児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

匿名却下 強制わいせつ 実刑判決 地裁支部 判決文にも実名=茨城 (水戸地裁某支部H26.5.21)

 おそらく前科の関係で実刑になったんでしょうが、無理に匿名にして控訴されることを考えると、法廷で小細工すれば実名記載で判決が書けるんじゃないかという選択になったじゃないでしょうか。
 逮捕報道には被害者の年齢も出てました。

 なお、こんな事件が合議に回ることもないと思いますが「裁判長」ということになると、通常の開廷日だと、下妻支部合議係に決まります。

http://www.courts.go.jp/mito/saiban/tanto/tisai_tanto/index.html
水曜日開廷なのは、
日立支部刑事係
土浦支部刑事単独係
下妻支部刑事合議係

匿名却下 強制わいせつ 実刑判決 地裁支部 判決文にも実名=茨城2014.05.22 読売新聞
 性犯罪被害者の2次被害防止を目的に検察、弁護側双方が合意した被害者匿名の起訴を裁判長が「再被害の恐れは無い」として認めなかった裁判で、水戸地裁支部は21日、強制わいせつ罪などに問われた被告の無職男(29)に懲役1年6月(求刑・懲役2年)の判決を言い渡した。

 判決によると、男は昨年12月10日午後11時55分頃、徒歩で帰宅途中だった面識の無い県内の女性に背後から襲いかかり、尻を触るなどのわいせつな行為をした。

 地検支部は今年2月18日、被害者を生年月日などと共に「当時○歳の女性」と記載して男を起訴。弁護側も被害者と示談した際、「実名は被告に知らせない」と約束し、知った場合には被害者側の転居費用を負担する条項なども設けた。

 だが、裁判長は被害者の実名記載を要求。4月25日の初公判は、検察官が実名を記した紙を男の目の前で示し、男が顔をそむけて確認しないという方法で被害者の保護を図る異例の展開となった。

 起訴状は既に実名に補正されており、判決文にも実名が記載される。将来的に男が判決文の謄本を請求し、被害者名を知る可能性は残るが、地検幹部は「男が弁護人に内緒で判決文を見ることは防げないが、示談条項を破って金銭的損害が生じる危険を冒すことはないだろう」としている。

匿名起訴2件目、被告に実刑判決 地裁管内の公判 /茨城県
2014.05.22 朝日新聞
 性犯罪の被害者を匿名にして起訴された強制わいせつ事件の判決公判が21日、水戸地裁管内の支部であり、県内の男(29)が懲役1年6カ月(求刑懲役2年)を言い渡された。水戸地検によると、水戸地裁管内での匿名起訴は2件目。

 男は1月に強制わいせつなどの疑いで逮捕され、2月に起訴された。判決によると、男は県内で昨年12月、帰宅中の女性に背後から近づき、尻を触るなどのわいせつな行為をした。

 地検によると、検察側は女性を匿名にして起訴。だが地裁支部は実名にするよう求めたため、地検は、再被害などの可能性を訴える意見書を裁判所に提出。事前協議でも弁護側、検察側はともに匿名による公判を主張していた。

 地裁支部は、被害者の実名を紙で提示することを提案。公判では、検察官が被害者の実名が書かれた紙を被告の男に見せたが、顔をそむけたという。

 水戸地検は、匿名での公判が認められなかったことについて「残念だ」としている。

強制わいせつ初公判 被害者匿名 裁判所が拒否=茨城
2014.04.26 読売新聞
 ◆地裁支部 「再被害の恐れない」 実名書いた紙示す 被告は見ず

 性犯罪被害者が被告に実名を知られ再被害に遭わないよう、水戸地検支部が実名を伏せて起訴した強制わいせつ事件の初公判が25日、水戸地裁支部であった。匿名による起訴を弁護側も求めたが、裁判所側は「再被害の恐れはない」と拒否。検察側と弁護側は協議し、検察官が法廷で実名を書いた紙を示し、被告が顔をそむけて確認しないという方法で被害者の保護を図った。一方、裁判所側はこの態度を公判調書に記載しない意向で、匿名起訴状を巡る異例の展開となった。

 強制わいせつと住居侵入の罪で起訴されたのは県内の男(29)。昨年12月、面識のない女性を襲ってわいせつな行為をしたとして、今年2月に起訴された。起訴状では、被害者を生年月日などとともに「当時○歳の女性」と記載。県警も被害者を匿名にして男の逮捕状を請求、執行していた。

 25日午後4時の開廷直後、裁判長が「再被害の具体的な恐れは認められず、実名記載の例外には当たらない」と発言。起訴状の補正の有無を問われた検察官は「実名を追加し、メモを使う」と回答した。検察官が起訴状朗読後、証言台の前に立つ男に歩み寄ると、弁護人も男の右隣まで接近した。検察官が実名の記された紙を見せると、男は弁護人の方に顔をそむけた。

 被告人質問では、弁護人が「検察官が出した書面を見ましたか」と質問。男は「いいえ。被害者の名前を知らないようにするために見なかった」と答えた。

 検察側は起訴にあたり、行きずりの犯行で態様が悪質なことなどから、「2次被害の恐れがある」として匿名化を決めた。弁護側は被害者との示談で「実名を被告に知らせない」と約束。男が実名を知った時は、〈1〉被害者は家族ごと転居〈2〉転居費用を被告が負担−−との条件も設けていた。

 事前協議で、検察側と弁護側は「被害者、被告双方の利益に合致する」として、裁判長に匿名による起訴を主張。検察側は3月20日付で再被害の可能性を訴える意見書を出したが、裁判長は実名記載を求め、「紙の提示」を提案したという。

 検察側から説明を受けた被害者側は嫌悪感を示しつつ、「(男が)処罰されるなら」と同意したという。

 弁護側は当初、公判で「実名は不要」と発言する予定だったが裁判長が認めず、検察側と協議し、「紙を見ない」ことにした。

 裁判は即日結審し、検察側は懲役2年を求刑した。

 水戸地裁管内での匿名起訴は2件目だった。

 検察側は、異例の措置を講じたことについて、「外形的には実名起訴だが、被告に被害者名は知られていない」としている。

 ◆逆恨みされる可能性も

 諸沢英道・常磐大大学院教授(被害者学)「逆恨みされる可能性もあり、再被害の恐れが無いとする根拠がわからない。被告本人が匿名を求め、事実関係も全員が把握している。今回は『容疑が特定できない』という防御権の侵害は発生しておらず裁判所の理屈は理解できない」

 ◆基準なく対応異なる

 元東京高裁部総括判事の安広文夫・中央大法科大学院教授(刑事法)「裁判官を納得させるには『常習的な性犯罪者』など具体的な再被害の危険性を明示する必要がある。犯罪事実は可能な限り特定すべきであり、匿名起訴の運用基準が無い中では、裁判官ごとに対応が異なる現状は続くだろう」