児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

プロバイダーの刑事責任 間接正犯・故意ある幇助道具説

 また、説を変えました。
 これで、東京高裁H16.6.15を批判してまとめよう。
 作為犯として評価するという点は維持。自然的に見れば作為じゃん。

 しかし、刑法総論は弱いので、近日改説予定。
 賍物運搬とか寄蔵罪の知情の後と同視するのはやめた、賍物罪は、本犯の事後従犯的な特別規定だから。

(7)まとめ
 各裁判例では、違法情報の投稿や上演という発信者の行為が行われた場合、管理者の責任を論じるにあたっては、溯って発信者の行為に到るまでの掲示板や劇場の維持管理行為(作為)までに着目して、作為犯としての刑事責任を論じていることがわかる。

5 私見
(1)刑法的評価の対象とされるべき行為
 しかし、最初に違法情報を掲載した者が掲載した時点で正犯となるのは疑いないところであって、確かにプロバイダーが提供する情報伝達作用に違法情報が載せられる可能性はあるにはあるが、他人が実際にこのような犯罪行為に及ぶことは通常予想できないから、プロバイダーの維持管理行為だけでは、他人により違法情報が掲載される現実的な危険性(実行行為性)は認められない。
 また、犯罪を構成するような情報が掲載されない段階での情報伝達作用は、表現の自由・通信の秘密で保障されるまさに合法な行為であるから、判例のようにその点を作為の実行行為と評価することは許されない。
 したがって、プロバイダーが責任を問われるとしても、あくまでも違法情報の存在を認識・認容した時点よりも後の行為である。

(2)正犯か従犯か?
 通常の中立的プロバイダーの場合、発信された違法情報が維持・拡散されるのは、プロバイダーが提供する情報伝達作用によるのであるから、発信者は、あたかも情を知らない郵便配達人を介して、違法な情報を流布しているのと同様の構造であって、プロバイダーは、間接正犯における「被利用者」である。プロバイダーが情を知った場合に考えられる責任は、「故意ある幇助的道具」としての従犯責任である。
 実質的に考えても、通信の秘密の要請や物理的限界により内容を常時監視し、発見即時に削除することは不可能であるという意味で、流通する情報については第一次的責任を負うのは発信者でって、プロバイダーの責任は副次的である。
 正犯の既遂時期の関係でも、発信者における名誉毀損罪等は、情報の発信時点で既遂となっており、仮にプロバイダーが故意に違法情報を放置したとしても、それは正犯者である発信者の発信行為による結果に他ならないから、もはや正犯とはなり得ない。

(3)従犯となる要件
 問題は、プロバイダーが違法情報の存在を知ったら、即、従犯になるのかであるが、・・・