ホントかという問い合わせがあったので補充しておきます。
判例解説などに従い「条例の淫行罪は、性道徳上社会的に是認されないような性的交渉は、おとなにとってはともかく、児童にとってはそれ自体で健全成長に対する抽象的危険を招くものであるという認識に立った上で、成人に対して、このような危険を回避すべき義務を課したもの」とするならば、東京都条例によって東京都内の人にも、こういう義務が課されているので、年齢について知らなくても義務違反はそれなりに非難されるでしょう。公務員・教員なら懲戒理由となると思われます。
北村弁護士のいう「男女交際においてそれぞれの年齢を公的書類などで確認する慣習など一般的にないことや、法的義務もないこと」については、東京都以外の青少年条例では「当該青少年の年令を知らないことを理由として、・・・の規定による処罰を免れることができない。ただし、当該青少年の年令を知らないことに過失がないときは、この限りでない。」とされているので、日本のほとんどの地域では、条例により年齢確認する義務があることになります。
最高裁判所判例解説刑事篇
昭和60年度201頁
福岡県青少年保護育成条例違反被告事件昭和60年10月23日
高橋省吾
前掲各裁判例が説示するように、刑法の強姦罪等は主として個人の性的自由を保護法益とし、その処罰の対象となる性行為も自由意思の制圧ないしこれに準ずる場合としているのに対し、本条例の淫行罪は青少年の特質にかんがみてその健全な育成を図る見地から、青少年の育成を阻害するおそれのある淫行を禁じ、たとえそれが青少年の同意に基づくものであったとしてもその相手方を処罰することにしたものであるから、両者は処罰の趣旨・目的、内容(対象となる性行為の態様)等を異にするというべきである。そして、本条例の淫行処罰規定の保護法益を右のように解する以上、右規定違反の行為について必要な捜査が行われ公訴の提起がなされたとしても、そのことが直ちに青少年の保護育成上有害であるとはいえないのであって、親告罪とするか否かは右規定のもたらす現実的影響、地方的特性等をも考慮した立法政策上の問題というべきものと思われる。
また、刑法一八〇条一項は、被害者の感情を考慮して強姦罪等を親告罪としているが、二人以上の者によって現場において強姦罪等が犯された場合(同条二項)や被害者に致死傷の結果を生じた場合(同法一八一条)には、被害者の感情を尊重すること以上に犯人を処罰することの必要性が大きいと考えられるところから、もはや親告罪とされていない。本条例の淫行罪は、前叙のとおり、強姦罪等とは罪質・保護法益を異にしている上(注一五)、青少年が合意の上で淫行をしたときには、その青少年が強姦罪等のそれと同様の被害者とはいえないと思われること、また、親告罪としたのでは、合意の上での淫行の場合、規制目的を達しえないことも考えられることなどに徴すると、本条例の淫行罪が青少年の告訴を要件としていないとしても、必ずしも刑法との整合性を欠いて不合理であるとはいえないと思われる。因みに、児童福祉法の淫行罪(同法三四条一項六号、六〇条一項)は非親告罪である。
(注一五)
本条例の淫行罪は、淫行は青少年にとってはそれ自体で健全育成に対する抽象的危険を招くものであるという認識に立った上で、青少年以外の者に対して、このような危険を回避すべき義務を課し、右義務違反に違法性を認めているものと解することもできよう(亀山継夫「児童に淫行をさせる罪(その二 研修三四七号六〇頁参照)
・・・
亀山継夫法務省刑事局青少年課長「判例研究 児童に淫行をさせる罪 その2」(研修347号60頁)
児童福祉法の淫行罪についての以上のような理解を前提とすると、条例の淫行罪の性格は、おのずから明らかになるといえよう。両者は、共に児童の健全な成長を保護法益とするものであるが、条例の性質上、後者は、前者に対する補充法的性格を有するものであること、後者が単に児童の淫行の相手方となることを構成要件としていること等からみれば、前者が「淫行」と「させる」の2要件によって、児童の健全な成長に対する現実の侵害ないしはそれに対する具体的危険を対象とするのに対して、後者は、児童が淫行をすることによる抽象的な危険を対象とするものと解する。
児童を相手方とする全く任意の性的交渉は、もし相手方が成人であれば単に不道徳な行為というにとどまるものであり、まして児童の側からの誘いかけがあったような場合には、その誘いに応じたというだけで処罰の対象となる点において広きに過ぎるという感があることは免れないが、これを前掲13ないし15の裁判例のように、構成要件的に限定しようとすると、児童福祉法の淫行罪との違いが明らかでなくなってしまい、ことに、15ないし18のような限定をすると、淫行を「させる」ということと同じになる。(自己が淫行の相手方となるか、第三者を相手方にさせるかという点に違いがあるという考え方もないではないが、これについては後述する。〉条例の補充的性格、青少年保護育成条例の趣旨、目的、条例の淫行罪の体裁等を総合して考えると、条例の淫行罪は、性道徳上社会的に是認されないような性的交渉は、おとなにとってはともかく、児童にとってはそれ自体で健全成長に対する抽象的危険を招くものであるという認識に立った上で、成人に対して、このような危険を回避すべき義務を課したものと解するのが最もすなおな見方であろう。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170127-00000032-dal-ent
未成年と知らずに交際したなら非難されるべきでない 「行列」北村晴男弁護士
デイリースポーツ 1/27(金) 7:00配信
未成年と知らずに交際したなら非難されるべきでない 「行列」北村晴男弁護士
謹慎することを表明した狩野英孝
淫行疑惑が発覚したお笑いタレントの狩野英孝(34)が当面の間、謹慎することを表明した。女子高生が17歳であることを偽って22歳と狩野に伝えたことを信じ、結果的に大騒動に発展した。18歳未満なのに20歳を超えているという相手の言葉を信じてうっかり交際したらどうなるのか。日本テレビ「行列のできる法律相談所」に出演する北村晴男弁護士に聞くと、18歳未満と知っていて交際したのであれば青少年健全育成条例違反に問われるが、知らなかったのであれば「基本的に非難されることではない」との見解を述べた。狩野は21日に会見して謹慎を表明。女子高生の父親に会って謝罪をしたことを明かし、同時に父親からは「うちの娘が年齢を偽って申し訳ない」と告げられたことも明かしていた。
一般的に、プライベートな出会いで年齢を多少なりとも詐称することはそれほど珍しいことでもなく、北村弁護士は「原則としてうそをつくことは犯罪ではない。だれでも大小さまざまなうそをついている」と述べた。ただ、例外的にうそをついてお金をとれば詐欺罪という犯罪にあたることになり、たとえ未成年でも罪に問われる場合があることを指摘した。
18歳未満の女性が22歳と年齢を偽った今回のケース。北村弁護士は、男女交際においてそれぞれの年齢を公的書類などで確認する慣習など一般的にないことや、法的義務もないことを指摘。
それでも狩野が謹慎を決めたことについて北村弁護士は「22歳と言われたことを信じて女性と付き合った芸能人に対し、社会が大きな非難を浴びせるとすればそれは社会が間違っている。社会が芸能人に対し、過度の潔癖性を求めているのだとすれば、その価値観がゆがんでいる。本当に18歳未満と知らなかったのであれば、謹慎する必要があるとはとても思えない」と述べた。