児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

水着姿でポーズ、大手プロバイダーが女児画像大量提供

 ここは日本なので日本の現行法の児童ポルノの定義から外れるものは、日本の児童ポルノ法では取り締まれませんよね。
 そこは表現の自由との兼ね合いで日本の立法者が定義から外したと評価すべきですよ。
 ほんとはちゃんと議論すべきなんですが、もう選挙モードで、児童ポルノ・児童買春の改正なんて議員さんらの眼中にないし。
 どんな規制でもギリギリのところで商売する人が出てくるものです。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20080929-OYT1T00458.htm
水着姿の女児が、不自然なポーズで胸や下半身を強調する――。
 そんな写真が閲覧できる有料サービスを、インターネットの主要プロバイダーがポータル(玄関)サイトで提供している。
 「子供の性を商品化している」との批判から、このうち1社は今月中に中止する方針を決めたが、継続中のプロバイダーは「現行法では児童ポルノには該当しない」などと主張。専門家は「海外では違法とする国もある」として、児童ポルノ問題での日本の取り組みの遅れを嘆いている。

読売に指摘されてやめるくらいなら、それまでの商売だったということでしょうか。


 読売の記者にも言ったんですが、国会図書館の雑誌「外国の立法」に
  山田敏之「先進諸国における児童ポルノ規制」
  横山 潔「特集 児童買春ツアー・児童ポルノ
というのがあるのでそれみた方が正確です。

 外国の法律を調べる余裕がなければ、サイバー犯罪条約を見ておけばいいんじゃないですか?

日弁連サイバー犯罪条約の研究
第1 外務省仮訳
第9条 児童ポルノに関連する犯罪
1 締約国は、権限なしに故意に行われる次の行為を自国の国内法上の犯罪とするため、必要な立法その他の措置をとる。
a コンピュータ・システムを通じて配布するために児童ポルノを製造すること。
b コンピュータ・システムを通じて児童ポルノの取得を勧誘し又はその利用を可能にすること。
c コンピュータ・システムを通じて児童ポルノを配布し又は特定の者に送信すること。
d 自己又は他人のためにコンピュータ・システムを通じて児童ポルノを取得すること。
e コンピュータ・システム内又はコンピュータ・データ記憶媒体内に児童ポルノ保有すること。
2 1の規定の適用上、「児童ポルノ」とは、次のものを視覚的に描写するポルノをいう。
a あからさまな性的な振舞いを行う未成年者
b あからさまな性的な振舞いを行う未成年者であるようにみえる者
c あからさまな性的な振舞いを行う未成年者を表現する写実的画像
3 2の規定の適用上、「未成年者」とは、十八歳未満のすべての者をいう。ただし、締約国は、より低い年齢の者のみを未成年者とすることができるが、十六歳を下回ってはならない。
4 締約国は、1d及びe並びに2b及びcの規定の全部又は一部を適用しない権利を留保することができる。
・・・・
2 第2項
 児童ポルノの定義規定である。児童ポルノとは、次のものを視覚的に描写するポルノをいう。
a あからさまな性的な振舞いを行う未成年者
b あからさまな性的な振舞いを行う未成年者であるようにみえる者
c あからさまな性的な振舞いを行う未成年者を表現する写実的画像
 EM99によれば、具体的にどういうものが“ポルノ”に該当するかは、各国の基準による。
 
 aは実在の未成年者が、あからさまな性的な振る舞いをする場合である。EM100には「あからさまな性的な振る舞い」の例示がある。("real or simulated: a) sexual intercourse, including genital-genital, oral-genital, anal-genital or oral-anal, between minors, or between an adult and a minor, of the same or opposite sex; b) bestiality; c) masturbation; d) sadistic or masochistic abuse in a sexual context; or e) lascivious exhibition of the genitals or the pubic area of a minor. It is not relevant whether the conduct depicted is real or simulated.")

 bは未成年者に見える実在人が、あからさまな性的な振る舞いをする場合である。

 cは、未成年者が被写体であることを要件としない未成年者を表現する写実的画像であって、EM101では写真合成やCGが例示されている。
 なお、漫画("cartoon")は含まれない。(警察学論集第55巻5号「サイバー犯罪に関する条約」について-その意議及び刑事実体法規定-瀧波宏文)

サイバー刑事法研究会報告書「欧州評議会サイバー犯罪条約と我が国の対応について」
1.9.第9 条 児童ポルノに関連する犯罪(Offences related to child pornography)
(1) 逐条
【原文】
1. Each Party shall adopt such legislative and other measures as may be necessary to establish as criminal offences under its domestic law, when committed intentionally and without right, the following conduct:
(a) producing child pornography for the purpose of its distribution through a computer system;
(b) offering or making available child pornography through a computer system;
(c) distributing or transmitting child pornography through a computer system;
(d) procuring child pornography through a computer system for oneself or for another person;
(e) possessing child pornography in a computer system or on a computer-data storage medium.
2. For the purpose of paragraph 1 above, the term “child pornography” shall include pornographic material that visually depicts:
(a) a minor engaged in sexually explicit conduct;
(b) a person appearing to be a minor engaged in sexually explicit conduct;
(c) realistic images representing a minor engaged in sexually explicit conduct.
3. For the purpose of paragraph 2 above, the term “minor” shall include all persons under 18 years of age. A Party may, however, require a lower age-limit, which shall be not less than 16 years.
4. Each Party may reserve the right not to apply, in whole or in part, paragraphs 1, subparagraphs
d. and e, and 2, sub-paragraphs b. and c.
【和訳】
1.  締約国は、自国の国内法により、権限なしに故意に行われる次の行為を犯罪とするため、必要な立法その他の措置をとる。
    (a) コンピュータ・システムを通じて配布するために児童ポルノを製造すること。
  (b) コンピュータ・システムを通じて児童ポルノの取得を勧誘し又はその利用を可能にすること。
  (c) コンピュータ・システムを通じて児童ポルノを配布し又は特定の者に送信すること。
  (d) 自己又は他人のためにコンピュータ・システムを通じて児童ポルノを取得すること。
  (e) コンピュータ・システム内又はコンピュータ・データ記憶媒体内に児童ポルノ保有すること。
2.  1の規定の適用上、「児童ポルノ」とは、次のものを視覚的に描写するポルノをいう。
    (a) あからさまな性的なふるまいを行う未成年者
  (b) あからさまな性的なふるまいを行う未成年者であるようにみえる者
  (c) あからさまな性的なふるまいを行う未成年者を表現する写実的画像
3.  2の規定の適用上、「未成年者」とは、十八歳未満のすべての者をいう。ただし、締約国は、より低い年齢の者のみを未成年者とすることができるが、十六歳を下回ってはならない。
4.  締約国は、1d及びe並びに2b及びcの規定の全部又は一部を適用しない権利を留保することができる。
(2) 逐条解説
 本条は、児童ポルノグラフィの電子的な製造、所持および頒布に関連する様々な行為を、犯罪として処罰することを目的としている(EM93)。
 本条は、第2 条ないし第8 条と同様に、故意に(intentionally)行われた場合にしか処罰されない。したがって、児童ポルノグラフィの提供、利用可能化、頒布、伝送、製造又は保有をする意図を有しない者は責任を負うことはない。例えば、ISP は刑事責任を免れるために、Web サイトやnewsroom を監視する義務は負わない(EM105)。
 わが国における児童ポルノグラフィに関連する様々な犯罪行為の処罰については、「児童買春・児童ポルノ禁止法(児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律)」で規定されているが、第1 項cについては、児童ポルノ画像データ自体をインターネットを通じて送信する行為、および「不特定又は多数」の者に対して行う意図を有しない「特定」の者に頒布する行為が、同法で規制されておらず、担保できない。
 児童買春・児童ポルノ禁止法第2 条第3 項にいう「児童ポルノ」は、従来より一般に有体物と解されているところ、横浜地裁川崎支判平成12・7・6(電子メールシステム上の画像データを有体物に化体されたのと同視して「図画」に該当するとして、「猥褻物」概念を拡張解釈)の考え方に立てば、児童ポルノをデータとして送信することも現行法で処罰の対象となると解する余地はある。尤も、最決平成13・7・16 は、「わいせつな画像データを記憶、蔵置させたホストコンピュータのハードディスクは、刑法第175 条が定めるわいせつ物に当たるというべきである」としており、これに従えば児童ポルノデータ自体を児童ポルノと解することには困難が生じることになろう。いずれにせよ、児童ポルノデータを「物」と解すること自体は解釈として疑問が残る以上,同項の「児童ポルノ」の定義規定を改正し、児童ポルノ画像データが含まれることを明文で追加するか、又は児童ポルノデータをコンピュータ・システムを通じて送信することを処罰する規定を創設する等、新たな刑事立法を行うことが本来望ましいものと解される。
 第1 項dおよびe、ならびに第2 項b およびc については、わが国の国内法が規制の対象としていない類型であるから、第4 項の規定に基づいて、それらを適用しない権利を留保しなければならない。
(3) 研究会における意見
 児童ポルノに情報を含むか否かという点の解釈については、川崎支部判例最高裁判例のいずれが今後の主流となっていくかという問題もさることながら、そもそも定義規定それ自体が明確性を欠いているという問題も看過されてはならない。
米国においては、児童ポルノの配布、送信についての規制をめぐって、憲法訴訟がおきており、「表現の自由を侵害する」という違憲判決が出た場合には、本条による規制が人権保障に反するのではないかという点が、正しく問題となる。この点に関しては、たしかに「児童ポルノは特別である」旨の連邦最高裁判例が存在するが、米国も本条についてはなお留保の可能性がある。

http://www.ndl.go.jp/jp/publication/backn/gaikoku.html
1. 英国の格差対策--児童貧困撲滅2020 (特集:格差問題) / 岡久 慶
外国の立法. (236) [2008.6]

2. 人身取引の対象とされた者の保護及び支援のために必要な制度的メカニズムを構築し、その暴力に対する罰則を定め、人身特に女性及び児童の取引を撲滅する政策を制定するための法律(共和国法 第9208号) (特集 諸外国における人身取引に関する立法動向) -- (フィリピンの人身取引に関する立法動向) / 権 香淑 訳
外国の立法. (220) [2004.5]

3. アメリカ合衆国における児童虐待の防止及び対処措置に関する法律 (アメリカ合衆国における児童虐待の防止及び対処措置に関する法律) / 土屋 恵司
外国の立法. (219) [2004.2]

4. 児童虐待防止及び対処措置並びに養子縁組改革--「2003年児童及び家族の安全保持法」による改正後の合衆国法典第42編[保健及び福祉] 第67章[児童虐待防止及び対処措置並びに養子縁組改革]の規定 (アメリカ合衆国における児童虐待の防止及び対処措置に関する法律) / 土屋 恵司 訳
外国の立法. (219) [2004.2]

5. アメリカ合衆国における児童虐待の防止及び対処措置に関する法律
外国の立法. (219) [2004.2]

6. イギリスにおける対児童犯罪・少年犯罪・性犯罪に対する最近の立法措置--イギリス「2000年刑事司法及び裁判所業務法」による資格剥奪命令・コミュニティ命令・「1997年性犯罪者法」改正
外国の立法. (218) [2003.11]

7. イギリス「2000年刑事司法及び裁判所業務法」(法律第43号) 第2章 児童の保護 (イギリスにおける対児童犯罪・少年犯罪・性犯罪に対する最近の立法措置--イギリス「2000年刑事司法及び裁判所業務法」による資格剥奪命令・コミュニティ命令・「1997年性犯罪者法」改正) / 横山 潔 訳
外国の立法. (218) [2003.11]

8. イギリスにおける対児童犯罪・少年犯罪・性犯罪に対する最近の立法措置--イギリス「2000年刑事司法及び裁判所業務法」による資格剥奪命令・コミュニティ命令・「1997年性犯罪者法」改正 (イギリスにおける対児童犯罪・少年犯罪・性犯罪に対する最近の立法措置--イギリス「2000年刑事司法及び裁判所業務法」による資格剥奪命令・コミュニティ命令・「1997年性犯罪者法」改正) / 横山 潔
外国の立法. (218) [2003.11]

9. アメリカ:児童を誘拐及び性的搾取から保護するための法律 / 中川 かおり
外国の立法. (217) [2003.8]

10. 特集 児童買春ツアー・児童ポルノ
外国の立法. 34(5・6) [1996.11]

11. 子ども買春ツアー (特集 児童買春ツアー・児童ポルノ) / 横山 潔
外国の立法. 34(5・6) [1996.11]

12. オーストラリア 1994年犯罪(子ども買春ツアー)法 (特集 児童買春ツアー・児童ポルノ) / 横山 潔 訳
外国の立法. 34(5・6) [1996.11]

13. フィリピン 児童の虐待,搾取及び差別に対する児童特別保護法 (特集 児童買春ツアー・児童ポルノ) / 山田 敏之 訳
外国の立法. 34(5・6) [1996.11]

14. スウェーデン ボーリン事件判決 (特集 児童買春ツアー・児童ポルノ) / 酒井 貴美子 訳
外国の立法. 34(5・6) [1996.11]

15. 児童買春ツアーに出かけ児童を買春した者に対する送り出し国と受入国の処罰規定 (特集 児童買春ツアー・児童ポルノ) / 山田 敏之
外国の立法. 34(5・6) [1996.11]

16. 先進諸国における児童ポルノ規制 (特集 児童買春ツアー・児童ポルノ) / 山田 敏之
外国の立法. 34(5・6) [1996.11]

17. 表 先進各国における猥褻出版物・図画等と児童ポルノの規制の概要 (特集 児童買春ツアー・児童ポルノ) / 山田 敏之
外国の立法. 34(5・6) [1996.11]

18. 先進各国における児童ポルノ取締に関する規定 (特集 児童買春ツアー・児童ポルノ) / 山田 敏之
外国の立法. 34(5・6) [1996.11]