児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

提供罪で公判請求され罰金120万円とした事例(さいたま地裁H18.11.28)

「幼児」なんですね。
 何をやったのかはわかりませんが、公判請求(懲役求刑)事案で罰金刑というのは珍しいですね。
 グループの製造犯(強制わいせつなど)とのバランスはどうなんでしょう?

http://mytown.asahi.com/saitama/news.php?k_id=11000000611290001
 被告は「『炉(ロ)』送って」と被告からわいせつ画像の提供を求められたという。『炉』は「ロリータ」を意味する児童ポルノの隠語で、2人はこうした隠語を使い互いに画像をやりとりしていたとされる。
・・・・・
一方、児童ポルノの映像データを送ったとして同法違反(提供)の罪に問われた被告の判決公判が同地裁で同日あった。
 今岡健裁判官は「幼児の人権を顧みない悪質な犯行」と述べ、被告に罰金120万円(求刑懲役1年)を言い渡した。

追記
 提供目的を否認した事例をみると、将来的・未必的でも認定されています。趣味の目的だというのは否定にならないそうです。
 未来永劫他人に提供するつもりはないという意思がないとだめという感じです。ネットで流すのは極めて容易なので、なかなか難しいです。

阪高裁 平成14年9月10日
論旨は,被告人には,販売目的がなかったのに,被告人が販売目的で児童ポルノを製造したと認定し,児童ポルノ製造罪の成立を認めた原判決には,判決に影響を及ぼすことの明らかな事実の誤認がある,というものである。
しかしながら、
・・・の仕事は体力的にもきつく長く続ける仕事ではないとの思いもあって,児童ポルノを撮ってそれが販売できれば,趣味と実益を兼ねて,今の仕事よりいい収入が得られるので将来的にこれを仕事にしようと考えるようになったこと,
・・・ことなどの事実をも考えあわせると,被告人に販売目的があったことは明らかであり,・・・被告人がその趣味のために児童ポルノを撮影する意図もあったことは上記販売目的を否定することにはならない。その他所論が被告人には販売目的はなかった理由としてるる主張するところを検討してみても,原判決に事実誤認はない。論旨は理由がない。

阪高裁H12.10.24
 所論は、①法二条三項二号、三号は、児童ポルノとして規制の対象とされる児童の姿態の描写について、いずれも「性欲を興奮させ又は刺激するもの」という要件を設けてこれを限定しているが、性欲を興奮させ又は刺激するものであるかどうかを通常人が客観的に判断することは難しく、その判断基準は曖昧である。また、右の要件を、刑法上のわいせつの概念である「いたずらに性欲を興奮又は刺激せしめ、かつ、普通人の性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するもの」という要件と対比すると、「いたずらに」という限定がないため、表現が性的に過度であることが要件とされておらず、規制の対象が広がっている。これらの点において、法二条三項二号、三号は、表現の自由に対する過度に広範な規制をするものであって、憲法二一条に違反する。②また、法二条三項二号、三号にいう「性欲を興奮させ又は刺激するもの」か否かを客観的に判断することは困難である。通常人は、児童の裸体等に性的興奮を覚えたり、それから刺激を受けたりしないのであるから、通常人を基準としてこれを判断するのであれば、児童ポルノに当たるものはなくなるし、また、子供の性に対して特別に過敏に反応する者を基準としてこれを判断することは、通常人を名宛人とする法規範の解釈としては許されない。したがって、「性欲を興奮させ又は刺激するもの」か否かの判断基準が明確ではないのに、これを要件とする法二条三項二号、三号は、漠然として不明確な規定であるから、憲法二一条に違反するものであり、かつ、刑罰法規の明確性を要請する「憲法三一条にも違反するものである、という。
しかし、わいせつ物頒布等の罪を規定した刑法一七五条は、社会の善良な性風俗を保護することを目的とするものであるから、同条におけるわいせつの概念としては、普通人の性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するほどに著しく性欲を興奮、刺激せしめることを要するとされるのに対し、児童ポルノ法は、すでに前記2等において説示したとおり、児童ポルノに描写されることの害悪から当該児童を保護し、ひいては児童一般を保護することを目的とするものであるから、著しく性欲を興奮、刺激せしめるものでなくとも、児童ポルノの児童に与える悪影響は大きく、したがって処罰の必要性が高いと考えられること、すなわち、両者の保護法益ないし規制の対象に自ずから相違があることなどに照らすと、所論の指摘するところを考慮しても、法二条三項二号及び三号が、表現の自由に対する過度に広範な規制をするものとはいえないし、また、わいせつの概念が所論①のようなものであるにもかかわらず、刑法一七五条が憲法二一条及び三一条に違反するものでないとされていること(最高裁判所昭和五八年一〇月二七日判決刑集三七巻八号一二九四頁、同昭和五四年一一月一九日決定刑集三三巻七号七五四頁等参照)などからしても、法二条三項二号及び三号が、漠然として不明確な規定といえないことは明らかである。

阪高裁H14.9.12
論旨はまず,(1)「性欲を興奮させ又は刺激するもの」の判断は,一般人を基準とし,(2)これに当たるには,その内容が「露骨な描写」であることを要するとする原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の解釈適用の誤りがある,というのである。しかしながら,(1)の点については,原判決の基準は正当である。つまり,「性欲を興奮させ又は刺激するもの」と感じる者が多数いると考えられれば,それで足りる。また,(2)の点については,原判決は本件各写真集が「性欲を興奮させ又は刺激するもの」に当たる旨判示したにとどまり,所論のようなものであることを要するとはしていない。次いで,論旨は,被撮影者には五,六歳の児童もおり,このような児童の姿態は,どのようなポーズをとっても,一般人を基準とする限り,「性欲を興奮させ又は刺激するもの」に当たらないのに,これを肯定した原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認がある,というのである。しかしながら,本件各写真集に掲載された写真のうち,原判決が児童ポルノの要件を満たすと判断したものは,一般人を基準としても,いずれも「性欲を興奮させ又は刺激するもの」といえる。これらの論旨も理由がない。

 性欲刺激の判断は一般人基準だとしても、多数(2人以上?)いれば足りるようです。被告人ともう一人どこかにいればいいことになります。