理由齟齬ですよね。上告棄却。
無期懲役求刑事件で検察官控訴もあったんだけど、軽い方の罪の成否とか罪数についてよく検討しないで起訴され、1審でも話題にされなかった争点です。そういう弱点があるので、検察官の量刑不当の主張が通らなかったと観測しています。製造罪起訴しないという選択もありえたと思います。
http://hokuga.hgu.jp/dspace/handle/123456789/3646
刑事判例研究 東京高判平成30年1月30日(富士見市ベビーシッター事件控訴審判決)
著者神元, 隆賢; KANMOTO, Takayoshi
引用北海学園大学法学研究, 54(2): 57-68
発行日2018-09-30
以上見たように、従来の判例は、一貫して、強制わいせつと児童ポルノ製造の行為の同時性は肯定しうるものの、行為の社会的一体性・同質性は肯定しえないから、併合罪となるとの立場を示してきた。これに対し、本判決は、強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪が⽛基本的に併合罪の関係にある⽜ものの、一次保存の場合は⽛ほぼ同時に行われ、行為も重なり合うから、自然的観察の下で社会的見解上一個のものと評価し得るとした。
強制わいせつと児童ポルノ製造の両行為の社会的一体性・同質性は肯定・否定の分水嶺にあるところ、一次保存の事案では同時性を肯定できるから、かろうじて観念的競合と解しうるとの解釈であろうか。しかし、そうであるならば、社会的一体性・同質性をむしろ肯定し、⽛基本的に観念的競合の関係にある⽜としたうえで、二次保存では同時性が否定されるから併合罪となると解釈すべきではなかったか。
あるいは、社会的一体性・同質性を必ずしも肯定しきれないが故に⽛基本的に併合罪の関係にある⽜というのであれば、同時性を肯定できたとしても、すべて併合罪とすべきであったろうし、それが従来の判例の立場でもあった。
いずれにせよ、一次保存の場合に限ってであっても、強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪の罪数関係を観念的競合とした本判決及び原判決の判断には疑問が残る