刑法各論の新展開(7) 盗撮と名誉毀損罪/木村 光江(東京都立大学法学部・大学院社会科学研究科教授)
1問題の所在
名誉毀損罪の保護法益は、その人に対して「社会が与える評価としての外部的名誉」でぁるとされる(1)。このような名誉の意義について、注目すべき判断を示したのが、東京地裁平成14年3月14日判決(公刊物未登載)である。貫天風呂に入浴中の女性を盗撮し、編集したビデオテープを多数作成し、これを書店、ビデオ販売店の店頭に陳列させた行為
につき、名誉毀損罪の成立を認めた。人が入浴すること自体は「社会が与える評価」とは無関係であるから、このような行為を名誉毀損罪で捉えることは、新しい動きであるといぇよう。