情報が閲覧者の手元に残る点で、4項提供罪(不特定多数)の方がいいと思うんですが、これを提供罪にしてしまうと、web掲載も全部提供罪になって、公然陳列罪の守備範囲がほとんどなくなります。
もともとweb掲載という一種の行為類型について、陳列罪も提供罪も適用できるというのは、混乱を招くので、立法的に上手でないと思います。
出会い系サイト児童買春 児童ポルノ所持で追起訴−−奈良地検 /奈良
2008.02.22 毎日新聞社
◇ネット利用者に提供目的
児童ポルノをファイル交換ソフトで閲覧させる目的で所持していたとして、奈良地検は21日までに、被告(35)=児童買春・児童ポルノ禁止法違反(児童買春)罪で起訴=を、同法違反(提供目的所持)罪で奈良地裁に追起訴した。
起訴状によると、被告は昨年10月29日、18歳未満の女子児童のポルノ画像のデータなど16個を、ファイル交換ソフトを利用して不特定多数のインターネット利用者に提供する目的で、自宅のパソコンに保存し所持した。
これが提供罪になると、よそが困りますよね。
http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20080117/1200576832
名古屋高裁h19.7.6
2主任弁護人の控訴理由第3(インターネット上の公開は、不特定多数の者に対する提供であって、公然陳列に該当しない。)について論旨は、要するに、インターネットの電子掲示板に児童ポルノ画像データを送信して記憶、蔵置させる行為は、児童ポルノ処罰法7条4項の不特定又は多数の者に対する提供罪に該当し、公然陳列罪には該当しないから、これを「公然陳列罪」に該当するとした原判決には、判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認があり、ひいては法令適用の誤りがある、というのである。
しかしながら、児童ポルノ画像を「公然と陳列した」とは、その児童ポルノの内容を不特定又は多数の者が認識できる状態に置くことをいうところ、インターネットの電子掲示板に児童ポルノ画像データを送信して記憶、蔵置させる行為は、不特定多数のインターネット利用者が自己のパソコンを使用して当該児童ポルノ画像を認識(閲覧)可能な状況を設定するものであるから、これが児童ポルノ画像の公然陳列罪に該当することは明らかである。
所論は、インターネット利用者がインターネットの電子掲示板に記憶、蔵置されている画像データをいわゆる「閲覧」するのは、当該画像データそのものをインターネット利用者のパソコン画面上で見ているのではなく、インターネット利用者がプロバイダを介し当該画像データを構成する各種ファイルの送信を受け(ダウンロード)、これらを自己のパソコンの一時保管ホルダーに保存し、この一時保管された画像データがパソコン画面に表示され、インターネット利用者はこの画面上に表示された画像を見ているのであるから、電子掲示板に児童ポルノ画像を送信して記憶、蔵置させる行為は、児童ポルノ処罰法7条4項の不特定又は多数の者に対する提供罪に該当し、同項の公然陳列罪には該当しない、という。
しかし、所論が、インターネット利用者において、電子掲示板に記憶、蔵置された児童ポルノ画像を見るに至る経緯を、インターネットの仕組みに照らし詳細に説明していることは認めるが、前記認定のとおり、電子掲示板に児童ポルノ画像データを送信して記憶、蔵置させる行為により、不特定多数のインターネット利用者が当該児童ポルノ画像を、所論が詳細に説明するインターネットの仕組みを介して、認識(閲覧)可能な状況を設定していることが認められるのであるから、その行為は、児童ポルノ画像を公然陳列したというを妨げないというべきである。その他、所論のいう児童ポルノの受け手側における再生可能性の有無に関する点を考慮しても、所論は採用できない。