児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

AMERICAN VIEW - SPRING 2008 人身売買―現代版奴隷制度との戦い (第2部)スコット・ハンセン

 取り締まり上の必要性が強調されています。

米国にも深刻な児童ポルノの問題がありますが、わが国の法的枠組みは、法執行当局に、児童ポルノ関連の犯罪者を効果的に捜査・訴追するために必要な手段を与えています。日本では、児童ポルノの単純所持を犯罪とする法律がないため、警察が児童ポルノ関連の犯罪を積極的に捜査することができない場合が多くあります。日本のインターネット・サービスプロバイダーは、法執行当局が、児童ポルノを取引し広めるためにつくられた日本のeグループ、ニュースグループ、インターネット掲示板の大幅な増加に追いつくことができないと認識しています。警察庁によると、児童ポルノの単純所持が違法でないため、捜査員が容疑者のコンピューターを押収したり、捜索するために捜査令状を取ることはほとんど不可能です。今日の児童ポルノ関連の刑事訴追は、多くの場合、コンピューターのハードドライブに保存された画像がらみか、もしくは児童ポルノの画像にアクセスしたことが判明しているインターネット・プロトコール(IP)アドレスに端を発します。日本の裁判所は、IPアドレス情報に基づいて捜査令状を発付することができないため、日本の警察は児童ポルノの取引と効果的に戦うことができません。

 また、単純所持を犯罪とする法律がないため、日本は多くの場合、児童ポルノ関連の国際的な捜査に参加することができません。日本の警察庁は世界の法執行当局の間で高い評価を得ており、さまざまな国際捜査で広く協力しています。しかし残念ながら、日本では児童ポルノの所持が違法でないため、警察庁は、最も頻繁に実施される児童ポルノ関連の国際捜査に参加することができないのです。その捜査とは、児童ポルノを取引する商業ウェブサイトやその他のインターネット・コミュニティーから得た膨大な顧客リストを捜査対象にしたものです。これらの事件では、法執行機関が法的手続きを取るために使うことができる証拠は、捜査対象がパソコン上で児童ポルノを所有している、という事実だけです。こうした国際捜査では、ある国がほかの国に証拠を渡し、児童ポルノを所有していると信じるに足る根拠がある場合に捜査令状を取ってパソコンを押収します。押収したパソコンの証拠に基づき、通常はまず児童ポルノの所有の罪でこの捜査対象を逮捕しますが、多くの事件では、捜査員は、これらの画像を所有しているだけでなく、子どもを虐待してこうした画像を製造している、最も罪が重い犯罪者を見つけ出します。

 警察の捜査権限が強くなりすぎることを理由に単純所持を違法とすることに異議を唱える人がいますが、私はそれに強く反対します。児童ポルノの所有を違法とする法律は、子どもに対する大きな脅威に対処することを目的としており、それ自体で警察に新たな権限を付与するものではありません。個人のコンピューターを捜索して単純所持を違法とする法律を執行するには、警察はまず裁判所に捜査令状を申請しなければなりません。そのコンピューターに犯罪の証拠があると信じるに足るほぼ確実な根拠があると判断しなければ、判事は令状を出しません。裁判所命令なしに違法な捜査または押収を行いたいと思っている腐敗した警察官の場合には、児童ポルノの所有を違法とする法律がなくてもこのような不正を行います。こうした行為には直接対処すべきであり、子どもの保護という極めて重要な問題に取り組むことを目的とした刑事法の成立を拒絶することによって対処すべきではありません。最も重要なことは、今、子どもの権利が侵害されていることを認識することです。子どもが日常的に犠牲となっている現状を食い止めるために行動することが、私たちの最優先課題です。