児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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下着が見える状態での写真撮影に応じさせる目的で、他に誰もいない同校1棟校舎東側3階から屋上階に通じる階段に呼び出し、Aに、制服スカートの中に履いていたスパッツを脱ぐよう命じるなどしてこれに応じさせた上、脚を開かせた状態で階段に座らせ、その下方から同人の写真を撮影し、同日午後5時頃までの間、同人をして、その場にとどまらせるとともに、下着が見える状態での写真撮影に応じさせ、」という有害支配(児童福祉法違反)+児童ポルノ所持の事例(堺支部h30.3.19)

 製造は起訴されていません。

大阪地方裁判所支部
理由
(罪となるべき事実)
 被告人は、
第1 大阪府B市に所在する中学校の教諭として勤務し、平成25年11月頃から、自己が担任を務めるクラスの生徒で、自己が顧問を務める部活動の部員でもあったAに対し、学習指導等の名目で、部活動中に同人だけを呼び出したり、部活動後に残るよう指示するなどして、他に誰もいない場所で同人の写真を撮影するなどの行為を繰り返していたものであるが、平成26年11月17日午後4時30分頃から、A(当時14歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら、下着が見える状態での写真撮影に応じさせる目的で、他に誰もいない同校1棟校舎東側3階から屋上階に通じる階段に呼び出し、Aに、制服スカートの中に履いていたスパッツを脱ぐよう命じるなどしてこれに応じさせた上、脚を開かせた状態で階段に座らせ、その下方から同人の写真を撮影し、同日午後5時頃までの間、同人をして、その場にとどまらせるとともに、下着が見える状態での写真撮影に応じさせ、もって児童の心身に有害な影響を与える行為をさせる目的をもって、これを自己の支配下に置く行為をし、
第2 自己の性的好奇心を満たす目的で、平成29年9月29日、C市D区の被告人方において、衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものであって、いずれも視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノである動画データ4点を記録及び蔵置した外付けハードディスク1台を所持した。
(事実認定の補足説明)
 弁護人は、判示第1の事実について、被告人はAの下着が写るような写真を撮ったことはなく、無罪であると主張し、被告人もこれにそう供述をする。そこで、判示のとおり事実を認定した理由を説明する。
1 Aの供述要旨
  私は中学2年生のときに判示中学校に転校した。被告人がクラス担任で、部活動の顧問だった。平成25年11月下旬頃、被告人から部室に残って勉強をするよう指示され、これに応じた。その帰り際、被告人から「リフレッシュに写真撮ろうか」と言われ、階段で写真を撮ることになった。階段の踊り場から七、八段上がったところに座るよう指示されたので、そこに座った。私は、毎日スカートの下に下着だけでなくハーフパンツを履いていたところ、被告人は「ハーフパンツが写るとかっこ悪い」「脱いでください」などと言った。ハーフパンツを脱いだらパンツが見えるかもしれないし、そこまでしなければいけないのかと思ったが、反発したら説教されて帰るのが遅くなると思ったので、ハーフパンツを脱ぎ、脚を閉じて座った。すると、被告人は「そうじゃない」と言って、両足首をつかんで私の脚を開き、「脚を閉じているとバランスが悪くて、体勢が不格好だから、どっしりかまえる感じで、ほどよく開いておいてくれるか」などと言った。被告人は、踊り場に降り、立て膝をついてしゃがみ込むような体勢で見上げるようにして写真撮影をし、「写真を撮ったことは、卒業用のサプライズにするから、秘密にしておくように」などと念押ししてきた。パンツが写っているんじゃないかと不安になったが、まさか先生という立場の人がそんなことをするはずがないという気持ちもあった。誰にも言うなという指示を守らないと怒られるし、両親は私より被告人を信用するだろうから、黙っておくことにした。これ以降、毎日のように被告人から同じような写真を撮られた。3年生になっても担任は被告人のままで、写真撮影も続いた。夏休みには、調理準備室で数冊積み上げた本の上に座らされて写真を撮られたことなどもあった。平成26年11月に部活動を引退した後も、被告人から勉強しに来いなどと言われ、部活動の時間の終わり頃に被告人から呼び出され、階段で写真を撮られた。
  私は、部活動を引退したのに写真を撮られたり、被告人から抱きしめられることがあったりしたことなどから、パンツを撮っているんじゃないか、いやらしい写真を撮っているんじゃないかという疑いの気持ちを強めていき、被告人から写真撮影されることを見込んで、同月17日、ハーフパンツの下にスパッツを履いておき、被告人にパンツが見えていたのかを確認することにした。同日、私は、いつものように被告人から呼び出されて階段に行き、ハーフパンツを脱いだが、スパッツは脱がずに、太ももの付け根まで短く折り曲げておいた。被告人は、脚を開いた状態で階段に座った私を見上げるようにして撮影しようとし、カシャと音が鳴った瞬間、怒った表情で階段を上がってきて、私のスカートのウエスト部分から、両手の親指を突っ込み、無言でスカートを上下に揺さぶった。被告人は、私をにらみつけ、強い口調で「何でスパッツ履いてるんや」「脱げ」などと言ってきた。私は、その瞬間、やはり今までもパンツが見えていたのだと確信し、それと同時に怖いと思った。ここで抵抗したら力で負けるし、乱暴されるかもしれないと思って、必死の思いで謝った。スパッツを履いていることが分かった理由を被告人に尋ねると、被告人は「ウエストを揺すったときに、スパッツが見えた」などと言ったが、私はブラウスの裾をスカートに入れていたので、ウエストの隙間からスパッツが見えるとは思えなかった。被告人の口調や表情がとても怖くて抵抗できなかったので、私は、スパッツを脱ぎ、脚を開いた状態で階段に座った。被告人は、階段の下方から見上げるようにして私の写真を撮った。その翌日である同月18日、母に打ち明けた。家族で話し合った結果、高校受験への影響等を考慮し、被告人を避けることになったが、平成27年1月16日、事情を打ち明けていた友人と被告人との口論をきっかけに養護教諭にも事情を話し、学校側の知るところとなった。
2 検討
  被告人から下着が見えているのかを確認するため、あらかじめハーフパンツの下にスパッツを履いていたが被告人に看破されてスパッツを脱ぐよう命じられたなどの本件被害状況等に関するAの供述は、実際に体験した者でなければ語ることが困難な内容であり、写真撮影に応じさせられていた従前の経過を含め、当時の心情を織り交ぜて具体的かつ生々しく語るものであって、そこに不自然な点は見当たらない。また、関係証拠によれば、Aは、本件被害を母に打ち明けて以降、一貫した供述をしているし、Aに虚偽の供述をする動機もうかがわれない。さらに、Aが平成26年11月中旬頃から被告人を避けるようになったという被告人も認める事実は、Aの供述にそうものといえる。そして、被告人は、平成27年1月16日、Aを写真撮影していたことについて校長から事情聴取された際、Aを撮影した写真データが入っている記録媒体を提出するよう求められたにもかかわらず、その事情聴取の合間等に、学校のパソコンのハードディスク等に保存されていたデータを大量に削除したり、デジタルカメラのSDカードをフォーマットした上で校長に提出したりし、かつ、その行動について合理的な説明がされていない事実は、被告人が学校側に知られたくないデータを管理していたことを推認させるものであって、これもAの供述にそうものといえる。
  以上によれば、Aの供述は信用することができ、同供述により判示第1の事実が認められる。
(量刑の理由)
 量刑の中心となる児童福祉法違反についてみると、被告人は中学校教諭という生徒の健全な育成を担うべき職にありながら、被害者の心身への悪影響も自身の職責も顧みずに犯行に及んでおり、強い非難を免れない。当時14歳の被害者が受けた精神的苦痛は大きく、その処罰感情が厳しいのも当然といえる。それにもかかわらず、被告人に反省の態度はうかがわれない。
 そうすると、被告人が児童ポルノの所持については罪を認めていることや、前科前歴がないこと、自業自得であるものの本件により相応の処分が予定されることなどを考慮しても、本件は罰金刑で済まされるような事案ではなく、主文の懲役刑に処してその刑事責任の重さを明らかにした上で、刑の執行を猶予するのが相当である。
(求刑・懲役1年6月)
第1刑事部
 (裁判長裁判官 武田義德 裁判官 櫻井真理子 裁判官 白井知志)