児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

奈良県議会における「子どもを犯罪の被害から守る条例」

「一点目は、子どもポルノの所持等の禁止規定を設けた根拠や趣旨などについてであります。十三歳未満の子どもを使用して作成された子どもポルノは、子どもに対する性的好奇心を刺激し、ひいては子どもに対する性的犯罪を引き起こさせるおそれがある有害、危険なものであります。また、子どもポルノは、性的同意が成立しない十三歳未満の子どもに対する強姦や強制わいせつなどの、まさに性的犯罪行為が記録されたものでありまして、これらを見たり、見る目的で所持することは、そうした性的犯罪行為を容認し、支える行為であります。このように、子どもポルノの所持等は子どもに対する性的犯罪を助長する行為であると認められますことから、これを規制することとしたものであります。」ということは、他都道府県民は「これらを見たり、見る目的で所持することで、そうした性的犯罪行為を容認し、支え」ているということになりますね。

平成16年 12月 定例会(第273回)-12月08日−04号  
P.242 ◆ 二十六番(安井宏一)
最後に、警察本部長にお伺いします。去る十一月十七日、奈良市内で発生いたしました児童誘拐・殺人事件についてであります。
 その前に、この事件でお亡くなりになった女子児童のご冥福を心からお祈り申し上げますとともに、一日も早い事件の解決を県警察にお願いする次第であります。
 さて、報道によりますと、この事件は、下校途中の小学一年生の女子児童を誘拐し、女子児童が所持していた携帯電話を使い、犯人がメールで女子児童の写真を送りつけ、その前後に女子児童を殺害し、平群町内に遺棄するという卑劣きわまりない凶悪残忍なものであります。幼児、児童、特に女児を対象とした犯罪は昨今全国各地で多発しておりますが、このたびの事件は、その中でも、携帯電話で被害者の写真を母親に送りつけ、殺害後、遺体を人の目のつくところに遺棄するなど、ひときわ異様さが目立った残虐な手口で、単なる金銭目的の誘拐事件ではなく、被害者の殺害や傷つけることを目的とした、いわゆるペドフィリア−−幼児性愛者による犯行とも想像され、平成元年に東京と埼玉で発生した連続幼女殺害事件や、平成九年に発生した神戸の連続児童殺傷事件をほうふつさせ、県民の不安を一層かき立てるものとなっております。現行法上、ペドフィリアは人間の内面に属する問題であり、幼児に対する具体的な違法行為が行われて初めて処罰を求めることができるにすぎません。しかしながら、このペドフィリアは、幼児性愛という性癖が自己抑制ができなくなったとき、幼児、児童に対して違法行為を行うものであり、初めて犯した犯罪であっても強姦や強制わいせつ、最悪の場合には殺人などの凶悪犯につながる可能性は高く、被害者である幼児、児童はもちろんのこと、その家族は大きな心の痛みを受けることになると、素人なりに考えているところであります。
 今回の事件発生以降、県内をはじめ全国各地で児童を守る取り組みが強化されているところでありますが、この機運を持続させ効果的なものにするため、幼児、児童に危害を加えるおそれのある者から幼児、児童を守るための罰則を盛り込んだ本県独自の条例を制定することができないものか、本部長にお伺いいたします。
 以上をもちまして壇上での質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)


◎警察本部長(菱川雄治) (登壇)二十六番安井議員のご質問にお答えいたします。
 私に対しましては、幼児、児童を守るための対策についてのお尋ねでございます。
 さきの代表質問でも答弁申し上げたところでありますけれども、十一月十七日に発生した事件につきましては、全力を挙げて犯人の早期検挙と同種事件の再発防止に取り組んでいるところであります。また、今回の事件の発生を受けまして、県警察といたしましては、既存の法令の適用上の問題点を含め、子どもを犯罪被害から守るための施策のあり方について鋭意検討を行っているところでございます。そうした中で、今回議員からの、幼児、児童を守るための罰則を盛り込んだ条例の制定というご提案は、誠に貴重なご意見であると受けとめております。いずれにいたしましても、幼児、児童に危害を加えるおそれのある行為の新たな規制につきましては、県民の権利、自由を一定程度制約することになりますことから、幅広い県民的な議論が行われることが望ましいと考えているところでございます。
 以上でございます。

平成17年  6月 定例会(第275回)-06月27日−04号
P.194 ◆ 九番(田中美智子)
最後は、子どもの安全・安心についてです。
 再び、学校や地域で子どもの命が奪われる悲劇を繰り返しはならないと、各地で、子どもの命、子どもが大事にされる社会をつくるための新たな取り組みが始まっています。先日開かれた青少年健全育成県大会の基調講演では、家庭裁判所調査官の経験を持つ講師から、だれもが犯罪を犯す可能性を持っているが、親や仲間への愛着などの社会的なきずなが、犯罪や非行を防止する最大の力になると、地域社会の連帯の大切さを強調する話があったと伺っています。犯罪事件の背景の一つに、子どもの自尊心を深く傷つける出来事があることは、関係者や専門家が共通して指摘していることです。憲法教育基本法子どもの権利条約の精神を生かし、子どもの声が尊重され、社会参加の権利を保障してこそ、子どもが豊かな人間として成長することができ、子どもをめぐる危機も打開できるのではないでしょうか。
 そこでまず、子どもを犯罪の被害から守る条例案について、警察本部長に伺います。
 この条例案では、子どもへの声かけがしにくくなり、安全のための取り組みが後退したり、人権侵害や冤罪を生み出す危険性などの問題点があるため、拙速を避け、改めて、子どもの安全を守るために何が必要か、県民的な討論をする必要があると考えますが、いかがですか。
 その理由の第一は、子どもに不安を与える行為の禁止について、十三歳以下の子どもへの声かけの禁止に、惑わかしや言いがかりを挙げていますが、その内容は極めてあいまいであり、しかも、保護者がそばにいないことから、見かけた人の主観で判断されかねない問題があることです。また、通報の努力義務が定められていますから、たとえ善意の声かけであっても、子どもに声をかけている行為そのものが疑いの目で見られることになります。これでは、子どもにかかわることを控えることになり、かえって子どもを守る取り組みが後退することになります。
 第二は、子どもポルノの所持などの禁止の問題です。児童買春、児童ポルノ処罰法の改正法は、児童買春、児童ポルノに厳しい態度で臨む国際的な動向を踏まえて、法律の目的で、子どもの権利を守ることを強調し、法定刑の引上げを盛り込みました。児童ポルノの定義を、デジタル画像のデータファイルなどにも広げ、インターネットなどによる提供に罰則を規定しました。しかし、児童ポルノの所持の禁止については見送りました。奈良県がそれを条例に盛り込むのは、刑法の原則にも反するのではないでしょうか。
 第三は、条例で規定する禁止行為を行う者、その他子どもに危害を加えるおそれのある者に関する情報を収集し活用するとしている問題です。これは、犯罪者でなくとも、不審な人物だと疑われただけで監視の対象にされることになり、人権侵害や冤罪、市民の生活の自由が奪われる危険性があります。これでは、疑心暗記の冷たい社会に向かいかねません。子どもたちが伸び伸びと心豊かに育つ温かい社会とは、かけ離れてしまうのではないでしょうか。
 第四は、条例では、県は子どもの安全を確保するための必要な施策を実施する責任を有すると定めていますが、これはむしろ当然なことです。県や市町村、教育委員会などの行政が、子どもを見守る自主的な取り組みを励まし、できる限り支援すること、通学路の安全対策や安全に配慮した学校など子どもの施設の整備、学童保育の充実、指導員の増員、地域に子どもたちが自分パワーを発揮し、集団で遊べ、冒険心も大切にした安全で楽しい遊び環境や居場所をつくること、それを見守る人の配置、ボランティアへの支援、学校での三十人学級の実施、警備員の配置など、人も予算ももっとふやさなければなりません。条例をつくる以前に、直ちに改善し、進めるべきことがたくさんあります。
 第五に、外部からの犯罪者による危険だけでなく、子どもを取り巻く危険には、家庭内や身近な人による虐待、スクールセクハラなどの問題もありますが、こうしたことには全く触れられていません。総合的に考えられるべきです。犯罪を容易に生み出す政治、経済、社会のあり方を問い直し、人間を大切にして、子どもの命を守り、健やかにはぐくむ社会をつくるためにこそ、住民の共同、住民参加が重要ではないでしょうか。県民にはほとんど知らされておらず、形ばかりのパブリックコメントで、十分に県民的な議論がなされたなどとは到底言えません。いかがですか。

◎警察本部長(菱川雄治) (登壇)九番田中議員のご質問にお答えいたします。
 私には、子どもを犯罪の被害から守る条例案についてのお尋ねであります。
 本条例案につきましては、代表質問におきましてもお答えさせていただきましたとおり、県の関係部局で構成される安全やまとまちづくり推進本部や六十八の関係機関・団体で構成する安全やまとまちづくり県民会議で議論を重ね、有識者の方々からの意見聴取やパブリックコメントの手続を経るなど、県民各層のご意見を広く集約し、十分時間をかけて慎重に検討を加え、提案させていただいたところでありまして、決して拙速に条例制定を進めているものではございません。
 「声かけ行為」の規制問題につきましても、県民の日常的なあいさつや子どもへの見守り活動における通常の声かけまで制限することがないよう、慎重に検討してきておりまして、善意の声かけがいささかも規制対象とならないようにしたところであります。本条例案では、県、県民及び事業者の責務を明らかにし、県が、市町村、県民、事業者と相互に連携協力して子どもの安全確保を推進するための体制の整備に努めることとするなど、むしろ子どもを犯罪から守るための地域での取り組みの促進につながるものとなっていると考えているところであります。
 このように、現時点におきましては、ご提案させていただいた条例案の内容が、子どもの安全対策において最善のものであると考えておりまして、本条例を制定することが次代を担う子どもの安全を守るために最善を尽くすという大人社会の責務を果たすことであると確信をいたしているところであります。もちろん、本条例を施行することとなった場合におきましては、県民の皆様方に十分条例の内容を知っていただくような措置を講じますとともに、全職員に対する指導・教養を徹底いたしまして、いやしくも人権侵害とならないように、適正かつ慎重な運用を図ってまいる所存でございます。
 以上でございます。

平成17年  6月 定例会(第275回)-06月23日−02号
P.25 ◆ 十二番(山本進章)
最後に、今、県全体の重要課題として取り組まれ、今議会に提案されている、子どもを犯罪の被害から守る条例案について、お伺いします。
 昨年暮れ、奈良市内の帰宅途中であった小学一年生の女の子が誘拐され、殺害されるという凶悪この上ない事件が発生しました。奈良県民の一人として、また女の子を持つ親として、私は、子どもに対する犯罪被害を未然に防止し、子どもの安全を確保するためには、この種の条例が有用な手だてであると考えておりますので、ぜひとも本議会において成立させていただきたいと思っております。しかしながら、現在公表されております本条例案の作成に関するパブリックコメントの結果によると、一部に本条例案に反対する意見をお持ちの方もおられるようであります。私は残念でなりません。
 そこで、三点、県警本部長にお伺いし、私を含め議員各位の理解をより深めたいと思います。
 質問の第一点目は、この条例案を作成するに当たっては、先にパブリックコメント手続を実施し、広く県民からの意見を聞かれたことは既に承知しております。さらに、それ以外の場においても議論し、十分に検討を重ねてこられたとも聞き及んでおります。ついては、本条例案の提案に関して、その必要性と検討の経緯についてお聞かせください。
 質問の第二点目は、本条例の目的が、子どもの生命または身体に危害を及ぼす犯罪の被害を未然に防止し、子どもの安全を確保することにあるならば、その目的達成のために、条例案にどのような内容を盛り込み、特に議論のあるところの「声かけ行為」については、善意のものと悪意のものとを区別するためにどのような工夫をされたのか、お聞かせください。
 質問の第三点目は、本条例案では、県民等に一定限度の行為を禁じるとともに、違反者に対する罰則も規定されており、このような県民等の権利を制限するような条例の施行については、公布の日と施行期日との間に、県民への周知を図るために一定の猶予期間を設けることが通例とされており、本条例案もこれに従い、附則において、第十一条から第十五条の規定の施行は、公布の日から三カ月後としています。ついては、県民等に広く周知を図るための手だてとして、どのような方法をお考えか、お聞かせください。
 以上で壇上からの質問を終わります。ぜひ知事以下の明快な答弁を期待いたします。ご清聴ありがとうございました。(拍手)

◎警察本部長(菱川雄治) (登壇)十二番山本議員のご質問にお答えいたします。
 私には、子どもを犯罪の被害から守る条例案について、三点お尋ねであります。
 第一点目の、条例制定の必要性と検討の経緯についてであります。
 最近、子どもをねらった凶悪犯罪が多発しており、特に本県におきましては、昨年十一月十七日に女子児童誘拐・殺人事件が発生するなど、子どもを取り巻く治安情勢は非常に深刻な状況にあります。また、地域では、保護者、地域住民、学校関係者及び所轄の警察署員等が一丸となりまして、さまざまな子どもを守る取り組みが従来にも増して積極的に行われているところでありますけれども、依然として、声かけをはじめとする子どもに不安を与える事案が多発しております。このような状況にかんがみまして、子どもを犯罪被害から守るための基本的な条例が必要であると判断されましたことから、本条例案を提案させていただいた次第であります。
 もとより、子どもの安全の確保は、県の各部局が連携し、また、県、県民、事業者が一体となって取り組むべきものであります。そこで、条例案の作成に当たりましては、県の各部局で構成される安全やまとまちづくり推進本部におきまして議論を重ねた上で、推進本部といたしまして、六十八の関係機関・団体で構成する安全やまとまちづくり県民会議にご提案申し上げ、議論していただきました。また、個別に有識者の方々のご意見を聴取させていただきましたほか、パブリックコメントを実施いたしまして、広く県民の皆様のご意見をお聞きいたしました。このように慎重な手続を経て十分な検討を行った上で条例案を作成し、提案させていただくこととしたところでございます。
 二点目の、条例の内容についてあります。
 この条例におきましては、子どもの生命・身体に危害を及ぼす犯罪を防止するため、県、県民及び事業者の責務を明らかにするとともに、そのために必要な施策を定めております。さらに、子どもに不安を与える行為を禁止するとともに、子どもを威迫する行為や、子どもポルノの所持等については、罰則をもって禁止することとしたところであります。
 特に、議論のありました「声かけ行為」の規制につきましては、県民の皆様の間に、日常的なあいさつや子どもへの見守り活動における通常の声かけまで制限されるのではないかと危惧する声がありましたことから、慎重に検討を重ねました。そして、規制される行為内容をより限定的かつ外形的に明確になるよう、「甘言を用いて惑わし、又は虚言を用いて欺いてはならない」と具体的に規定することにより、善意の声かけがいささかも規制対象とならないことを文言上明確にいたしております。これとともに、違反行為に対する罰則を行うことといたしておりまして、県民の皆様が不安を抱くことのないように工夫させていただいたつもりでございます。
 三点目の、条例内容の周知についてであります。
 本条例につきましては、県や市町村の広報誌、あるいはホームページへの掲載、交番・駐在所だよりの発行、広報パンフレットの作成、マスコミへの協力依頼等により、県民の方々に対しまして、条例内容などにつきまして周知徹底を図ってまいりたいと考えております。
 以上でございます。

P.55 ◆ 四十六番(中村昭)
次に、子どもを犯罪の被害から守る条例案につきまして、警察本部長にお伺いをいたします。
 今般提案されましたところの条例案は、過日奈良市内で発生いたしました、先ほども申し上げました女子児童被害に係る誘拐・殺人並びに死体遺棄事件が提案理由の一つであると、私自身は理解をしており、本県にとりましても絶対に必要不可欠な条例であると信じておる者の一人であります。
 さて、本条例案の第十一条は、子どもの連れ去り等につながるおそれのある、いわゆる悪意をもってなされるところの「声かけ行為」を規制しようとするものであります。そこで、質問の第一番目は、なぜ「声かけ行為」を規制しようとされるのか、その理由と、「声かけ行為」を発端とした子どもに対する性的犯罪の発生状況、及び犯罪には至っていないが、子どもに対して不安を与える事案として処理されたものの中で「声かけ行為」がどれほどあったのかということであります。
 次に、私は常に、条例で規制を行う場合には、その規定の実効性を担保するためには罰則が適用されるべきであると考えておりますが、本条例案では、第十一条の禁止行為を行った違反者に対しましては罰則が適用されておりません。そこで、質問の第二点目は、なぜ、「声かけ行為」を規制しようとして条例も制定されたにもかかわらず、罰則を適用されなかったのか、これではすり抜け条例と言われてもいたし方ないのではないか。その理由をお聞かせいただきたいと思います。
 次に、子どもへの性的犯罪が子どもに与える恐怖や精神的ショックは大きく、本人はもちろん、その家族も苦しんでおられます。このようなときには、被害に遭った子どもやその家族に対して、心のケアも含めた相談体制の整備等、対策を講じる必要があると考えます。そこで、質問の第三番目は、子どもの性的犯罪被害に対し、現在どのような対策が講じられているのかをお聞かせいただきたいと思います。
 次に、インターネットでは、子どもも簡単で手軽にさまざまな情報が得られるようになりましたが、あまりにも子どもによろしくない情報まで得ることができるようになりました。これに関し、国では、いわゆるプロバイダ責任制限法が平成十四年五月に施行され、また、県青少年育成条例が平成十五年三月に改正をされ、プロバイダ等に対する自主規制や措置が求められているものの、子どもにとってよろしくない情報を提供する行為は、むしろ子どもに対する犯罪行為ではないかと私は考えております。そこで、この条例が全国に先駆けて最初の条例で画期的なものであるとするならば、その点も含めて検討いただきたかったというのが私の偽らざる心境であります。この点につきましては、今後条例の改正も含めまして検討いただきますよう、このことにつきましては要望にとどめておきます。

P.77 ◎ 警察本部長(菱川雄治)
◎警察本部長(菱川雄治) (登壇)四十六番中村議員のご質問にお答えいたします。
 私には、子どもを犯罪の被害から守る条例案、それと放置駐車取締り関係事務の委託と、大きく二つのお尋ねでございます。
 一番目の条例案につきましては、三点のご質問をいただいているところでございます。
 一点目は、いわゆる「声かけ行為」の規制の必要性などについてであります。
 本条例案におきまして「声かけ行為」の規制を検討することといたしましたのは、昨年十一月十七日に発生いたしました女子児童誘拐・殺人事件が「声かけ行為」を発端としており、また、被疑者の検挙後も、「声かけ行為」をはじめとして子どもに不安を与える事案が後を絶たない状況にありまして、県民の皆様に大きな不安を与えているためであります。
 検討の結果、今回ご提案させていただいている条例案におきましては、第十一条におきまして、「甘言を用いて惑わし、虚言を用いて欺く行為」を禁止することとしておりますが、これらの行為は、精神的・身体的に未成熟な子どもに対して不安を与えるばかりではなく、略取・誘拐、強制わいせつ、強姦、逮捕・監禁などの重要凶悪犯罪に発展するおそれを常にはらんでおりますことから、子どもの生命または身体に危害を及ぼす犯罪を未然に防止する上で、規制する必要があると判断したものでございます。
 次に、子どもに対する性的犯罪の発生状況でありますが、平成十六年中に強制わいせつ事件が二十件、本年は、五月末現在までに強制わいせつ事件が四件発生しております。このうち甘言または虚言を用いた「声かけ行為」を発端としているもの、これは平成十六年では八件、全体の四〇%、本年に入りましてからは三件、これは七五%、こういった数字になっております。また、女子児童誘拐・殺人事件を契機といたしまして、昨年十一月二十二日から、子ども安全サポート情報システムに基づきまして、子どもに対して不安を与える事案の集計を開始いたしましたが、本年六月十六日までの集計結果では、百二十四件の発生事案のうち五十四件、四四%が甘言などを用いた「声かけ行為」でございました。
 二点目は、第十一条の規定に違反する行為について罰則を設けなかった理由についてのお尋ねであります。
 子どもを甘言を用いて惑わし、あるいは虚言を用いて欺くような行為につきましては、先ほど申し述べましたような理由から、実質的な法益侵害性が認められるわけでありますけれども、「声かけ行為」一般が規制されるのではないかといったような誤解が広まりまして、子どもに対する通常のあいさつ行為や、あるいは子どもの見守り活動の一環として行われる声かけまで制限されるのではないかといったような不安が県民の皆様の間にあることや、あるいは、今回のこの条例の規定が全国で初めてのものであることなどを踏まえまして、当面は、禁止行為であることを明らかにすることによって、甘言や虚言を用いた「声かけ行為」の発生を抑止することとしたものであります。今後、条例を議決していただきました暁には、施行後、甘言や虚言を用いた声かけの発生が十分に抑止できているかどうか点検してまいりまして、その結果に応じまして所要の検討を行ってまいりたいと考えている次第でございます。
 三点目は、子どもの性的犯罪被害者対策についてのお尋ねであります。
 県警察では、平成八年に被害者対策要綱を定めておりまして、子どもを対象とした性的犯罪に対しましては、女性警察官による事情聴取や自宅訪問、専門の相談室の利用、あるいは病院や自宅等への支援要員による付き添い等を実施して、被害者である児童の精神的負担の軽減に努めますとともに、保護者の方に対しましても、刑事手続の概要の周知や精神的ケアのための相談窓口の紹介、あるいは被害者連絡制度に基づく被疑者情報等の提供などによりまして、心のケアと同時に、事件の流れや手続に対する不安を解消するためのアドバイスを実施しているところでございます。このほか、被害者支援の関係機関・団体による法律相談やカウンセリング等の専門的立場から、きめ細かい支援が行われておりますが、本年四月一日からは、ご案内のとおり、犯罪被害者等基本法が施行されたところでありまして、法の趣旨にのっとりまして、子どもを対象とした性的犯罪の被害につきましても、こども家庭相談センターをはじめとする関係機関・団体等の連携の強化が図られ、それぞれの機関の役割分担を踏まえた、より積極的な取り組みが行われることが期待されるところでございます。

P.82 ◆ 三十一番(田尻匠)
次に、子どもを犯罪から守る条例についてお伺いをいたします。
 昨年十一月に発生をいたしました富雄北小学校の女児誘拐・殺人事件は、全国民を震撼させ、国内を大変不安に陥れた大事件でありました。私の自宅近くでもあり、奈良西警察署周辺の物々しい警備やマスコミの数、本当に子を持つ親として心配をいたしました。そして、警察の皆さんの懸命の捜査によって、年末には容疑者が逮捕され、その全容が今裁判で明らかにされております。当初は携帯電話を駆使した最新のIT事件かと驚いていたら、何と、児童趣味というゆがんだ性癖にあったことが明らかになりました。容疑者は、女児への性犯罪で二度の有罪判決を受けながら、現社会に堂々と生活をして、倒錯した性を殺害にまでエスカレートした容疑者がのうのうと生きていけた社会をどのように認めることができるのか。いや、許すわけにはいきません。今おくれて、法務省警察庁、国において、性犯罪者の出所者による再犯防止に向けたシステムが本年六月一日から始まっております。
 そのような中、今定例県議会に「子ども(十三歳に満たない者)を犯罪の被害から守る条例」が提案され、審議が始まっております。この条例の目的は、子どもの生命または身体に危害を及ぼす犯罪の被害を未然に防止し、子どもの安全を確保することであり、その目的達成のための県等の責務や施策、規制する行為を定めようとするものとなっております。具体的に禁止されているのは、公共の場所または乗り物で、保護者などが身近にいない子どもに対して惑わし、言いがかりをつけるなどの行為、正当な理由なく子どもを撮影するなどした子どもポルノの所持・保管であります。
 ところで、先般、新聞紙上で、奈良県を含む数府県にまたがる小学校五年生の女児がモデルになった児童ポルノの製造・販売事件が検挙をされました。強姦及び強制わいせつ罪でも検挙されたということが報道されました。この事件は、まだ社会経験、人生経験の浅い女児に対して、インターネットを利用して、お金を上げると言って少女をモデルにしていました。このような悪らつな犯罪を生む児童ポルノの根絶に向けて、私たちは立ち上がらなくてはならないでしょう。
 そこで、本条例案で規定しようとする子どものポルノの所持に関して、県警察本部長にお伺いをいたします。ご承知のとおり、「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」、いわゆる児童ポルノ法は、性的な虐待や搾取から児童を保護することを目的に、十八歳未満の児童に対する買春や児童ポルノの販売、頒布、撮影、電子メールによる画像提供や、提供を目的とした所持などを既に禁じています。その上で、当県の条例では、なぜ十八歳未満の子どもを使用したポルノの所持禁止規定を置いたのか、その根拠、あるいは、あわせて趣旨についてお伺いをいたします。
 さらには、条例に実効性を持たせるため、禁止行為に触れた違反者に罰金を含む罰則を設けたにもかかわらず、子どもポルノを所持・保管している者が自首をした場合、刑を減免するとなっていますが、これはなかなか県民の皆さんが理解しにくく、その意図についてお伺いをいたします。
 次に、児童ポルノ法との関連において本条例が成立することにより、どのような効果をもたらすのか、また、現状において児童ポルノ法の適用がどの程度あるのか、その検挙状況について、過去五年間、奈良県や、あるいは全国の状況についてお伺いをいたします。
 最後に、本条例案の運用次第では、何の罪もない人が検挙をされたりと、パブリックコメントにおいて冤罪のおそれを危惧する旨の意見が提出をされていました。私も全く同意見であり、ついては、本条例に規定されておりますが、運用に当たっては、決して人権侵害のそしりを受けることがないよう、慎重の上にも慎重を期した適用をしていただくこと、また、そのためには、全警察官に対する十分な指導、教育、教養の徹底を切に要望をする次第でございます。
 以上をもちまして私の壇上からの代表質問を終わらせていただきます。ご清聴誠にありがとうございました。(拍手)

P.102 ◎ 警察本部長(菱川雄治)
◎警察本部長(菱川雄治) (登壇)三十一番田尻議員のご質問にお答えいたします。
 私には、子どもを犯罪の被害から守る条例について、二点お尋ねでございます。
 一点目は、子どもポルノの所持等の禁止規定を設けた根拠や趣旨などについてであります。
 十三歳未満の子どもを使用して作成された子どもポルノは、子どもに対する性的好奇心を刺激し、ひいては子どもに対する性的犯罪を引き起こさせるおそれがある有害、危険なものであります。また、子どもポルノは、性的同意が成立しない十三歳未満の子どもに対する強姦や強制わいせつなどの、まさに性的犯罪行為が記録されたものでありまして、これらを見たり、見る目的で所持することは、そうした性的犯罪行為を容認し、支える行為であります。このように、子どもポルノの所持等は子どもに対する性的犯罪を助長する行為であると認められますことから、これを規制することとしたものであります。
 次に、自首減免規定を置いた理由でありますが、そもそも子どもポルノの所持等の禁止は、子どもに対する性的犯罪を助長する子どもポルノをなくすことを目指したものでありまして、子どもポルノの所持者を重く処罰しなくても、その者から自主的かつ積極的な提出を促して子どもポルノの回収ができるのであれば、効率的な制度でありますし、また、刑罰の謙抑制の観点からも好ましいと考えたからであります。
 二点目は、児童ポルノ法と本条例案との関係についてのご質問であります。
 児童ポルノ法では、児童ポルノの第三者への提供、あるいは提供を目的での製造、所持等の行為を禁止しており、いわば供給者側を規制している法律でございます。一方、本条例では、自己の性的好奇心を満たすなど、正当な理由なく子どもポルノを所持すること自体を禁止しておりますが、これは流通経路の末端である需要者を減少させることを意味するものでありまして、このことによって、供給者である製造・販売等の行為者を減少させ、ひいては子どもポルノを含む児童ポルノの撲滅につながるものと考えております。
 次に、過去五年間の児童ポルノの提供等の検挙状況についてでありますが、奈良県では、平成十二年には、検挙件数一件、検挙人員二人、平成十三年は、検挙件数二件、検挙人員二人、平成十四年は、検挙件数六件、検挙人員三人、平成十五年は、検挙件数二件、検挙人員三人となっております。平成十六年は、検挙件数、検挙人員ともゼロでありましたが、本年に入りまして、先ほど議員にご紹介していただいた事件でありますけれども、奈良・大阪・神奈川県警等六府県警の合同捜査によりまして、児童ポルノ製造・販売事件の捜査に着手しております。この事件で、小学生女子児童をモデルとした児童ポルノの製造グループを強姦・強制わいせつで逮捕するなど、現在までの検挙者数は二十八人に上っております。
 一方、全国の状況を見てみますと、平成十二年は、検挙件数百七十件、検挙人員百六十四人、平成十三年は、検挙件数百五十二件、検挙人員百二十八人、平成十四年は、検挙件数百八十九件、検挙人員百六十五人、平成十五年は、検挙件数二百十四件、検挙人員百九十二人、平成十六年は、検挙件数百七十七件、検挙人員百三十七人となっております。
 最後に、本条例の運用に関するご懸念の点についてでありますが、本条例、特に罰則の適用に当たりましては、全職員に対する指導教養を徹底いたしまして、いやしくも奈良県民や奈良に滞在する方々の自由と権利を不当に侵害することのないようにしてまいりたいと考えているところでございます。
 以上でございます。

平成17年 11月 定例会(第277回)-12月06日−02号
P.39 ◆ 四十三番(服部恵竜)
 昨年十一月に発生した奈良市内における女子児童誘拐殺人事件を契機として、子どもの安全と平穏な生活を守るために「子どもを犯罪の被害から守る条例」が全国で初めて制定され、本年七月から施行されました。その後、県内においては子どもを対象とした大きな事件こそ発生は見ておりませんが、残念なことに、広島県において、本県と同様に、七歳の女子児童が殺害されるという痛ましい事件が発生しました。引き続いて、栃木県でも小学一年生の女の子が殺害され、茨城県の雑木林で遺体が発見されるという事件が起こりました。保護者の方をはじめとして地域の方々の不安ははかり知れないものがおありだろうと胸が痛みます。「子どもを犯罪の被害から守る条例」については、私は、県内で二度とこのような痛ましい事件が起こらない、起こさせないという強い思いで制定された条例であると認識をしておりますので、条例の目的、効果を達成するために一層のご努力を賜りたいと思います。
 そこで、「子どもを犯罪の被害から守る条例」施行後、間もないうちに、子どもポルノを所持していたとして書類送検された事件がありましたが、条例制定の目的に照らして、その制定効果について、本部長はどのように考えておられるのか、お尋ねをいたしたいと思います。
 次に、深刻化する少年犯罪を未然に防止する目的から、奈良県少年補導条例の制定に向けた検討をされ、十一月十四日からパブリックコメントも開始されたようであります。この取り組みは、国においても法制化に向けて検討が進められていると聞き及ぶ中で、本県が国に先駆けて検討し制定しようとしている奈良県少年補導条例について、その制定の趣旨と必要性についてどのように考えておられるのか、お尋ねをいたしておきたいと思います。
 以上が私の質問でございますが、明快なご答弁を期待して、質問を終了いたします。皆さん、ありがとうございました。(拍手)

◎警察本部長(菱川雄治) (登壇)四十三番服部議員のご質問にお答えいたします。
 私には、条例に関して二点お尋ねであります。
 まず、「子どもを犯罪の被害から守る条例」についてであります。
 この条例は、県をはじめ県民、事業者等の各主体が、積極的かつ相互に連携、協力し、子どもの安全を確保するための基盤づくりを目指して制定されたものであります。条例の制定効果についてお尋ねでありますが、施行後間もないこともありまして、断定的なことは申し上げられないわけでありますけれども、子どもに不安を与える事案について見てみますと、条例第十一条及び第十二条の禁止行為に該当するような事案は一応減少傾向にあり、さらには、先般、二十三歳の男性を第十三条子どもポルノの所持禁止違反により書類送検したところであります。また、各地域におきましては、関係機関や各種ボランティアの方々により、子ども見守り活動など子どもの安全確保をしようとする気運の盛り上がりが見られるところであります。
 このように、条例制定の効果が徐々にあらわれていると考えておりますが、県警察が本年八月末から九月初めにかけて実施いたしました県民に対するアンケート調査の結果では、四分の三の方がこの条例を知らないと答えておりまして、今後ともより一層条例の周知徹底を図るとともに、効果についても継続的な検証を行い、子どもが安心して暮らせる地域づくりを目指した、息の長い活動に取り組んでまいりたいと考えているところであります。
 先ほど議員から、条例の目的と効果を達成するために一層の努力をとの激励を賜り、力強く感じております。最近他府県におきまして、昨年の当県での事件を想起させるような、子どもをねらった卑劣な犯罪が相次いで発生しており、県民の不安が高まっているところであります。今後とも条例の適正な運用に努め、二度と子どもを対象とした悲惨な事件を起こさせないように最善を尽くすという決意を新たにしているところであります。
 次に、現在検討中の奈良県少年補導条例、これは仮称でありますけれども、この条例についてであります。
 県警察では、少年は次代を担う宝と位置づけ、非行の防止と保護を通じてその健全な育成に取り組む必要があると考えておりまして、とりわけ非行の入口に立つ不良行為少年につきましては、早期発見により非行性が深化する前の立ち直り支援等が必要であると考えております。そこで、県警察では、これまで関係機関やボランティア等と協力し、不良行為少年に対する街頭補導活動等を行ってきたところでありますけれども、少年が有害な物件を所持した場合の取扱いや、深夜に補導した家出少年等の保護の取扱いについて、必ずしも明確な法令上の根拠が設けられていないということもありまして、活動に支障が生じる場面もあったところであります。また、少年警察ボランティアとして委嘱している少年補導員の方々につきましても、法令上の位置づけが明確ではなかったために、その活動に理解と協力が得られにくい面があったことも否めないところであります。そこで、補導活動の根拠と手続を明確化して、県民の理解と協力のもとで補導活動の活性化を図るため、本条例の制定について検討することとしたものでありまして、現在、条例案の概要を公表し、広く県民の意見を募集しているところであります。
 なお、少年に対する補導活動につきましては、平成十五年十二月、政府の青少年育成推進本部が策定した青少年育成施策大綱におきまして、「権限・手続などについて、条例を含め法的明確化を図る」とされたところでありまして、国におきましても所要の検討が行われていることとは思いますが、国による法律の整備を待つということではなくて、県の少年の実情や、あるいは少年の非行防止に対する県民の意識に応じて、奈良県にふさわしい条例の整備を検討するということも、地方分権の時代にふさわしい取り組みではないかと考えているところであります。
 以上でございます。

平成18年  6月 定例会(第279回)-06月26日−04号  
P.258 ◆ 二十七番(丸野智彦)
最後に、警察本部長にお伺いします。
 昨今の治安情勢の深刻化や、一昨年十一月に発生し、全国民を震憾させたあの痛ましい女子児童誘拐殺人事件を契機として、子どもの安全と平穏な生活を守るために、子どもを犯罪の被害から守る条例が全国で初めて制定され、施行から約一年が経過しました。この条例は、県内で二度とこのような痛ましい事件が起こらない、起こさせないという強い思いで制定されたものと認識しております。
 条例制定後、県警察におかれましては、条例の周知徹底を図るとともに、関係機関や各種ボランティアの方々との連携を強化するなど、ご努力により、子どもの見守り活動など、子どもの安全を確保しようとする気運が盛り上がり、県内においては、子どもを対象とした大きな事件は発生していないところであります。これも本条例の制定効果があらわれているのかなと考えているところであります。
 しかしながら、誠に残念なことでありますが、全国的には、広島県や栃木県におきましては、本県と同様に、下校中の女子児童が殺害されるという痛ましい事件が連続して発生しました。また最近では、秋田県において、下校途中の男子児童が自宅を目前にして行方不明となり、その後、遺体で発見されるという、本当に心を痛める事件がまたもや発生したところであります。このように、子どもが被害に遭う事件が発生しますと、当該発生地域のみならず、県民の方々、特に同年代の子どもを持つ保護者をはじめとして、関係各位の不安は計り知れないものと察するところであります。警察のご努力で犯罪が減少しても、県民が感じる治安は非常に悪いと感じ、行く末に不安を抱くものであります。
 そこで、警察本部長にお伺いします。
 条例制定後約一年が経過し、相当の成果が現れていると思いますし、また効果についても検証されていると思います。県民の不安を払拭するため、具体的な検証結果に基づく条例制定効果についてお答えいただくとともに、今後の推進方策についてどのように考えておられるのかをお答え願いたい。
 以上で壇上からの質問を終わらせていただきます。ご清聴ありがとうございました。(拍手)

◎警察本部長(菱川雄治) (登壇)二十七番丸野議員のご質問にお答えいたします。
 私には、子どもを犯罪の被害から守る条例についてお尋ねでございます。
 本条例の施行後、一年を経過しようとしておりますが、この間も他府県では子どもが被害者となる痛ましい事件が後を絶たない状況にございます。幸いにも、本県では、同種事件の発生を見ておらず、議員ご指摘のとおり、本条例の施行が子どもに危害を加える者に対する抑止につながったのではないかと考えているところでございます。
 具体的な条例の効果といたしましては、子どもを守る地域の取り組みが活発化しており、自治会等による登下校時の見守り活動、危険箇所の点検、安全マップの作成などが積極的に行われましたほか、昨年六月末には、三百七十六人、四十二台でありました青色防犯パトロールが、本年五月末現在では二千九百九十五人、四百五十五台と大幅に増加しておりますし、また、地域の安全を担う自主防犯団体の数も、昨年六月末の三百二十五団体から本年五月末で六百一団体と拡大してきております。
 子どもの安全を守るための職域団体も、条例施行前には八団体であったものが、五月末現在で十七団体となるなど、子どもの安全の確保につながる自主防犯活動が積極的に行われているところであります。また、条例で禁止行為として規定されております、子どもに不安を与える行為や、子どもを威迫する行為に該当するような事案の発生数を、本条例施行前後で比較してみますと、施行前においては、一カ月平均九・一件の発生であったものが、施行後は、一カ月平均六・二件の発生と減少するなど、本条例による抑止の効果が徐々にあらわれているのではないかと考えております。
 ちなみに、本条例は、子どもを犯罪の被害から守ることに的を絞った初めての条例でありますことから、他府県の関心も大変に高い状況にございまして、他府県からの行政視察や問い合わせも、絶え間なく続いております。
 県警察では、他府県での子どもが被害者となる凶悪事件の発生などを受けまして、子どもの安全に対する県民の不安はまだまだ解消されるには至っていないと考えておりまして、今後とも実施施策の検証を行い、効果の低いものは見直し、効果的な対策は継続強化しつつ、関係機関、団体等連携し、また、地域住民の方々と手を携えて、条例の目的である子どもの安全の確保に最善を尽くしてまいる所存であります。
 以上でございます。

平成21年  2月 定例会(第292回)-03月05日−02号  
P.69 ◆ 三十番(田尻匠)
 中でも、私が重要な課題の一つとして思うところは、社会的弱者であり、かつ日本の将来を担う子どもたちを社会全体、我々大人たちがしっかり守っていかなければならないということであります。
 平成十六年に発生した、奈良市内における女子児童誘拐・殺人事件を契機として、翌十七年に制定をされました、子どもを犯罪の被害から守る条例の運用について、県警察にあっては県民との連携を図りながら、子どもに不安を与える事案の迅速な情報の収集と発信、家庭・学校・地域で子どもを守るための仕組みづくりと、子ども参加型の実践的な被害防止教育の推進など、子どもを犯罪の被害者にも、加害者にもさせない諸対策を積極的に推進されているところであります。
 しかしながら、今日、小中高校生が普通に持つようになった携帯電話では、いつでも、どこでも簡単に繋がる出会い系サイトについては、私は非常に心配をいたしております。
 この出会い系サイトに関連した事件は、犯行のほとんどに携帯電話が使用され、殺人・強盗・児童買春・児童ポルノなど、被害者の大半は十八歳未満の女の子であるとのこと、誠に憂慮すべき状況であり、子どもを犯罪の被害者にさせないためには、社会全体がこの出会い系サイトなどに対する諸対策をしっかりしていかなければならないと思っております。
 文部科学省は小中学校、高校への携帯電話の持ち込みについて、携帯電話は学校における教育活動に直接必要のないものとした上で、小中学校では原則禁止、高校でも禁止を考えられるとの指針を公表しております。私たち大人が将来ある子どもに対して、違法・有害情報に触れさせない環境づくりを推し進めることが、子どもたちを犯罪から守ることにつながると思いますので、保護者からの許可申請による例外的な場合は別として、原則的に携帯電話を持たせないことが必要であると考えます。
 先日、文部科学省の調査で、中学生の約二割が携帯電話で一日にメールを五十件以上もやりとりしていることや、一日百件以上ものメールが中学生で七%という子どものケータイ漬けが明らかになりました。
 携帯電話の所有率は小学生が二四・七%、中学生が四五・九%、高校生が九五・九%と、すごい数値が発表をされました。
 また、有害サイトに対するアクセス制限サービス、いわゆるフィルタリングサービスがあり、これは携帯電話会社による無料のサービスであることから、私たち大人がしっかりとした認識を持って活用しなければならないと思っております。
 また、昨年十二月一日にサイト運営業者に都道府県公安委員会への事業届出が義務づけられ、改正出会い系サイト規制法が施行されております。ネット上では、この出会い系サイト規制強化で、児童買春等に対する書き込みは、ブログの携帯版と言われておりますプロフと呼ばれる携帯電話の自己紹介サイトなどに移り、ネット業者もそれらの監視に追いつけていけない状況と聞いております。
 このプロフは、プロフィールサイトの略称で、携帯電話やパソコンからアクセスし、主に匿名で自分のプロフィール、性別、年令、写真、趣味や住居・地域などを日記ふうに書き込み、共通の趣味を持つ人や異性と簡単に知り合え、中高生を中心に利用者が急増しているようであります。
 反面、プロフ自体を知らない、聞いたことさえないという親が四割に上り、親自身が携帯電話やインターネットの機能やサービスを理解できていない実態もわかりました。
 今や小中高校生たちは肌身離さず手元に置いて携帯電話で、出会い系サイトやプロフなどを利用していると聞いており、こういった出会い系サイト、プロフなどを通じて、子どもが犯罪の被害に遭わないよう、社会全体がしっかりと監視するとともに、新しい問題にもきっちりと対応することが重要であると考えます。
 そこで、警察本部長にお伺いをいたします。
 全国的に、出会い系サイトに関連した少年少女が被害者となる犯罪が社会的に問題となっていますが、奈良県下の実態と県警察の取り組み状況について、またあわせてサイト業者の届出状況についてお伺いをいたします。
 以上をもちまして、壇上からの代表質問とさせていただきます。ご清聴誠にありがとうございました。(拍手)

◎警察本部長(森田幸典) (登壇)三十番田尻議員のご質問にお答えいたします。
 私には、出会い系サイトに関連して、少年少女が被害者となる犯罪の奈良県下の実態と、県警察の取り組み状況について、またサイト業者の届出状況についてのご質問がございました。
 まず、出会い系サイトに関連して少年、この中には少女も含んでおりますが、その少年が被害者となる事件の実態についてであります。
 平成二十年中、本県では、児童福祉法違反、児童買春・児童ポルノ禁止法違反、県青少年健全育成条例違反など、少年が被害者となる福祉犯事件を五十二件検挙しておりますが、そのうち出会い系サイト等に関連した事件は二十一件で、福祉犯事件の約四〇%を占めており、議員ご指摘のとおり、憂慮すべき状況にあると考えております。
 次に、県警察における取り組み状況についてであります。
 県警察では、サイバーパトロール等により、出会い系サイトへの違法な書き込みや悪質な事業者に対する取り締まりを強化しており、法施行以後、これまでに児童に係る禁止誘引行為の事件を二件検挙しております。
 また、少年自身に出会い系サイトに対する危険性を認識してもらうことを目的に、児童生徒を対象とした、被害防止教室を開催しており、その延べ回数は、平成二十年中に小学校三百四十五回、中学校百十五回、高校六十回を数えております。
 さらに、児童生徒の保護者の意識高揚を図るため、平成二十年中、保護者等を対象とした講演を五十一回開催しております。
 次に、本県における事業者の届出状況についてであります。
 昨年十二月の法改正により、事業者の届出が義務づけられたところでありますが、現在のところ、県公安委員会に対する事業者の届出はありません。
 県誓察といたしましては、今後とも、関係機関・団体と緊密な連携を図りながら、徹底した取り締まりと未然防止のための各種活動に取り組んでまいりたいと考えております。
 以上でございます。

最後に、警察本部長にお伺いします。
 県警察にあっては、厳しい治安情勢の中にあって、昼夜を分かたず、県民の安全と安心を確保するため総力を挙げていただき警察活動を推進され、犯罪発生件数が減少するなどの成果を上げていただいているところでございます。
 さて、先ほどの質問でも述べさせていただきました、五年前に発生した奈良市女児誘拐殺害事件を契機として、翌平成十七年に全国初となる、子どもを犯罪の被害から守る条例が制定され、県、市町村をはじめとした行政機関、保護者、地域住民、学校関係者と県警察が連携し、登下校時の見守り活動やパトロール等のさまざまな防犯対策が積極的に行われているところであります。また、女性についても、平成十二年にストーカー規制法が制定されましたが、依然つきまといや不審者、ストーカー行為など、女性に不安を与える事案が発生しており、このような行為が、いつ凶悪な犯罪に発展するかもわからない状況にあると考えます。県警察では本年四月に、子どもや女性を性犯罪等の被害から守るため、県警本部の生活安全企画課に子ども・女性安全対策室を新設されておられます。この対策室において、子どもや女性を対象とする声かけやつきまとい事案など、性犯罪等の前兆となる情報を収集し、その行為者を特定して、検挙や指導警告を行うとのことでありますが、卑劣極まりないこの種の事案発生を抑止するとともに、積極的な事件検挙を期待するところであります。
 そこで、本年四月に新設された子ども・女性安全対策室の現在までの活動内容と事件検挙状況について、警察本部長にお尋ねをいたします。
 以上で壇上からの代表質問とさせていただきます。ご清聴ありがとうございました。(拍手)
◎警察本部長(森田幸典) (登壇)六番大国議員のご質問にお答えをいたします。
 私に対しましては、本年四月に新設された子ども・女性安全対策室の現在までの活動内容と事件検挙状況についてお尋ねがございました。
 子どもや女性を対象とする性犯罪等の未然防止のためには、声かけやつきまといなどこの種の犯罪の前兆と見られる事案が発生した場合、重大な結果に至る前の段階で、警告・検挙等所要の措置を講じることが重要であります。本県では、前兆事案と見られる声かけやつきまといなどが本年十一月末現在で四百五十件発生し、前年同期比で五十八件増加している現状であります。
 県警察では、これらの前兆事案が発生した場合に、検挙または警告等の先制・予防的な活動を推進するため、本年四月、警察官二十二名体制で子ども・女性安全対策室を発足させたところであり、十一月末現在で、身体に触るなどのいわゆる迷惑防止条例違反等で十五人を検挙し、声かけ事案等で四人に対し警告等の措置を講じております。また、同室におきましては、同種事案の防止に向け、県警察のホームページに事案概要を掲出しているほか、登録携帯電話にリアルタイムに犯罪発生情報を配信するなどの情報発信を行っておりますが、より効果的な活動を推進するためには、県民の皆様からの情報提供が不可欠であることから、引き続き関連情報等の提供をお願いしているところであります。県警察といたしましては、今後も性犯罪等に対する先制・予防的活動を一層強化し、子どもや女性の安全確保に努めてまいりたいと考えております。
 以上でございます。