winmxによる違法画像の交換・共有については、
「わいせつ画像データを,電気通信回線を経由し,同プログラムの機能を使用して同コンピュータにアクセスしてくる不特定多数のインターネット利用者が受信して再生閲覧することが可能な状態とし,そのころ,同コンピュータにアクセスしてきた不特定のインターネット利用者に対して同わいせつ画像データを送信して再生閲覧させ」とされたり(札幌簡裁)、
「『WinMx』を利用して電話回線等を通じて同コンピュータのハードディスクにアクセスしてくる不特定多数のインターネット利用者が上記画像ファイルをダウンロードして復元し画像を閲覧することができる状態にし」とされたり(甲府地裁)するわけですが、
「頒布罪・販売罪」との関係上、「陳列罪」というのは、本来「見せるだけ」の犯罪であるにもかかわらず、この場合は、もとの児童ポルノ・わいせつ画像が「画像データ」として存在していて(それ以外では存在しない)、受信者は、そのデータを丸ごと複写して手に入れており、実質的には、頒布行為が行われて、頒布罪が実現されています。
行為としては、陳列罪を超えて、実質的には頒布罪、しかし、客体と占有移転の点で、頒布罪は成立しないから、陳列罪のみで擬律する。
陳列のようで陳列でない、ベンベン
頒布のようで頒布でない、ベンベン
それは何かと尋ねたら、「ファイル共有(交換)」
と書いて理解できる人も少ないと思うのですが、どうもしっくりしないという話です。
http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20040522#1085207098
- 札幌簡裁h16.1.30
公訴事実
被告人は,自己のパーソナルコンピュータによりインターネットを利用していたものであるが
1 平成15年12月3日午後5時22分ころから同日午後6時2分ころまでの被告人方において,他のインターネット利用者のコンピュータとファイルの共有を可能とするコンピュータプログラムである「WinMX」を利用して,自己の前記パーソナルコンピュータの記憶装置であるハードディスク内の指定フォルダ内に記憶・蔵置させた男女の性器等を露骨に撮影したわいせつ画像データを,電気通信回線を経由し,同プログラムの機能を使用して同コンピュータにアクセスしてくる不特定多数のインターネット利用者が受信して再生閲覧することが可能な状態とし,そのころ,同コンピュータにアクセスしてきた不特定のインターネット利用者であるsに対して同わいせつ画像データを送信して再生閲覧させ,もってわいせつ物を公然と陳列し
2 同月4日午前9時4分ころから同日午前9時6分ころまでの間,同県m警察署において,前同様の方法により前記パーソナルコンピュータを用いて,男女の性器及び性交場面を露骨に撮影したわいせつ画像データを不特定多数のインターネット利用者が再生閲覧することが可能な状態とし,そのころ,同コンピュータにアクセスしてきた前記sに対して同わいせつ画像データを送信して再生閲覧させ,もってわいせつ物を公然と陳列したものである。
第1 罪となるべき事実
1 被告人は,A子(生年月日)にふられたことを根にもち,そのしかえしとして,コンピュータのファイル共有(交換)ソフトウェアである「WinMx」を使用して,同人の性交又は性交類似行為を写した画像を不特定多数の者に閲覧させることをくわだてた。そして,平成13年10月27日ころ,被告人方において,A子が18歳にみたない児童であることを知りながら,同人による性交又は交類似行為に係る同人の姿態を写した画像12枚を含む画像合計14枚分のファイルに「現役高校生A子(15歳)」などとタイトルをつけてこれを自分のパーソナルコンピュータのハードディスクに記憶,蔵置させたうえ,「WinMx」を起動してこれらのファイルの共有設定をした。こうして被告人は,そのころから平成14年1月中旬ころまでの間「WinMx」を利用して電話回線等を通じて同コンピュータのハードディスクにアクセスしてくる不特定多数のインターネット利用者が上記画像ファイルをダウンロードして復元し画像を閲覧することができる状態にし,もって,児童ポルノを公然と陳列するとともに公然と事実を摘示してA子の名誉を毀損した。