児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

水着姿撮影を初摘発=児童ポルノで出版社員ら逮捕−女高生のDVD販売・警視庁

 現物判断として社会通念で「水着を着ている」と言えるかですね。高裁裁判長くらいの年代ではどう受け取るか。
 赤外線透視の3号ポルノというのは大阪地裁にありました。
 パンツをはいているけど食い込ませているのが3号ポルノというのは名古屋高裁金沢支部
 営業目的の国外犯の前例は横浜地裁

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071016-00000057-jij-soci
水着姿を撮影した作品を同法違反で摘発したのは初めて。4人は「児童ポルノに該当しない」と否認している。
 調べによると、容疑者らは2月1日から3日の間、インドネシア・バリ島の別荘で、都内に住む当時高校2年の女子生徒(17)のわいせつな水着姿などを撮影してDVDを製作した疑い。 

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071016-00000930-san-soci
水着姿でも児童ポルノと認定 出版社社員ら4人逮捕
 一部でも着衣を付けた映像を児童ポルノと認定したのは全国初とみられる。同課は「内容を総合的に判断した」としている。容疑者らは「撮影はしたが、児童ポルノには該当しない」と供述しているという。
 調べでは、容疑者らは2月1〜3日、インドネシア・バリ島で、当時17歳だった都内の女子高生の過激な水着姿を撮影し、DVDを製造した疑い。

第2条(定義)
この法律において「児童」とは、十八歳に満たない者をいう。
3 この法律において「児童ポルノ」とは、写真、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体その他の物であって、次の各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいう。
一 児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態
二 他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
三 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの

これなんか児童ポルノなのかもしれません。警察も新聞社も陳列しちゃって。
http://sankei.jp.msn.com/photos/affairs/crime/071016/crm0710161246013-p1.htm
http://sankei.jp.msn.com/photos/affairs/crime/071016/crm0710161246013-l1.htm


 マスコミ取材を受けましたが、以下は基礎知識。

 衣服の全部又は一部を着けないについては、社会通念

「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」解説警察庁生活安全局少年課執務資料(部内用)
「衣服の全部又は一部を着けない」とは、社会通念上衣服と認められる物を全く着用していないか、又は衣服の一部を着用していない状態をいう. これに該当する具体的な例として、全裸の状態や半裸の状態が考えられ、通常の水着を着用している場合にはこれに該当しないと考えられるが、全裸又は半裸の児童の身体の上に、社会通念上人が着用する衣服とは認められないような透明又は半透明の材質により作られた衣しよう等を着用している場合には、「衣服の全都又は一部を着けない姿態」に該当する

 性欲刺激要件については京都地裁H12.7.17

京都地方裁判所判決平成12年7月17日
判例タイムズ1064号249頁
 二 児童ポルノ法二条三項三号の解釈
 児童ポルノ法二条三項三号にいう児童ポルノ(以下「三号児童ポルノ」という。)とは、写真、ビデオテープその他の物であって、(1)衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって(2)性欲を興奮させ又は刺激するものを(3)視覚により認識することができる方法により描写したものに該当するものである(数字は条文にはないが便宜上付け加えた)。本件では、(1)、(3)は客観的に判断することができることから、特に(2)の「性欲を興奮させ又は刺激するもの」の意味内容が問題となる。
 そもそも児童ポルノの販売等が禁止され、さらに、これらの目的での児童ポルノの製造、所持等が禁止されているのは、これらの行為による児童に対する性的搾取及び性的虐待が、児童ポルノの対象となった児童の心身に有害な影響を与え続け、児童の権利を著しく侵害するからに他ならない(児童ポルノ法一条参照)。
 このように、児童の権利を保護することの重要性にかんがみて、児童ポルノ法は、刑法におけるわいせつの定義、すなわち、「徒に性欲を興奮又は刺激せしめ、かつ、幣通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するもの」という最高裁判所判例最高裁昭和三二年三月一三日大法廷判決参照)によって確立されている定義とは異なった観点から児童ポルノの範囲を定め、性欲を興奮又は刺激せしめる点は必要であるが、しかし、「徒に」興奮又は刺激しなくても処罰の対象とし(この点で刑法よりも規制対象を拡大しているといえる。)、また、禁止される行為の範囲も業としての貸与、頒布等の目的での製造等にまで広げ、国内外を問わず処罰することとしたのである(同七条参照)。
 そうだとすると、問題となっている写真、ビデオテープ等が、ことさらに扇情的な表現方法であったり、過度に性的感情を刺激するような内容のものである場合などに限るなど、特別な限定をしなくても、性欲を興奮させ又は刺激するものと認められる以上は、三号児童ポルノに該当すると解すべきである。弁護人は、「性欲を興奮させ又は刺激する」との規定の意味を、児童のポーズが意味もなく局部を強調するものであったり、構図などから男女の性交を暗喩していると認められるような場合に限定すべきであると主張するが、そのように限定して解釈すべき理由はない。
 三 判断の方法
 そして、性欲を興奮させ又は刺激するものであるか否かの判断は、児童の姿態に過敏に性的に反応する者を基準として判断したのではあまりにも処罰範囲が拡大してしまうことから、前記のとおり、児童ポルノの定義から最高裁判所判例の掲げる「普通人の正常な性的羞恥心を害し」という要件が割愛されているとしても、法の一般原則からして、その名宛人としての「普通人」又は「一般人」を基準として判断するのが相当である。
 もっとも、三号児童ポルノの範囲が拡大すると、表現の自由や学問の自由等の憲法上の権利を制約することになりかねないという懸念もあろう。児童ポルノ法三条も、この法律の適用に当たっては、国民の権利を不当に侵害しないように留意しなければならないと定めているところである。
 そこで、衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態(以下「児童の裸体等」という。)を描写した写真または映像に児童ポルノ法二条二項にいう」性器等」、すなわち、性器、肛門、乳首が描写されているか否か、児童の裸体等の描写が当該写真またはビテオテープ等ガ全体に占める割合(時間や枚数)等の客観的要素に加え、児童の裸体等の描写叙述方法(具体的には、(1)性器等の描写について、これらを大きく描写したり、長時間描写しているか、(2)着衣の一部をめくって性器等を描写するなどして性器等を強調していないか、3児童のとっているポーズや動作等に扇情的な要素がないか、(4)児童の発育過程を記録するために海水浴や水浴びの様子などを写真やホームビデオに収録する場合のように、児童の裸体等を撮影または録画する必然性ないし合理性があるか等)をも検討し、性欲を興奮させ又は刺激するものであるかどうかを一般通常人を基準として判断すべきである。そして、当該写真又はビデオテープ等全体から見て、ストーリー性や学術性、芸術性などを有するか、そのストーリー展開上や学術的、芸術的表現上などから児童の裸体等を描写する必要性や合理性が認められるかなどを考慮して、性的刺激が相当程度緩和されている場合には、性欲を興奮させ又は刺激するものと認められないことがあるというべきである。

 なお、児童ポルノ該当性とか違法性の意識に関しては、事前に、弁護士の意見をもらってからやれば、救われることがあります。
 奥村もそういう意見を求められることがありますが、相談者が逮捕されると気の毒なので、ここダメ、あれダメという感じになります。


追記
 取材のマスコミは「曖昧だ」と弁護士のコメントへ誘導しようとするんですが、今回は「衣服の全部又は一部を着けない」の問題で、裁判例もあるので、それほど大騒ぎすることはないと考えています。
性欲刺激要件が曖昧なのは今に始まったことではありません。

http://www.j-cast.com/2007/10/17012321.html
16歳熟女、18歳ババア?過激「水着DVD」市場
今回の逮捕の根拠となった、児童買春・ポルノ禁止法は、正式には「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」といい、同法律2条2項3号では、「児童ポルノ」の定義を「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写したもの」としている。非常に曖昧な定義だが、今回はこれを捜査当局が広く解釈、逮捕に至ったものと見られている

追記
 こういう判例もあるので、警視庁も勉強してから着手しているものと思います。
 公刊物未掲載なので本件の弁護人も知らないと思います。
 水着DVDについていろいろ主張しても、こういう判例を下敷きにして判断されると思います。

阪高裁h14.9.12
第3控訴趣意中,公訴の不法受理及び訴訟手続の法令違反の主張について
論旨は,訴因について,(1)併合罪であるはずの複数の販売行為が包括一罪として記載されている,(2)被撮影者ごとに本罪が成立し得ると考えられるのに,単に写真集のタイトルが記載されているだけで,どの被撮影者の写真が児童ポルノに当たるのか不明確である,(3)個々の被撮影者を特定する必要があると考えられるのに,「児童ポルノである写真集4冊を販売した」旨記載されているだけで,被撮影者の数やその特定事項,更には,全被撮影者の各写真が児童ポルノに当たることが,具体的に記載されていない,(4)「実在」の事実が氏名,年齢,人相等を用いて具体的に記載されていない,(5)どのような児童の姿態が「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により蒸識できる方法により描写した児童ポルノ」に当たるのかが,具体的に記載されていないとした上,そうであれば,本件公訴は元来棄却されるべきものであったのに,これをせず,有罪の判決をした原審裁判所の措置には,不法に公訴を受理した違法及び判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続の法令違反がある,というのである。しかしがなら,(1)の点については,仮に,検察官の意思が所論のとおりであるとしても,本件訴因は各販売行為ごとに特定されており,何ら特定を欠いてはいない。また,(2)及び(3)の各点については,いずれもその前提が失当であることは既に説示したとおりである。次に,(4)の点については,児童が,本件でいえば,写真撮影時に実在していたことが当然の前提であり,しかも,その写真が存在することによってその時に実在していたことも明らかである上,前記一覧表番号1ないし3の各写真集は,いずれも1名の児童を主対象として撮影されたもので(この点,所論は,被撮影者は日本人ではなく,各写真集に表示された人名が被撮影者の氏名であるとは限らないし,上記写真集3冊の被撮影者は合計23名もいて,1名のものはないと主張する。
しかしながら,芸名等であっても特定に用いることができるし,また,より多くの写真が掲載された被撮影者が主対象の児童であることを当然の前提としている。),これらの児童がそれぞれ訴因の対象となっていることも訴因の記載から明らかであって,原判決が説示するとおり,本件訴因の特定は,検察官が起訴当時の証拠に基づきできる限り特定したものであるといえる。さらに,(5)の点については,所論のような記載は何ら必要でない。なお,所論は,①被撮影者数を明らかにし,これを特定する必要がないとすれば,児童ポルノ法12条や同法13条の児童への配慮や児童の保護規定は無意味なものになる,②訴因が不特定のため,被告人側は全被撮影者の写真について児童ポルノに当たるか否か広範囲の防禦活動を強いられたなどと主張する。しかしながら,①の点については,被撮影者の実名や所在等が明らかである場合には,それらの規定は無意味なものにはならない。また,②の点については,原審検察官請求証拠に照らせば,検察官が本件各写真集のどの写真に着目して児童ポルノと判断して起訴したかは明らかであるから,被告人側の防御活動に差し支えがあったとは静められない。したがって,所論は採用できない。この論旨も理由がない。
第4控訴趣意中,訴訟手続の法令違反の主張について
論旨は,(1)本件全被撮影者259名の写真について,それぞれ児童ポルノに当たるか否かを判断しなければならないと考えられるのに,原判決が,複数の被撮影者の写真が掲載されている場合には,1名の被撮影者の写真が児童ポルノに当たれば写真集全体が児童ポルノとなるとして,その余の被撮影者の写真についてそれを認定判示していないのは,罪となるべき事実の摘示方法として許されない,というのである。しかしながら,(1)の点については,その前提が失当であることは既に説示したとおりである。また,(2)の点については,仮に,検察官の意思が所論のとおりであるとしても,訴因事実と同じ事実を認定し,単に罪数的評価が異なるという場合を羊は,訴因変更手続は不要であるから,その前提も失当である。この論旨も理由がない。
第5控訴趣意中,事実誤認の主張について
論旨は,(1)検察官は本件全被撮影者について児童に当たると主張するのであるが,①前記カメラマンの写真や陰毛が生育している者は児童に当たらないばかりか,カメラマンは製造及び本件犯行の各時点では既に死亡していて実在せず,また,②着衣を付けた又は顔だけを写した者の写真は,児童ポルノの要件を満たさないから,これらの写真について,本罪は成立しない,(2)本件各写真集はいずれも芸術作品であり,児童ポルノに当たらない,(3)本件各譲渡は,いずれも児童ポルノ愛好家という特定の者に対するもので,その数も4名と少ないから,本罪の「販売」には当たらないとした上で,それにもかかわらず,被告人を有罪とした原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認がある,というのである。
そこで,記録を調査して検討するに,原判決が,その挙示する証拠によって,被告人を本件各児童ポルノ販売の事実につき有罪としたのは正当であり,また,その「争点に対する判断」の項において,上記(1汲び(2)と同旨の原審弁護人の主張を排斥するところも,相当として是認できるのであって,当審における事実取調べの結果によっても,この認定,判断は動かない。なお,(1)の点については,その前提が失当であることは既に説示したとおりである。また,(2)の点についても,所論は,芸術性が児童ポルノ該当性に与える影響について,個々の写真ごとに検討すべきであるとの前提に立った上,本件各写真集は,いずれも,①表現方法に性器等を強調する傾向がない,②性欲を興奮又は刺激する内容がない,③児童のポーズに扇情的な要素がない,④児童の純真さを表現するという撮影者の意図が明らかである,⑤装丁も芸術作品に相応しいものであるから,児童ポルノに当たらないと主張する。しかしながら,芸術性が児童ポルノ該当性に与える影響については,本件各写真集をそれぞれ全体的に見て検討すべきである上,本件各写真集は,いずれも,全裸あるいは半裸姿の児童が乳房,陰部等を露出している写真が相当部分を占めており,上記①②及び④は妥当しないし,また,そのため,仮に,上記③及び⑤が妥当するとしても,本件各写真集が児童ポルノに当たらないとはいえない。したがって,所論は採用できない。さらに,(3)の点については,販売とは不特定又は多数人に対する有償の譲渡行為をいうのであって,本件各譲渡がこれに当たることは明らかである。この論旨も理由がない。
第6控訴趣意中,事実誤認及び法令の解釈適用の誤りの主張について
論旨はまず,(1)「性欲を興奮させ又は刺激するもの」の判断は,一般人を基準とし,(2)これに当たるには,その内容が「露骨な描写」であることを要するとする原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の解釈適用の誤りがある,というのである。しかしながら,(1)の点については,原判決の基準は正当である。つまり,「性欲を興奮させ又は刺激するもの」と感じる者が多数いると考えられれば,それで足りる。また,(2)の点については,原判決は本件各写真集が「性欲を興奮させ又は刺激するもの」に当たる旨判示したにとどまり,所論のようなものであることを要するとはしていない。次いで,論旨は,被撮影者には五,六歳の児童もおり,このような児童の姿態は,どのようなポーズをとっても,一般人を基準とする限り,「性欲を興奮させ又は刺激するもの」に当たらないのに,これを肯課した原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認がある,というのである。
しかしながら,本件各写真集に掲載された写真のうち,原判決が児童ポルノの要件を満たすと判断したものは,一般人を基準としても,いずれも「性欲を興奮させ又は刺激するもの」といえる。これらの論旨も理由がない。

 なお、大阪高裁H14の罪数判断は、その後、那覇支部で否定されました。