児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

児童淫行罪の罪となるべき事実中で,「もって児童に淫行をさせる行為をした」との法的評価を基礎付ける事実として,被告人とAがB高校の教頭と生徒という関係にあったこと,被告人がAから相談を受ける「など」していたこと,Aの年齢,ホテルで被告人を相手に性交させたことを摘示している(訴因も同様である。)。これらの事実からは,被告人が教頭という立場を利用し,相談に乗ってくれる被告人に信頼を寄せていたAに事実上の影響力を及ぼし,淫行をなすことを助長し促進する行為をした事実が推知できる。また,冒頭陳述や原判決の(事実認定の

 地裁管轄に移ってきてから正常化してるような気がする

広島高等裁判所平成29年9月5日第1部判決
       判   決
 上記の者に対する児童福祉法違反,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件について,平成29年4月13日広島地方裁判所が言い渡した判決に対し,被告人から控訴の申立てがあったので,当裁判所は,検察官西尾正出席の上審理し,次のとおり判決する。
       理   由
1 控訴の趣意
 本件控訴の趣意は,主任弁護人佐々木和宏及び弁護人我妻正規共同作成の控訴趣意書に記載されているとおりであるから,これを引用する。
 原判決は,定時制の県立高校(以下「B高校」という。)の教頭として,当時16歳の女子生徒(以下「A」という。)から相談を受けるなどしていた被告人が,平成28年(以下の日付は,特記しない限りいずれも同年のものを指す。)2月13日午前4時12分頃,ラブホテル「C」の客室で,ひそかに就寝中のAの胸部及び陰部等が露出した姿態を撮影・保存して児童ポルノを製造し(原判示第1),同月21日午前1時10分頃(入室)から同日午前10時19分頃(退室)までの間に,ラブホテル「D」の客室で,Aに被告人を相手に性交させて児童に淫行させる行為をするとともに,その間の午前7時14分頃,ひそかに就寝中のAの胸部が露出した姿態を撮影・保存して児童ポルノを製造した旨認定している(原判示第2,第3)。
 これに対し,論旨は,原判示第3の児童淫行罪(児童福祉法60条1項,34条1項6号)に関し,被告人が原判示の日時場所でAといた際,被告人とAが性交した旨のA供述は信用できないから,性交の事実を認めた原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認があるというものと解される。
2 原判断の要旨
 原判決は,(事実認定の補足説明)の項で,論旨に関し,要旨,おおむね次のとおり説示している。 
(1)前提となる事実関係等
 Aは,B高校に在籍していたが,教室で授業に出席することなく,職員室で過ごしたり,校外に遊びに出たり,粗暴な言動に及んだりするなどの逸脱行動を繰り返しており,被告人を含めた教員がその指導に当たっていた。Aは,解離性障害に罹患し,精神的に不安定な状態にある中で,人間関係の悩み等について相談に乗ってくれた被告人に好意を示すようになった。Aは,平成27年12月10日未明にB高校に電話を掛けて自殺をほのめかした際に,対応した被告人から携帯電話の番号を教わって以降,深夜早朝を問わず繰り返し被告人に電話をかけるなどして被告人に対する依存を強め,長電話をしたり,被告人に車で迎えに来てもらって校外で会ったりするようになった。被告人は,Aと外食やカラオケに行き,化粧品,服,携帯音楽プレーヤーを買い与えるといったAの依存を助長する不健全な行動に及んだ。Aは,2月中旬頃,被告人に対し電話で,「子供が欲しい。今度はゴム着けんでね」などと言った。
 被告人とAは,本件の際(2月12日から翌13日まで,同月21日)に原判示の各ホテルに滞在した以外にも,1月10日から2月14日にかけて,4回にわたり,Dの客室に滞在した。また,1月30日未明から翌31日にかけて山口県内に出掛けた際には,ラブホテル及び被告人が予約したビジネスホテルの同じ部屋(ダブルベッド1台)に滞在した。これら本件を含めた合計8回の滞在(本件は6回目と8回目)のうち,3回目以降の滞在当時,Aは精神科に任意入院中であった。被告人は,5回目の滞在の際,Aの露出した乳房と指で左右に広げた状態の陰部の静止画を撮影した。6回目の滞在(原判示第1)の際,被告人は,客室備付の性玩具の自動販売機でローションを購入した。
 6回目の滞在時に撮影された原判示第1の静止画は,ほぼ全裸の状態のAが,両乳房及び陰部を露出させて寝ている姿を,膝の上から頭までが写るように撮影したもので,中央に陰部が位置している。8回目の滞在時に撮影された原判示第2の静止画は,ガウンの胸部が開かれて両乳房が露出した状態で寝ているAの上半身をほぼ正面から撮影したもので,中央やや左寄りに乳房が位置している。各静止画は,Aの露出した陰部や乳房が目立つように意図的に撮影したものであると認められる。
(2)性交の有無について
 被告人は,性交が行われることが通常予定されているラブホテルに,Aと約9時間滞在する最中に,自己の性欲を興奮させる意図をもって原判示第2の静止画を撮影しており,Aは,被告人の面前で着衣を脱いで両乳房を露出させることに抵抗がない状態にあったのであるから,滞在中に性交があったと推認するのが自然である。加えて,この8回目の滞在に至る経緯として,被告人が,自分に対して好意を示して依存を強めるAとの関係にのめり込み,恋人のように特別扱いして繰り返しラブホテルに行き,乳房や陰部の静止画を撮影し性玩具の自動販売機を利用するという,性欲の興奮に向けられた行動をとっていた事実があり,Aが被告人との性交経験を前提とした発言をしていたという事実もある。これらの事実を併せれば,被告人が性的に不能であったといった特段の事情のない限り,原判示第3の滞在の際に被告人とAとの間で性交があったと強く推認される。
 本件に至る経緯や被告人に対する当時の心情に関するAの供述を全面的に信用することはできないが,原判示第3の滞在の際に被告人と性交したという核心部分(証人尋問調書239,242項等)については,前記推認によって裏付けられており,信用することができる。
 これに対し,被告人は,何度もラブホテルに行っていたのはAと話をしたり仮眠をとったりするためであり,Aに対する性欲はなく,疲弊していたため,Aと性交したことは一度もないなどと供述するが,性欲を興奮させる意図で児童ポルノを製造していることと整合しない不自然極まりない内容であって,信用できない。Aとの性交を妨げる特段の事情も見当たらない。
3 検討
 以上の原判断には,被告人とAが滞在していたホテルの特定に関し,後記(1)のような問題点はあるものの,その他の部分に論理則,経験則等に照らして不合理な点は見当たらず,性交があったとする結論に誤りはない。
(1)所論は,前提事実の認定に関し,原判決(5頁(5))は,被告人とAが,2月13日午後9時39分から翌14日午前9時59分までの間,D×××号室に滞在したと認定しているが,被告人らは2月14日午前2時4分から同日午前4時47分までの間Cに滞在していたから,原判断は誤っていると主張する。
 確かに,原判決の滞在時刻認定の根拠となった甲9号証を見ると,D×××号室の客室利用伝票(41丁)と,同室滞在者の特定根拠であるノートの記載内容(42丁)が整合しておらず(同伝票には原判決の認定する日時が印字されているが,ノートには2月15日の欄の末尾午後11時20分から午前9時38分までの利用者の車両として被告人の車のナンバーが記載されている。),「業務が忙しくて車両番号をすぐに確認できなかったので,末尾に付け足すような感じで書き込んでいる」旨の同ホテル従業員の説明はこの齟齬を十分に説明できているとはいい難い。一方,甲18号証及び甲19号証(172,179丁)によれば,被告人とAが同伝票記載の時間帯と重なる時間帯にC×××号室に滞在していた可能性は否定できず(ただし,同室滞在者特定の根拠となった車両番号記載のファイルの宿泊日は2月13日とされている。),滞在したのはCであり,2月13日から翌14日にかけて一旦Dに入った後中抜けしてCに行き,またDに戻ったことはない旨の被告人の原審公判供述を排斥することはできない。したがって,この点に関する原判決の認定は不合理であるといわざるを得ないが,原判決が認定する日時頃に被告人とAがラブホテルに滞在した事実には変わりがないから,A供述の信用性判断を左右するような問題点ではなく,所論のいうような予断偏見の表れとみることもできない。
(2)所論は,被告人供述に依拠して,〔1〕被告人がAと繰り返しラブホテルに行っていたのは,落ち着いてAの話を聞くためであり,性的関係を持つことなく就寝していた,〔2〕原判示第2の静止画は,被告人がいたずら心から寝相の悪いAがガウンのはだけた状態で眠っている姿を撮影したにすぎない,〔3〕被告人が性玩具の自動販売機を利用したのは,ローションを見付けたAがこれは何かと執拗に尋ねてきたからであり,性交のためではないとして,これらは性交の事実を推認させるものではないと主張する。
 しかし,ラブホテルに行った経緯,ローション購入等に関する被告人供述は,Aが被告人に対して好意を抱き,依存を強めていたことを前提としても,Aが被告人に話を聞いてもらうためだけのためにラブホテルに行くことを望んだという点や,Aを教育すべき教頭の立場にある被告人が,話を聞くだけの目的でラブホテルという場を選び続け,使うつもりもないのに千円を支払って性行為に用いられるローションを購入したなどの点で,不自然・不合理であり,信用できない。被告人とAが通常性行為を目的として利用される場所であるラブホテル等に8回にわたり滞在していた事実は,本件を含む各滞在時に性交等の性行為があったことを推認させる事情であり,6回目の滞在時に被告人がローションを購入した事実は,その時点で既に被告人とAが性交にまで至り得る関係にあったことを示している。8回目の滞在時に撮影された原判示第2の静止画の両乳房の露出状態は,寝ている間に偶々はだけてしまったものとは考え難く,意図的に作出されたとみるのが自然である。被告人がそれ以前の5回目及び6回目の滞在時に撮影した静止画の内容からしても,被告人の性欲がAに向けられていたことは明らかであって,原判示第3の滞在中に性交があったとの推認を補強している。原判決の推認力判断が不合理とはいえない。
(3)所論は,2月中旬頃のAの被告人に対する電話での前記発言に関し,Aの証言によれば,実際の発言の趣旨は原判決の認定とは異なっており,被告人との性交体験がなくても言える内容で,Aが被告人の歓心を買うためにした作り話の可能性があるとして,性交の事実を推認することはできないと主張する。
 しかし,電話口でのAの発言を聞いた母親の証言(74項)に基づき発言内容を認定し,それが被告人との性交体験を前提とするとみた原判断に不合理な点はない。仮にA自身が証言(195項)するように「コンドームを着けんでやってほしい。子供が欲しい」という内容であったとしても,発言以前の性交体験を推認させるものであることに変わりなく,所論指摘のA証言も同事実を前提としている。このAの発言に,前記(2)の推認を併せれば,原判示第3の滞在の際に被告人と性交したというA供述の核心部分の信用性を補強するに十分である。
(4)その他所論に鑑み検討を加えても,原判決に事実誤認はなく,論旨は理由がない。
 なお,原判決は,原判示第3の児童淫行罪の罪となるべき事実中で,「もって児童に淫行をさせる行為をした」との法的評価を基礎付ける事実として,被告人とAがB高校の教頭と生徒という関係にあったこと,被告人がAから相談を受ける「など」していたこと,Aの年齢,ホテルで被告人を相手に性交させたことを摘示している(訴因も同様である。)。これらの事実からは,被告人が教頭という立場を利用し,相談に乗ってくれる被告人に信頼を寄せていたAに事実上の影響力を及ぼし,淫行をなすことを助長し促進する行為をした事実が推知できる。また,冒頭陳述や原判決の(事実認定の補足説明)の項における説示等も併せ考慮すれば,前記「など」には,被告人が,Aから相談を受けるという名目やAの家庭環境を熟知しているのに乗じて,精神的に不安定な状態にあったAをA方や入院先から自車で連れ出し,校外で外食したり,ラブホテルに行って性交したりすることを繰り返していたといった働きかけの経緯が含まれていると解される。そうすると,原判示第3の罪となるべき事実の記載は,児童淫行罪の構成要件該当事実の摘示として不十分であるとまではいえず,理由不備又は訴訟手続の法令違反はない。
4 結論
 よって,刑訴法396条により本件控訴を棄却することとして,主文のとおり判決する。
平成29年9月5日
広島高等裁判所第1部
裁判長裁判官 多和田隆史 裁判官 杉本正則 裁判官 内藤恵美