児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

被害青少年(14)が、被疑者と結婚の相談をしていたにもかかわらず「結婚なんてあり得ない。被疑者は私の体目当てで付き合っていただけ。」などと供述した事例

 親にバレちゃうと、そうなるものです。
 奥村が経験した事件でも、数件の淫行があって、警察が青少年条例違反で捜査して、略式起訴されて、罰金払えないので正式裁判になったところで、全部の淫行について強制性交の告訴が出たことがあります。
 検察官請求証拠は青少年条例違反で出来上がっていて、暴行脅迫の証拠がないので、強制性交罪であれば無罪(青少年条例違反も不成立)になるので、被告人・弁護人は強制性交への訴因変更を希望しましたが、検察官から「取下させますから」という連絡があり、検察官が被害者を説得して、告訴取下となり、青少年条例違反で罰金になりました。

研修(平31. 4, 第850号)北から南から
新任検察官奮戦記 加藤由衣検事
3被害者の本音2つ目は,青少年保護育成条例違反の事件です。
この事件は, 中年男性の被疑者が, 当時14歳の女児と性交し,青少年育成条例で罰則規定のある「青少年とのみだらな性行為」(結婚を前提としない単に欲望を満たすためのみに行う性行為)に及んだとして逮捕された事案でした。
被疑者は,女児と性交したことは認めるものの,結婚を前提に交際する中で性交したのであって,単に欲望を満たすためではない旨供述し,「みだらな」該当性を否認していました。
一方,女児は,警察の取調べで「結婚なんてあり得ない。被疑者は私の体目当てで付き合っていただけ。」などと供述しており,私自身も,被疑者と女児には二回り以上の年の差があり,女児は結婚を具体的に考えられる年齢でもなかったこと等から,結婚を前提とした交際は考えにくく,被疑者の弁解を排斥して起訴する方針で検討していました。
しかし,捜査を進めていくと,被疑者と女児のメッセージのやりとりの中には,結婚の時期や,子どもの人数や名前の相談, また,被疑者から女児に対して,女児の気持ちの準備ができるまで性交を待つことを伝えるなどのメッセージが確認され, さらに,女児が, 当初「被疑者は真剣に付き合っている彼氏だから捕まえないでほしい。」などと言っていたこと等が明らかになりました。
私は,警察の取調べでの女児の供述に何となく違和感を覚え,処分方針に悩み,指導担当検事に相談したところ,指導担当検事から, 「自分で直接確かめないと処分は決められない。女児が本心ではないことを話したのだとしたら, どうしてなのか, どうしたら本心を話してくれるのか考えて,取調べをしたらどうか。」といった御指導をいただき,女児の取調べを行うことにしました。
女児の取調べの前に,女児の生活環境等について捜査を行うと,女児が親と不仲であったことや,女児の供述は本件発生後に親と接触してから一変したこと等が明らかになり, これらの事情から,女児が,親の顔色をうかがって供述を変遷させた可能性が出てきました。
女児からどのように話を聞くか悩みましたが,女児の立場だったら,話が親に伝わることを危愼すると思い,女児に対しては, 聞いた話を親に報告することはしないと伝えた上で,話を聞くことにしました。
すると,女児は,取調べで,被疑者に対する正直な思いを語ってくれました。
女児の供述は変遷したわけですが, その理由は,予想していた内容に近い,納得できるものでした。
私は,女児の話を聞いて附に落ちる感覚があり,最終的な処分は,青少年保護の観点等からよくよく悩みましたが,不起訴処分としました。
この事件を通じて,供述に違和感を覚えたら, なぜその人がそのような供述をするのか想像力を働かせ, どうしたら本当のことを話してもらえるかを検討することの重要さと難しさを学びました。

青少年ABに対するわいせつ行為を包括一罪とした事例(和歌山地裁h29.8.31)

 社会的法益だから、個人にこだわらないということでしょうか。

TKC
和歌山地方裁判所平成29年8月31日和歌山県青少年健全育成条例違反被告

       判   決
 上記の者に対する和歌山県青少年健全育成条例違反被告事件について,当裁判所は,検察官氷室隼人及び私選弁護人前畑壮志各出席の上審理し,次のとおり判決する。


       主   文

被告人を懲役1年6月に処する。
この判決が確定した日から3年間その刑の執行を猶予する。


       理   由

(罪となるべき事実)
 被告人は,平成29年5月23日,和歌山市■の■中学校■において,
1 ■(当時13歳。以下「被害者A」という。)が18歳に満たない青少年であることを知りながら,同日午後1時頃から同日午後3時30分頃までの間に,専ら自己の性欲を満たす目的で,同人に対し,背後から,手をその乳房に押し当てて弄び,
2 ■(当時13歳。以下「被害者B」という。)が18歳に満たない青少年であることを知りながら,同日午後1時頃から同日午後5時頃までの間に,専ら自己の性欲を満たす目的で,同人に対し,背後から,手をその乳房に押し当てて弄び,
もって,それぞれ青少年に対し,わいせつな行為をした。
(証拠の標目)《略》
(法令の適用)
1 罰条 包括して和歌山県青少年健全育成条例33条1項,26条1項(判示の各わいせつ行為は,同一の犯行場所において犯行時刻を一部重なり合って行われたものであるから,包括一罪として処理)
2 刑種の選択 懲役刑を選択
3 刑の執行猶予 刑法25条1項
(量刑の理由)
 本件は,被告人が,被害者らが18歳に満たない青少年であることを知りながら,同被害者らの背後から手を乳房に押し当てて弄んだという和歌山県青少年健全育成条例違反の事案である。その態様は,当時中学校教師であった被告人が,被害者ら生徒のために開いた補習授業において,解答の誤りを指導する口実で各被害者の肩に触れた際に,胸元まで手をまわして乳房に押し当てるというものであって,教師の立場を利用した悪質なものである。
 その上,被告人は,平成29年3月下旬頃から同様のわいせつ行為を繰り返す中で本件犯行に及んでいる。本件犯行当時、被告人が過重労働状態にあったことはうかがわれるものの,初めてわいせつ行為に及んだ後に自省する機会があったにもかかわらず,被害を受けた生徒が抵抗や被害申告をしないことに乗じて,その後も自己の性的欲求を満たすため同様の行為を繰り返して本件犯行に及んでいるのであるから,本件犯行は卑劣というほかなく,経緯にもさほど酌むべき点があるとはいえない。
 また,被害者のうち1名は,本件犯行の発覚後に欠席日数が増えるなど,本件犯行が当時中学2年生の青少年である被害者らの心身に与えた影響は計り知れず,当然のことながら,被害者らやその母親らはいずれも厳しい処罰感情を有している。 
 以上によれば,被告人の刑事責任は軽視できるものではなく,懲役刑をもって臨むほかない。
 しかしながら,他方において,被告人には,事実関係を認めた上,公判廷においても被害者らに対する謝罪の意思を表明するなど反省の態度を示していること,本件により懲戒免職処分を受けるなど一定の社会的制裁を受けていること,被告人には前科前歴がないことなど,被告人にとって酌むべき事情も認められる。
 そうすると,被告人を今直ちに刑務所に送ることにはいささかためらいを感じる面があることを否定できないから,当裁判所は,以上の諸事情を総合考慮して,被告人に対しては,主文の懲役刑を科してその刑事責任の重さを明らかにした上,今回に限りその刑の執行を猶予し,社会内で更生する機会を与えるのが相当であると判断し,主文の刑を決めた次第である。
 よって,主文のとおり判決する。
(検察官求刑-懲役1年6月)
平成29年8月31日
和歌山地方裁判所刑事部
裁判官 奥山浩平

盗撮犯人が複製した場合は、ひそかに製造罪。盗撮してない者が盗撮画像を複製するのはひそかに製造罪には当たらない(名古屋高裁h31.3.4)

 7条5項の製造罪って複製も含むようです。
 児童ポルノ写真集とかビデオでこっそり複製するのも含むように読めますが、そうではない・盗撮で撮影した者が自ら複製する場合に限るという判例ができました。理由はわかりません。
 単純複製は適法だというのが共通認識なので、単純複製は処罰しないという解釈のようです。この法文をどう読めばそう読めるのかがわかりません。

児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(H26改正後)
第七条(児童ポルノ所持、提供等)
5前二項に規定するもののほか、ひそかに第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。

判例番号】 L07420140
       児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(児童ポルノ禁止法)違反,わいせつ電磁的記録有償頒布目的保管被告事件
【事件番号】 名古屋高等裁判所判決/平成30年(う)第383号
【判決日付】 平成31年3月4日
【掲載誌】  LLI/DB 判例秘書登載


名古屋高裁h31.3.4
 (4) 弁護人は被告人方での外付けハードディスクへの保存につき「ひそかに」児童の姿態を「描写」したといえないから児童ポルノ製造罪は不成立というけれども,ひそかに同法2条3項3号の姿態を電磁的記録に係る記録媒体に描写した(温泉施設の盗撮がこれに当たること明らか)者が当該電磁的記録を別の記録媒体に保存させて(被告人方での外付けハードディスクへの保存がこれに当たること明らか)児童ポルノを製造する行為は同法7条5項に当たる。

(罪となるべき事実)
 被告人は, 共謀の上,平成31年4月23日,大阪府大阪市西天満温泉」北側森林内において,同施設で入浴中の氏名不詳の女児2名がいずれも18歳に満たない児童であることを知りながら,ひそかに,同児童らの全裸の姿態を,望遠レンズを取り付けたビデオカメラで動画撮影し,その電磁的記録である動画データを同ビデオカメラの記録媒体等に記録した上,
同年4月29日,被告人方において,同人が前記動画データを前記記録媒体等からパーソナルコンピュータを介して外付けハードディスクに記録して保存し,もってひそかに衣服の全部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造した

自称20歳(実は16歳)に対する児童買春事件で、当初否認を自白に持ち込む方法

 
 こういう取調流行ってるんでしょうかね。

 15歳を超えると外形的には児童にも見えるし、18歳以上にも見えるので、被害者は逮捕時の弁解録取とか勾留質問では

16歳と言われると16歳にも見えますが
サイト上では「18歳以上」「20~22」となっていたので
20歳くらいだと思っていました

と供述しますよね。
 これだと児童の未必的故意が取れないので、

今から思えば16歳にも見えました

と切り出した調書を取ります。
 
 そうすると

16歳と言われると16歳にも見えますが
サイト上では「18歳以上」「20~22」となっていたので
20歳くらいだと思っていました

今から思えば16歳にも見えました

という変遷について、理由を説明させられますよね。
 児童は始終「20歳」と言ってるので、見かけしかないわけですが、被疑者は、必死で考えて

幼児体型だった。頭でっかちだった
肌つやが幼かった
乳房が小さかった・陰部は未発達だった

と嘘の理由を供述します。

 16歳が18歳と比較して

幼児体型だった。頭でっかちだった
肌つやが幼かった
乳房が小さかった・陰部は未発達だった

ということはないですよ。その16歳はほぼそのまま18歳になるから。

児童ポルノ所持も考慮されて、スプレー事犯はわいせつ目的で行われたと理解する方が自然である,ということはできる~ 傷害、児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件(田辺支部H30.11.29)

 westlawも、d1lawも、起訴状を付けてないので事実がわかりません。
 わいせつ目的の傷害って、強制わいせつ致傷であって、傷害罪じゃないよね。
 児童ポルノ所持罪を起訴することで「被告人は,児童ポルノ事犯及び関連事件も起こしている。被告人は,当公判廷において,児童ポルノ事犯はこれらの動画に「珍しさ」があったからであり,関連事件は女児と話をしたかったからである旨供述し,これらの事件についても性的欲求との関連を否定するが,児童ポルノ事犯,関連事件及びスプレー事犯という一連の行為を総合的に観察すれば,共通の背景として女児に対する性的欲求が存在したとの推認に傾く。」という認定に使われます。

裁判年月日 平成30年11月29日 
裁判所名 和歌山地裁田辺支部 裁判区分 判決
事件名 傷害、児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件
文献番号 2018WLJPCA11296005
主文
理由
 (罪となるべき事実)
 第1 平成30年1月31日付け起訴状記載の公訴事実のとおりであるから,これを引用する。
 第2 平成30年2月20日付け起訴状記載の公訴事実のとおりであるから,これを引用する。
 (証拠)
 (法令の適用)
 罰条
 判示第1の行為につき
 刑法204条
 判示第2の行為につき
 児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条1項前段,2条3項3号
 刑種の選択
 判示第1,第2の各罪について,いずれも懲役刑
 併合罪の処理
 刑法45条前段,47条本文,10条(重い判示第1の罪の刑に同法47条ただし書の制限内で法定の加重)
 執行猶予
 刑法25条1項
 保護観察
 刑法25条の2第1項前段
 (量刑の理由)
 1 犯行に至る経緯
 被告人が小学5年生のときに両親が離婚し,被告人は,親権者となった母親に監護養育されるようになったが,母親は仕事のために不在がちであった。母親は,5年前から甲状腺がんを患っている。父親は,被告人住所地とは離れた山間地で飲食店を経営しており,被告人とは,たまに会う程度の交流はあった。
 被告人は,平成29年4月に,市役所に非常勤職員として採用された。同年秋には正職員となるための採用試験を受けたが,不合格となった。再度の受験を志した被告人は,予備校に通うことを上司から勧められたので,父親にその費用の援助を申し込んだが,金銭的余裕がないとして断られた。
 被告人は,他人と話をするのが苦手である。
 2 本件各犯行及び関連事件
  (1) 判示第2の犯行(以下「児童ポルノ事犯」という。)
 被告人は,平成28年春ころから,十歳台前半くらいの女児が裸になって性器を見せたり自身の性器を触ったりしている動画(以下「児童ポルノ」という。)をインターネット経由で入手し,自らのパソコンにダウンロードして,自宅でハードディスクに保管するようになった。児童ポルノ事犯は,その一環である。
 被告人は,これらの動画をダウンロードするまでには,通常のウェブサイトへのアクセスと異なり,専用のアプリを使って暗号のような文字を入力する必要がある等手が込んでいたことから,児童ポルノにかかわることが合法ではないらしいとの漠然とした認識は有していた。
  (2) 関連事件
 被告人は,平成28年6月30日,児童公園で遊んでいた小学生の女児を公園内のトイレの個室に誘い込み,内部から鍵をかけたが,程なくして鍵を開けて女児を外に出した。
  (3) 判示第1の犯行(以下「スプレー事犯」という。)
 被告人は,犯行当日,有給休暇を取得して,和歌山市へ,次いで堺市へ行った。その帰路,カーナビの目的地を,自宅へ向かう道筋から外れた山間部にある犯行現場付近の大字に設定し,その案内に従って走行した。
 被害女児は,その大字の中では比較的建物が多い集落にある小学校から,山間部の奥にある自宅へ,徒歩で帰宅する途中であった。被告人は,小学校の近くで,車を運転しながら,被害女児が三叉路を山間部の奥の方へ向けて曲がるのを見かけた。その約3分後,集落付近で車を転回させるなどした後,自宅へ向かって人気のない道筋を歩いている被害女児を追い越し,路肩に駐車した。自動車に積んでいた催涙スプレー(以下「本件スプレー」という。)を持って,被害女児に歩み寄った。被害女児に声をかけ,これに応じて被告人の方に顔を向けた被害女児の顔面をめがけて,催涙スプレーを噴射した。
 この催涙スプレーは高濃度の唐辛子成分を含有し,眼及び皮膚に強い刺激を与えるものであった。被害女児は,突然催涙スプレーを噴射され,その痛みに泣きながら歩き出し,近くの建物で働いていた大人に助けを求めた。被害女児には,両頬が赤く変色する等の症状が生じた。
 被害女児の痛みは数日で収まり,皮膚の変色も次第に消えて,特段の後遺症は残らなかった。しかし,事件前はひとりで就寝できていたのに保護者と同じ布団で寝ることをせがんだり,一人でいることを極端に嫌がったりするようになった。
 3 スプレー事犯の動機ないし目的について
  (1) 被告人の供述の変遷
   ア 被告人は,平成29年12月20日にスプレー事犯を被疑事実として逮捕された。
 逮捕直後の取調べでは,「女の子が飛び出してきた。注意しようとしたが,無視したので腹が立ち催涙スプレーをかけた。」と供述した。
 しかし,同日中に,「催涙スプレーをかけて女の子の目が眩んだ隙に胸や体を触ろうと考え,女の子の顔に催涙スプレーをかけました」と供述し,同旨の自供書を作成した。
   イ 被告人は,強制わいせつ致傷の罪名で検察官送致され,同月22日に勾留された。後に,勾留期限は平成30年1月10日まで延長された。
 この勾留期間中の平成29年12月30日の取調べでは,スプレー事犯の動機について,「女の子が片足を軸にしてクルクルと体を回転させているのが見えました。私は,そのクルクルと体を回している女の子の姿を見て無性に腹が立ってきました。」「女の子の行動に腹が立ったので催涙スプレーをかけてやろうと考えました。」と供述した。
 また,同日,催涙スプレーについて,護身用に購入していたものであり,その威力を試してみたいという思いもあって被害女児に向けて使用した旨供述した。
   ウ 被告人は,スプレー事犯による勾留の延長後の期限である平成30年1月10日,スプレー事犯については処分保留のまま,関連事件につき,未成年者誘拐・監禁の罪名で逮捕され,同月12日に勾留された。後に,勾留期限は同月31日まで延長された。
 この勾留期間中の同月24日,被告人は,スプレー事犯につき,司法巡査Bに対し,「女の子に催涙スプレーをかけた本当の目的は,女の子の体を触ったり,服を脱がして裸を見たかった」,「わいせつなことをする為の手段として,予め催涙スプレーを用意していました。今回,私は催涙スプレーを使って目をくらませ,女の子を私の車に乗せようと思っていました。そして,車内で女の子の身体を触ったり,服を脱がして裸を見たいという思いがありました。」等と供述した。
 また,動機ないし目的についての供述を変えた理由については,「前の取り調べで,……女の子の写真を見せて貰った時,女の子の顔や手が真っ赤に腫れている姿を見た」,「その女の子の姿が頭から離れませんでした。悪いことをした,申し訳ないことをしたとずっと考えるようになりました」,「女の子のことを考えると,罪悪感で嘘を突き通す(原文ママ)ことに疲れました」等と供述した。
   エ 同月31日,被告人は,スプレー事犯につき起訴され,関連事件については不起訴となった。
   オ 当公判廷における被告人の供述内容は,上記イの内容とおおむね同一である。
  (2) スプレー事犯の動機ないし目的について,わいせつ行為が目的であった(以下「わいせつ目的」という。)旨の検察官の主張と,被害女児に対する腹立ちの動機及び催涙スプレーの試用の目的によるものであった(以下「非わいせつ動機・目的」という。)旨の弁護人の主張が対立している。
 よって検討するに,以下の理由によれば,スプレー事犯はわいせつ目的で行われたと理解する方が自然である,ということはできる。
   ア 被告人は,児童ポルノ事犯及び関連事件も起こしている。被告人は,当公判廷において,児童ポルノ事犯はこれらの動画に「珍しさ」があったからであり,関連事件は女児と話をしたかったからである旨供述し,これらの事件についても性的欲求との関連を否定するが,児童ポルノ事犯,関連事件及びスプレー事犯という一連の行為を総合的に観察すれば,共通の背景として女児に対する性的欲求が存在したとの推認に傾く。
   イ 非わいせつ動機・目的をいう被告人の供述は,逮捕直後の平成29年12月20日の取調べにおける「女の子が飛び出してきた。注意しようとしたが,無視したので腹が立ち催涙スプレーをかけた。」という供述と,同月30日の取調べ及び本件公判廷における「クルクルと体を回している女の子の姿を見て無性に腹が立ってきました。」という供述とで,大きく食い違っている。
   ウ ドライブレコーダーの解析結果等によれば,被告人は,集落内の三叉路を山間部の奥へ向けて歩く被害女児の姿を見た後,その三叉路を一旦直進通過したのに,車をUターンさせてその三叉路まで戻り,被害女児が歩いて行ったのと同じ方向へ曲がっている。この行動は,三叉路で被害女児を見た時点で,被害女児に対して何らかの行動を仕掛けようとする意図があった,という推論と結び付く。
 被告人の上記平成29年12月30日の供述においても,「クルクルと体を回している」被害女児を見たのは,被告人が車で三叉路を曲がってしばらく走った後であるから,被告人の供述する非わいせつ動機・目的では,三叉路を曲がって被害女児と同方向へ向かったという被告人の行動を説明できない。
  (3) もっとも,わいせつ目的,非わいせつ動機・目的のいずれが,スプレー事犯の犯情として,より悪質であるのかは,一概に決められない(非わいせつ動機・目的でスプレー事犯に及んだことの背景について,弁護人は,職場で意に沿わない異動があったこと,父親から予備校の費用援助を断られたこと等からくるストレスや苛立ちがあった旨主張し,被告人もその旨供述するが,その程度の背景のもとで,「クルクルと体を回している女の子の姿を見て」腹を立て,無抵抗の弱者である女児に対してスプレー事犯のごとき犯罪行為にまで及んだのであれば,被告人はきわめて危険な粗暴犯としての犯罪性向を有することになる。)。したがって,スプレー事犯がわいせつ目的であったか非わいせつ動機・目的であったかは,本件の量刑には必ずしも影響しない事情といえる。
 そして,わいせつ目的であれ,非わいせつ動機・目的であれ,いずれも被告人の内心に係る事柄であって,両者が併存することも有り得る。そもそも,被告人自身がスプレー事犯の当時の自己の内心を的確に把握できていたとは限らないし,当時の自己の内心について,捜査官の取調べや公判廷での質問に対して的確に供述できるとも限らない。
 そうすると,スプレー事犯の動機ないし目的は,被告人の矯正及び更生をより効果的なものにするため,心理学的な知見を踏まえつつ分析・判断されるべきものであって,本判決において事実認定の対象とするにはなじまない。
  (4) なお,弁護人は,平成29年12月24日に被告人がわいせつ目的を認める供述をしたのは,捜査官から,関連事件を不起訴にすることとの取引を持ち掛けられたためである旨主張するが,証人Bの公判供述に照らして,弁護人の主張は採用することができない。同供述によれば,関連事件について被告人がわいせつ目的を認める供述をしたので,同証人がスプレー事犯についても何度か尋ねたところ,被告人は,最初は黙っていたが,数日経って「今更ですけど,話を変えてもいいんですか」と言ってわいせつ目的を認める供述を始めたというのであり,これはこれで自然な流れである。同証人が関連事件の不起訴との取引を持ち掛けたという弁護人の主張には,その裏付けとなり得る証拠は被告人の公判供述以外に存在せず,一つの憶測にとどまると言わざるを得ない。
 4 量刑事情について
 スプレー事犯の犯行態様は非常に危険で悪質であり,実際に生じた被害結果も重大である。また,児童ポルノ事犯は,児童ポルノの製造や提供を助長しかねない犯行であって強い非難に値する。
 他方,被告人のために酌むべき事情として,前科前歴はないこと,児童ポルノの所持を始めた時点では未成年であったこと,本件各犯行時も成年に達したばかりであったこと,本件各犯行が広く報道された上に市役所からは懲戒解雇される等して大きな社会的制裁を受けたことが挙げられる。
 なお,示談等については,被告人及びその両親が被害女児の父親と一度面談し,謝罪するとともに示談の申入れもしたが,話合いには応じてもらえず,その後進展していない。被告人及びその両親には,損害賠償の資力は現段階では乏しいが,その義務は認識している。
 これらの事情を総合考慮して,主文のとおり,被告人を懲役刑に処してその刑事責任を明らかにした上,その執行を猶予するのが相当である。
 また,その執行猶予の期間中,被告人を保護観察に付するのを相当と認める。スプレー事犯がわいせつ目的であったのならばもちろんのこと,非わいせつ動機・目的に基づくものであったとしても,被告人には矯正すべき重大な犯罪性向があったといえることは上記のとおりであるから,保護観察下で,自らカウンセリングを受けるなどしてその矯正に努めるべきである。
 (求刑 懲役2年6月)
 和歌山地方裁判所田辺支部
 (裁判官 上田卓哉)

「女の子の体に興味があり、柔らかい体を僕の全身で感じたかった」という意図で背後から女子高校生に飛びつき体を密着させた行為は強制わいせつ罪か?

 わいせつ行為の定義がないのでこういうのが出てきますが、札幌地裁浦河支部H29.1.12は強制わいせつ未遂としています。

 馬渡論文を前提にすると、こういう非典型的行為はわいせつ行為としにくいことになります。

強制わいせつ罪の成立と行為者の性的意図の要否
最高裁平成29年11月29日大法廷判決最高裁調査官馬渡香津子 ジュリスト1517 p78
V・「わいせつな行為」の定義,判断方法
1. 「わいせつな行為」概念の重要性性的意図が強制わいせつ罪の成立要件でないとすれば, 「わいせつな行為」に該当するか否かが強制わいせつ罪の成否を決する上で更に重要となり, 「わいせつな行為」該当性の判断に際して,行為者の主観を一切考慮してはならないのかどうかを含め, これをどのように判断し,その処罰範囲を明確化するのかが問題となる。
また,強制わいせつ致傷罪は,裁判員裁判対象事件であることも考えれば, 「わいせつな行為」の判断基準が明確であることが望ましい。
2 定義
(1) 判例,学説の状況
強制わいせつ罪にいう「わいせつな行為」の定義を明らかにした最高裁判例はない。
他方, 「わいせつ」という用語は,刑法174条(公然わいせつ), 175条(わいせつ物頒布罪等) にも使用されており, 最一小判昭和26.5. 10刑集5巻6号1026頁は, 刑法175条所定のわいせつ文書に該当するかという点に関し, 「徒に性慾を興奮又は刺激せしめ且つ普通人の正常な性的差恥心を害し善良な性的道義観念に反するものと認められる」との理由でわいせつ文書該当性を認めているところ(最大判昭和32.3・13刑集ll巻3号997頁〔チャタレー事件〕も,同条の解釈を示すに際して,その定義を採用している),名古屋高金沢支判昭和36.5.2下刑集3巻5=6号399頁が,強制わいせつ罪の「わいせつ」についても, これらの判例と同内容を判示したことから,多くの学説において, これが刑法176条のわいせつの定義を示したものとして引用されるようになった(大塚ほか編・前掲67頁等)。
これに対し,学説の中には,刑法174条, 175条にいう「わいせつ」と刑法176条の「わいせつ」とでは,保護法益を異にする以上, 同一に解すべきではないとして,別の定義を試みているものも多くある(例えば, 「姦淫以外の性的な行為」平野龍一.刑法概説〔第4版) 180頁, 「性的な意味を有する行為,すなわち,本人の性的差恥心の対象となるような行為」山口厚・刑法各論〔第2版] 106頁, 「被害者の性的自由を侵害するに足りる行為」高橋則夫・刑法各論〔第2版〕124頁, 「性的性質を有する一定の重大な侵襲」佐藤・前掲62頁等)。
(2) 検討
そもそも, 「わいせつな行為」という言葉は,一般常識的な言葉として通用していて,一般的な社会通念に照らせば, ある程度のイメージを具体的に持てる言葉といえる。
そして, 「わいせつな行為」を過不足なく別の言葉でわかりやすく表現することには困難を伴うだけでなく,別の言葉で定義づけた場合に,かえって誤解を生じさせるなどして解釈上の混乱を招きかねないおそれもある。
また, 「わいせつな行為」を定義したからといって, それによって, 「わいせつな行為」に該当するか否かを直ちに判断できるものでもなく,結局,個々の事例の積み重ねを通じて判断されていくべき事柄といえ, これまでも実務上,多くの事例判断が積み重ねられ,それらの集積から,ある程度の外延がうかがわれるところでもある(具体的事例については,大塚ほか編・前掲67頁以下等参照)。
そうであるとすると,いわゆる規範的構成要件である「わいせつな行為」該当性を安定的に解釈していくためには, これをどのように定義づけるかよりも, どのような判断要素をどのような判断基準で考慮していくべきなのかという判断方法こそが重要であると考えられる。

https://www.sankei.com/west/news/190410/wst1904100033-n1.html
女子高生に体を密着、容疑の高2男子逮捕 奈良
2019.4.10 22:58産経WEST
 背後から女子高校生に飛びつき体を密着させたとして、奈良県警桜井署は10日、強制わいせつの疑いで奈良県天理市に住む私立高校2年の男子生徒(16)を逮捕した。「女の子の体に興味があり、柔らかい体を僕の全身で感じたかった」と容疑を認めている。

 逮捕容疑は、昨年11月30日午後8時5分ごろ、同県桜井市の路上で、下校中だった高校3年の女子生徒=当時(18)=に背後から飛びつき、体を密着させたとしている。

 同署によると、少年はおんぶされるような格好で女子生徒に無言でしがみついたが、抵抗されたため逃走。走って駅に向かう姿が近くの商店街の防犯カメラに写っており、制服などから身元を特定した。

 桜井市内では昨年3~10月、14~18歳の女子中高生4人が同様の被害に遭っており、同署が関連を調べている。

児童ポルノ販売者検挙への購入者の対応

 購入者リストを基にして、購入者に順次捜索かけて、児童ポルノが出れば、単純所持罪で検挙するというパターンがあります。
 単純所持罪単独での逮捕はありません。
 捜索前に破棄していれば罰金にはなりません。
 そういう対応をしない警察もあって、購入者からの相談が多数来ます。電話で問い合わせただけでは教えてくれないようです。
 そういう時は、弁護士に相談して、ある程度の事実関係をまとめて警察に送って相談してください。警察の対応がわかります。

ダウンロード販売目的で、被告人が自宅で所持しているポータブルHDD内のわいせつ画像については、わいせつ電磁的記録有償頒布保管罪ではなく、わいせつ物有償頒布目的所持罪が成立するとした名古屋高裁h31.3.4(所持罪のみ説)の上告事件が、保管罪説を採る山口厚判事の第一小法廷に係属した。

 刑法の通説としては、犯人の手元にあるhddの場合は、わいせつ物所持罪とわいせつ電磁的記録記録媒体保管罪が成立するというのですが、名古屋高裁は所持罪だけだというのです。

http://okumuraosaka.hatenadiary.jp/entry/2019/01/14/000000
2 「所持」「保管」(刑法175条2項)の一般的な説明
 一般的には物の場合は「所持」、電磁的記録の場合は「保管」と説明されているようである。
①条解刑法
②杉山徳明・吉田雅之「『情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律』について」警察学論集 第64巻10号
③「情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律」について(上) 法曹時報64-04 H24

の続報

 山口判事の論文でも、刑法の通説通り、電磁的記録の場合は「保管罪」と説明されているので、「どうするねん」って、上告理由で指摘する予定。

山口 厚サイバー犯罪条約に関連した刑法改正案 Law & technology : L & T (26) 2005.1 p.4~11
ジュリスト1257号 15頁 2003年12月1日発行 サイバー犯罪に対する実体法的対応 山口厚東京大学教授
山口厚「サイバー犯罪の現状と課題」現代刑事法 2004.1
さらに,わいせつな電磁的記録を頒布の客体としたことから,従来の販売目的所持罪の客体を電磁的記録にまで拡張している(有償頒布目的でのわいせつな電磁的記録の保管)。これは,電磁的記録を頒布の客体とする以上,当然の改正であるといえよう。

児童ポルノ提供で保護観察とか不処分とか(家裁岡崎支部)

 警察に止めてもらうのが一番強力ですよね。

少女裸画像 拡散疑い 2中学生 書類送検=中部・続報注意
2019.02.06 読売新聞
 女子中学生の裸の画像を無料通話アプリ「LINE(ライン)」で同級生に拡散させたとして、愛知県警は5日、県内の中学2年の男女2人(ともに14歳)を児童買春・児童ポルノ禁止法違反(提供)の疑いで名古屋地検に書類送検した。画像は県内の中学4校の2~3年生計53人に拡散したという。

 発表によると、2人は昨年6~9月、中学2年の女子生徒(13)の裸の画像1枚をそれぞれの同級生計6人に送信した疑い。2人のうち、少年は女子生徒と同じ中学の生徒で、少女は別の中学に通う女子生徒の友人だった。

 女子生徒は同年5月上旬、同じ中学の先輩の男子生徒に「誰にも見せないから」と何度も頼まれ、スマートフォンで自身の裸の上半身を撮影して送った。

 数日後、画像の存在をうわさで知った少女が女子生徒のスマホを無断で調べて画像を見つけ出し、自分のスマホで撮影の上、同級生に送信したという。少年は拡散された画像を入手し、さらに同級生に送った。少女は調べに「面白半分で拡散させた」と供述しているという。画像は県警や学校が生徒らに削除させた。女子生徒は県警に「画像の送信を断れば、学校で悪口を言われ仲間外れになると考えた」と話しているという。

 [続報]

 2019年4月6日付中部朝刊34面

 =裸画像拡散事件 少年を不処分に 少女は保護観察処分=中部

 女子中学生の裸の画像を無料通話アプリ「LINE(ライン)」で同級生に拡散させたとして、2月に県内の中学2年の男女2人(いずれも当時14歳)が児童買春・児童ポルノ禁止法違反(提供)の疑いで書類送検された事件で、名古屋家裁岡崎支部は少女について4日付で保護観察処分とし、少年は5日付で刑事裁判の無罪に相当する不処分とした。

 県警は、昨年6~9月に中学2年の女子生徒(当時13歳)の裸の画像1枚をそれぞれの同級生計6人に送信したとして2人を書類送検し、名古屋地検岡崎支部が家裁送致していた。

読売新聞社

児童買春行為で児童と知らなかった場合に、児童買春罪も青少年条例違反罪も成立しないという文献 

 「新捜査書類全集 捜査書類書式例 第4巻取調」にもありました。

栗原「児童買春の罪と青少年保設育成条例の関係について」研修644号107頁,
島戸純「児章買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保設等に関する法律」研修653号105頁
山川「いわゆる児童買春等処罰法と青少年保護育成条例の関係について」研修635号

藤宗和香(東京地方検察庁検事(当時))「青少年保護育成条例」風俗・性犯罪シリーズ捜査実務全書9第3版
淫行規制条例と児童買春罪との関係(補訂)
① 法律と条例とが同一とみられる事項を規定している場合について、最高裁判所は、「条例が国の法令に違反するかどうかは、両者の対象事項と規定文言を対比するのみではなく、それぞれの趣旨、日的、内容及び効果を比較し、両者の間に矛盾抵触があるかどうかによってこれを決しなければならない。例えば、ある事項について国の法令中にこれを規律する明文の規定がない場合でも、当該法令全体からみて、右規定の欠如が特に当該事項についていかなる規制をも施すことなく放置すべきものとする趣旨であると解されるときは、これについて規律を設ける条例の規定は国の法令に違反することとなりうるし、逆に、特定事項についてこれを規律する図の法令と条例が併存する場合でも、後者が前者とは別の目的に基づく規律を意図するものであり、その適用によって前者の規定の意図する日的と効果をなんら阻害することがないときや、両者が同ーの目的に出たものであっても、国の法令が必ずしもその規定によって全国的に一律に同一内容の規制を施す趣旨でなく、その地方の実情に応じて、別段の規制を施すことを容認する趣旨であると解されるときは、国の法令と条例との聞に何らの矛盾抵触はなく、条例が図の法令に違反する問題は生じえないのである (最大判昭50.9.10 刑集29.8.489) としているが、両者の聞に矛盾抵触が生じた場合、法律の規定が優先され、条例の規定が無効となる
② ところで、児童買春・ポルノ法の児童買春罪と淫行規制条例とを比較すると、少なくとも対償の供与又はその約束がなされて性交等に及んだ行為を処罰するという部分に限っては、その趣旨、目的、内容及び効果において完全に重複するものと考えられ、かかる部分に|期する条例の規定は効力を有しないこととなる。児童買春・ポルノ法附則第2 条第1 項も、地方公共団体の条例の規定で、同法で規制する行為を処罰する旨を定めているものの当該行為に係る部分については、同法の施行と同時にその効力を失う旨定めているが、これは、前記の趣旨を確認的に規定したものであると考えられる
③ そして、児童買春・ポルノ法は、「児童買春」について、児童等に対し、対償を供与し、又はその供与の約束をして、当該児童に対し、性交等(性交若しくは性交類似行為をし、又は自己の性的好奇心を満たす目的で、児童の性器等を触り、若しくは児童に自己の性器等を触らせること)としているのに対し、淫行規制条例は、児童に対する「淫行」、「みだらな性行為」等を処罰対象としている。
したがって、淫行規制条例の「淫行」、[みだらな性行為」が児童買春・ポルノ法の「性交等」よりも広い場合には、同法の「性交等」 よりも広い部分について、児童買春・ポルノ法がいかなる規制をも施すことなく放置すべきものとする趣旨であるとは解されないから、条例の効力を認めることになると考えられる。
① なお、この場合、児童買春・ポルノ法上、児童買春罪については年齢の知情性に関する推定規定がないから、行為者に被害児童の年齢についての認識を欠いた場合に、児童買春罪による処罰ができないとしても、淫行規制条例による処罰ができないか問題となる
両者の規制が重なる部分については、児童買春・ポルノ法が児童買春罪について年齢の知情性に関する推定規定をあえて設けず、故意犯処罰の原則を貫いている以上、この法律の判断が優先されるべきであり、淫行規制規定による処罰はできないものと考えられる

新捜査書類全集 捜査書類書式例 第4巻取調
p106
都道府県の制定するいわゆる青少年保護育成条例によっても処罰可能であるから,相互の処罰の関係が問題となる。
特 に,児童買春法4条の罪の成立には買春者において被害児童が18歳未満で あることの認識が必要であるのに対して(同法9条が4条をわざわざ除外してい る。) ,青少年保護育成条例の淫行処罰規定では,被害児童が1 8歳未満であることを知らないことを理由として処罰|を免れることはできない旨の知情性推定規定を設けているため,被疑者に18歳未満であることを知らなかった旨弁解している場合に, 児撞買春罪の適用は困難であるとしても,
青少年保護育成条例違反として処罰することができるかという問題がある。児童買春処罰法附則2条1項が「「地方公共団体の条例の規定で,この法律で規制する行為を処罰する旨を定めているものの当認行為に係る部分については,この法律の施行と同時に,その効力を失うものどする」と規定していることからすれば,児章買春法が規定する対償の供与又ぱその供仔の約束をした上で行う買春(淫行)行為に関しては,青少年保護育成条例の淫行処罰規定の適用は排除されてれるが,対償の供与又はその約束を要件としない単なる淫行を処罰する部分については青少年保護育成条例のみが適用されると解すべきであろう(栗原「児童買春の罪と青少年保設育成条例の関係について」研修644号107頁,島戸純「児章買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保設等に関する法律」研修653号105頁)。

強制わいせつに引き続いて強制性交した事案につき、強制わいせつ罪と強制性交罪の包括一罪とした事例(福井地裁H30.12.6)

 500万円で示談

TKC
【文献番号】25562172
監禁,強制性交等被告事件
福井地方裁判所平成30年12月6日刑事部判決
       判   決
       主   文
被告人を懲役4年に処する。
未決勾留日数中30日をその刑に算入する。
       理   由

(罪となるべき事実)
 被告人は,平成30年7月5日,福井市内の量販店内で見掛けたB(以下,「被害者」という。)に強いてわいせつな行為をしようと考え,同人を追跡し,犯行に供するために準備してあった黒色仮面,黒色ニット帽及びゴム手袋を着用した。
 そうして,被告人は,同日午前2時39分頃,福井県C市【記載省略】において,被害者が同所に駐車した軽四輪乗用自動車運転席から降車しようとするや,同人の肩付近を手で押して同車助手席まで同人を押し込み,「殺さんから。」などと言う暴行脅迫を加えた。ところが,その頃,同車のクラクションが鳴ったことから,被告人は,被害者を連行して犯行場所を移そうと考え,直ちに同車を運転して発進させ,走行中の同車内において,同人に対し,「顔を見れないようにせなあかん。」などと言って脅迫し,同人を同市【記載省略】まで連行した。そして,被告人は,同所に停車中の同車内において,前記一連の暴行脅迫により反抗を抑圧された被害者に対し,着衣の首元付近を引き下げてその乳首をなめる,パンツを引き下げてその陰部をなめる,被告人の指を膣の中に入れるなどし,さらに,強制的に性交をしようと考え,同車助手席ドア付近で被害者と性交し,引き続き,同車を運転して同県D町【記載省略】まで同人を連行し,同日午前3時21分頃,同所において同人を解放するまでの間,同人が同車内等から脱出することを著しく困難にさせ、もって同人を不法に監禁した。
(証拠の標目)
【記載省略】
 なお,被告人の脅迫文句については,被告人の「顔を見れないようにせなあかん。」との発言を,顔をぐちゃぐちゃにするとの意味に被害者が捉え,そのまま記憶した可能性も十分あり得ることから,被告人供述に従い認定した。 
(法令の適用)
1 罰条 監禁の点につき刑法220条,強制性交の点につき同法177条前段(強制わいせつ行為中に強制性交の犯意を生じてこれに及んだ点は,包括して強制性交等罪一罪が成立すると解する。)
2 科刑上一罪の処理 刑法54条1項前段,10条(1個の行為が2個の罪名に触れる場合であるから,1罪として重い強制性交等罪の刑で処断)
3 酌量減軽 刑法66条,71条,68条3号
4 未決勾留日数の算入 刑法21条
5 訴訟費用の不負担 刑事訴訟法181条1項ただし書
(量刑の理由)
 そうすると,被告人が被害者に謝罪した上で500万円を支払って示談を成立させたことのほか,事実を認めて反省の態度を示し,性障害専門の治療に努める意向を示していること,実母と義兄が出廷してそれぞれ被告人の支援を約束し,本件犯行後に離婚した元妻も書面で更生に協力する旨述べていることから,被告人が再犯を犯さないことは相応に期待し得ることを加味しても,単独犯が路上で面識のない者に対して敢行した強制性交等(強姦)1件の量刑傾向に照らし,本件は,酌量減軽は認められるものの,刑の執行猶予を付すべき事案であるとはいえず,被告人を主文標記の実刑に処するのが相当である。
(求刑・懲役5年6月)
平成30年12月6日
福井地方裁判所刑事部
裁判長裁判官 渡邉史朗 裁判官 西谷大吾 裁判官 浅井翼

被疑者に「Eカップでした」「ボインでした」などと説明させて、青少年条例(淫行・わいせつ)の過失処罰条項の適用に反対して、起訴猶予となった事例。

 条例解説などではあらゆる方法での確認義務があるとして、青少年だと分かってしまうから、淫行しないでねという趣旨なんでしょうが、もともと営業者・使用者に対する義務なので、行きずりの淫行にはそこまできたいできません。
 検察官の著作でも、年齢確認義務については疑問が出ています。

栗原雄一「児童買春の罪と青少年育成条例の関係について」研修644号*1
そのため,形式的には,全ての行為者につき年齢の調査確認の手段を尽くしたことの挙証責任が課せられているようにみえる。 しかし,淫行しようとする者は当然にその相手方の年齢を調査確認すべき義務があるといえるかどうかは微妙である。 したがって,実務的には,年齢知情に関する規定の適用を前提として,淫行罪により処罰しようとする場合には, 「使用者性」に匹敵する事情を別途立証するのが相当であるろう。すなわち,当該青少年と知り合った経緯,当該青少年の体格,服装,言葉遣い等から,当該行為者において,当該青少年が18歳未満ではないかとの疑いを持ち得る客観的状況があったことを示す証拠を収集しておくべきこととなる。
(法務総合研究所教官)
・・・・
藤宗和香(東京地方検察庁検事(当時))「青少年保護育成条例」風俗・性犯罪シリーズ捜査実務全書9第3版*2P336
このような例では、結局は、客が既に青少年と話をする機会などがあってその身上を知り得る関係にあったとか、当該応には18 歳未満の女子ばかりを世いているなどの噌があって、容の来応理由になっていたと認められるなど、個別具体的に、淫行の相手が18 歳未満であることについて客観的に知り得る状況があったことを明らかにしなければ、過失を認めるべきではないと考える。

 そこで、被疑者から体格等(Eカップとかボインだったかとか)を細かく聴き取って、青少年とは見えない点を強調していけば、年齢知情条項があっても起訴猶予になる可能性が出てきます。

新潟県青少年健全育成条例の解説H11
5 過失犯規定の適用
第29条第6項の規定により、青少年の年齢を知らないことを理由として、処罰を免れることはできない。
「ただし、過失がないとき」とは、社会通念に照らし、通常可能な確認が適切に行われているか否かによって判断される。
具体的には、単に青少年の年齢、生年月日を尋ねただけ、あるいは身体の外観等からの判断だけでは足りず、自動車運転免許証、住民票等の公信力のある書面で確認するか、又は、保護者に問い合わせるなど客観的に通常可能とされるあらゆる方法を用いて確認している場合をいう。

第29条
1 第20条第1項又は第2項の規定に違反した者は、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。


6 第15条の9第1項若しくは第2項又は第20条第l項、第2項若しくは第3項の規定に違反した者は、当該青少年の年齢を知らないことを理由として、第l項又は第3項の規定による処罰を免れることができない。ただし、過失のないときは、この限りでない。

【要旨】
本条は、条例違反者に対する制裁規定であり、この条例が関係者によって確実に守られ、その目的が達成されることを確保するために罰則を規定したものである。
【解説】
第6項の規定は、青少年の健全な育成を阻害するおそれが強く、当然社会的にも非難されるべき行為について、青少年の年齢を知らなかったとしても、そのことを理由に処罰を免れることができない旨を規定しているもので、青少年保護の実効性を確保しようとするものであるo
「ただし、過失がないときjとは、社会通念に照らし、通常可能な確認が適切に行われているか否かによって判断される。
具体的には、単に青少年の年齢、生年月日を尋ねただけ、あるいは身体を外観等からの判断だけでは足りず、自動車運転免許証、住民票等の公信力のある書面で確認するか、又は、保護者に問い合わせるなど客観的に通常可能とされるあらゆる方法を用いて確認している場合をいう。

福岡県青少年健全育成条例 児童ポルノ等の提供を求める行為の禁止

 児童ポルノが発生する前の段階で処罰しようとするので、求めたものが、画像もないのに、児童ポルノと言えるのかが問題になりそうです。

福岡県青少年健全育成条例の手引き
児童ポルノ等の提供を求める行為の禁止)
第31条の2 何人も、青少年に対し、次に掲げる行為をしてはならない。
(1) 青少年に拒まれたにもかかわらず、当該青少年に係る児童ポルノ等(児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(平成11年法律第52号)第2条第3項に規定する児童ポルノ又は同法第7条第2項に規定する電磁的記録その他の記録をいう。次号において同じ。)の提供を行うように求めること。
(2) 青少年を威迫し、欺き、若しくは困惑させ、又は青少年に対し対償を供与し、若しくはその供与の約束をする方法により、当該青少年に係る児童ポルノ等の提供を行うように求めること。
【要旨】
本条は、すべての者に対して、青少年に、自身の姿態が描写された児童ポルノ又はその情報を記録した電磁的記録その他の記録の提供を当該青少年に不当に求める行為を禁止した規定である。
【解説】
1 「当該青少年に係る児童ポルノ等」とは、求める相手方である青少年自身の姿態が描写された児童ポルノ等をいう。
したがって、他の青少年の姿態が描写された児童ポルノ等を求めた場合については、該当しない。
また、どのような表現が「児童ポルノ」に該当するかについては、要求文言とその前後のやりとりを総合的に判断し、該当性の判断を行うこととなるが、その要求に青少年が応じてしまった場合、児童ポルノ禁止法第2条第3項に該当する児童ポルノが提供されることが社会通念上明らかに認められることが必要である。
2 「提供を行うように求める」とは、児童ポルノ禁止法第7条第2項に規定する「提供」を行うように求めることであり、当該児童ポルノ等を相手方において利用し得べき状態に置く法律上・事実上の一切の行為をいい、具体的には、有体物としての児童ポルノを交付するよう求めたり、電磁的記録を電子メールで送信するよう求める行為がこれに当たる。
3 「拒まれたにもかかわらず」とは、青少年に対して当該青少年に係る児童ポルノ等の提供を行うように求めた者が、当該青少年による拒否の意思が示され、それを認識しているにもかかわらずということをいう。
したがって、やりとりの記録などから拒否されたと認識していることが明らかである場合のほか、社会通念上、青少年の意思表示が拒否したと認められるものであり、かつ、それが児童ポルノ等の提供を行うように求めた者に到達していることが明らかである場合には、拒否されたと認識していたということができる。
4 「威迫」とは、他人に対して言語挙動をもって気勢を示し、不安の感を生じさせることをいう。
「脅迫」と異なり、他人に恐怖心を生じさせる程度のものであることを要しない。
なお、「威力」との差異に関し、公職選挙法第225条第1号の「威力」とは「人の意思を制圧するに足りる勢力」、同3号の「威迫」とは「人の不安を抱かせるに足りる行為」をいい、両者の違いは、人の意思を制圧するに足りる程度の行為であるかどうかにあるものと解すべき」であると判示している(昭和42年2月4日最高裁第2小法廷判決)。
5 「欺き」とは、他人を錯誤に陥れ、虚偽の事実を真実と誤認させることをいう。
真実でないことを真実であるとして表示する行為で、虚偽の事実を摘示する場合と真実の事実を隠ぺいする場合とが含まれる。
6 「困惑させ」とは、困り戸惑わせることをいい、暴行脅迫に至らない程度の心理的威圧を加え、又は自由意思を拘束することによって自由な判断を制限することをいう。
相手方に威力を示す場合、義理人情の機微につけ込む場合、その他相手方を心理的に拘束し得るような問題を持ち込む場合などが考えられるが、いずれにしても、相手方に対する言動のほか、相手方の年齢・知能・性格、置かれた環境、前後の事情などを総合して判定する。
7 「対償を供与し、若しくはその供与の約束をする」とは、児童ポルノ等の提供に対する反対給付としての経済的な利益を供与、又はその約束をすることをいう。
「対償」は、現金のみならず、物品、債務の免除も含まれ、金額の多寡は問わない。
【罰則】
○ 30万円以下の罰金又は科料(第38条第4項)
【関係法令】
公職選挙法第225条○児童ポルノ禁止法第2条、第7条
【参考判例】昭和61年12月2日高松高裁判決(公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例事件)本件は、被告人が数回にわたり徳島県所在の自宅から香川県にあるA方に電話をして、同人の妻のBに対し「あんたが好きです。会ってほしい。」などと反覆して申向け、もって同女に著しく不安又は迷惑を覚えさせるようなことをしたという事案であるところ、原審は、公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(昭和38年12月23日香川県条例50号) 10条、11条1項は香川県の区域内における行為に対して適用されるのが原則であって、区域外の行為に本件条例を適用するには特段の根拠の存在することが必要であるが、本件被告人の行為は区域外でなされたものであり、本件条例を適用する特段の根拠はないとして、被告人は無罪としたのであるが、条例は当該地方公共団体の区域内の行為に適用されるのが原則であるものの、本件のように当該地方公共団体の区域外から区域内に向けて内容が犯罪となる電話をかける行為に及んだ場合には、電話をかけた場所のみならず、電話を受けた場所である結果発生地も犯罪地と認められるのであり、このように犯罪の結果発生地が香川県にあるとされる以上、行為者は直接的かつ現実的に香川県に関わりを持ったものというべく、香川県民及び滞在者と同様に本件条例が適用されるものと解すべきである。
なお、本件条例12条は本件’ 条例が適用される通常の場合の行為者として「県民及び滞在者」を挙げて適用上の注意しているに過ぎないと解すべく、同条を根拠として本件条例が適用される行為者のを直ちに限定することは相当でない。
た、原審は、香川県民及び滞在者以外の者に本件条例を適用し処罰すると、本件条例の存在、内容を了知することが不可能若しくは著しく困難なことから、行為に際し違法性の認識すら持ち得ない者が処罰される結果を招くというが、故意の内容に違法性のは必要がないのみならず、本件被告人は、一般通常人におけると同様、本件違法性の認識に欠くる所はなかったものと認められるから、右の結果が不合理であるとはいえない

性的意図による暴行につき、求刑罰金50万円、判決懲役6月執行猶予2年とした事例(岐阜地裁H31.2.6)

時系列
2018.07.18 A(34)への強制わいせつ罪で逮捕
2018.08.4 B(43) C(31)への強制わいせつ罪で逮捕
2018.08.17 ABへの暴行罪略式起訴、C強制わいせつ罪起訴猶予
2018.08.17 ABへの暴行罪正式裁判
2018.10.09 第1回
2018.12.14 論告「性的欲求」 求刑50万円
2019.2.6 判決 懲役6月執行猶予2年

 報道だけを見ると、性的意図の暴行という証拠があるので、簡裁(林道春裁判官 地裁所長歴任)は正式裁判にした。さらに、地裁に移送して、地裁で罰金求刑され、執行猶予付きの懲役刑。
 暴行罪で性的意図を主張・立証してしまうと、強制わいせつ(未遂)罪になって、暴行罪は不成立という関係になる。被告人は暴行罪の訴因で強制わいせつ罪の防御を迫られることになっておかしい。そこは原審の弁護人が指摘すべき点。
 原判決が暴行罪で性的意図を認定していると、訴因逸脱認定になる恐れがある。控訴するならば、そういう点で法令適用の誤りとか訴訟手続の法令違反を主張すればいいでしょう。

第四六三条[通常の審判]
1 第四百六十二条の請求があつた場合において、その事件が略式命令をすることができないものであり、又はこれをすることが相当でないものであると思料するときは、通常の規定に従い、審判をしなければならない。

裁判所法第三三条(裁判権
3 簡易裁判所は、前項の制限を超える刑を科するのを相当と認めるときは、訴訟法の定めるところにより事件を地方裁判所に移さなければならない。

刑訴法第三三二条[地方裁判所への移送]
 簡易裁判所は、地方裁判所において審判するのを相当と認めるときは、決定で管轄地方裁判所にこれを移送しなければならない

逮捕の岐阜市職員 暴行罪で正式裁判=岐阜
2018.08.18 読売新聞
 生活保護を受給する女性らにわいせつな行為をしたとして、岐阜中署に強制わいせつ容疑で逮捕された岐阜市生活福祉一課職員について、岐阜区検は17日、暴行罪で岐阜簡裁に略式起訴した。同簡裁(林道春裁判官)は同日、公判を開かずに罰金刑を科す略式命令は不相当と判断し、正式な裁判が開かれることになった。
 起訴状などによると、容疑者は昨年5月~今年4月、岐阜市役所の通路などで、同市の無職女性(当時43歳)の体に抱き付くなどしたほか、今年6月、ケースワーカーとして訪問した同市の無職女性(当時34歳)方で、女性を抱き寄せるなどしたとされる。
 一方、同市の別の無職女性(当時31歳)に対する強制わいせつ容疑について、岐阜地検は17日、不起訴とした。地検は、その理由や、暴行罪での略式起訴の理由を明らかにしていない。

 生活保護者へ暴行 罰金50万円を求刑 地裁公判で検察側
2018.12.15 中日新聞
 【岐阜県】担当する生活保護受給者の女性二人を抱き寄せるなどしたとして、暴行罪に問われた岐阜市生活福祉一課被告(45)の論告求刑が十四日、岐阜地裁であり、検察側が罰金五十万円を求刑し結審した。判決は来年一月十五日。
 検察側は論告で「立場を利用して性的欲求を満たそうとした犯行は悪質」と主張。二人に四度にわたって犯行を繰り返したとして、「被害者の肉体的、精神的苦痛は重大」と指摘した。
 弁護側は最終弁論で寛大な処分を求め、被告は最終意見陳述で「励ますつもりが結果的に被害者の意に反した行動になってしまったことを反省し、おわびしたい」と述べた。
 起訴状などによると、二〇一七年五月~今年四月ごろ、岐阜市役所内などで無職女性(45)に抱きつくなどしたほか、今年六月にも別の無職女性(35)方で女性を抱き寄せ、手を握るなどしたとされる。

 暴行岐阜市職員に有罪 地裁も厳しい判断
2019.02.07 中日新聞
 【岐阜県】担当する生活保護受給者の女性への暴行罪に問われた岐阜市職員に、岐阜地裁が求刑を上回る判決を言い渡した。検察側は略式起訴したが、岐阜簡裁が「略式不相当」と判断した異例の事案は、公開の法廷でも厳しい判断が示された。
 岐阜地裁で、検察側の求刑(罰金五十万円)を上回る懲役六月、執行猶予二年の判決を言い渡された岐阜市生活福祉一課副主査は、昨年七月と八月、女性二人に対する強制わいせつ容疑で逮捕された。岐阜区検は同月、暴行罪で略式起訴した。
 略式手続きは公開の法廷ではなく、簡裁で書面審理される。略式命令で科せる刑罰は百万円以下の罰金または科料に限られる。岐阜簡裁は「略式不相当」とし、その上で、禁錮刑以上の刑罰を科せる地裁で裁判を開くことを判断した。
 岐阜地裁によると、二〇一五~一七年に岐阜簡裁に略式起訴された五千二百四十件のうち、「略式不相当」と「略式不能」とされた事件は六件(0・1%)。一五~一七年に岐阜簡裁が地裁での審理が相当と認め、判決が出た事件はないという。この日の判決について、検察関係者は「懲役刑も十分考えられる事案だった」と話した。
 判決を受け、岐阜市は「改めて市職員がこのような重大事件を起こしたことを大変遺憾に思います」とコメントを出した。市によると、高瀬被告は約七十の生活保護世帯を担当。ケースワーカーとして受給者の生活状況の把握や、就労の指導などに当たっていた。
 ケースワーカーは年間計画に従って受給者の自宅を戸別訪問する。単身世帯や母子世帯を異性の担当者が一人で訪れると誤解を招く恐れがあるとして、市は一月、ケースワーカーに配られるマニュアルに「事情に応じて複数人での対応を適宜行うこと」とする留意点を加えた。(下條大樹)

 生活保護者に暴行 岐阜市職員認める 簡裁初公判
2018.10.10 中日新聞
 自分が担当する生活保護受給者の女性二人を抱き寄せるなどしたとして、暴行罪に問われたの初公判が九日、岐阜簡裁で開かれた。被告は「相違ございません」と起訴内容を認めた。検察側は証拠調べで「話を聞いているうちに情が湧き、女性として見るようになった。市職員の立場を超えて、性欲を満たすために触れたいと思った」などとする被告の供述内容を明らかにした。
 起訴状などによると、被告は二〇一七年五月~今年四月ごろ、岐阜市役所内や被告の自動車内などで同市の無職女性(44)に抱きつくなどしたほか、今年六月十四日には市内の別の無職女性(34)方で女性を抱き寄せ、手を握るなどの暴行をしたとされる。どちらの女性も被告がケースワーカーとして担当していた。
 岐阜区検は八月、同罪で略式起訴したが、岐阜簡裁が「略式不相当」と判断し、公開の法廷で審理された。

準強姦無罪判決のなぜ その経緯と理由は?

判決要旨を見せられてコメント求められたんですが、角が取れてたり、端折られたりです。
判決には一応理由が付いていて、見た感じ不合理な印象はありません。

https://mainichi.jp/articles/20190325/k00/00m/040/263000c?pid=14509
「状況を精査すれば違った判決の可能性も」
 では専門家はこの判決をどう見ているのだろうか。
 元刑事裁判官の陶山博生弁護士(福岡県弁護士会)は「女性は抵抗不能となるほど酒に酔っているのに同意のそぶりを示せるわけがない。論理的に苦しい判決」と首をかしげる。一方で「今回は男性の弁解を崩すに足る証拠が乏しかったのだろう」とも指摘。飲食店に居合わせた人たちの動きや女性のその後の行動などを詳しく調べれば、違った判決になっていた可能性もあるとみている。

 「古い刑法の考え方に基づく判決だ」と批判するのは甲南大の園田寿教授(刑法)だ。刑法38条は「罪を犯す意思がない行為は罰しない」としており、今回の判決も「女性が許容していると誤信してしまうような状況にあった」として男性の故意を否定した。だが、園田教授は「被告側が同意の存在を誤信したことについて合理的に説明できなければ故意犯と認定すべきだ。そうでなければ、身勝手な誤信は全て無罪になってしまう」と主張する。

「検察官が証拠を示せなかった結果」
同意のない性行為を巡る各国の法制度
 一方、性犯罪事件の被告の弁護を多く手掛ける奥村徹弁護士(大阪弁護士会)は「女性が明確に拒絶しなかったとする男性の説明について、検察官がはっきりと否定する証拠を示せなかった結果だ」と指摘。「同種事件の裁判例も踏襲しており、手堅い手法で事実認定している。立証が不十分であれば無罪となるのは当然だ」と評価する。今後、検察側が控訴した場合、どのように追加の立証をするかにも注目したいとする。そのうえで「今回の判決のポイントは男性の認識についての法的評価であり、性犯罪事件特有の問題ではない。ネットの記事だけで判決の是非を論じるのは自由だが、無罪判決を受けた男性への配慮も必要だ」として冷静な議論を求めている。<<

紙面
性犯罪事件の被告の弁護を多く手掛ける奥村徹弁護士(大阪弁護士会)は「女性が明確に拒絶しなかったとする男性の説明について、検察官がはっきりと否定する証拠を示せなかった結果であり、無罪となるのは当然だ」と判決に一定の理解を示した。