児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

強制わいせつ罪・青少年条例違反の無罪判決(仙台地裁H30.2.8)

 児童・青少年は、親にバレると、性犯罪被害者として振る舞おうとすることがあります。
 LINEの履歴や画像については、各県警に配備されている解析ソフトで解析していますので、任意開示させてください。
 携帯・スマホが被告人に還付されることがありますが捨てないでください。

【事件名】 強制わいせつ(予備的訴因 宮城県青少年健全育成条例違反)被告事件
【裁判結果】 無罪
【裁判官】 小池健治 内田曉 西村有紗
【出典】 D1-Law.com判例体系
【重要度】 -

http://www.sankei.com/affairs/news/180208/afr1802080051-n1.html
強制わいせつ、男性無罪 地裁「女性の主張に疑問」
 平成28年11月に高校生だった女性に車内でわいせつな行為をしたとして、強制わいせつと宮城県青少年健全育成条例違反の罪に問われた被告(24)に、仙台地裁は8日、無罪の判決を言い渡した。
 弁護人によると、被告は公判で「同意の上だった」と主張。小池健治裁判長は判決理由で、2人が連絡を取っていた無料通信アプリ「ライン」の履歴を復元した結果、交際していたと推測できる内容があり、女性の法廷での証言に曖昧な点があったと指摘。「車内で押し倒されたとの主張には疑いが残る」と判断した。
被告は、当時17歳だった女性に駐車中の車内で無理やりわいせつな行為をしたとして28年12月に逮捕された。
 検察側は強制わいせつ罪で懲役2年、条例違反罪で罰金30万円を求刑していた。仙台地検の高橋孝一次席検事は「判決内容を精査し適切に対応する」とのコメントを出した。
・・・
http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201802/20180208_13048.html
強制わいせつ被告に無罪判決 仙台地裁「性的な行為、一定の同意あった」
 18歳未満の女子高生の体を触ったとして、強制わいせつ罪などに問われた被告(24)の判決で、仙台地裁は8日、「被害者の供述は信用性に欠け、性的な行為をする上で一定の同意があった」として無罪(求刑懲役2年)を言い渡した。
 被告は2016年11月8日夕ごろ、富谷市内のスーパー駐車場に止めた乗用車内で、市内の当時17歳の女子高生の胸を触るなどしたとして宮城県警大和署に逮捕され、同年12月に起訴された。
 小池健治裁判長は「2人は共通の知人を介して会員制交流サイト(SNS)で知り合い、事件前にも性的な接触があった」と指摘。「拒否したのに車内で無理やり押し倒された」とする女子高生の供述を「やや不自然」とし、「それまでの2人の交際状況の捜査が不十分で、行為に同意がなかったと認定するのはためらわれる」と結論付けた。

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季刊刑事弁護「児童淫行罪・監護者性交罪と私」原稿

季刊刑事弁護「児童淫行罪・監護者性交罪と私」原稿
 一応脱稿

第1 はじめに 1
第2 児童淫行罪 2
1 保護法益 2
2 主体 2
3 行為 2
(1)淫行 2
(2)「させる」 2
4 児童淫行罪の3パターンと量刑傾向 2
①児童を雇用して売春させるパターン 2
② 師弟関係に基づくパターン 3
③ 親族間のパターン 3
5 罪数 3
6 余罪考慮の問題 3
7 他罪との関係 4
第3 監護者性交等罪・監護者わいせつ罪 4
1 趣旨・保護法益 4
2 主体 5
3 客体 5
4 行為 5
①「影響力があること」 5
②「に乗じて」 5
③ わいせつな行為 6
④ 性交等 6
5 罪数 6
①同一被害者に対する数回の性交・わいせつ行為の場合  6
②監護者性交等罪・監護者わいせつ罪と児童淫行罪との関係 7
③ 監護者わいせつ罪と児童ポルノ製造罪 7
6 非親告罪 8
第4 終わりに 8

(当時22歳。以下「A」という。)が泥酔していたため抗拒不能であるのに乗じ,同人を姦淫したものである。」という準強姦事件について犯人性が否定された事件(さいたま地裁H29.10.26)

さいたま地方裁判所平成29年10月26日第4刑事部判決

       判   決

 上記の者に対する準強姦被告事件について,当裁判所は,検察官秦智子並びに私選弁護人中原潤一(主任),同神林美樹及び同山本衛各出席の上審理し,次のとおり判決する。


       主   文

被告人は無罪。


       理   由

第1 本件公訴事実
 本件公訴事実は,「被告人は,平成28年8月26日午後11時30分頃から同月27日午前1時39分頃までの間に,東京都大田区α×丁目×番××号β×Fにおいて,■(当時22歳。以下「A」という。)が泥酔していたため抗拒不能であるのに乗じ,同人を姦淫したものである。」というものである。
第2 争点
1 本件起訴の有効性
 弁護人は,本件起訴に関し,〔1〕Aの告訴には要素の錯誤があってその意思表示は無効であり,親告罪において告訴が欠如する,あるいは,〔2〕親告罪における告訴権者の意思を蹂躙したものとして,公訴権の濫用があると主張し,いずれにせよ公訴棄却の判決がなされるべきとする。
2 被告人の犯人性
 弁護人は,被告人がAを姦淫した事実は認められないから被告人は無罪であると主張し,被告人もそれに沿う供述をしている。Aが本件公訴事実記載の日時場所において同記載のとおり誰かに姦淫されたことは証拠上容易に認定できるから,本件公訴事実に関する争点は被告人がその犯人であるといえるかである。
第3 本件起訴の有効性について(以下,日付は平成28年とする。)
1 本件告訴の有効性
 関係証拠によると,Aが,本件起訴前である12月9日,本件公訴事実に関する犯罪事実を申告し(内容としては,被告人を含む二人の者が共同して抗拒不能の状態にあるAを姦淫した旨の集団準強姦),被告人を厳重に処罰するよう求める旨の記載がある埼玉県吉川警察署長宛ての告訴状をb警察官(以下「b警察官」という。)に提出したことが認められる。そして,Aは,告訴状を提出した当時,被告人の処罰を求める気持ちであったこと自体は否定しておらず,当公判廷においてその旨の証言をした。
 この点,弁護人は,Aは被害弁償を受けることを希望して本件の捜査を求めるに至っており,こうしたAの動機は捜査機関にも明示されていたところ,検察官も警察官も弁護人からの示談の申入れをAに伝えず,その結果Aは示談の申入れがないものとして告訴の意思表示をしたものであり,要素の錯誤があるから無効である旨の主張をする。しかし,弁護人の主張は,前提とする事実関係についての主張の当否はおくとして,要するに,Aが告訴をするに至った動機の形成過程に錯誤があった旨の主張と解すべきものであるところ,Aが告訴をするに至った動機等は告訴の効力に影響を及ぼすものではないというべきである。したがって,本件告訴は有効であるから,この点に関する弁護人の主張に理由はない。
2 検察官による本件起訴の有効性
(1)関係証拠によれば,本件事件の捜査を担当した溝口修検察官(以下「溝口検察官」という。)が,12月5日頃,被告人の弁護人から,被害者の連絡先教示を求められたこと,溝口検察官は,Aの意向確認をするように警察官に依頼し,同月6日,Aの聴取等を担当していたb警察官がAにラインメッセージを送信して弁護人への連絡先教示の希望の有無を確認したこと,Aはb警察官に対して連絡先教示をしないでほしい旨を回答し,b警察官が溝口検察官にその旨伝えたこと,12月9日,溝口検察官がAの取調べを行った際,被害状況の確認とともに処罰感情があることを確認し,その後にAが告訴したこと,本件起訴日である12月21日,溝口検察官が再度Aの取調べを行った際,Aに対して被告人を起訴する予定であることを告げた上で改めてAの処罰意思を確認したこと,以上の事実が認められる。
(2)以上の事実関係のうち,b警察官がAに対して送信したラインメッセージは,具体的には,「弁護士から,『被害者の連絡先を教えろ』という連絡がありました」「2人共否認しているのに,何を話すつもりなのか分かりませんが」「こういう時,一応被害者の方の意思を確認するようになっていまして」「教えたらどうなるか,ということなんですけど,弁護士から電話が来ます」「示談の話をするのか,謝罪をするのか知りませんが,否認しているので...何がしたいのかは分かりません」などの内容を含むものであり,これによれば,弁護人が被害者の連絡先を教示するように求めてきていること,弁護人の意図としては,被害者に直接連絡を取って示談交渉を含む何らかの働きかけをすることにあるとの趣旨が十分に読み取れるものといえる。すなわち,溝口検察官において,Aに対して弁護人から示談の申入れがあったことを伝えたかどうか,b警察官に対して弁護人から示談の申入れがあった旨伝達したかどうかは明らかでないとしても,Aに対しては,示談交渉の可能性も前提に連絡先教示の希望の有無についての意思確認が行われたといえる。そうすると,A自身も認めるように,弁護人から示談の話がされる可能性があることを理解し得る状況にありながら,Aは弁護人に対する連絡先教示について消極的な態度を維持し続けたことが認められる。
 しかるに,被害者が犯人に対する処罰を望みつつ,同時に犯人からの被害弁償を受けたいと考えることは両立し得ることであるし,本件でも,Aにおいて,本件起訴までの間に,溝口検察官に対して示談の成否と関連付けて告訴意思に変更があり得る旨の意向を示した形跡がないことも加味すると,弁護人の主張を考慮しても,本件起訴に至る判断が不合理であるとして告訴権者であるAの意思を蹂躙したとみるべき事情があったとまでは認められない。
(3)以上によれば,検察官が公訴権を濫用したとみる余地はなく,この点に関する弁護人の主張も理由がない。
第4 被告人の犯人性
・・・
第5 結論
 以上を総合すれば,被告人が公訴事実記載の犯行を行ったとするにはなお合理的な疑いが残るというべきであり,結局本件公訴事実については犯罪の証明がないことになるから,刑訴法336条により被告人に対し無罪の言渡しをする。
(求刑 懲役4年6月)
平成29年10月26日
さいたま地方裁判所第4刑事部
裁判長裁判官 佐々木直人 裁判官 四宮知彦 裁判官 片山嘉恵

「早期退院に必要な行為であるかのように装って同人にわいせつな行為をしようと考え」という医師による準強制わいせつ事件・否認・実刑(長野地裁h29.12.4)

 こう言う場合は性的意図が必要だということになるんでしょうか

長野地方裁判所平成29年12月4日刑事部判決
       判   決
 上記の者に対する準強制わいせつ被告事件について,当裁判所は,検察官大川晋嗣並びに国選弁護人山浦能央(主任)及び同米山秀之出席の上審理し,次のとおり判決する。
       主   文
被告人を懲役2年に処する。
未決勾留日数中170日をその刑に算入する。
       理   由

(罪となるべき事実)
 被告人は,長野市大字α×××番地所在のb病院に精神科医として勤務していたものであるが,自らが担当医を務めていた入院患者の■(以下「被害者」という。当時■歳。)が自閉症スペクトラムを患っており,かつ,同人の担当医(指導医)としてその退院を決定できることに乗じ,早期退院に必要な行為であるかのように装って同人にわいせつな行為をしようと考え,平成27年12月20日午後9時28分頃から同月21日午前零時8分頃までの間,埼玉県内,群馬県内又は長野県内において,同人に対し,被告人が使用する携帯電話機からアプリケーションソフト「LINE」を利用して,「今夜診察した方がよければ,それが早期退院につながるかもですね。」「今夜どうしても自分と会って,どんな診察になっても最短で退院になるのを望むしか無いでしょうね」「産婦人科の検査をやらないと退院できない。」などとメッセージを送信し,または,通話した上で,同日午前零時20分過ぎ頃,前記b病院本館×階×病棟■において,被害者に対し,「ズボンを脱いで。」「パンツも脱いで。」などと言い,同人に早期退院に必要な行為であると誤信させて同人を抗拒不能の状態に陥らせ,同人の膣内に手指を挿入し,乳房をなめるなどし,もって人の抗拒不能に乗じてわいせつな行為をした。
(証拠の標目)《略》
(事実認定の補足説明)
1 弁護人は被害者に対するわいせつ行為の事実を争い,被告人からわいせつ行為を受けたとする被害者供述は信用できないと主張する。
 しかしながら,当裁判所は判示の事実を認めたので,以下,その理由を補足して説明する。
・・・
 以上を総合すると,被害者にわいせつ行為をしていないとの被告人供述は信用できない。
5 以上によれば,信用できる被害者供述に沿って,判示のわいせつ行為の事実を認定することができる。
(法令の適用)
 被告人の判示所為は刑法178条1項,176条前段に該当するので,その所定刑期の範囲内で被告人を懲役2年に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中170日をその刑に算入することとし,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。
(量刑の理由)
 被告人は,被害者の担当医(指導医)として被害者の退院を決定できる立場と,被害者が早期の退院を望んでいることを利用して,早期の退院に必要な検査であるかのように装って,本件犯行に及んだもので,欲求本位の身勝手で卑劣な犯行である。犯行態様は,膣内に指を入れたり,乳房を直接なめるなどしたというものであり,計画性が強いものではないことや,比較的短時間であったと推察されることを考慮しても,比較的悪質な部類に属するものといえる。被害者は,担当医として信頼していた被告人からわいせつ行為を受け,大きな精神的苦痛を被っただけでなく,本件当時未成年であった被害者の人格形成に悪影響を及ぼしかねないといえる。被害者の処罰感情は厳しい。また,被告人は,前記のとおり不合理な弁解に終始しており,これまで被害者に対する慰謝の措置はとられていない。
 以上に鑑みると,被告人に前科がないことなど被告人のために酌むことのできる事情を十分に併せ考慮しても,被告人を主文の刑に処するのが相当である。
(求刑 懲役3年)
平成29年12月4日
長野地方裁判所刑事部
裁判長裁判官 室橋雅仁 裁判官 荒木精一 裁判官 加納紅実

児童淫行罪で訴額1550万・和解400万円

児童淫行罪で訴額1550万・和解400万円
 訴状によれば刑事判決は刑事事件は岩内支部H26.9.26

強制わいせつ:学童指導員、女児触る 容疑で逮捕--札幌
2014.09.17 北海道 毎日新聞

児童養護施設性的虐待*道央、13~14年*男性職員、3女児に*道、法人 1人と
 道央の児童養護施設で2013年8月から14年3月にかけて、道が措置入所させた女児らに対し、男性職員(当時)がわいせつ行為を繰り返していたことが、北海道新聞が道に情報公開請求した内部資料などで分かった。女児側は15年7月、損害賠償を求めて道を提訴。16年、道と同施設を運営する社会福祉法人が、それぞれ200万円支払うなどで和解した。安全なはずの保護施設で、子どもが虐待被害にさらされた実態が明らかになった。

 児童養護施設は、親の病気や離婚、子どもへの虐待など、何らかの理由で家庭で生活ができない、おおむね18歳までの子どもが暮らす施設。

 今回公開された、施設に対する道の調査報告書や特別指導監査の勧告書によると、13年8月から14年3月までの間、この職員は、女児2人に対し、消灯後の女子居室で、それぞれ胸や下半身を無理やり触ったほか、別の女児とも施設内で複数回、性交渉を行っていたという。

 性的虐待は、被害女児からの訴えで発覚した。だが、最初に女児から性的虐待を聞いた職員から報告を受けた上司が、すぐ施設長らに報告していなかったといい、道は勧告書で「必要な対応を取らず、放置していた」「上司による管理監督や情報共有が不十分だった」と指摘。施設に対し「虐待や不適切な養護が繰り返され、児童の心身の健やかな成長と自立を支援するのに必要な知識及び技能が十分ではない」などとし、職員研修など再発防止策を強く求めた。

 道議会議事録などによると、被害女児1人の後見人が15年7月、同施設に措置入所させた道などに対して損害賠償を求め、札幌地裁に提訴。地裁が示した和解案に基づき、道議会は16年3月、和解金200万円の支払いに関する議案を可決した。

 男性職員は事案発覚後、同施設を懲戒解雇された。14年9月、強制わいせつ、児童福祉法違反(淫行させる行為)などの罪で懲役4年6カ月の実刑判決を受け、確定した。判決は「自分の性的欲求を満たすだけの目的」「信頼していた被告人に性の対象とされ、(被害女児の)精神的苦痛は察するに余りある」などと厳しく断じた。

 一連の経緯について、道子ども子育て支援課は「プライバシーの問題もあり、個別事案についてコメントできない」としている。

北海道新聞

宮沢りえの生年月日 公開情報としては「1973.4.6」で一貫している件

 公開情報としては1973.4.6
 撮影日については、「社内資料では1991年5月22日にロスに入り、5月30日に成田に帰国」

「昭和48年4月6日生まれの15才。」明星1988年6月号p128
「1973年4月6日」近代映画第44巻第18号(1988.12.1号)p91
「昭和48年4月6日 東京生まれ」週刊文春平成元年7月20号
「昭48.4.6」タレント名鑑1996
「昭和48年4月6日生まれ」stylebook
「昭和48年4月6日 東京生まれ」campaign1988.10.3

 弁護士がこの程度の情報で、「当時18歳」とは言えないんですが、撮影前後を通して「1973.4.6」と自称しているので、少なくても年齢認識の問題では「当時18歳と思っていた」との弁解が有効です。

 どなたかがちゃんと相談してくれればちゃんと調べます。

かつて 強制わいせつ罪(176条後段)と姿態をとらせて製造罪は併合罪とされたが(東京高裁H24.11.1)、最近観念的競合に戻りつつある(東京高裁H30.1.30)

 かつて 強制わいせつ罪(176条後段)と姿態をとらせて製造罪は併合罪とされたが(東京高裁H24.11.1)、最近観念的競合に戻りつつある(東京高裁H30.1.30)
 判タの裁判官の報告書で、複製なければ観念的競合、複製あれば併合罪というのがあって、そっちに向かってるようです。
 高裁判例がぶれていてわからないので、大法廷H29.11.29では上告理由に挙げたのに取り上げられませんでした。

判例タイムズ1432号35頁
特別法を巡る諸問題[大阪刑事実務研究会]
児童ポルノ法(製造罪, 罪数)
武田正大阪地方裁判所判事
池田知史大阪地方裁判所判事
28)姿態をとらせ製造罪と性犯罪との罪数関係に関する裁判例については,奥村・前掲28頁以下,三浦・前
掲477頁以下に詳しく紹介されている。
以上を考慮すると,撮影行為自体を手段としてわいせつ行為を遂げようとする例外的な事案を除いては,複製行為の有無や,わいせつ行為と姿態をとらせ行為の事実上の重なり合いの程度いかんを問わず,後段強制わいせつ行為と姿態をとらせ製造行為は, 「社会的見解上-個のものとの評価」を受けることはなく, したがって,両者は併合罪の関係にあると解するのが相当である

裁判年月日 平成24年11月 1日 裁判所名 東京高裁 裁判区分 判決
事件名 監禁,強制わいせつ,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件
裁判結果 控訴棄却 上訴等 確定
文献番号 2012WLJPCA11019004
主文
 本件控訴を棄却する。
 当審における未決勾留日数中70日を原判決の刑に算入する。 
理由
 1 控訴の趣意
 本件控訴の趣意は,要するに,第1に,原判決は,13歳未満の児童2名に対する監禁罪(原判示第1,第4),強制わいせつ罪(同第2,第5),児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(以下「児童ポルノ法」という。)7条3項の児童ポルノ製造罪(同第3,第6)の成立を認めた上で,すべての罪が併合罪の関係にあるとしたが,①原判示の各被害児童を撮影した動画は,いずれも一般人を基準として性欲を興奮させ又は刺激するものに当たらないから児童ポルノ製造罪は成立しない,②各監禁罪と各強制わいせつ罪は,いずれも観念的競合又は牽連犯の関係にあり,各強制わいせつ罪と各児童ポルノ製造罪は,いずれも観念的競合の関係にあるか又は包括一罪であり,各児童ポルノ製造罪は包括一罪であるから,結局,原判示第1から第6までは全体として一罪になる,したがって,原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の適用の誤りがある,第2に,被告人を懲役3年に処した原判決の量刑は重すぎて不当であるというのである。
 2 法令適用の誤りの論旨について
  (1) 児童ポルノ該当性について
 所論は,原判示第3及び第6の動画は,一般人を基準とすれば性欲を興奮させ又は刺激するものに当たらない旨主張する。しかし,被告人は,原判示第3については,女児である被害児童のパンティ等を下ろして陰部を露出させる姿態をとらせ,これを撮影,記録し,同第6については,女児である被害児童のパンティ等を下ろして陰部を露出させ,その陰部を被告人が触るなどの姿態をとらせ,これらを撮影,記録したのであるから,これらの動画の上記部分は,各被害児童の年齢が当時6歳であったことを考慮しても,社会通念上,一般人を基準として性欲を興奮させ又は刺激するものに該当する。
  (2) 罪数関係について
   ア 監禁罪と強制わいせつ罪の罪数関係について
 所論は,原判示の各監禁罪と各強制わいせつ罪について,いずれも,①性的意図をもって被害児童を監禁する行為は,被害児童の性的自由を害して被告人の性的欲求を満足させる行為であるから,監禁行為とわいせつ行為は一体の行為として評価され,観念的競合の関係にある,②仮に,観念的競合の関係にはないとしても,監禁罪と強制わいせつ罪は手段と結果の関係にあるから牽連犯の関係にある旨主張する。
 そこで検討すると,被告人は,各被害児童に対し,いずれも,わいせつ行為をする目的で公衆トイレ内に誘い込んだ後,内鍵を施錠したり(原判示第4),ドアの前に立ちふさがるなどして(同第1),陰部を触る等のわいせつ行為をしたものであるが,わいせつ行為に及んでいること自体がドア前に立ちはだかることとなって監禁行為は継続しているし,わいせつ行為が終了した直後にその場から逃走して被害児童を解放している。そうすると,刑法176条後段に触れる行為と同法220条に触れる行為とはほとんど重なり合っているといえる上,社会的評価において,トイレのドアの前に立ちふさがるなどして脱出不能にする動態と,このような姿勢をとりながらわいせつな行為をする動態は,被害児童をトイレに閉じこめてわいせつな行為をするという単一の意思に基づく一体的な動態というべきであるから,原判示の各監禁罪と各強制わいせつ罪は,いずれも観念的競合の関係にあるものと解される。
   イ 強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪の罪数関係について
 所論は,原判示の各強制わいせつ罪と各児童ポルノ製造罪について,いずれも,①被告人が,被害児童に陰部を露出させる姿態等をとらせ,これらを撮影した行為は,撮影行為も含めて全体として,児童ポルノ法7条3項に触れる行為であるとともに刑法176条後段にも触れる行為であり,行為の全部が重なり合う上,わいせつ行為として同質であるから観念的競合の関係にある,②仮に,観念的競合の関係にはないとしても包括一罪である旨主張する。
 そこでまず①の点について検討すると,その事実の概要は,被告人が,13歳未満の被害児童に対し,そのパンティ等を下ろして陰部を手指で触り,舐めるなどした上,自己の陰茎を握らせるなどする(以下,これらの行為を「直接的なわいせつ行為」という。)際に,性的欲求又はその関心を満足させるために,これらの姿態をとらせてその一部(原判示第2,第3の場合)又はそのほとんど(原判示第5,第6の場合)を携帯電話で撮影して児童ポルノを製造したというものである。
 確かに,所論のいうとおり,一般に上記撮影行為自体も刑法176条後段の強制わいせつ罪を構成すると解されている上,直接的なわいせつ行為の姿態をとらせる行為が児童ポルノ法7条3項の構成要件的行為であることからすると,本件において,刑法176条後段に触れる行為と児童ポルノ法7条3項に触れる行為とは重なり合いがあるといえる。しかし,本件では,被告人は,撮影行為自体を手段としてわいせつ行為を遂げようとしたものではないから,撮影行為の重なり合いを重視するのは適当でない。また,直接的なわいせつ行為の姿態をとらせる行為は,上記のとおり構成要件的行為ではあるが,児童ポルノ製造罪の構成要件的行為の中核は撮影行為(製造行為)にあるのであって,同罪の処罰範囲を限定する趣旨で「姿態をとらせ」という要件が構成要件に規定されたことに鑑みると,そのような姿態をとらせる行為をとらえて,刑法176条後段に触れる行為と児童ポルノ法7条3項に触れる行為とが行為の主要な部分において重なり合うといえるかはなお検討の余地がある。
 そして,直接的なわいせつ行為と,これを撮影,記録する行為は,共に被告人の性的欲求又はその関心を満足させるという点では共通するものの,社会的評価においては,前者はわいせつ行為そのものであるのに対し,後者が本来意味するところは撮影行為により児童ポルノを製造することにあるから,各行為の意味合いは全く異なるし,それぞれ別個の意思の発現としての行為であるというべきである。そうすると,両行為が被告人によって同時に行われていても,それぞれが性質を異にする行為であって,社会的に一体の行為とみるのは相当でない。
 また,児童ポルノ製造罪は,複製行為も犯罪を構成し得る(最高裁平成18年2月20日第三小法廷決定・刑集60巻2号216頁)ため,時間的に広がりを持って行われることが想定されるのに対し,強制わいせつ罪は,通常,一時点において行われるものであるから,刑法176条後段に触れる行為と児童ポルノ法7条3項に触れる行為が同時性を甚だしく欠く場合が想定される。したがって,両罪が観念的競合の関係にあるとすると,例えば,複製行為による児童ポルノ製造罪の有罪判決が確定したときに,撮影の際に犯した強制わいせつ罪に一事不再理効が及ぶ事態など,妥当性を欠く事態が十分生じ得る。一方で,こうした事態を避けるため,両罪について,複製行為がない場合は観念的競合の関係にあるが,複製行為が行われれば併合罪の関係にあるとすることは,複製行為の性質上,必ずしもその有無が明らかになるとは限らない上,同じ撮影行為であるにもかかわらず,後日なされた複製行為の有無により撮影行為自体の評価が変わることになり,相当な解釈とは言い難い。
 以上のとおり,本件において,被告人の刑法176条後段に触れる行為と児童ポルノ法7条3項に触れる行為は,その行為の重なり合いについて上記のような問題がある上,社会的評価において,直接的なわいせつ行為とこれを撮影する行為は,別個の意思に基づく相当性質の異なる行為であり,一罪として扱うことを妥当とするだけの社会的一体性は認められず,それぞれにおける行為者の動態は社会的見解上別個のものといえるから,両罪は観念的競合の関係にはなく,併合罪の関係にあると解するのが相当である。
 次に,②の点については,強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪の保護法益の相違や,上記のとおり両行為の性質が相当異なることなどからすると,包括一罪にはならないというべきである。
   ウ 各児童ポルノ製造罪の罪数関係について
 所論は,原判示の各児童ポルノ製造罪について,児童を性の対象とする風潮を防ぐという社会的法益を主な保護法益とするから,被害児童が別であっても,犯行の日時場所が乖離せず被告人の犯意が継続しており,かつ,記録媒体が同一である本件においては,包括一罪となる旨主張する。
 しかしながら,児童ポルノ製造罪は,被害児童の人格や権利も保護法益とするものであるところ,原判示第3と第6の被害児童は別人であること,各犯行は約5か月離れて場所も異なるため異なる機会に新たに犯意が形成されたものというべきであることからすると,記録媒体が同一であっても,一罪として1回の処罰によるべき事案とは考えられず,包括一罪にはならないと解すべきである。
   エ 小括
 上記アのとおり,監禁罪と強制わいせつ罪とは観念的競合の関係にあるから,これを併合罪の関係にあるとした原判決には法令適用の誤りがあるが,上記イ及びウを踏まえれば,この誤りによって最終的な処断刑の範囲は変わらないから,判決に影響を及ぼすものとはいえない。
 3 量刑不当の論旨について
 本件は,被告人が,平成23年7月と12月に,それぞれ別の被害児童を公園の公衆トイレに誘い込んでトイレ内に監禁し,その間,13歳未満の児童に対してわいせつ行為をするとともに,その姿態を携帯電話で撮影,記録したという,各2件の監禁,強制わいせつ,児童ポルノ製造の事案である。
 被告人は,いずれも公園で一人で遊んでいた見知らぬ当時6歳の児童に声をかけ,その未熟さや性的知識のなさにつけ込んで密室のトイレに誘い込み,自己の性的欲求を満たすために犯行に及んだものであり,卑劣かつ悪質な犯行である。被告人が難病による大きなストレスを抱えていたことを考慮しても,身勝手な動機に酌量の余地は乏しいと言わざるを得ない。いずれも10分足らずの犯行であったものの,陰部を舐めたり自己の陰茎を握らせるなどして射精するに至っているほか,その一部を後で見るために撮影しており犯情は極めて悪いというほかない。各被害児童は過激なわいせつ行為をされ,その顔が特定できる形で撮影までされたのであって,その精神的衝撃や不安感,不快感は大きく,成長過程における悪影響も否定できないし,その保護者らにも多大な衝撃を与えたものである。
 そうすると,被告人の刑事責任は重いというほかなく,事実を認めて反省し,謝罪の手紙を書くなどしているほか,被害児童の保護者の一人との面会を契機に更生の意を強くしていること,被告人の両親がカウンセリング等の受診を検討した上で今後の監督を約束していること,被害児童側に各80万円を支払い示談が成立していること,2万円を贖罪寄付したこと,比較的若年で前科前歴がないこと,難病を患っていること,その他所論が指摘する酌むべき事情を十分考慮しても,原判決の量刑が重すぎて不当であるとはいえない。所論は,原判決後の事情として,被告人が反省を深め,性癖矯正のため依存症治療の専門クリニックの相談員と文通を始めたことや,上記の面会した保護者が原判決の量刑は重すぎる旨の考えを示していること等を指摘するが,その責任の重大性に鑑みると,これらを考慮しても,上記の判断は変わらない。
 4 結論
 よって,論旨はいずれも理由がないから,刑訴法396条により本件控訴を棄却し,刑法21条を適用して当審における未決勾留日数中70日を原判決の刑に算入し,当審における訴訟費用は刑訴法181条1項ただし書を適用してこれを被告人に負担させないこととして,主文のとおり判決する。
  (裁判長裁判官 村瀬均 裁判官 倉澤千巖 裁判官 池田知史) 

westlawの奥村徹

westlawの奥村徹
 判例秘書とTKCに加えてwestlaw導入しました。

 2.4とか5.0とか星が付いてるんですよ。
 0.6点とかはカスという評価でしょうか?


1 平成29年11月29日 最高裁大法廷 平28(あ)1731号
  2.4

2 平成29年 5月16日 横浜地裁 平28(わ)268号
  0.6

3 平成29年 1月24日 東京高裁 平28(う)872号
  1.7

4 平成28年 3月15日 東京地裁 平25(特わ)1027号
  1.9

5 平成28年 2月19日 東京高裁 平27(う)1766号
  0.9

6 平成21年10月23日 大阪高裁 平21(う)241号
  1.4

7 平成21年10月21日 最高裁第一小法廷 平19(あ)619号
  5.0

8 平成21年 9月25日 最高裁第一小法廷 平19(あ)1706号
  2.0

9 平成21年 7月 7日 最高裁第二小法廷 平20(あ)1703号
  5.0

10 平成21年 1月28日 東京地裁 平20(特わ)1321号
  1.0

11 平成20年11月 4日 最高裁第三小法廷 平20(あ)865号
  5.0

12 平成20年 4月17日 大阪高裁 平20(う)121号
  1.8

13 平成20年 3月 4日 最高裁第二小法廷 平18(あ)1249号
  5.0

14 平成18年 6月26日 名古屋高裁 平18(う)158号
  1.4

15 平成18年 5月30日 名古屋高裁 平18(う)67号
  0.9

16 平成18年 5月16日 最高裁第三小法廷 平15(あ)1348号
  5.0

17 平成18年 2月20日 最高裁第三小法廷 平17(あ)1342号
  5.0

18 平成17年 6月 9日 名古屋高裁金沢支部 平17(う)12号
  1.6

19 平成15年 9月18日 大阪高裁 平15(う)1号
  1.6

20 平成15年 3月11日 最高裁第三小法廷 平14(あ)1198号
  5.0

被告人は,性交場面等の動画を投稿して金銭を得る目的で,知り合った女性被害者をだまして,被害者らとの性交場面を無断で撮影・投稿したなどとしてその罪を問われた事案。裁判所は,犯行態様はまことに卑劣・非人間的で,被害者らが受けた精神的苦痛は極めて大きく,常習性の高い職業的犯行であり,利欲目的の動機や経緯に酌むべきところはなく,被告人の認知にはゆがみがあり,これを矯正しない限り同種異種の再犯のおそれを否定できないところ,被害者のうち1名と示談が成立していることなどを考慮し,懲役1年10月,保護観察付き執行猶予4年

 判例秘書なんだけど、調書判決の起訴状を載せてくれないので何をやってこの量刑なのかがわかりません。判示第3まであることはわかりますが。
 罪となるべき事実がわからないので、法令適用も合ってるのかわかりません。

判例番号】
L07250533
私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律違反,わいせつ電磁的記録記録媒体陳列被告事件

【事件番号】
京都地方裁判所判決/平成29年(わ)第262号、平成29年(わ)第330号、平成29年(わ)第474号
【判決日付】
平成29年7月3日
【判示事項】
被告人は,性交場面等の動画を投稿して金銭を得る目的で,知り合った女性被害者をだまして,被害者らとの性交場面を無断で撮影・投稿したなどとしてその罪を問われた事案。裁判所は,犯行態様はまことに卑劣・非人間的で,被害者らが受けた精神的苦痛は極めて大きく,常習性の高い職業的犯行であり,利欲目的の動機や経緯に酌むべきところはなく,被告人の認知にはゆがみがあり,これを矯正しない限り同種異種の再犯のおそれを否定できないところ,被害者のうち1名と示談が成立していることなどを考慮し,懲役1年10月,保護観察付き執行猶予4年,罰金20万円に処した事例
【掲載誌】 
LLI/DB 判例秘書登載

       主   文

 被告人を懲役1年10月及び罰金20万円に処する。
 その罰金を完納することができないときは,金5000円を1日に換算した期間,被告人を労役場に留置する。
 この裁判確定の日から4年間その懲役刑の執行を猶予し,その猶予の期間中被告人を保護観察に付する。
 訴訟費用は被告人の負担とする。

       理   由

(罪となるべき事実)
第1 平成29年4月28日付け起訴状記載の公訴事実のとおりであるからこれを引用する。
第2 同年3月10日付け起訴状記載の公訴事実のとおりであるからこれを引用する。
第3 同月24日付け起訴状記載の公訴事実のとおりであるからこれを引用する。
(証拠の標目)括弧内の甲,乙で始まる番号は,証拠等関係カードにおける検察官請求証拠番号を示す。
事実全部について
・ 被告人の公判供述
・ 被告人の警察官調書(乙2,3,5,12)
・ 捜査報告書(甲6〔抄本〕,7,9),検証調書抄本(甲10),実況見分調書(甲16)
第1の事実について
・ 被告人の検察官調書抄本(乙18),警察官調書抄本(乙15から17)
・ K・Aの警察官調書抄本(甲18)
・ 捜査報告書(甲19,20〔抄本〕,21〔抄本〕,乙19)
第2の事実について
・ 被告人の警察官調書抄本(乙7,9)
・ M・Fの警察官調書抄本(甲2)
・ 実況見分調書抄本(甲3),捜査報告書(甲4,5〔抄本〕)
第3の事実について
・ 被告人の検察官調書(乙14),警察官調書抄本(乙13)
・ S・Sの警察官調書抄本(甲12)
・ 捜査報告書抄本(甲13,14),実況見分調書(15)
(法令の適用)
罰条       各行為中,第三者が撮影対象者を特定できる方法で私事性的画像記録物を公然と陳列した点はいずれも私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律3条2項,2条1項1号,わいせつな電磁的記録に係る記録媒体を公然と陳列した点はいずれも刑法175条1項前段
科刑上一罪(観念的競合)
         いずれも刑法54条1項前段,10条(いずれも一罪として重い私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律違反の罪の刑で処断〔ただし罰金刑との併科の点及び罰金額の上限についてはいずれもわいせつ電磁的記録記録媒体陳列罪の刑のそれによる。〕)
刑種の選択    いずれも懲役刑と罰金刑との併科刑を選択
併合罪加重    刑法45条前段,47条本文,10条,48条2項(懲役刑については犯情の最も重い第1の罪の刑に加重,罰金刑については各罪所定の罰金の多額を合計)
労役場留置    刑法18条(金5000円を1日に換算)
懲役刑の執行猶予 刑法25条1項
保護観察     刑法25条の2第1項前段
訴訟費用の負担  刑事訴訟法181条1項本文
(量刑の事情)
 被告人は,性交場面等の動画を投稿して金銭を得る目的で,知り合った女性被害者をだまして,被害者らとの性交場面を無断で撮影・投稿して本件各犯行に及んだ。その態様はまことに卑劣・非人間的であり,被害者らの受けた精神的苦痛も極めて大きい。そして,本件は常習性の高い職業的犯行でもあって,利欲目的という動機や経緯にももとより酌むべきところはない。弁護人は被害者に一定の落ち度があったと主張するが,被告人は被害者に対して自己が閲覧するだけの目的である旨うそを言って撮影をしているのであって,被害者に落ち度があるとはいえない。被害回復として犯行に用いた携帯電話の処分を求められても利己的な理由で応じようとしないことを含め,被告人の認知にはゆがみがあり,これを矯正しない限り同種異種の再犯のおそれも否定できない。
 他方,被害者のうち1名とは被告人が同被害者に20万円を分割払いすること(など)を内容とする示談が成立しており,また被告人は前科がないなどの事情もあるので,今回は主文の刑を定めた上で懲役刑に限ってその執行を猶予することとしたが,本件犯行の内容,常習性の高さ,被告人の性向や生活状況等を考慮すると,その猶予期間は長めとする必要があり,また,他の被害者に対する被害弁償も実現させる必要のあること(なお,訴訟費用を負担することを被害弁償をしない理由にさせないことを含む。)や,被告人に適正な監督者や満足できる更生資源が見当たらないことを考慮すると,保護観察による強力な指導が不可欠である。
 そこで,主文のとおり量刑した。
(求刑 懲役2年及び罰金30万円)
  平成29年7月3日
    京都地方裁判所第1刑事部
           裁判官  橋本 一

「Bの陰部周辺が撮影された画像データ」が3号リベンジポルノとされたが、「Cのスカート内が撮影された静止画2点並びにCの顔及びそのスカート内の下着等が撮影された動画1点」はリベンジポルノとしては起訴されていない事例(福岡地裁h29.3.22)

 いわゆる逆さ撮りについては、この判決では「衣服の全部又は一部を着けない人の姿態であって、殊更に人の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀でん部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、」とはされていません。

私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律
第二条(定義)
 この法律において「私事性的画像記録」とは、次の各号のいずれかに掲げる人の姿態が撮影された画像(撮影の対象とされた者(以下「撮影対象者」という。)において、撮影をした者、撮影対象者及び撮影対象者から提供を受けた者以外の者(次条第一項において「第三者」という。)が閲覧することを認識した上で、任意に撮影を承諾し又は撮影をしたものを除く。次項において同じ。)に係る電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。同項において同じ。)その他の記録をいう。
三 衣服の全部又は一部を着けない人の姿態であって、殊更に人の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀でん部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの

westlaw
裁判年月日 平成29年 3月22日 裁判所名 福岡地裁 裁判区分 判決
事件番号 平28(わ)1099号 ・ 平28(わ)1198号 ・ 平28(わ)1395号 ・ 平28(わ)1551号
事件名 わいせつ電磁的記録有償頒布目的保管,名誉毀損,私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律違反被告事件
文献番号 2017WLJPCA03226005

主文

 被告人を懲役3年及び罰金250万円に処する。
 未決勾留日数中100日を,その1日を金1万円に換算して,その罰金刑に算入する。
 その罰金を完納することができないときは,金1万円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
 この裁判が確定した日から3年間その懲役刑の執行を猶予する。
 
 
理由

 【犯罪事実】
 ※〈 〉内は当該事実に係る起訴日付等を示す。また,別紙を引用する部分は,公判廷で秘匿した被害者特定事項を含む事項である。
 被告人は,
第1 〈平成28年9月15日付け(訴因変更後のもの)〉Aらと共謀の上,平成27年8月4日頃,東京都内,沖縄県内又はその周辺において,インターネット接続端末を使用して,インターネットを介し,別紙の1(1)記載の者(以下「B」という。)の顔を撮影した動画データや別紙の1(2)記載のとおりの第三者が撮影対象者を特定できる文言と共に,Bの陰部周辺が撮影された画像データ2点を,スウェーデン王国内に設置されたサーバコンピュータ及び同サーバコンピュータの画像システムに接続可能な北海道石狩市〈以下省略〉に設置されたサーバコンピュータに記録・蔵置させ,不特定多数のインターネット利用者に対し,同画像の閲覧が可能な状態を設定し,もって公然と事実を適示してBの名誉を毀損すると共に,第三者が撮影対象者を特定できる方法で,衣服の全部又は一部を着けない人の姿態であって,殊更に人の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ性欲を興奮させ又は刺激するものである私事性的画像記録物を公然と陳列した。
第2 〈平成28年10月27日付け〉前記Aらと共謀の上,平成28年4月30日頃,沖縄県宜野湾市〈以下省略〉aマンション502号室において,パーソナルコンピュータを使用してインターネットを介し,別紙の2(1)記載の者(以下「C」という。)の顔を撮影した静止画や別紙の2(2)記載のとおりの第三者が撮影対象者を特定できる文言と共に,Cのスカート内が撮影された静止画2点並びにCの顔及びそのスカート内の下着等が撮影された動画1点を,同年5月1日頃に不特定多数の者が閲覧可能な「○○」と題するインターネットサイト(以下「○○サイト」という。)内に掲載されるよう設定し,同日頃から同年6月30日頃までの間,不特定多数のインターネット利用者に対し,同動画等の閲覧が可能な状態にし,もって公然と事実を適示してCの名誉を毀損した。
第3 〈平成28年11月29日付け第1〉前記Aらと共謀の上,平成28年5月12日頃,前記aマンション502号室において,パーソナルコンピュータを使用してインターネットを介し,別紙の3(1)記載の者(以下「D」という。)の顔を撮影した静止画や別紙の3(2)記載のとおりの第三者が撮影対象者を特定できる文言と共に,Dのスカート内の下着等が撮影された動画1点を,同月13日頃に○○サイトに掲載されるよう設定し,同日頃から同年6月30日頃までの間,不特定多数のインターネット利用者に対し,同動画等の閲覧が可能な状態にし,もって公然と事実を適示してDの名誉を毀損した。
第4 〈平成28年11月29日付け第2〉前記Aらと共謀の上,平成28年5月19日頃,前記aマンション502号室において,パーソナルコンピュータを使用して,インターネットを介し,別紙の4(1)記載の者(以下「E」という。)の顔を撮影した静止画や別紙の4(2)記載のとおりの第三者が撮影対象者を特定できる文言と共に,Eのスカート内の下着等が撮影された動画1点を,同月20日頃に○○サイトに掲載されるよう設定し,同日頃から同年6月30日頃までの間,不特定多数のインターネット利用者に対し,同動画等の閲覧が可能な状態にし,もって公然と事実を適示してEの名誉を毀損した。
第5 〈平成28年8月22日付け〉Fらと共謀の上,有償で頒布する目的で,平成28年8月1日,前記aマンション502号室において,記録媒体である外付けハードディスク110台に,男女の性交場面及び男女の性器等を露骨に撮影したわいせつな動画データファイル等110点を記録した電磁的記録を保管した。
 【証拠】
 【法令の適用】
 罰 条
 犯罪事実第1 名誉毀損の点 刑法60条,230条1項
 私事性的画像記録物公然陳列の点刑法60条,私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律3条2項,2条2項,1項3号
 犯罪事実第2ないし第4 いずれも刑法60条,230条1項
 犯罪事実第5 刑法60条,175条2項
 科刑上一罪の処理 刑法54条1項前段,10条(犯罪事実第1につき1罪として犯情の重い名誉毀損罪の刑で処断)
 刑種の選択 犯罪事実第1ないし第4につきいずれも懲役刑,犯罪事実第5につき懲役刑及び罰金刑を選択
 併合罪加重 刑法45条前段,47条本文,10条(懲役刑につき刑及び犯情が最も重い犯罪事実第1の罪の刑に加重),48条1項(罰金刑を併科)
 未決勾留日数の算入 刑法21条
 労役場留置 刑法18条
 刑の執行猶予 刑法25条1項
 【量刑の理由】
 犯罪事実第1ないし第4については,被告人らが公開した内容は各被害者の名誉を著しく辱めるもので,とりわけ第1はわいせつ性が高い。インターネットサイトに掲載するという犯行態様は,被害者らにとって耐えがたい情報を極めて広範囲の不特定多数の者に拡散させるものである上,ひとたび拡散した情報はコントロールすることが困難で,名誉毀損の方法としては極めて悪質である。犯罪事実第5については,保管していた電磁的記録に係る動画は非常に多数に上り,いずれもわいせつ性が高い。いずれの犯行も,有料動画配信サイトの運営等を業とする株式会社b(以下「b社」という。)の業務の一環としてなされた,営利的,組織的な犯行である点も重い犯情である。
 被告人は本件各犯行の実行行為には関与していないが,A,Fらと共に有料アダルトサイトの経営によって利益を図ることを目論み,サイトの開設,b社の設立等の本件各犯行の基盤作りに関わった上,クレジット代行会社の経営者としてb社の運営するサイトから配信される有料動画の代金回収に関わることを通じて本件各犯行を下支えすると共に,売上の5%を手に入れていたのであり,果たした役割と得た利益は大きい。懲役刑については相応に長期の刑が相当し,犯罪事実第5の関係ではb社の幹部社員と同程度の罰金刑を併科すべきである。
 他方,被告人は,本件により長期間の身柄拘束と正式裁判を受ける中で,自身の本件各犯行の違法性や悪質性を認識し,今後はこの種の仕事には携わらないことを誓っている。名誉毀損の各被害者とは示談が成立し,被告人は被害弁償として合計1050万円を支払っている。被告人にはわいせつ図画販売目的所持の罪で執行猶予付きの懲役刑に処せられた前科があるものの,服役した前科はない。こうした事情を考慮すると,本件は社会内で更生する機会を与え得る事案であり,主文のとおりの懲役刑及び罰金刑に処した上,懲役刑についてはその執行を猶予する(求刑は懲役4年及び罰金250万円)。
 平成29年3月22日
 福岡地方裁判所第1刑事部
 (裁判官 丸田顕)

「被告人は,A(当時25歳。以下「A」という。)に強いてわいせつな行為をしようと考え,平成28年12月15日午前3時40分頃,宇都宮市〈以下省略〉aビル南側歩道上において,同人に対し,いきなり正面から抱き付いた上,同人の左腕を右手で引っ張って前記aビル西側路上に連れて行き,同所において,その背後から同人の口を手で塞ぎ,同人の右乳房を着衣の上からもみ,もって強いてわいせつな行為をしたものである。」という強制わいせつ被告事件で無罪とした事例(宇都宮地裁h29.10.18)

「被告人は,A(当時25歳。以下「A」という。)に強いてわいせつな行為をしようと考え,平成28年12月15日午前3時40分頃,宇都宮市〈以下省略〉aビル南側歩道上において,同人に対し,いきなり正面から抱き付いた上,同人の左腕を右手で引っ張って前記aビル西側路上に連れて行き,同所において,その背後から同人の口を手で塞ぎ,同人の右乳房を着衣の上からもみ,もって強いてわいせつな行為をしたものである。」という強制わいせつ被告事件で無罪とした事例(宇都宮地裁h29.10.18)

宇都宮地裁平成29年10月18日
主文
 被告人は無罪。
理由
 1 本件公訴事実と争点
 本件公訴事実は,「被告人は,A(当時25歳。以下「A」という。)に強いてわいせつな行為をしようと考え,平成28年12月15日午前3時40分頃,宇都宮市〈以下省略〉aビル南側歩道上において,同人に対し,いきなり正面から抱き付いた上,同人の左腕を右手で引っ張って前記aビル西側路上に連れて行き,同所において,その背後から同人の口を手で塞ぎ,同人の右乳房を着衣の上からもみ,もって強いてわいせつな行為をしたものである。」というものである。
 本件公訴事実について,弁護人は,被告人が公訴事実記載の日時場所においてAと一緒にいたことは否定しないが,被告人がAに対し公訴事実記載の行為をしたことは一切ないから無罪であると主張し,被告人もこれに沿う供述をしている。したがって,本件の主たる争点は,被告人が公訴事実記載の暴行行為やわいせつ行為をしたと認められるか否かである。
 2 前提事実
 関係証拠によれば,検討の前提となる事実関係として,次のとおりの事実が明らかである。
  (1) Aは,平成28年12月14日の夜,宇都宮市内のバーで飲んでいたところ,居合わせた被告人の職場の同僚から話しかけられ,翌15日午前1時頃まで,バーのカウンターに同人と並んで座って,お酒を飲みながら話をすることになった。この間,Aは,元カレの友人(B。以下「B」という。)に対し,スマートフォンの無料通話アプリのLINEで,「からまれてしまった」「楽しいけどもうかえりたい」「カウンターで飲んでて 話しかけられた おじさまに」「さり気なく肩タッチされんの 勘弁してくだせえ」といった内容のメッセージを送っていた。
 なお,Aは,本件以前に被告人と面識はなかったが,上記同僚と一緒にバーに来ていた被告人が,Aらの所に来て話に加わることもあったことから,被告人との間に面識が生まれた。
  (2) Aは,同月15日午前1時頃,被告人らと一緒に上記バーを出た。その際,被告人の同僚から「一緒にカラオケに行こう」と誘われ,被告人からもそのように勧められたが,これを断り,被告人らと別れて,一人でカラオケ店に入った。この頃,Aは,上記友人Bに対し,LINEで,「くっそしつけえくっそ」「やっと解放された」「つかれた」といった内容のメッセージを送っていた。
  (3) 一方,被告人は,Aと別れた後,上記同僚とも別れて,一人で時間をつぶしていたところ,同日午前3時30分過ぎ頃,上記カラオケ店から出てきたAと再会した。
  (4) 被告人は,タクシーが停車している方向に向かって歩くAの横を歩きながら,Aに話しかけた。Aからは気乗りしない反応しか得られなかったが,タクシーの近くまで来てAがタクシーに乗車しようとした際,Aにタクシーに乗るのを止めさせ,さらに,Aとともに近くの路地まで移動した。しかし,その後ほどなく,Aは,小走りで上記路地から出て,上記タクシーに乗り込み,その場を離れた(なお,この間に,被告人が公訴事実記載の暴行やわいせつ行為をしたかが争われている。)。
  (5) Aは,同日午前3時50分過ぎ頃,上記タクシーで,上記友人Bの家に行った。そして,同人の勧めで,同日朝,同人とともに警察署に赴き,本件公訴事実と同旨の被害に遭った旨の申告をした。
・・・
 6 結語
 結局,本件公訴事実については,合理的な疑いを超えた証明がなされたとはいえず,犯罪の証明がないことになるから,刑事訴訟法336条により,被告人に対し無罪の言渡しをする。
 宇都宮地方裁判所刑事部
 (裁判官 柴田誠)

強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪を観念的競合とするもの(2018年1月31日現在)

強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪を観念的競合とするもの(2018年1月31日現在)
 ついに東京高裁も観念的競合説書きましたよ。
 
名古屋地裁一宮 H17.10.13
東京地裁 H18.3.24
東京地裁 H19.2.1
東京地裁 H19.6.21
横浜地裁 H19.8.3
長野地裁 H19.10.30
7 札幌地裁 H19.11.7
東京地裁 H19.12.3
高松地裁 H19.12.10
10 山口地裁 H20.1.22
11 福島地裁白河支部 H20.10.15
12 那覇地裁 H20.10.27
13 金沢地裁 H20.12.12
14 金沢地裁 H21.1.20
15 那覇地裁 H21.1.28
16 山口地裁 H21.2.4
17 佐賀地裁唐津支部 H21.2.12
18 仙台高裁 H21.3.3
19 那覇地裁沖縄支部 H21.5.20
20 千葉地裁 H21.9.9
21 札幌地裁 H21.9.18
22 名古屋高裁 H22.3.4
23 松山地裁 H22.3.30
24 さいたま地裁川越支部 H22.5.31
25 那覇地裁沖縄 H22.5.13
26 横浜地裁 H22.7.30
27 福岡地裁飯塚 H22.8.5
28 高松高裁 H22.9.7
29 高知地裁 H22.9.14
30 水戸地裁 H22.10.6
31 さいたま地裁越谷支部 H22.11.24
32 松山地裁大洲支部 H22.11.26
33 名古屋地裁 H23.1.7
34 広島地裁 H23.1.19
35 広島高裁 H23.5.26
36 高松地裁 H23.7.11
37 大阪高裁 H23.12.21
38 秋田地裁 H23.12.26
39 横浜地裁川崎支部 H24.1.19
40 福岡地裁 H24.3.2
41 横浜地裁 H24.7.23
42 福岡地裁 H24.11.9
43 松山地裁 H25.3.6
44 横浜地裁横須賀 H25.4.30
45 大阪高裁 H25.6.21
46 横浜地裁 H25.6.27
47 福島地裁いわき支部 H26.1.15
48 松山地裁 H26.1.22
49 福岡地裁 H26.5.12
50 神戸地裁尼崎 H26.7.29
51 神戸地裁尼崎 H26.7.30
52 横浜地裁 H26.9.1
53 津地裁 H26.10.14
54 名古屋地裁 H27.2.3
55 岡山地裁 H27.2.16
56 長野地裁飯田 H27.6.19
57 広島地裁福山 H27.10.14
58 千葉地裁松戸 H28.1.13
59 高松地裁 H28.6.2
60 横浜地裁 H28.7.20
61 名古屋地裁岡﨑 H28.12.20
62 東京地裁 H29.7.14
63 東京高裁 H30.1.30

動物の愛護及び管理に関する法律違反被告事件について、世間の反応が「本件が広く報道され,被告人を批判する声が多数挙がるなどして,税理士を廃業するに至った。それにとどまらず,勤務先の税理士事務所や被告人の家族に嫌がらせをされ,インターネット上に被告人に対する危害予告とも解される書き込みがされたなどといった事実が認められ,被告人が様々な制裁を受けているとの弁護人の指摘もあながち否定できない。」と評価された事例(東京地裁h29.12.12)

 法令適用が公開されていません。

「その凄惨な映像を見て強い嫌悪感や憤りを覚えた者らから,被告人の厳罰を求める非常に多数の嘆願書が裁判所に提出されるなど,本件が社会に与えた影響も大きいものがある。」ということなので、署名を取り調べたのか、被告人質問で話題になったかなんでしょうね。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=87409
事件番号  平成29特(わ)1985
事件名  動物の愛護及び管理に関する法律違反被告事件
裁判年月日  平成29年12月12日
裁判所名・部  東京地方裁判所  刑事第15部

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/409/087409_hanrei.pdf
平成29年12月12日宣告
平成29年特(わ)第1985号,第2048号
動物の愛護及び管理に関する法律違反被告事件
主 文
被告人を懲役1年10か月に処する。
この裁判確定の日から4年間その刑の執行を猶予する。
理 由
【犯罪事実】
被告人は,埼玉県深谷市〔以下省略〕の敷地内において,第1 別表1(省略)記載のとおり,平成28年4月2日から平成29年4月17日までの間,前後9回にわたり,猫を金属製捕獲器に閉じ込めた上,その全身に熱湯を数回かけるなど別表1の「犯行態様及び死因」欄記載のとおりの態様,死因により,猫合計9匹を死亡させ,もって愛護動物をそれぞれみだりに殺し,第2 別表2(省略)記載のとおり,平成28年3月24日から平成29年2月15日までの間,前後4回にわたり,猫を金属製捕獲器に閉じ込めた上,その全身に熱湯を1回かけるなど別表2の「犯行態様」欄記載のとおりの態様により,猫合計4匹にⅡ度以上の熱傷の傷害を負わせ,もって愛護動物をそれぞれみだりに傷つけた。
【量刑の理由】
本件は,愛護動物である猫9匹を殺害し,4匹に傷害を負わせた事案である。
捕獲器で捕まえた猫に,熱湯を繰り返し浴びせかけたり,ガストーチの炎であぶったり,パイプに取り付けたロープでその首をつるし,熱湯を満たした缶に漬けたりするといった態様で,猫を殺害し,あるいは重傷を負わせるなどしており,その犯行態様は,誠に残虐なものである。
1年余りの間に合計13匹の猫に虐待を加えており,本件が常習的犯行であることも認められる。
本件によって,多くの猫の命が奪われるなどしたという結果の重さにとどまらず,被告人は,犯行を撮影した動2画をインターネット上に投稿したため,その凄惨な映像を見て強い嫌悪感や憤りを覚えた者らから,被告人の厳罰を求める非常に多数の嘆願書が裁判所に提出されるなど,本件が社会に与えた影響も大きいものがある。
被告人は,かつて猫の糞尿被害に遭ったことや,税理士としての繁忙期に手をかまれて仕事に支障を来したことで猫に対して悪感情を抱き,インターネット上で見た残虐な映像に感化され,駆除のために本件に至った旨述べる。
しかし,駆除行為とはいえないような虐待を当初から行っている上,被告人自身も公判廷で認めるように,犯行を繰り返すうちに,虐待行為自体に楽しみを覚えるとともに,その様子を撮影した動画をインターネット上で公開することが目的化したというのであって,本件各犯行を正当化する余地はない。
本件各犯行は,動物愛護の精神に反する悪質なものであり,被告人に対しては,懲役刑を科すべきである。
その一方で,被告人は,これまでA職員や税理士として前科もなく生活してきたところ,自らの行為が招いた結果ではあるが,本件が広く報道され,被告人を批判する声が多数挙がるなどして,税理士を廃業するに至った。
それにとどまらず,勤務先の税理士事務所や被告人の家族に嫌がらせをされ,インターネット上に被告人に対する危害予告とも解される書き込みがされたなどといった事実が認められ,被告人が様々な制裁を受けているとの弁護人の指摘もあながち否定できない。
また,被告人は,公判廷で自己の行為が誤りであったことを認めるとともに,自分があやめた猫に対するしょく罪の気持ちを持ち続けると述べ,動物愛護団体にしょく罪のための寄附も行っている。
このような事情に加え,動物の愛護及び管理に関する法律が定める法定刑や同種事案の量刑傾向にも照らせば,主文の刑に処した上で,その執行を猶予するのが相当であるが,行為の残虐性や常習性といった本件各犯行の悪質さを踏まえれば,その執行猶予期間は,同種事案に比較して長期間とすべきであると思料した。
(求刑 懲役1年10か月)
東京地方裁判所刑事第15部裁判官 細 谷 泰 暢

児童淫行罪の被害者と示談(300万円)・宥恕えて、2項破棄された事例(名古屋高裁H29.9.12)

 

名古屋高等裁判所
平成29年9月12日刑事第2部判決

       判   決
 上記の者に対する児童福祉法違反被告事件について,平成29年3月13日名古屋地方裁判所岡崎支部が言い渡した判決に対し,被告人から控訴の申立てがあったので,当裁判所は,検察官江幡浩行出席の上審理し,次のとおり判決する。


       主   文

原判決を破棄する。
被告人を懲役2年6月に処する。
原審における未決勾留日数中240日をその刑に算入する。
原審における訴訟費用は被告人の負担とする。


       理   由

 本件控訴の趣意は,弁護人熊谷考人作成の控訴趣意書(当審第1回公判期日における口頭による訂正後のもの)に記載されているとおりであるから,これを引用する。
1 原判決の認定事実と本件控訴の趣意等
(1)原判決は,罪となるべき事実として,要旨,被告人が,当時17歳の被害者(以下「A」ともいう。)が満18歳に満たない児童であることを知りながら、Aが通っていた高校等の運営に関与し,生徒であるAらの音楽教育等の指導に当たるとともに,愛知県内の高校の寮でAらと共同生活をしてその生活全般の指導監督に当たっていたところ,その立場を利用して,平成28年3月8日(以下「本件当日」という。),上記寮内において,Aをして,被告人を相手に性交させ,もって児童に淫行をさせる行為をした,という児童福祉法違反の犯罪事実を認定,摘示している。
(2)論旨は,要するに,被告人は,Aと性交しておらず,また,自己の立場を利用して,Aに淫行をさせる行為をしていないのに,前記(1)の犯罪事実を認めた原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認がある,というものである。 
 もっとも,弁護人は,当審第2回公判期日において,弁論の再開を求め,その後行われた被告人質問で,被告人は前記(1)の犯罪事実を認めるに至った。さらに,弁護人は,事実の取調べによって明らかになった,被害者側と示談が成立し,被害者側から減刑嘆願がなされていること等を,原判決後の事情として考慮し,量刑について職権判断を求めるに至った。
2 論旨に対する検討
(1)既に述べたとおり,現時点においては,被告人は,前記1(1)の犯罪事実を認めるに至っており,それを裏付けるAの原審公判証言(以下「A証言」のようにいう。)等の証拠が存在するから,前記1(1)の犯罪事実を優に認めることができ,同事実を認めた原判決の判断に,結論において,誤りがないことは明らかである。
(2)念のため,論旨に鑑み,前記1(1)の犯罪事実を認定した原判決の判断に誤りのないことを確認しておく。
ア 原判決は,概要以下のような判断をしている。すなわち,平成28年3月11日にAの膣の奥の部分から採取された内容物に被告人のDNA型とそれが一致する精子が含まれていたことなどから,同日に近接した時点で,被告人とAが性交した事実がほぼ確実なものと推認され,これと,本件当日,被告人に性交されたとするA証言(後記イのとおり信用できるものである。)を併せれば,被告人がAと性交した事実自体は,優に認定できる。さらに,被告人が,Aの通う高校及び習い事の学校の運営に関わるとともに,Aらと高校の寮で共同生活をし,Aを指導監督する立場にあったところ,約半年前からAに対して性的行為に及んでいた中で,Aを連れ出して高校の寮に二人きりでいた際に,Aから生理中であることを理由に再三拒まれたにもかかわらず,Aに対し,執ように被告人と性的行為を行うよう求め,被告人が一方的に胸や陰部を触るなどの性的行為を行い,性交にも及んだことが認められるから,被告人は,自己の立場を利用して,Aに「淫行をさせる行為」をしたと認定できる。
イ(ア)上記判断の骨格となるA証言の信用性を検討する。その内容を見ても,被告人から性的行為を受けるようになった経緯や,本件当日の被告人とAの行動,さらには,被告人がAと前記寮内で性交した際の行為態様や発言内容(性交中に,被告人は,「中に出すぞ」とか,「今出した」などとも言った。)等,具体性に富み,特段不自然なところがない。加えて,被告人から性的被害を受けていることを同じ習い事の学校に通う被害者の友人(以下「B」という。)に打ち明けた経緯や状況については,B証言によって十分その信用性が裏付けられている。また,Aが直接警察に被害を申告したわけではなく,Bに,いわば偶然に被害を打ち明けたという経緯からすれば,Aが被告人を意図的に陥れようとしたものとは考えられない。
 したがって,A証言は十分信用することができる。
(イ)所論は,A証言やその信用性を支えるB証言等の信用性を論難するが,A証言に所論が指摘するような不自然・不合理な点は認められず,BがAと口裏合わせをしたような事情などもうかがわれないことなどに照らすと,いずれも理由がない。
ウ 所論は,種々の点を指摘して,被告人の原審公判供述は信用性が高い旨主張するが,特にその信用性を支持するような客観的な裏付け等があるわけでもなく,上記A証言の信用性を左右するような事情は見当たらないから,原判決が指摘するとおり,それに反する被告人の原審公判供述は信用性に欠けるものといわざるを得ない。
エ 以上の次第であるから,A証言の信用性を認めた原判断に誤りはなく,それらの関係証拠に基づいて,前記1(1)の犯罪事実を認めた原判決に誤りはない。論旨は理由がない。
3 職権判断
(1)原判決の量刑について,弁護人は,当審での事実取調べの結果明らかとなった示談の成立等の原判決後の事情を指摘して職権判断を求めているから,この点につき職権で調査する。
 原判決が指摘するとおり,被告人は,自己の立場を利用し,高校の寮内で,被害児童の懇願に応じることなく,執ように性的行為を促して,性交に及び,膣内に射精までして,妊娠の危険にさらしたのであるから,卑劣で悪質な犯行というほかない。被害児童の受けた精神的・肉体的苦痛は大きく,結果は重大である。被害児童に対して性的行為を繰り返していたという被告人には,常習性もうかがわれる。
 被告人は,平成16年に青少年との性交2件を内容とする条例違反の罪により執行猶予付きの懲役刑に処せられ,次に,平成25年8月には,本件と同種の,被告人が実質的に経営していた塾の生徒である児童2名と性交等して淫行をさせる行為をしたという児童福祉法違反等の罪により懲役3年,5年間保護観察付き執行猶予に処せられた。それにもかかわらず,その判決宣告から約2年7か月という,保護観察付き執行猶予期間中に,更に本件犯行に及んでいるから,被告人にはこの種犯罪傾向が顕著であると評価せざるを得ず,遵法精神の乏しさもまた明らかであり,非難の程度は相当に厳しい。
 原判決は,そのほか,被告人が不合理な弁解に終始し,反省の態度が見られないこと,前刑の執行猶予の取消しが見込まれることをも考慮し,被告人を懲役3年に処するのが相当であるとの判断を示している。原判決の言渡しの時点でみる限り,この量刑判断が重過ぎて不当であるとは認められない。
 しかし,当審での事実取調べの結果,被告人が,被害児童の将来をもおもんぱかるなどして事実を認めるに至り,被害児童側との間で示談を成立させて300万円を支払ったこと,それを受けて被害児童側も減刑等の寛大な処分を求めるに至っていることが認められる。これらの事情は,事後の事情であっても,相応に量刑に影響を与えるものであるから,現時点においては,原判決の量刑は,いささか重過ぎるに至ったものと考えられ,刑期の点で是正を要する。
(2)よって,刑訴法397条2項により原判決を破棄し,同法400条ただし書により更に次のとおり判決する。
 原判決の認定した罪となるべき事実に,原判決と同じ罰条の適用,刑種の選択をし,その刑期の範囲内で被告人を懲役2年6月に処し,刑法21条を適用して原審における未決勾留日数中240日をその刑に算入し,原審における訴訟費用は刑訴法181条1項本文により全部これを被告人に負担させることとして,主文のとおり判決する。
平成29年9月12日
名古屋高等裁判所刑事第2部
裁判長裁判官 村山浩昭 裁判官 入江恭子 裁判官 赤松亨太