児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

自宅内盗撮行為を、卑わい行為として検挙した事例(京都府迷惑行為等防止条例)

自宅内盗撮行為を、卑わい行為として検挙した事例(京都府迷惑行為等防止条例)
 国法(窃視罪)では、他人の住居をのぞいた場合だけが規制されているのに、条例で、自分の住居内の盗撮行為を処罰できるのかという論点があり、京都府京都地検の検察協議でも検討が続いていました。

f:id:okumuraosaka:20220413052957p:plain
h26改正のときの検察協議

昭和二十三年法律第三十九号
軽犯罪法
第一条 左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
二十三 正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者

https://www.iza.ne.jp/article/20220412-VE3LMY4QK5JVZNCAZOL6VBZCFU/
男は男女の友人グループを自宅に招いては、少なくとも4年前から自宅トイレなどで20人以上の女性に対し約400回動画を撮影していた。府警のこれまでの任意聴取に対して「性的欲求を満たすため。将来的に(動画を売買して)小遣いも稼ぎたかった」と話しているという。

捜査関係者によると、男は昨年3~12月、自宅のトイレや脱衣場に設置した複数の小型カメラで、友人女性3人を7回盗撮した疑いが持たれている。男はトイレの天井につるした観葉植物や穴をあけた歯磨き粉のチューブなどにカメラを設置し盗撮していたという。

男は撮影した動画をツイッターに投稿していた。動画には女性らの顔も写っており、女性の1人から相談を受けた府警が捜査を進めていた。

京都府迷惑行為等防止条例
(卑わいな行為の禁止)
第3条
3 何人も、住居、宿泊の用に供する施設の客室、更衣室、便所、浴場その他人が通常着衣の全部又は一部を着けない状態でいるような場所にいる他人に対し、第1項に規定する方法で、みだりに次に掲げる行為をしてはならない。
(1) 当該状態にある他人の姿態を撮影すること。
(2) 前号に掲げる行為をしようとして、他人の姿態に撮影機器を向けること。
4 何人も、第1項に規定する方法で第2項に規定する場所若しくは乗物にいる他人の着衣等で覆われている下着等又は前項に規定する場所にいる着衣の全部若しくは一部を着けない状態にある他人の姿態を撮影しようとして、みだりに撮影機器を設置してはならない。

京都府迷惑行為等防止条例逐条解説
2)解説
第3項は、列挙している住居、宿泊の用に供する施設の客室、更衣室、便所、浴場のほか、人が通常着衣の全部又は一部を着けないでいるような場所にいる 「当該状態にある他人の姿態」を盗撮する行為を禁止している。そのほか、盗撮行為を未然防止するため、 当該場所にいる他人に対し、盗撮目的で撮影機器のレンズ部分を向ける行為についても規制の対象とするものである。盗撮目的であれば、 当該行為があった時点で違反が成立し、実際に他人の裸体等が撮影されたことは必要としない。
(3)用語の解釈
ア 「住居」 とは、人の起臥寝食に使用する建物をいい、その居住は、永続的であることを要せず、一時的でもよい。便所や浴室のように人が通常着衣の全部又は一部を着けないでいる場所はもちろんのこと、 リビングや廊下、玄関等であっても、着衣を着けないでいる場合があることから、 ここにいう 「住居」に当たる。したがって、住居内の便所、浴室などは、後述する 「便所」 、 「浴場」等ではなく、 「住居」 として規制されることとなる。
イ 「宿泊の用に供する施設の客室」 とは、宿泊の用に供することができる建物や乗
物内などの客を泊めるための部屋をいう。
具体例としては、
・ ホテルや旅館、民泊の客室
・ 山小屋、バンガローなどの客室
・ ラブホテル、モーテルの客室
・ 宿泊施設が併設されたサービスエリアや合宿所の客室
〔第3条:卑わいな行為〕
寝台列車やフェリーなどの乗物内にある宿泊用の客室
などが想定される。
なお、宿泊の用に供する施設の客室内に設置された「便所」や「浴室」などについては、 「宿泊の用に供する施設の客室」 として規制の対象となる。
ウ 「更衣室」 とは、人が着衣等を着替えるための場所のことであり、会社、学校、病院、 スポーツジム等に設けられている更衣室のほか、洋服店等で試着室として使用されている場所なども該当する。 また、会社内の空き部屋、倉庫等を更衣室として使用している場合も、それらの場所を「更衣室」 として使用している実態がある場合は、 ここにいう 「更衣室」に該当する。
エ 「便所」 とは、公衆便所のほか、学校、会社、官公庁、デパートなどの各種施設に設置されている便所、 イベント会場等で一時的に設けられた仮設便所、新幹線や高速バス等の乗物に設けられた便所など、あらゆる 「便所」が含まれる。
オ 「浴場」 とは、公衆浴場法(昭和23年法律第139号)第1条に規定する公衆浴場、旅館等の大浴場、露天風呂、会社、 スポーツジム、病院等に設けられた浴場などが該当する。浴場は浴室のみならず、脱衣場も含むと解する。
力 「その他人が通常着衣の全部又は-部を着けないでいるような場所」 とは、 「住居」 、 「宿泊の用に供する施設の客室」 、 「更衣室」 、 「便所」 、 「浴場」以外で、人が通常着衣の全部又は一部を着けない状態でいるような場所をいう。
具体例として、キャンプ・場のテント内、デパートやショッピングセンターの授乳室、病院の診察室、エステの施術室、検診車の車内などが該当する。そのほか、学校の教室を体育の授業のために一時的に更衣の場とする場合など、当該場所が行為発生時に「通常」着衣の全部又は一部を着けないでいるような場所に該当する場合があるので、個別に検討する必要がある。
第1号
(1)条文図解
(2)解説
第1号は、通常着衣の全部又は一部を着けない状態でいる他人の姿態を撮影する行為を規制するものである。 したがって、着衣を脱いでいない状態の他人を盗撮した場合は、本号の違反にはならず、第2号の「撮影機器を向ける行為」 を検討することとなる。
(3)用語の解釈
「当該状態にある他人の姿態」 とは、着衣の全部又は一部を着けないでいる状態にある他人の姿態をいい、例えば住居や更衣室等で裸体になっている人、又は着衣を脱ぎつつある人、若しくは着装しつつある人の姿態をいう。ただし、単に上着や靴下などを脱いだだけの姿態を撮影した場合は、 「人前に出れない差恥の姿」 とまでは言い難いため、 ここでいう 「一部を着けないでいる状態」には該当しないと解する。
当該状態にある 他人の姿態を 撮影すること
〔第3条:卑わいな行為〕
第2号:盗撮しようとする行為
(1)条文図解

前号に掲げる行為をしようとして ~ 他人の姿態に撮影機器を向けること

(2)解説
第2号は、盗撮行為を未然防止するため、盗撮目的で、通常着衣の全部又は一部を着けない状態でいるような場所にいる他人に対し、撮影機器を向ける行為を規制の対象とするものである。実際に他人の裸体などが撮影されたことは必要とせず、盗撮目的であれば、他人に撮影機器を向けた時点で違反が成立する。 したがって、盗撮する目的以外の撮影については、規制の対象とならない。
(3)用語の解釈
ア 「前号に掲げる行為」 とは、通常着衣の全部又は一部を着けない状態でいるような場所にいる他人に対し、 当該状態にある他人の姿態を撮影する行為をいう。
イ 「しようとして」 とは、他人の裸体等を盗撮する目的を有していたということである。 したがって、偶然に撮影機器のレンズ部分が女性が着替えている姿の方向に向いてしまった場合などは本号には該当しない。盗撮目的であるかは、行為者の撮影機器に記録された映像、 目撃状況、関係者の供述などから総合的に判断する必要がある。
ウ 「向ける」 とは、盗撮目的で、 「通常着衣の全部又は一部を着けないでいるような場所」にいる他人に対し、撮影機器のレンズ部分を向ける行為である。
(2)解説
第4項は、盗撮行為を未然防止するため、盗撮目的で、撮影機器をあらかじめ設置する行為を規制するものである。実際に他人の下着等や裸体などが撮影されたことは必要とせず、盗撮目的であれば、設置行為があった時点で違反が成立する。具体的には、駅や教室にいる女子高生のスカート内を盗撮するため、撮影機器をセットした鞄を置く行為や、着替えている女性の裸を盗撮するため、銭湯の脱衣場に小型カメラを取り付ける行為などが該当する。
(3)用語の解釈
ア 「第1項に規定する方法で」 とは、他人を著しく差恥させ、又は他人に不安若しくは嫌悪を覚えさせるような方法をいう。
イ 「第2項に規定する場所若しくは乗物」 とは、公共の場所、公共の乗物、事務所、教室、 タクシーのほか、不特定又は多数の者が出入りし、又は利用する場所又は乗物をいう。
ウ 「前項に規定する場所」 とは、住居、宿泊の用に供する施設の客室、更衣室、便所、浴場のほか、人が通常着衣の全部又は一部を着けない状態でいるような場所をいう。
エ 「設置」 とは、撮影する機能を有する機器を身体から離れた状態にして、置いたり、取り付けたりする行為をいう。
実際に他人の裸体などが撮影されたことは要せず、盗撮目的で、撮影機器をみだりに設置した時点で、違反が成立する。