児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

提供罪数件+提供目的所持罪の処断刑(罰金併科の場合)

  1/1 6項提供罪
  2/1 6項提供罪
  3/1 6項提供罪
  4/1 7項所持罪(現行犯)
こういう事件だと、まず、所持罪で逮捕起訴して、追起訴・訴因変更で提供罪3件を追加することが多いですよね。
 その場合の処断刑(罰金)が問題です。
 奥村説の最決平21・7・7集63-6-507があるので、懲役刑の処断刑期の上限は、7年6月です。
 併科の罰金刑は罪数×500万になるんですが、判例では提供罪の罪数処理がわかりません。
 3説あると思います。

1 2罪説
  1/1 6項提供罪
  2/1 6項提供罪
  3/1 6項提供罪
を包括一罪として、所持罪とは併合罪ということで、結局2罪。罰金の上限は1000万円。

2 4罪説
  1/1 6項提供罪
  2/1 6項提供罪
  3/1 6項提供罪
  4/1 7項所持罪(現行犯)
併合罪として、結局4罪。罰金の上限は2000万円。

3 1罪説(判例違反)
  1/1 6項提供罪
  2/1 6項提供罪
  3/1 6項提供罪
  4/1 7項所持罪(現行犯)
を包括一罪として、結局科刑上一罪で、罰金の上限は500万円。懲役の上限も5年。

 弁護人は判例違反と言われようと迷わず、被告人に最も有利な1罪説を唱えるとして、さて、裁判所は併合罪だとして、罰金の上限をどうするか。

児童ポルノ所持、提供等)
第七条  
6  児童ポルノを不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を不特定又は多数の者に提供した者も、同様とする。
7  前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
・・・
刑法
第48条(罰金の併科等)
2 併合罪のうちの二個以上の罪について罰金に処するときは、それぞれの罪について定めた罰金の多額の合計以下で処断する。
・・・
条解刑法
もっとも,罰金の併科刑がある場合.?最も重い罪に罰金の併科刑がある場合には, 48条を待たず,当然に有期の懲役又は禁鋼と共に併科され,?それ以外の罪に罰金の併科刑がある場合には, 48条1項により併科されるとするのが判例・実務であるから,いずれの見解によっても結論に差異は生じない。