青少年条例によっては、「わいせつ行為」として裸体撮影行為を処罰するものもあるんですが、そうなると3項製造罪(姿態とらせて製造)と競合します。その場合、観念的競合になるのではなく、条例違反罪は成立しないということです。
と考え始めたのですが、事案にそぐわないのでボツになった主張です。
条例との関係をよく考えていない法律なので、条例違反罪と併せて起訴された場合には、一応、チェックする必要があります。
児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律附則2条は条例との関係について次のように定める
児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律
附則
(条例との関係)
第2条 地方公共団体の条例の規定で、この法律で規制する行為を処罰する旨を定めているものの当該行為に係る部分については、この法律の施行と同時に、その効力を失うものとする。児童買春罪にしろ、児童ポルノ製造罪にしろ、法律上犯罪とされる行為と、条例上犯罪とされる行為が重複する場合には、条例は無効となる。
ところで、性行為(児童淫行罪・青少年淫行罪)−撮影行為(3項製造罪)が社会見解上一個の行為とすれば、法律上の3項製造罪(姿態とらせて製造)と条例28条2項違反の罪は重複するから、条例違反罪は成立しない。
条例違反罪を認めた原判決には法令適用の誤りがあるから破棄を免れない。
条例が撮影行為をも含むとされていることから、3項製造罪(姿態とらせて製造)が成立する場合の条例の効力を問題にするものである。
条例違反行為の際の撮影行為が児童ポルノ製造罪とされている。ところろで、児童ポルノ・児童買春法7条3項と2条3項を合わせてよむと、3項製造罪(姿態とらせて製造)の構成要件はこうなる。
第7条(児童ポルノ提供等)
3 前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態すなわち、
一 児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態
二 他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
三 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第一項と同様とする。このうち、
児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態をとらせ
というのは、性交又は性交類似行為を行いながら撮影することに他ならない。児童淫行罪と観念的競合と評価されるゆえんである。
また、二 他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態をとらせ
というのは、児童の性器等に接触しながら撮影する・児童に性器を触らせながら撮影することに他ならない。
他方、青少年健全育成条例の関係では、禁止されている行為は性行為(性交又は性交類似行為)とわいせつ行為であるところ、例規によれば「裸にして陰部等の写真を撮る行為」は、「わいせつ行為」と評価されるのである。
http://www.police.pref.osaka.jp/01sogo/law/images/seian/seian_540123600074.pdf
青少年健全育成条例の運用について
昭和60年12月26日
例規(少)第74 号
(4) 「わいせつな行為」とは、性器に対して指で触れる行為、女性の乳房をもてあそぶ行為、裸にして陰部等の写真を撮る行為、人前で全裸にしたり陰部を露出せしめる行為等いたずらに性欲を興奮又は刺激せしめ、かつ、露骨な表現によつて、健全な常識のある一般人に対し、性的にしゆう恥嫌悪の情を起こさせる行為等をいう。さらに、威迫・困惑させるという行為は、威迫・困惑させ「姿態をとらせる」行為には「とらせる行為」と重複する。
青少年健全育成条例の運用について
昭和60年12月26日
例規(少)第74 号
ア「威迫し」とは、暴行又は脅迫に至らない程度の言語、動作、態度等により心理的威圧を加えて相手方に不安の念を抱かせ、自由な判断力を低下させることをいう。
イ「困惑させて」とは、借金の返済を厳しく迫つたり、雇用関係、職場における上司と部下の関係等の特殊な関係を利用して義理人情の機微につけ込むことなど、心理的な圧迫を加え、精神上の自由な判断力を低下させることをいう。3項製造罪(姿態とらせて製造)の構成要件のうち、
児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態をとらせ
というのは、性交又は性交類似行為を行いながら撮影することに他ならないし、また、
二 他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態をとらせ
というのは、児童の性器等に接触しながら撮影する・児童に性器を触らせながら撮影することに他ならない。青少年健全育成条例の関係では、禁止されている行為は性行為(性交又は性交類似行為)とわいせつ行為であるところ、例規によれば「裸にして陰部等の写真を撮る行為」は、「わいせつ行為」と評価されるのである。
さらには、威迫・困惑とは姿態をとらせる行為に他ならない。
そうであるならば、威迫・困惑により性交し撮影する場合には、3項製造罪(姿態とらせて製造)とされる行為と青少年条例違反とされる行為は完全に重複する。
使えないかなあ。