児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

売春代金を支払う振りをして情交した後踏み倒す行為は、この売春婦は,取引上編されたというだけで,とても「抗拒不能」とはいえないので、準強姦にならない。斉藤信治 刑法各論第3版P56

 抗拒不能かどうかで判断するんですね。
 児童の場合でも、お金というのは相当重要な要素で、それで警察に届ける人もいるくらいなんですが、準強姦にはならないということです。

斉藤信治 刑法各論第3版
P56
余話
被害者の姉から頼まれた産婦人科医を装い,巧みに,性病に感染しているのではないかと心配させ,秘密裏に検査した方が戸籍にな載されなくて良いと欺いて,密室に誘い込み,感染の検査結果が出たと偽りショックを守え,自己との(薬を塗つての)性交で治療できると煽して性交を甘受させ,準強姦とされた例もある(名地昭55・7・28。なお,同様の事案で,「姦淫行為を抗拒することにより被り又は続くと予想される危難を避けるため,その行為を受け容れるほかはないとの心理的,精神的状態も「抗拒不能」)。
ただ,批判も強い(前回,佐伯仁志,町野,西田。
また,東地昭58・3・1〔いかにも眉つばものの話に軽率にひっかかっても「抗作不能」ではない〕)。
しかし,疑問である。
まず,「強姦罪と同様の刑を科する以上,反抗を著しく困難にする暴行・脅迫があったと同視し得るだけの事情が必要」とされるが明らかに真の同意がなかった点で同視しうるし, 178条は,被害者が普通人より弱いために被害にあうことも防止しようとしているから(心神喪失の場合,とくに明瞭),一般人にも抗拒不能といえるほどの場合であることを要しまい(上掲東地昭62)。
また,単なる動機に関する錯誤は,法益関係的錯誤と異なり,犯罪の成育に影響しない,とも説かれるが,錯誤の重要性は法益関係的か否かだけで決まるものでもない(15頁)。
たとえば,性交の甘受は性病が治ると欺かれたためだったという場合,その錯誤は重要でないとすべき理由はなかろう(性交より性病の方が困ると考えても変ではない)。
さらに,普通の性交ではなく治療手段だと欺かれたのであれば,法益関係的錯誤とみる余地もあろう(山中)。
別に,「このような錯誤があった場合に準強姦を認めると,売春代金を支払う振りをして情交した後踏み倒す行為も178条に該当することになってしまう」(結婚すると煽して情交を遂げた場合も準強姦になってしまう)とも主張されるが,この売春婦は,取引上編されたというだけで,とても「抗拒不能」とはいえず,本件被害者のように,ショッグを与えられたうえ,「性病のままで結婚できるか,病院では恥ずかしいだろう,手術の方法もあるが苦しいよ」などとも奇襲され,いわば逃げ場を見失った者と同列にはみられまい(なお,林,佐久間,岡山地昭43・5・6)。
なお,準強姦でないとされると,妊娠中絶できなくなる恐れもある(32頁参照)。
別に,限界的な東高昭56・1・27 (モデルになるため必要とわいせつ行為)。