そんな写真撮ったらあかんというのが児童ポルノ製造罪なのに、警察官まで「製造」してしまった事例。確かに違法だが証拠能力はあるという
大阪府警はこれで警察庁長官賞。
大阪高裁平成14年9月10日
③ 原判決は,警察官作成の捜査報告書(「被害児童の発見並びに氏名,年令の特定について」と題する書面,原審検甲7号証)の同意部分を本件の罪証に供しているが,上記捜査報告書を作成するにあたっては,被害児童を上半身裸で取り調べたり,その承諾なく同女の上半身裸の写真を撮影するなど性犯罪被害者に対する配慮を欠いた捜査が行われており,また,この写真撮影は,カンボジア警察の承諾がないのに,わが国の警察官が強制処分として,同国の主権を侵害して行ったものであるから,上記捜査報告書は,証拠の収集過程に違法があるため証拠能力がなく,その違法の程度の重大さからして,原審において弁護人が刑事訴訟法326条1項の同意をしているとしても,証拠能力を認めるのは相当でないのに,これに証拠能力を認めて罪証に供した点において(控訴理由第11),原判決には,判決に影響を及ぼすことの明らかな訴訟手続の法令違反がある
(中略)
③については,当時大阪府警察本部生活安全部少年課所属の警察官で,本件捜査のためカンボジアに渡ったYの原審証言によれば,カンボジアでの捜査はICPOを通じてカンボジア政府とプノンペン警察本部の了承と協力の下に行われ,被害児童からの事情聴取はプノンペン警察本部外国人課の係官が担当して供述調書を作成したこと,Yは事情聴取の冒頭部分に通訳人と共に立ち会ったが,被害児童が上半身裸であったため,係官に何か着せるように申し入れたところ,係官から日常生活がこのような姿なのでこのままでかまわないとの説明があっためそのまま事情聴取が行われたこと,Yは,被害児童を特定するため同女の写真撮影をしたが,その際,同女の明確な承諾は得ていないことが認められる。
以上によれば,Yらのカンボジアでの捜査は同国の主権を侵害して行われたとはいえない。また,被害児童に対する事情聴取は被害児童に対する保護についての配慮を欠いたものとはいえないし,写真撮影も,被害児童の保護者や被害児童本人の承諾を得ていなかったとしても,写真の証拠能力に影響をするほどの違法とはいえない。従って,上記捜査報告書には証拠能力が認められる。
以上のとおり,所論はいずれも採用できず,原判決の訴訟手続に法令違反はない。
論旨は理由がない。