児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

岡久慶「英国における過激なポルノの規制禁止」外国の立法No.238 (2008年12月:季刊版)

 最近の立法では、プロバイダの刑事責任にも触れているようです。日本も検討する必要があります。

http://www.ndl.go.jp/jp/data/publication/legis/238/023800.pdf
【イギリス】英国における過激なポルノの禁止
 イギリスでは、2003年に発生した殺人事件を契機に、過激なポルノには実際の犯罪を誘発する危険な影響力があるとして、これを規制すべきだとする運動が高まった。イギリス政府はこれを受けて、2005年8月から公開協議を行い、2008年刑事司法及び移民法によって過激なポルノの所有に対して拘禁刑を科する法律を制定した。しかしながら、この法律については、表現の自由、根拠の妥当性の見地から批判的意見が上がっている。

http://www.ndl.go.jp/jp/data/publication/legis/238/023801.pdf
第68条  情報社会サービスプロバイダーに関わる特別規則
 第63条の規定は、イギリス及び欧州経済領域に設立された情報社会サービスプロバイダーに適用されるが、その内容を知りえなかった場合、又は削除要請に迅速に応えた場合等は、適用が除外される。この規定は、他の欧州経済領域構成国で活動する、イギリス国内で設置された情報社会サービスプロバイダーを規制することを目的としている。また公益を深刻に損なう場合、イギリス以外の構成国の情報社会サービスプロバイダーを訴追することを可能とする

http://www.ndl.go.jp/jp/data/publication/legis/238/023801.pdf
2008年刑事司法及び移民法(抄)
(2008年法律4号)
第5編 刑法
Criminal Justice and Immigration Act 2008
Chapter 4
Part 5 Criminal Law

附則14 「情報社会サービスプロバイダーに関わる特別規則」(第68条関係)
国内のサービスプロバイダー:法的責任の拡張
第1条
(1) この条は、サービスプロバイダーがイングランド及びウェールズ、又は北アイルランドに設立されている(「国内のサービスプロバイダー」である)ときに適用する。
(2) 第63条第1項は、次のいずれにも該当する国内のサービスプロバイダー、加えてイングランド及びウェールズ、並びに北アイルランドにおいて当該画像を所有している(あらゆる種類の)者に対して適用する。
(a) 連合王国を除く欧州経済領域(以下、EEAという)諸国において、過激なポルノ画像を所有していること。
(b) 情報社会サービスを提供する過程で、同地域において当該画像を所有していること。
(3) 第63条に基づく犯罪が、前掲(2)によって国内のサービスプロバイダーに適用するとき、次の規定に従う。
(a) 犯罪の訴追手続はイングランド及びウェールズ、又は北アイルランドの何処においても行なうことができる。
(b) すべての犯罪に付随して、これらが前掲の何処かで行なわれたものとして扱うことができる。
(4) 本条のいかなる規定も、後掲第3条から第5条の運用に影響を与えるものではない。
連合王国外のサービスプロバイダー:訴追手続の制限
第2条
(1) この条は、サービスプロバイダーが連合王国以外のEEA諸国に設立されている(「連合王国外のサービスプロバイダー」である)ときに適用する。
(2) 逸脱条件が満たされない場合、情報社会サービスを提供する過程で生じたことに関して、連合王国外のサービスプロバイダーに対して第63条に基づく犯罪への訴追手続を行うことはできない。
(3) 逸脱条件が満たされるとは、訴追手続が次のいずれにも該当することをいう。
(a) 公益の目的の上で必要であること。
(b) 前掲の目的を損なう、又は目的を損なう深刻かつ重大な危険を持つ情報社会サービスに関連していること。
(c) 加えて前掲の目的に均衡していること。
(4) 「公益の目的(The public interest objective)」とは公共政策の追求をいう。
単なるルートの除外
第3条
(1) サービスプロバイダーは、後掲(2)の条件が該当する場合、次に掲げるものに限定した情報社会サービスを提供する過程において行なわれたことについて、第63条に基づく犯罪の廉で有罪とされないものとする。
(a) 通信ネットワークへのアクセスの提供
(b) サービス受益者による、通信ネットワーク内の情報送信
(2) 前掲の条件とは、サービスプロバイダーが次のことをしないことである。
(a) 送信を自ら開始すること。
(b) 送信の受信先を選ぶこと。
(c) 送信される情報を選ぶ、又は修正すること。
(3) 前掲(1)の目的の上で、次のものは自動的、中間的、一時的な送信情報の保存を含むが、それはネットワーク内の送信を唯一の目的としたものでなければならない。
(a) 通信ネットワークへのアクセス提供
(b) 通信ネットワーク内の情報送信
(4) 情報が送信に合理的に必要な期間を超えて保存されていた場合、前掲(3)は適用しない。
キャッシュの除外
第4条
(1) この条は、情報社会サービスが、サービス受益者が提供した情報の通信ネットワーク内の送信で構成されるときに適用する。
(2) サービスプロバイダーは、次の場合、前掲のように提供された情報の自動的、中間的、一時的な保存について、第63条に基づく犯罪の廉で有罪とされないものとする。
(a) 情報の保存が、サービス受益者の求めに応じた情報の送信を、効率化することを唯一の目的としていること。
(b) 後掲(3)の条件が満たされていること。
(3) 前掲の条件とは、サービスプロバイダーが次に該当することをいう。
(a) 情報を改変しないこと。
(b) 情報へのアクセスに付随した条件を、すべて遵守していること。
(c) (後掲(4)が適用する場合、)迅速に当該情報を削除する、又はアクセスを不可能とすること。
(4) この項は、サービスプロバイダーが次のいずれかのことを実際に知ったとき適用する。
(a) 送信の源となった情報がネットワーク上から削除されていること。
(b) 当該情報へのアクセスが無効とされていること。
(c) 裁判所又は行政機関が、当該情報のネットワーク上からの削除又はアクセス無効化を命じていること。
ホストの除外
第5条
(1) サービスプロバイダーは、次の場合、サービス受益者が提供した情報の保存に限定した情報社会サービスを提供する過程において行なわれたことについて、第63条に基づく犯罪の廉で有罪とされないものとする。
(a) 情報が提供されたとき、それが犯罪となる構成要素を含んでいることを、サービスプロバイダーが実際に知らないこと。
(b) 情報が犯罪となる構成要素を含んでいるという実際の知識を得た段階で、サービスプロバイダーが迅速に当該情報を削除したか、又はアクセスを不可能としたこと。
(2) 「犯罪となる構成要素(offending material)」とは、第63条に基づく犯罪を形成する構成要素をいう。
(3) サービス受益者がサービスプロバイダーの権威又は管理に基づいて行動しているとき、前掲(1)は適用しない。