児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

児童買春罪の実刑事案の処遇内容

 児童買春罪も性犯罪再犯防止指導の対象になるようです。

閲覧禁止処分取消等請求事件
東京地方裁判所平成28年04月19日
 3 前提事実(当事者間に争いがないか、文中記載の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定することができる事実)
  (1) 原告の収容に至る経緯等
  ア 原告は、平成×年3月19日、秋田地方裁判所において、暴力行為等処罰に関する法律違反、信用毀損罪により懲役2年、執行猶予4年の判決の言渡しを受け、同判決は同年4月3日に確定した。その犯罪事実は、被害者の娘と交際していた原告が一方的に別れを告げられたこと等から不満を募らせて、団体を仮装して被害者に対し脅迫行為を行い、また、他の共犯者と共謀して被害者の経営する会社の信用を毀損したというものであった。(乙30)
  イ 川崎簡易裁判所は、平成×年7月29日、原告に対し、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反の罪により罰金50万円の略式命令をし、同命令は同年8月13日に確定した。
  ウ 原告は、平成×年9月27日、横浜地方裁判所川崎支部において、次の犯罪事実により、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反の罪により懲役10月の判決の言渡しを受け、E拘置支所に収容され、同判決は同年9月30日に確定した。(乙30)
  (ア) 原告は、平成×年8月8日、東京都F区内のホテルの客室内において、その当時18歳に満たない児童であることを知りながら、自己に同児童に対する性交等の周旋をした者に対し、現金3万5000円の対償を供与して、同児童と性交するなどし、もって児童買春をした。
  (イ) 原告は、同月9日、神奈川県G市内のホテルの客室内において、その当時18歳に満たない児童であることを知りながら、前同様の周旋をした者に対し、現金3万3000円の対償を供与して、同児童に自己の陰茎を口淫させるなどし、もって児童買春をした。
  エ 横浜地方裁判所は、平成×年10月13日、上記アの執行猶予を取り消す決定をし、同決定は、同月18日、確定した。(乙30)
  オ 原告は、平成×年12月20日、E拘置支所からH少年刑務所に移送された。
  (2) H少年刑務所における矯正処遇等の状況
  ア 原告は、平成×年1月30日、特別改善指導(刑事収容施設法103条2項、規則64条2号)の一つである性犯罪再犯防止指導(各種指導訓令5条、別表2)の対象者(指導密度を「中程度」とするもの)に指定されたが、H少年刑務所における指導の受講を拒否する態度を示していた。(乙6、8、31)
  イ 原告は、反復要求を行ったとの理由で、平成×年7月13日、閉居罰7日を科された。(乙30)
  ウ 原告は、平成×年7月×日、同刑務所からD刑務所(以下「本件刑務所」という。)に移送された。
  (3) 本件刑務所への移送当初におけるベスト誌の交付
  ア 原告は、本件刑務所に移送された際、月刊誌「ベスト」(以下「ベスト誌」という。)7冊(平成×年10月号から平成×年3月号まで及び同年2月号別冊)を含む計146冊の書籍等(書籍、雑誌、新聞紙その他の文書図画(信書を除く。)をいう。刑事施設収容法33条1項5号)を携有した。D刑務所長(以下「本件刑務所長」という。)は、ベスト誌の上記7冊について、閲覧禁止の決定をせず、同月×日、原告に交付した。(争いがない事実、乙9、19)
  イ 本件刑務所職員は、平成×年9月4日、原告の父母から原告宛てに差し入れられたベスト誌の平成×年4月号から同年9月号までの6冊を含む計11冊の書籍等を受け付けた。本件刑務所長は、上記6冊について、閲覧禁止の処分をせず、原告に交付した(以下、上記6冊と上記アのベスト誌7冊を併せて「本件各雑誌13冊」という。)。(争いがない事実、乙10、11)


  (4) 本件刑務所における矯正処遇等の状況
  ア 矯正処遇の目標
  本件刑務所長が原告につき定めた処遇要領において、原告の矯正処遇の目標は、「〈1〉 犯罪に至った生活上の問題に気付き、犯罪による問題解決や犯罪への関与を行わない。〈2〉 規則を守ってまじめに生活する姿勢を養う。〈3〉 与えられた作業に一生懸命取り組み、社会復帰に備える。」ものとされ、矯正処遇の内容等として、一般改善指導を行うほか、性犯罪再犯防止指導の対象とすることとされた。(乙2)
  イ 書籍等の閲覧禁止
  本件刑務所長は、原告宛てに差入れのあった「JAPAN」2012年11月号につき、平成×年10月15日、刑事施設収容法70条1項2号に基づき、閲覧禁止とすることを決定し、同月16日、原告に告知した。本件刑務所長は、以後、本件訴訟提起までの間、わいせつ性を有する月刊誌など合計84冊(上記のほか、「アジアン王」、ベスト誌(後記(5)ア及びイのものを含む。)などにつき、同法70条1項2号に基づき、閲覧禁止の決定を行い、原告に交付しない処分をした。(乙21)
  ウ 性犯罪再犯防止指導の状況
  原告は、本件刑務所に移送された後、性犯罪再犯防止指導のうち、オリエンテーション及び準備プログラムを受講したが、本科プログラム以降の受講はしなかった。原告は、平成×年11月20日、工場担当者と面接し、性犯罪再犯防止指導の受講を辞退する旨を述べるとともに、書籍等の閲読が同年10月から不許可となったことに納得できない旨を述べた。(乙16、31、39)
  (5) ベスト誌に関する閲覧禁止処分等
  ア 本件刑務所長は、原告宛てに差入れのあったベスト誌の平成×年12月号につき、平成×年12月14日、刑事施設収容法70条1項2号に基づき、閲覧禁止とすることを決定し、同月17日、原告に告知した。また、本件刑務所長は、原告宛てに差入れのあったベスト誌の平成×年10月号、同年11月号、平成×年1月号につき、平成×年12月×日、同法70条1項2号に基づき、閲覧禁止とすることを決定し、同月26日、原告に告知した。(乙21)
  イ 原告は、既に交付済みのベスト誌の平成×年12月号から平成×年9月号までの10冊(平成×年12月号ないし平成×年3月号の4冊は、上記(3)アのベスト誌と同じものであり、残りの同年4月号ないし同年9月号の6冊は、上記(3)イのベスト誌と同じものである。)につき、再度交付を受けることができるかどうかを確認することとした。そして、平成×年12月17日、原告宛てに、上記10冊を含む計17冊の書籍等の差入れがあった(以下、このときに差入れがされた上記10冊を「本件各雑誌10冊」という。)。(争いがない事実、乙12、39)
  ウ 本件閲覧禁止処分等
  本件刑務所長は、本件各雑誌10冊につき、いずれも、〈1〉 全編アダルトDVDの紹介写真を掲載したものであり、そのほとんどが男女の性行為場面であって、極めて高いわいせつ性を有し、健全な性意識の範囲を超えていると認められること、〈2〉 原告の罪名が「児童買春・児童ポルノ法」違反であり、原告が性犯罪再犯防止指導の対象者に指定されていることから、原告に閲覧させることにより原告の矯正処遇の適切な実施に支障を生じるおそれがあると判断し、また、該当箇所が全編にわたっており抹消又は削除では書籍等としての体裁を保つことができないことから、閲覧禁止が相当であるとして、平成×年12月26日、刑事施設収容法70条1項2号に基づき、閲覧禁止とすることを決定し、同月27日、原告にその旨告知した。(争いがない事実、乙13、14。以下「本件閲覧禁止処分」という。)
  そして、本件刑務所長は、平成×年1月7日、刑事施設収容法47条2項1号に基づき、本件各雑誌10冊を原告に引き渡すことなく領置することとし、原告にその旨告知した。(争いがない事実、乙14、×。以下「本件領置処分」といい、本件閲覧禁止処分と併せて「本件各処分」という。)
  (6) 再審査による閲覧禁止処分等
  ア 原告は、平成×年6月27日、本件訴えを提起した。
  イ 本件刑務所長は、交付済み書籍等の内容審査を実施することとし、処遇部長は、平成×年11月×日付けの指示文書により、その実施要領を定めた。同年11月×日から同年12月16日までの間に行われた上記の再審査の結果、原告については本件各雑誌13冊を含む17冊の書籍等につき閲覧禁止とすべきこととされた。そして、本件刑務所長は、同年12月2日、原告に対し、刑事施設収容法70条1項2号に基づき、上記17冊の書籍等について、閲覧禁止の処分を行い(以下「再審査による閲覧禁止処分」という。)、同月4日、これらを領置した。(争いがない事実、乙17ないし19、×)
  ウ 他方、原告に対して交付済みの書籍等のうち、「チ!」(甲1)、「は」(甲2)、「恋は」(甲3)については、上記の再審査において閲覧禁止の処分がされなかった。また、上記の再審査の後、原告宛に差し入れのあった「実話」(2014年3月号)(甲5)、「L」(2014年6月号)(甲6)、「JAPAN」(2014年6月号)(甲7)、「M」(甲8)については、閲覧禁止の処分がされなかった。(争いがない事実)
  (7) 原告は、平成×年6月27日、本件刑務所を満期釈放により出所した。その際、本件刑務所は、刑事施設収容法52条に基づき、原告に対し、領置していた書籍等を全て引き渡した。(乙×、×、弁論の全趣旨)