児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

数回の児童ポルノ販売は包括一罪であるという検察官の主張

 この判例はまだ生きています。
 わいせつ図画が起訴されていない場合は、こういうのを主張しましょう。

答弁書
4 法令適用の誤り(罪数)
わいせつ図画販売罪は,その性質上,反復・継続させる行為を予想するものであるから,同一の意思のもとに行われる限りにおいて,数個の行為は,包括一罪として処罰されることとされているところ,児童ポルノの販売についても,その性質上,反復・継続させる行為を予定されているから,罪教諭については,わいせつ図画販売罪と別異に介すべき理由はない。
そして,本件において販売されたCD−Rは,原画を同じくする全く同一内容の画像である上,被告人は,金員をもうけるという単一一 の犯意に基づいて,いずれもインターネットのオークションを通じて販売するという同一の犯行態様により,わずか1か月半という短期間に前後6回の販売行為に及んでいるのであるから,本件各販売行為が包括一罪であることは明らかである
から,弁護人の主張は失当である。
なお,弁護人は,各裁判例を挙げて,本件各販売行為を併合罪であるとしているが,弁護人の指摘する各裁判例は,本件とは事案を異にしており,適切でない。

福岡高等裁判所那覇支部刑事部
平成17年3月1日宣告
7控訴趣意中児童ポルノ販売罪とわいせつ図画販売罪は法条競合であり,前者のみが成立するとの主張について
所論は要するに,児童ポルノ罪の保護法益は被害児童の個人的法益と善良な性風俗という社会的法益の双方であり,児童ポルノ販売罪と善良な性風俗という社会的法益を保護法益とするわいせつ図画販売罪は法条競合,特別関係にあるのであって,児童ポルノ販売罪はわいせつ図画販売罪の特別法であって,児童ポルノ販売罪のみが成立するから,被告人の判示所為について児童ポルノ販売罪とわいせつ図画販売罪の2罪が成立し,両者が観念的競合になるとした原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがあるというにある。
しかし,児童ポルノ販売罪とわいせつ図画販売罪はその保護法益を異にするし,「児童ポルノ」には「わいせつ」概念には該当しない物も含みうるから,当該行為がいずれの罪にも該当する場合は両罪が成立し,両者が観念的競合になることは明らかである。そもそも,所論は,上記2においては,児童ポルノ罪の保護法益は個人的法益のみであると主張していたのに対して,ここにおいては,児童ポルノ罪の保護法益は個人的法益と社会的法益の双方であると主張しており,両者の間には矛盾があるといわなければならない。
したがって,原判決には所論のような法令の適用の誤りはない。論旨は理由がない。
8控訴趣意中児童ポルノ販売罪の罪数に関する主張について
所論は要するに,被告人が前後6回にわたって児童ポルノを販売した罪は併合罪であるから,(1)被告人の判示所為について児童ポルノ販売罪の包括一罪が成立するとした原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある,(2)併合罪については各罪ごとに訴因を特定して明示する必要があるのに,本件公訴事実は訴因の特定,明示を欠いているから,本件公訴の提起は違法であり,検察官に対して訴因を特定,明示をすべく釈明を求める必要があったのに,それをしないまま実体判決をした原判決には,不法に公訴を受理した違法及び訴訟手続の法令違反があるというにある。
しかし,児童ポルノ販売罪は,その性質上,反覆・継続する行為を予定しているから,同様の性質を有するわいせつ図画販売罪が同一の意思のもとにおいて行われる限り,数個の行為が包括一罪とされるのと同じく,同一の意思のもとにおいて反覆・継続して行われた数個の行為は包括一罪となると解すべきである。本件においては,販売されたCD−Rは原画を同じくする同一内容の画像である上,被告人は金を儲けるという単一の犯意に基づいて,インターネットのオークションを通じて販売するという同一の犯行態様により,1か月半という短期間に前後6回の販売行為に及んだのであるから,本件各販売行為が包括一罪であることは明らかである。
したがって,原判決には所論のような法令の適用の誤り,不法に公訴を受理した違法,訴訟手続の法令違反がないことは明らかである。論旨は理由がない。