児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

地裁で青少年淫行罪・家裁で児童淫行罪

 青少年淫行罪も、児童淫行罪っぽいですよね。
 裁判官が違うと、他方の事件も見えませんし、実刑にしても執行猶予にしても、併合の利益を奪われて、少し重めになるでしょう。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060804-00000075-mailo-l22
 教え子の女生徒らにわいせつ行為をしたとして児童福祉法違反と県青少年条例違反の罪に問われた教諭、被告(43)懲戒免職=の初公判が3日、静岡家裁(内山梨枝子裁判官)と地裁(三島琢裁判官)であった。被告は両起訴事実を認め即日結審。検察側はそれぞれ懲役2年と1年を求刑した。

 被告はその後も5〜6人の元教え子らと関係した。

 県条例違反罪の事件でも、被告は元教え子と在学中の04年1月から10月ごろまで関係を持った。

 家裁、地裁の別々の判決は、実刑の場合は刑期が加算される。

この事件では裁判官が違うので、一方が実刑、一方が執行猶予という最悪の結果もあり得ます。
 両事件の進行を2週間ずらすだけで、(後の判決の際に、前の判決を考慮させることができるから)こういう不都合は改善できるのに、どうして、こういう進行をするのかは疑問です。

追記
 だいたい、青少年淫行罪は1罪なら通常、罰金なのに、公判請求されて1年求刑されていることからは、家裁の児童淫行罪も視野に入れて求刑されてることが明らかです。逆に、家裁の児童淫行罪の求刑にも、地裁の青少年淫行罪が考慮されている。余罪というか、常習性というか、共通する児童に対する性犯罪傾向というかがオーバーラップして二重に評価されているのです。少年法37条の犠牲者で、お気の毒です。

http://www.shizushin.com/local_social/20060804000000000019.htm
被告の裁判が家裁と地裁に分かれたのは、法律が児童福祉法違反罪の一部について家裁への起訴を定めているため。判決は10日、同地裁と同家裁でそれぞれ言い渡される。
 仮に、両方が有罪の実刑判決ならば、被告は合計の刑期で収監される。共に執行猶予付きの判決ならば執行猶予に。判決が実刑と猶予刑に分かれた場合は、収監される。

教え子にわいせつ 家裁と地裁で初公判 元中学教諭に懲役2年と1年求刑=静岡
2006.08.04 読売新聞社
 少年法により、児童福祉法違反罪は家裁に起訴されるため、県青少年環境整備条例違反罪の地裁と別々に審理される珍しいケースとなった。判決公判はいずれも8月10日。

 大まかな計算ですが、東京高裁での運用を見ていると、別個の裁判所で同時に、懲役1年と2年が言い渡されたとすれば、適切な量刑は、併せて、懲役2年くらいになる。合計して1.5で割る。これが「併合の利益」。
 たとえ、両方執行猶予でも、取消される恐れを考えると、やはり、「併合の利益」は考慮しなければならない。
 
 さらに、一方が執行猶予、一方が実刑になると、実刑が確定した時点で執行猶予は取り消されるから、悲惨である。執行猶予の温情は仇となる。
 この場合は両方控訴して、両方執行猶予にするか、両方実刑(猶予付きの刑期についても、実刑の場合に準じて量刑してもらう)にするかしかない。

東京高裁H18.3.6

さらに,一般に執行猶予が付される場合の主刑は,執行猶予が取り消されたときには服役しなければならない刑の期間を示して,善行保持のための心理的強制の効果をねらうという趣旨から,実刑とされる場合よりもその刑期が長期とされるのが通例であり,原判決もそのような量刑を行っているものと考えられる。そして,原判決に付された執行猶予は,前記のとおり原判決後家裁事件について実刑判決が確定したことにより,刑法26条3号による取消しが見込まれるところ(昭和48年2月28日最高裁第1小法廷決定・刑集27巻1号80頁参照),この執行猶予が取り消される実質的な理由は,家裁事件と本件とが同時に審判されたならば,執行猶予の言渡は本来なかったという点に求められるものと解せられるから,当審における量刑判断に当たっては,家裁事件の刑期や原判決に付された執行猶予が取り消されることなどを念頭に置いた上,できる限り同時に審判された場合との権衡を失しないような配慮をするのが相当である。このような観点からすると,家裁事件についての確定控訴審判決が一審判決の量刑を見直すに当たり,本件について執行猶予の取消しが見込まれることを酌んでいる点を考慮したとしても,なお,本件の執行猶予判決の主刑については,相応に見直す必要があるものと考えられる(もっとも,現時点においては,既に家裁事件についての実刑判決が確定していることから,当審において執行猶予判決の主刑を見直す際に刑法25条1項を適用して執行猶予を付すことの可否が問題となる。ここでの執行猶予は,原判決が適法に付した執行猶予がその後の懲役刑の実刑判決の確定によっても不利益変更禁止の制限に拘束されて本件訴訟手続内では取り消すことができないことから付されるものにすぎず,実刑判決確定後の控訴審において新たな判断に基づいて,初めて付されるというものではない。このような場合における同項の「前に」とは,不利益変更禁止の制限に拘束されて本件訴訟手続内では取り消すことのできない適法な執行猶予の前に,すなわち,原判決言渡し前にという意味に解せられ,同項が適用される。なお,確定裁判が実刑判決の場合における余罪について,同項を適用して執行猶予を言い渡すことができない旨の最高裁判例(平成7年12月15日第3小法廷判決・刑集49巻10号1127頁)は,控訴審において実刑判決確定後に新たな判断に基づいて執行猶予を付した事案に関するものであって,本件に同項を適用することは上記判例に抵触しないものと解される。)。
以上の諸事情に前記の情状を併せ考慮すると,現時点においては,執行猶予付きの原判決の主刑の刑量を更に相応に減じることが正義に適うものと認められる(なお,所論は,原判決が未決勾留日数を算入していない点も不当である旨主張しているが,原審における未決勾留日数の多くは家裁事件のそれと重なっており,前記のとおり家裁事件において相応の日数が算入されているから,これを採用することはできない。)
よって,刑訴法397条2項により原判決を破棄し,同法400条ただし書を適用して更に次のとおり判決する。原判決記載のとおりの(罪となるべき事実)及び(証拠の標目)の後に,次の(確定裁判)の項を付加する。

追記
この事件の判決がほしいので、地裁に事件番号とか聞いたら、
   個人情報だから、訴訟関係人以外には教えられない
とのこと。
   静岡県青少年条例違反
   静岡地裁H18.8.10(3係 三島琢裁判官)
   被告人:・・・
まで報道されているのに、なぜ?

追記
結果は、実刑+執行猶予という最悪の結果でした。
http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20060810/1155196089