児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

刑事確定訴訟記録の閲覧請求はむずかしい

 「同種事件の弁護人」というのでも抵抗されます。
 ある保管検察官は、当職が「同種事件の弁護人」でなくなるまで開示・非開示の決定をしないという態度でしたが、被告人が交替してもいつまでたっても「同種事件の弁護人」なので、諦めて開示した。
 被告人の名前も消されますから。報道されていても。

なかには、罪名と裁判所の事件番号だけがわかっている場合に
    罪名+裁判所の事件番号では事件が特定できない
    検番を特定しないと開示しない
という保管検察官もいますね。
 準抗告すれば一発ですね。裁判所が記録を見れば、検番も被告人氏名もわかりますから、その時点で特定され、非開示理由が失われる。

平成15年(む)第143号
決定
申立人弁護士奥村徹
上記申立人がした刑事確定訴訟記録の閲覧請求に閲し,平成15年4月14日横浜地方検察庁川崎支部検察官がした閲覧不許可処分に対し,同年7月25日上記申立人から準抗告の申立てがあったので,当裁判所は,次のとおり決定する。
主文
被告人Sに対する児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護琴に関する法律違反等被告事件(横浜地方裁判所川崎支部平成12年(わ)第310号等,東京高等裁判所平成12年(う)第2460号)に係る刑事確定訴訟記録につき,平成15年4月14日に横浜地方検察庁川崎支部検察官が申立人に対してした閲覧不許可処分中,第1審判決書,控訴審判決書についての閲覧不許可処分を取り消す。
上記検察官は,申立人に対し,上記各判決書について,被告人(氏名を除く),被害者,関係者等の氏名等の固有名詞,犯罪地等の住所地番などに仮名処理を施すなどした上で,これを閲覧させなければならない。
理由
本件申立ての趣旨及び理由の要旨は,申立人作成の準抗告申立書記載のとおりであるから,これを引用する。
1 本件に関する経過及び当事者の主張は次のとおりである。
(1)申立人は,平成15年4月4日,横浜地方検察庁川崎支部保管検察官に対し,前記被告人Sに対する児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反等被告事件(横浜地方裁判所川崎支部平成12年(わ)第310号等,東京高等裁判所平成12年(う)第2460号)(以下「本件事件」という)の刑事確定訴訟記録中,被害者,被告人のプライバシーに関する部分についての配慮を求めた上で第1審起訴状,冒頭陳述書,論告要旨,弁論要旨,判決書及び控訴審における控訴趣意書,答弁書,判決書の閲覧並びに第1審及び控訴審判決書の謄写を請求した。
その理由の要旨は,申立人が,事件名を同じくする刑事事件の控訴審弁護人として職務を遂行するに当たり,立証活動の参考にするため類似事案を検討したいというものであった。これに対し,同支部検察官は,同月14日付けで請求の全てについて不許可としたことから,申立人は,主文掲記の範囲について準抗告の申立てをし,その理由として,前記の理由に付加して,同種事件名の弁護人として,その職務に関し,本件事件の保護法益等に関する判示,量刑理由を参照したいこと及び申立人自身が児童買春等に関する法律の研究をしており,その研究資料としたいからであるとしている。
(2)他方,同支部検察官は,申立人の閲覧及び謄写の請求が刑事確定訴訟記録法4条2項3号ないし5号に該当することを理由として,前記のとおり不許可としたが,その詳細は,刑事確定訴訟記録法4条2項3号該当事由については,本件犯行態様等に照らし,保管記録の閲覧をさせた場合には,卑劣な犯行の手段,方法,態様等を公にすることにもなりかねず,公の秩序又は善良の風俗を害することとなるおそれがあるとし,同項4号該当事由については,本件犯行当時の状況等に照らすと,保管記録の概要等が公刊物に掲載されるなどして公表されただけで,元被告人の氏名等を伏せたとしても,その犯行であることが一般人に了知される状況にあり,元被告人の改善及び更生を著しく妨げることとなる虞があるとし,同項5号該当事由については,被害児童の氏名等を伏せたとしても,前記のとおり本件が元被告人の犯行であることが一般人にも了知される状況にあるから,保管記録を閲覧させた場合には,被害児童及びその関係者にとって被害児童が関係していることが判然としている事案が公刊物等に長く掲載される事態が生じかねず,関係者の名誉又は生活の平穏を著しく害する虞があるとし,さらに申立人が同種事件弁護人であるとしても,本件記録には量刑等について申立人主張のような申立人にとって参考になる記載はなく,また閲覧目的が研究目的であるとしても,直ちに閲覧について正当な理由があることにはならないから,結局,申立人について閲覧についての正当な理由もないとしている。
2そこで,検討するに,申立人が準抗告の対象としているのは,第1審及び控訴審の判決書の閲覧についてのみであるところ,終局裁判の裁判審の閲覧は,その性質に照らし,それ以外の保管記録の閲覧に比して同項3号ないし5号に列挙する制限事由に当たる場合が類型的に見て少ないと考えられる上,終局裁判の裁判書は国家の刑罰権の行使に関して裁判所の判断を示した重要な記録であって,裁判の公正担保の目的との関係においてもこれを一般の閲覧に供する必要性が高いといえる(刑事確定訴訟記録法4条2項本文参照)。さらに本件申立てに係る判決書について検討するところ,その申立てが判決書の閲覧に際し,被告人の身上や被害者の人定に関する部分は除くことを前提にしていることを踏まえると,被告人,被害者の氏名等固有名詞や犯罪地などの住所地番を仮名処理等することによって,本件申立に係る判決書申の犯罪事実等の記載内容をある程度一般化,抽象化することは可能であるから,かかる配慮をした上でこれらの閲覧を許可したとしても,検察官の主張するような事態が生じるとは認められず,刑事確定訴訟記録法4条2項3号ないし5号に該当する事由があるとは認められない。よって,本件申受ては理由があるので,刑事確定訴訟記録法8粂,刑事訴訟法430条1項,432条,426条2項により,主文のとおり決定する。
平成15年8月14日横浜地方裁判所川崎支部