福祉法違反事件は家庭裁判所に起訴しなければならない。これら二つの事件は別々に審理され、それぞれに判決をするので、通常の地方裁判所での審理のように、審理をできる限り一括して行い、併合罪処理された刑を量走するというわけにいかない。先行する裁判所が当該事件での刑を決め、遅れた裁判所が刑法四五条後段の併合罪として同法五〇条によりさらに処断することになる。
 しかし、それにしても、審理期間も絶対的に長くなり、二つともに実刑判決を受けた被告人の場合は重罰感を感じることは往々にしてあり、かかる事情がしばしば控訴審での量刑不当で原審破棄の結果を招く。もちろんこのような事態は、確定裁判後に古い前の事件が起訴されたときに地方裁判所でもあることではある。
 そのために刑法五〇条が存在し、地方裁判所でも、場合により主文二つの判決となることもあるが、家庭裁判所では、前後の事件がいわば見えているのに併合審理できないのはいかにも不自然でもどかしい。これがしばしば生じる不都合である。

 特に、

東京高裁H17.12.26
東京高裁H18.1.23
池本判事「児童の性的虐待と刑事法」

などが両事件とも児童に対する性犯罪の場合(地裁事件が覚せい剤や詐欺なら重複評価は少ない!)に量刑不当に至る可能性を指摘するのは、児童福祉法違反(淫行させる行為・児童淫行罪)が少年法37条で専属管轄となっており。関連事件があっても地裁に移送できないところ、行為者の属性(一般情状、小児性愛傾向)が二重評価されてしまうためである。

追記
 この種事件では、小児性愛傾向が、改善困難性や再犯危険性として量刑上考慮されていて、重くなっています。「ロリコン加重」といってもいいですよね。
 地裁事件でもロリコン加重、家裁事件でもロリコン加重されると、二重にロリコン加重されているということです。