被害者の供述の信用性が否定されています
今考えてみても、本件は、検察側の未請求証拠に犯罪の成立を百定するような'存観的な証拠が存在し、起訴自体に疑問が残る'事件であった。被告人の自白調書がなければ、本件の起訴はなかったのではないかと思う。
準強姦被告事件
横浜地方裁判所平成21年(わ)第2363号
平成22年7月15日第6刑事部判決
判 決
上記の者に対する準強姦被告事件について,当裁判所は,検察官今村智仁,私選弁護人畑裕士(主任),同吉澤幸次郎各出席の上審理し,次のとおり判決する。
主 文
被告人は無罪。
理 由
第1 公訴事実
本件公訴事実は,「被告人は,平成21年2月28日午前8時30分ころ,横浜市○○区<以下略>○○神社敷地内に駐車中の普通乗用自動車内において,A子(当時19歳)が酩酊し抗拒不能であるのに乗じ,同女を姦淫したものである。」というものである。
第2 争点
1 上記公訴事実の日時場所において,被告人がA子と性交したことは検察官と被告人・弁護人との間で争いがない。
2 争点は,〔1〕性交の際にA子が抗拒不能の状態にあったか否か,〔2〕A子が抗拒不能の状態にあったとして,被告人がそのことを認識していたか否かである。
(1)検察官は,〔1〕A子は,強度に酩酊していたため,被告人から姦淫された際,思うように声を出したり体を動かしたりすることができなかったと証言した。そして,〔ア〕事件当日のA子の飲酒量や,〔イ〕性交が行われた神社に行く直前に路上で座って寝込んでしまったこと,性交後に友人宅前で嘔吐したことなどの性交前後のA子の行動,〔ウ〕被告人とA子との従前の関係,〔エ〕性交現場の状況等に照らすと,A子供述は十分信用することができる。これによれば,同女は性交の際に抗拒不能の状態にあった,〔2〕被告人は,性交の前からA子と行動をともにして同女の様子を間近で見ていたのであるから,A子が強度の酩酊状態にあって抗拒不能であることを認識していた,と主張する。
(2)弁護人は,〔1〕〔ア〕本件直前のA子の様子に関する友人たちの供述内容,〔イ〕本件直前にA子が撮影した写真の存在及び内容,〔ウ〕A子が性交当時の状況等について鮮明な記憶を有していること,〔エ〕性交直後にA子が自分の意思と体力で被告人車両から降りることができたことなどに照らすと,同女は性交当時自分の意思に基づいて行動できる状態にあり,抗拒不能の状態ではなかった。したがって,上記A子供述は信用できない。〔2〕仮にA子が抗拒不能であったとしても,被告人は,A子の様子から,同女が性交に同意していると思っており,A子が抗拒不能であるとは認識していなかった,と主張する。