児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

「児童・青少年の年齢を知らないことを理由として、前三項の規定による処罰を免れることができない。ただし、過失のないときは、この限りでない。」という規定

 非使用者による条例違反+3項製造罪(姿態とらせて製造)の場合、条例違反だけ処罰されることになります。
 青少年条例違反も「ハメ撮り」を想定できるのに、淫行については、ほぼ全国民に年齢確認義務を負わせているのに、同一機会の3項製造罪(姿態とらせて製造)については、年齢確認義務がないというのは、条例との関係について考えが足りないと思いますね。

東京高等裁判所判決/平成7年(う)第219号
平成7年5月31日
高等裁判所刑事判例集48巻2号131頁
高等裁判所刑事裁判速報集平成7年69頁
東京高等裁判所判決時報刑事46巻1〜12号33頁
判例タイムズ893号286頁
判例時報1548号143頁
ところで、児童福祉法六〇条三項の「児童を使用する者」とは、当該児童との間に継続的な雇用関係ないし身分関係にある者に限られず、広く当該児童との間に、社会通念上その年齢確認を義務つけることが相当として是認されるだけの継続的な支配従属関係があると認められる者、いいかえると、その者が当該児童に心理的ないし経済的な影響を及ぼすことにより当該児童の意思決定を左右しうる立場にあると認められるような関係を有する者も含まれると解すべきである。

東京家庭裁判所/平成7年(少イ)第11号
平成7年7月6日
家庭裁判月報47巻12号75頁
一 被告人が「児童を使用する者」に当たらないとの主張について児童福祉法60条3項にいう「児童を使用する者」というためには,児童との身分的又は組織的関係において児童を管理・支配しその行為を継続的に利用し得る地位にあれば足り,弁護人の主張するように,児童と民法上の雇用関係ないし労働基準法上の労使関係に立つことや,これとの間に労使関係類似の支配従属関係があることまで必要とするものではないと解すべきである。なぜなら,そのように解することが,心身の発育の未熟な児童の保護を図った児童福祉法の前記規定の趣旨に最もよく合致し,同条の文理からみても無理がないと考えられるからである。

最高裁判所第1小法廷決定/平成2年(あ)第434号
平成5年10月26日
最高裁判所刑事判例集47巻8号81頁
家庭裁判月報46巻1号156頁
最高裁判所裁判集刑事262号471頁
裁判所時報1110号250頁
ジュリスト臨時増刊1046号180頁
ジュリスト1089号333頁
判例タイムズ878号14頁
法曹時報47巻10号279頁

 なお,原判決及びその是認する第一審判決の認定によれば,被告人は,ビデオテープレコーダー用映像の企画,制作並びに販売等を目的とする株式会社○○の代表取締役として同社の業務全般を統括していた者であるが,同社の業務に関して,「あぶないセーラー服」と題するビデオ録画の制作,販売を企画し,Aに脚本の作成及び録画の監督を委嘱し,同人に対して事前の企画段階や脚本原案の検討段階において具体的に指示を与えるなどし,他方,○△の名称でモデルや女優の有料紹介業を営んでいるBから売り込み方を持ち込まれていた同プロモーション所属の当時15歳の児童(以下,5本件児童」という。)を,自ら書類審査し,同社の制作担当者をして面接を行わせた上で,右ビデオ録画に主演女優として出演させることを自ら最終決定し,Bとの問で,被告人及びBそれぞれにおいてその従業者を介して,本件児童をして同社が制作するビデオ録画1本に出演料80万円で出演させる契約を締結し,その上で,本件児童をして,Aの指揮監督の下に,2日間にわたり,いずれも午前8時ころから午後10時ころまで,東京都渋谷区内のスタジオなどにおいて,同社の制作関係者が事前に立てた録画予定表に従い,男優を相手として,露骨な性戯,模擬性交などのわいせつな演技をさせるなどし,もって,右BおよびAらと意思相通じ,児童の心身に有害な影響を与える行為をさせる目的でこれを自己の支配下に置いたというのであって,右の事実関係の下においては,被告人が児童福祉法60条3項にいう「児童を使用する者」に当たることは明らかである。

東京高等裁判所判決/昭和40年(う)第2074号
昭和41年7月19日
高等裁判所刑事判例集19巻4号481頁
高等裁判所刑事裁判速報集1506号
東京高等裁判所判決時報刑事17巻7号124頁
判例タイムズ196号150頁
 本村弁護人の控訴趣意第一点の理由不備ないし理由くいちがいの主張について。
 論旨は、原判決は原判示事実につき児童福祉法第三四条第一項第九号、第六〇条第二項を適用しているが、第六〇条第二項は故意犯を処罰する趣旨であり、同条第三項は児童(満十八歳に満たないもの)を使用する者が児童の年齢を知らないことにつき過失のある場合にかぎり、その故意のある場合と同様にこれを処罰する趣旨を示したものと解すべきところ、原判決は被告人がAを雇い入れるに際し同女が児童であることを認識していたかどうか、もし児童であることを認識していなかつたとすれば、その認識しなかつたことにつき過失があつたかどうかについて、何ら判示するところがないから、原判決には理由不備の違法があり、もし原判決が被告人において同女が児童であることを認識していた趣旨を認定判示したものとすれば、かかる事実は原判決の引用証拠によりこれを認定するに由ないから、原判決には理由くいちがいの違法があるというのである。
 児童福祉法第三四条第一項及び第二項は、児童福祉上有害であると認められる児童に対する特定の行為を禁止し、同法第六〇条第一項及び第二項は右禁止規定違反に対する罰則を定め、同条第三項は「児童を使用する者は、児童の年齢を知らないことを理由として、前二項の規定による処罰を免かれることはできない。
 但し、過失のないときは、この限りではない。」と規定している。ところで、第六〇条第一項及び第二項が前記禁止規定違反の故意犯のみの処罰規定であり、同条第三項が児童を使用する者が過失により児童の年齢を知らないで右の違反行為に出た場合の処罰規定であると解すべきかどうかは、文理上必ずしも明らかではない。同条第一項及び第二項は、一応故意犯の規定形式を採つているが、さりとて、同条第三項は、その立言方法が消極的であつて、過失犯の構成要件を積極的に規定したものとしての形式を採つていないのである。おもうに、以上摘示の諸規定を対照し総合して勘案すると、第三四条第一項及び第二項の禁止規定違反に対する基本的な罰則規定は、第六〇条第一項及び第二項であり、同条第三項は、同条第一項及び第二項が児童を使用する者については児童の年齢の認識の有無を主観的構成要件としていないことを明らかにするとともに、その年齢を知らないことにつき過失のないときは処罰を免かれるということを定めた同条第一項及び第二項に対する一種の解釈的な補充規定であつて、特に過失犯の類型を規定したものではないと解するのが相当である。

鹿児島家庭裁判所判決/昭和40年(少イ)第4号
昭和41年4月23日
家庭裁判月報19巻2号153頁
判例タイムズ209号271頁
被告人の供述(前記各供述調書および当公判廷の供述)中には、「○元の母に年齢を確めたところ、一八歳であるといつたので安心して働いて貰うことにした」との趣旨の供述があり、一見、被告人が○元の母に年齢を確認するまでは○元を満一八歳未満であるかも知れないとの疑念を抱いていたのではないかと見られる節がないでもないが、被告人のこれら供述を通読すれば、右供述部分はかかる趣旨で述べられたものではないことは明らかであつて、右「安心して」云々というのは、○元の母に確めても一八歳に達していることは間違いなかつたということを強調する言葉の綾に過ぎないものと認められ、これを捉えて、被告人が右の如き疑念を抱いていたものとみなすのは早計といわねばならない。そうすると、本件においてはこの点に関する適切な証拠は他にないから、被告人が、○元が満一八歳に満たないものであることにつき、未必の認識を有していたものと認めることができない。
 ところで、検察官は、被告人が○元の年齢を満一八歳に達しているものと信じていたとしてもその年齢調査を十分に行わなかつた以上刑事責任は免れることができないと主張するが、労働基準法六三条二項違反の罪には児童福祉法六〇条三項の如き規定がないから右罪の成立には一八歳未満のものであることの認識もしくは未必の認識を要し、年齢の認識に過失のある場合はこれを処罰し得ないものと解するのが相当である。すなわち、児童福祉法六〇条三項は処罰の対象を「児童を使用する者」に限定しており、これ以外の者については年齢の認識に過失があつてもこれを処罰し得ないことは同条項の解釈上当然であつて、同条項はまさに刑法三八条一項但書という「特別の規定」と解すベく、これを単なる注意的規定と解する検察官の見解には到底賛同し難く、児童福祉法三四条一項と同種類似の禁止規定である労働基準法六三条二項の違反行為についてのみかかる特別規定をまたず、年齢の認識に過失のある場合をも当然処罰するとなす合理的理由はなく、また、かかる過失の処罰規定を他の犯罪に類推適用することにういては罪刑法定主義の見地上、消極に解さざるを得ない。したがつて、検察官の右主張は到底採用することができない。
 してみると、本件は被告人の故意につき証明がなく、結局本件公訴事実につき犯罪の証明がないことに帰するから刑事訴訟法三三六条により無罪の言渡しをすることとする。よつて、主文のとおり判決する。

東京家庭裁判所決定/昭和39年(少イ)第24号
昭和40年3月26日
家庭裁判月報17巻11号169頁
一、被告人は使用者に非ずとの主張について
 弁護人は、本件経営においては、被告人の長男高根兼文が専ら従業員の採用その他の営業面を担当しており、被告人は僅かに資金面を担当しているにすぎないから、被告人は児童福祉法第六〇条第一二項にいう「児童を使用する者」に該らず、したがつて同条第二項の刑責を負わないと主張する。
 そこで、先ず右「児童を使用する者」という概念について考えるに、一方において児童福祉法第三四条第一項がその各号の禁止行為(本件も後述のようにその一に該当する)の主体として広く「何人も、左の各号に掲ける行為をしてはならない」と定め、その違反に対する罰則として同法第六〇条第一、二項をおき、同条第三項の「児童を使用する者は、児童の年齢を知らないことを理由として、前二項の規定による処罰を免かれることができない。・・・・・・」という規定は右第一、二項の補完規定とみられること、
他方において同法第六〇条第四項が「法人の代表者又は法人若しくは人の・・・・・従業者が、その法人又は人の業務に関して、第一項又は第二項の違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対しても、各同項の罰金刑を科する。・・・・・・」として間接的な責任を認めていることを対比考量し、なお、これに、同法第三四条第一項第九号が同項第一号ないし第八号の定型的行為を補足する一般的規定として「・・・・・・児童の心身に有害な影響を与える行為をさせる目的をもつて、これを自己の支配下に置く行為」を禁じており、換言せば右第一項第一号ないし第八号の規定は、右第九号にいう有害行為のために児童を自己の支配下に置く行為なる概念の具体化であるとみられること等を綜合して考えると、右にいう「児童を使用する者」とは、一方において例えば適法有効な雇傭関係に基いて児童を使用している者に限られないと共に、他方において例え形式的には児童との間に何等かの使用関係を有するような者でも実質的には児童を支配する関係にたつていない者はこれに含まれない(この場合には前記第六〇条第四項の軽い責任−−罰金滞のみ−−が生じ得るにとどまるものと解すべく、これを要するに右「児童を使用する者」に該るか否かは、当該違反行為につき、身分上、組織上、その他その原因を問わず、児童を自己の実質的支配の下においていたか否かによつて判断するのが相当であると解する。

徳島県青少年保護育成条例違反被告事件
高松高等裁判所判決/平成9年(う)第177号
高等裁判所刑事裁判速報集平成10年163頁
判例時報1642号160頁
判決をしているというのである。
 そこで検討するに、徳島県青少年保護育成条例(以下、単に「条例」という。)は、一四条一項において、「何人も、青少年に対し、いん行又はわいせつな行為をしてはならない。」と規定し、二四条二号でその罰則を定めるとともに、二六条の二において、「第一三条の六第一項第三号、第一四条第一項、第一四条の二第一項又は第一五条の規定に違反した者は、当該青少年の年齢を知らないことを理由として、第
二四条又は第二四条の二の規定による処罰を免れることができない。ただし、過失のないときはこの限りでない。」と規定しているところ、右各規定の体栽などからすると、条例二六条の二は、当該行為を行った者の処罰について、青少年の年齢を知らないだけでは、刑事訴訟法三三五条二項にいう「法律上犯罪の成立を妨げる理由となる事実」とならない旨を定めるとともに、その点につき過失もないことは右犯罪成立阻却事由となる旨を定めたものであり(同様の規定を有する児童福祉法六〇条三項の解釈に関する最高裁昭和三三年三月二七日判決・刑集一二巻四号六五八頁参照)、一種の解釈的な補充規定であって、緒論がいうように、条例二四条二号が青少年の年齢を知っていた場合の罰則規定、条例二六条の二が過失によりその年齢を知らなかった場合の罰則規定となるものではない。したがって、被告人が青少年の年齢を知っていたものとして起訴され、その成否が争点とされて公判審理がなされている本件のような場合においては、犯情を明らかにする意味でも、これを判決中で明らかにすることが望ましいことはいうまでもないが、本罪の罪となるべき事実としては、被告人が青少年の年齢を知っていたか、あるいは過失によりこれを知らなかったかを判示することが法律上要求されているものではなく、また、被告人が過失により青少年の年齢を知らなかった場合の罰条についても、条例二四条二号、一四条一項のみを挙示すれば足り、むしろ、二六条の二は挙示すべきではない。したがって、これらの点について原判決に理由の不備ないし食い違いがあるという前記〈2〉及び〈3〉の所論は採用できない。
 次に、〈1〉の所論についても、以上に説示したような本条例の規定の構造、すなわち、被告人が青少年の年齢を知っていた場合も、過失によりこれを知らなかった場合も同一法条により処罰されるものであり、かつ、その法定刑も同じであることからすると、本件のように、被告人が、A子が一八歳未満であることを知っていたとして起訴された場合であっても、検察官において、被告人が過失により年齢を知らなかったときは起訴しない趣旨である旨の釈明がなされるなど、被告人の防禦に実質的な不利益を及ぼすと認められるような事情がない限り、訴因の変更手続を経ることなくその旨認定して有罪の判決をすることができるものというべきである。