一審から、事物管轄おかしいと主張していた事件。
併合罪の主張も不利益主張にはならない。
観念的競合として家裁で実刑判決を受けた人はやり直して貰う利益はありますよ。
もう1件、観念的競合とした高裁判決への上告が係属しています(5項製造罪)。そっちも併合罪にならないとおかしいんですが、訴因不特定になる可能性があります。
最決H21.10.21
なお,所論にかんがみ,児童福祉法34条1項6号違反の児童に淫行をさせる罪と児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(以下「児童ポルノ法」というo ) 7条3項の児童ポルノ製造罪の罪数関係及びこれに関連する管轄の問題について,職権で判断する。
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2 所論は,上記両罪は併合罪の関係にあるから,児童ポルノ法違反の事実については,平成20年法律第71号による改正前の少年法37条によれば,上記家庭裁判所支部は管轄を有しない旨主張する。
そこで,検討するに,児童福祉法34条1項6号違反の罪は,児童に淫行をさせる行為をしたことを構成要件とするものであり,他方,児童ポルノ法7条3項の罪は,児童に同法2条3項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ,これを写真,電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより,当該児童に係る児童ポルノを製造したことを構成要件とするものである。本件のように被害児童に性交又は性交類似行為をさせて撮影することをもって児童ポルノを製造した場合においては,被告人の児童福祉法34条1項6号に触れる行為と児童ポルノ法7条3項に触れる行為とは,一部重なる点はあるものの,両行為が通常伴う関係にあるとはいえないことや,両行為の性質等にかんがみると,それぞれにおける行為者の動態は社会的見解上別個のものといえるから(最高裁昭和47年(あ)第1896号同49年5月29日大法廷判決・刑集28巻4号114頁参照) ,両罪は,刑法54条1項前段の観念的競合の関係にはなく,同法45条前段の併合罪の関係にあるというべきである。そうすると,児童ポルノ法7条3項の罪についても上記改正前の少年法37条により家庭裁判所の管轄を認めて審理,判決した第1審判決を是認した原判決は,法令に違反するものである。
しかしながら,被告人については,いずれにしても児童福祉法34条1項6号違反の罪の成立が認められ,児童ポルノ法7条3項の罪についても家庭裁判所が判断したことによって被告人に特段の不利益があったとはいえないことなどに照らすと,上記法令違反を理由として原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものとは認められない。
著反正義性が否定されました。
強制わいせつ罪との関係については、この判旨だと、丸々重複するので、観念的競合になりそうです。
最高裁は、まあ、細かいこと言うなということで、「児童ポルノ法7条3項の罪についても家庭裁判所が判断したことによって被告人に特段の不利益があったとはいえない」というのですが、家裁の判決が懲役3年3月(39か月)だとして、単純計算で法定刑で案分すると、児童淫行罪は30月、製造罪は9月になって、製造罪の懲役9月には管轄違という重大な訴訟手続の法令違反があるし、9か月でも懲役刑は特段の不利益にほかならないので、やり直すべきだと考えています。
追記
事件の性質に鑑みて、事案は引用しないつもりだったんですが、最高裁が公表しています。
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=38100&hanreiKbn=01
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20091026090437.pdf