児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

当初公訴提起された事実と常習一罪の関係にあるとして、訴因変更により追加された事実につき、両事実に公訴事実の同一性がないと判断された場合に、裁判所がなし得る措置

 児童ポルノ罪の罪数に関して。

東京地方裁判所平成16年12月20日
公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為の防止に関する条例(埼玉県条例)、公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為の防止に関する条例(東京都条例)違反被告事件

四 訴訟手続について
 最後に、当審における訴訟手続について付言する。
 被告人は、当初判示第一の事実を公訴事実として起訴され、その後検察官から、判示第二の事実を訴因として追加する旨の訴因並びに罪名及び罰条の変更(以下「訴因等変更」という。)の請求があり、第一回公判期日において、裁判所は、弁護人の意見を聴いた上でこの請求を許可し、判示第一及び第二の各事実に関する証拠採用決定をしたが、第三回公判期日(被告人にとっては二回目の公判期日)に、前記訴因等変更許可決定を取り消し、併せて、判示第二の事実に関する証拠についてその採用決定を取り消す旨の決定をしたところ、検察官が、判示第二の事実を公訴事実とする追起訴を行ったため、弁論を併合した上で、第五回公判期日(被告人にとっては三回目の公判期日)において当該追起訴事件についての審理を行い、検察官が改めて請求した判示第二の事実に関する証拠を、すべて同意書面として採用した。
 判示各認定事実のような盗撮による常習的卑わい行為の場合に成立する各条例違反の罪の罪数については、公刊物上裁判例が容易には見当たらず、いまだ実務上の解釈が確立されていない状況にあり、かつ、適用される各構成要件が常習行為を加重処罰する趣旨のもとで「常習として」という共通の文言を用いていることからすれば、第一回公判期日の時点では、これらが常習一罪の関係にあるとする検察官の見解が成り立つ余地が相当程度にあったということができ、刑事訴訟法三一二条一項において、裁判所が、検察官の訴因等変更請求に対し、公訴事実の同一性を害しない限度において、これを許可しなければならないとされていることからすると、同期日の時点で訴因等変更許可の決定をした裁判所に罪数解釈に関する誤りがあったということはできないが、他方、その後の審理の結果、各罪が併合罪の関係にあると判断するに至った場合には、採り得る手段の一つとして、明文の規定はないが、従前の訴因等変更決定を取り消し、かつ、同変更決定に沿う証拠採用決定を取り消すことができることは、最高裁判所昭和六二年一二月三日第一小法廷判決(刑集四一巻八号三二三頁参照)の趣旨に照らして明らかである。