児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

「年齢を知らないことを理由として、・・・処罰を免れることができない」という規定の趣旨

 無過失が抗弁になるというのですが、弁護士つけて年齢不知なんかで逃れる人が多くなると、児童買春罪にも設けられそうです。
児童ポルノ罪にこれつけると、かなり、処罰範囲が拡がります。

徳島県青少年保護育成条例違反被告事件
高松高等裁判所判決平成10年3月3日
 そこで検討するに、徳島県青少年保護育成条例(以下、単に「条例」という。)は、一四条一項において、「何人も、青少年に対し、いん行又はわいせつな行為をしてはならない。」と規定し、二四条二号でその罰則を定めるとともに、二六条の二において、「第一三条の六第一項第三号、第一四条第一項、第一四条の二第一項又は第一五条の規定に違反した者は、当該青少年の年齢を知らないことを理由として、第二四条又は第二四条の二の規定による処罰を免れることができない。ただし、過失のないときはこの限りでない。」と規定しているところ、右各規定の体栽などからすると、条例二六条の二は、当該行為を行った者の処罰について、青少年の年齢を知らないだけでは、刑事訴訟法三三五条二項にいう「法律上犯罪の成立を妨げる理由となる事実」とならない旨を定めるとともに、その点につき過失もないことは右犯罪成立阻却事由となる旨を定めたものであり(同様の規定を有する児童福祉法六〇条三項の解釈に関する最高裁昭和三三年三月二七日判決・刑集一二巻四号六五八頁参照)、一種の解釈的な補充規定であって、緒論がいうように、条例二四条二号が青少年の年齢を知っていた場合の罰則規定、条例二六条の二が過失によりその年齢を知らなかった場合の罰則規定となるものではない。したがって、被告人が青少年の年齢を知っていたものとして起訴され、その成否が争点とされて公判審理がなされている本件のような場合においては、犯情を明らかにする意味でも、これを判決中で明らかにすることが望ましいことはいうまでもないが、本罪の罪となるべき事実としては、被告人が青少年の年齢を知っていたか、あるいは過失によりこれを知らなかったかを判示することが法律上要求されているものではなく、また、被告人が過失により青少年の年齢を知らなかった場合の罰条についても、条例二四条二号、一四条一項のみを挙示すれば足り、むしろ、二六条の二は挙示すべきではない。したがって、これらの点について原判決に理由の不備ないし食い違いがあるという前記〈2〉及び〈3〉の所論は採用できない。
 次に、〈1〉の所論についても、以上に説示したような本条例の規定の構造、すなわち、被告人が青少年の年齢を知っていた場合も、過失によりこれを知らなかった場合も同一法条により処罰されるものであり、かつ、その法定刑も同じであることからすると、本件のように、被告人が、A子が一八歳未満であることを知っていたとして起訴された場合であっても、検察官において、被告人が過失により年齢を知らなかったときは起訴しない趣旨である旨の釈明がなされるなど、被告人の防禦に実質的な不利益を及ぼすと認められるような事情がない限り、訴因の変更手続を経ることなくその旨認定して有罪の判決をすることができるものというべきである。

児童福祉法違反被告事件
最高裁判所第1小法廷判決昭和33年3月27日
最高裁判所刑事判例集12巻4号658頁
家庭裁判月報10巻4号72頁
最高裁判所裁判集刑事123号823頁
警察研究57巻6号69頁

児童福祉法三四条六号は、何人も、児童すなわち満一八歳に満たない者に淫行をさせる行為をしてはならない、との禁止規定を設け、同六〇条一項は、右禁止規定に違反した者に対する罰則を定めている。そして、同条三項は、「児童を使用する者は、児童の年齢を知らないことを理由として、前二項の規定による処罰を免れることができない。但し、過失の人いときは、この限りでない」と定めている、これらの規定を対照し総合して理論的に考えると、児童を使用する者の本件犯罪について、前記六〇条三項本文は、児童の年齢を知らないことは、刑訴三三五条二項にいう「法律上犯罪の成立を妨げる理由・・・・・・となる事実」とならない旨を定めると共に、前記六〇条三項但書は、児童の年齢を知らないことにつき過失がないことは、右犯罪成立阻却事由となる旨を定めたものと解するを相当とする、それゆえ、これと趣旨を同じくする原判決は結局正当である。)