迷惑条例違反の法定刑は最高でも1年ですので、再犯加重されていると思われます。
この事件の誤った処断刑期の求め方は
常習の迷惑行為で再犯加重して最高懲役2年になって、
(「心神耗弱で必要的減軽があって最高懲役1年になって」を忘れて)
その処断刑期の範囲内で検察官が懲役1年6月を求刑して、裁判所が1年2月を宣告した
という計算方法になります。
処断刑期の求め方の正解は
常習の迷惑行為で再犯加重して最高懲役2年になって、
心神耗弱で必要的減軽があって最高懲役1年になって
その処断刑期の範囲内で懲役8月になる
という計算方法になります。
再法併酌ですね。
検察官は心神耗弱を前提にして1年6月を求刑した点が致命的で
裁判所も心神耗弱による必要的減軽適用しながらにして1年2月を宣告した点が致命的です。処断刑期の計算をせずに、検察官求刑の7〜8割を宣告していたということです。(宣告14月/求刑18月=77.77%)
弁護人も心神喪失を主張していて心神耗弱までしか認められなかったので、控訴を検討すると思うのですが、ありえない宣告刑が出ているのに、法令適用の誤りに気付かなかったのが不思議です。
福岡県迷惑行為防止条例
http://www.police.pref.fukuoka.jp/data/open/cnt/3/27363/1/meibou.pdf
第十一条
2 第二条又は第六条から第八条までの規定のいずれかに違反した者は、六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
第十二条 常習として前条第二項の違反行為をした者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
・・・
刑法
第三九条(心神喪失及び心神耗弱)
心神喪失者の行為は、罰しない。
2心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。
法の上限超えた判決破棄=検察、裁判所がミス−最高裁
2016.07.04 時事通信 (全364字)
福岡地裁小倉支部で2014年、誤って法律の上限を超える刑が確定して服役した男性(60)について、最高裁第2小法廷(鬼丸かおる裁判長)は4日、懲役1年2月とした確定判決を破棄し、懲役8月とする判決を言い渡した。判決によると、男性は女性の尻を触ったとして福岡県迷惑行為防止条例違反の罪に問われた。公判では、飲酒などの影響で責任能力が減退した「心神耗弱」の状態だったと認定された。
本来は心神耗弱を考慮すると上限は懲役1年となるが、検察官はそれを超える同1年6月を求刑。裁判官も気付かずに同1年2月を言い渡した。
上限を超えて求刑 検事3人懲戒処分 福岡地検発表
2016.07.09 西日本新聞社
福岡地検は8日、同地検小倉支部に在籍中に誤って上限を超える求刑をしたとして、60代と40代の検事2人が同日付で法務相から減給100分の5(1カ月)の懲戒処分を受けたと発表した。監督責任を問われた60代検事も戒告の懲戒処分を受けた。地検などによると、福岡県迷惑行為防止条例違反罪で起訴された心神耗弱の男性に対し、刑の上限は懲役1年だったのに、検察側は誤って同1年6月を求刑。地裁小倉支部も気付かないまま2014年3月、同1年2月の判決を言い渡し、確定した。
最高裁は今月4日、確定判決を破棄し、懲役8月の判決を言い渡した。男性は既に服役を終えており、地検は服役する必要がなかった期間について賠償の手続きを進める方針。地検は「猛省して再発防止に努めたい」としている。