発売中のの法セミに結論に反対する評釈が出ています。
かすがい現象で科刑上一罪になることは認めたんですね。
奥村弁護士の場合、家裁事件に地裁事件を併合しろと求めたりしますので、権利濫用と言われる筋合いはありません。
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=04&hanreiNo=37738&hanreiKbn=03
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20090630110000.pdf
エ119号等事件は,上記1(1)イの合議体により審理および裁判をする旨の決定が取り消されて,別の裁判所によって審理された。平成20年2月18日の公判期日において,検察官が,この事件を本件非現住建造物等放火被告事件と併合して審理するよう請求したものの,弁護人が反対意見を述べ,この弁論併合請求は却下されて,論告,弁論等の後,被告人は,懲役1年2月,3年間執行猶予の有罪判決を言い渡された。そして,この判決は同年3月4日に確定した。
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(4) 刑事訴訟法337条1号は,「確定判決を経たとき」には,判決で免訴の言渡しをしなければならないと定めており,この確定判決の一事不再の効力は,前訴の公訴事実の同一性の範囲内の事実に及ぶものと解されている。前訴の119号事件の建造物侵入,窃盗の訴因(以下,この訴因については「119号事件」の表示を省略する)と後訴の本件非現住建造物等放火の訴因とを比較対照すると,犯行日および犯行場所が同一である両訴因が一罪ではないかという疑問が生じるのであり,それを契機として,関係証拠にも照らし実体的に判断するに,前訴の建造物侵入は,前訴の窃盗および後訴の非現住建造物等放火の手段であり,前訴の窃盗および後訴の非現住建造物等放火は,前訴の建造物侵入の結果であるという関係にあるということになる。そうすると,これらの両訴因が,前訴の建造物侵入をいわゆるかすがいとして一罪の関係にあり,公訴事実の同一性が認められることは,所論の指摘するとおりである。
しかし,本件の審理経過等をみると,前訴である119号等事件と後訴である本件非現住建造物等放火被告事件とは,もともと弁論が併合されていたにもかかわらず,弁護人の請求により,原裁判所が弁論を分離し,その後の前訴の審理においても,検察官の弁論併合請求が却下されたため,両者は別々に審理されて判決を言い渡されたという経緯がある。弁護人は,弁論の分離を請求して以後,一貫して,両者の弁論を分離して別々に審理することを求めていたのであるから,その時点では,両者を分離し,そのそれぞれについて審理がなされて判決が言い渡されることを当然の前提としていたと考えられる。そして,本件非現住建造物等放火被告事件の公判手続更新の状況や,第9回公判期日における弁論の内容,弁論再開後の第10回公判期日において,初めて一事不再理の効力に関する当事者の意見が述べられていることなどに照らすと,弁護人は,本件非現住建造物等放火被告事件について,判決で有罪無罪の判断が示されることを求めていたのであって,119号等事件との弁論の分離を請求した時点においてはもとより,第9回公判期日において弁論が終結された時点においても,一事不再理の効力を主張して免訴を求めることを全く考えていなかったことは明らかである。それにもかかわらず,前訴につき言い渡された有罪判決が先に確定したからといって,後訴において,前訴の確定判決の一事不再理の効力を主張して免訴を求めるのは,権利の濫用というほかなく,弁論の分離を請求した弁護人の意図がどのようなものであったかにかかわらず,刑事訴訟規則1条2項の法意に照らし許されないというべきである。加えて,前訴の窃盗の訴因と後訴の非現住建造物等放火の訴因とは,かすがいである前訴の建造物侵入の訴因を介しなければ,本来的には併合罪の関係にあり,前訴の建造物侵入の訴因と後訴の非現住建造物等放火の訴因とは,牽連犯として科刑上一罪の関係にあるものの,本来的には別罪であること,一事不再理の効力が前訴の公訴事実の同一性の範囲内の事実に及ぶと解されている法的根拠については,前訴の公訴事実の同一性の範囲で,潜在的に審判の可能性があったことや被告人が危険にさらされたことに求める見解が有力であるが,いずれの見地に立って検討しても,上記のとおり,弁護人が,前訴の建造物侵入,窃盗の訴因と後訴の非現住建造物等放火の訴因とを分離して別々に審理し,判決の言渡しを受ける途を敢えて選択したことなど,本件の事実関係の下では,両訴因が公訴事実の同一性の範囲内にあったとしても,実質的にみて,前訴の確定判決の一事不再理の効力を後訴に及ぼすべき場面であると解することはできない。