犯歴票保管庁一本主義
4訂版前科登録と犯歴事務
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昭和31年3月,外国人犯罪人名カード制度の実施により,外国人の前科は,法務省刑事局において集中管理するものとされ,次いで,同33年10月,新たに犯罪票事務取扱要領(昭和33.8.30刑事第14510号刑事局長通達)が実施され,ようやくにして前科の登録,管理の全国統一基準の制定をみるに至ったのである。この犯罪票事務取扱要領では,前科の登録,管理は,有罪の確定裁判の言渡しをした裁判所の所在地を管轄する地方検察庁及び有罪の確定裁判の言渡しを受けた者の本籍地を管轄する地方検察庁において,それぞれその内容を犯罪人名カードに登載して行うものとされ,犯罪人名カードの保管は原則として地方検察庁本庁とするいわゆる地検本庁主義がとられることになったが.なおその他の最高検察庁,高等検察庁(支部を含む),地方検察庁支部においても,その庁の対応する裁判所で言い渡した確定裁判については,犯罪人名簿を作成しこれを保管することが認められていた。
このようにして,前科の登録,管理体制の一応の整備が図られたものの,昭和35,6年ころから道路交通法違反事件が急増し従来の方式のままではその犯歴を適正かつ的確に登録,管理することが不可能になったため,同37年6月には,道路交通法違反の罪に係る裁判で罰金以下の刑に処したものについては,市区町村長に対する既決犯罪通知をしない取扱いが実施され,さらに.同40年10月には,犯歴事務規程(昭和40.8.20刑事(総)第610号法務大臣訓令)が施行されて犯歴事務のなお一層の合理化が図られることになり,これによって,犯罪人名カードは犯歴票とその名称が改められるとともに,犯歴票の保管は,有罪の確定裁判を受けた者の本籍地を管轄する地方検察庁(ただし,外国人については東京地方検察庁)1庁のみとするいわゆる犯歴票保管庁一本主義がとられることになったのである。
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通常,行政官庁が市区町村長に対し犯罪事項に関する身分証明の依頼(照会)を行うのは,法令が刑に処せられたことを資格制限事由として規定している場合である。法令が罰金以上の刑に処せられたことをもって資格制限事由としている例は少ないが,市区町村長において,罰金刑の有無をも証明する必要がある場合には,既述(9頁参照)のように検察庁では,昭和37年6月以降市区町村長に対し道路交通法違反及び自動車の保管場所の確保等に関する法律違反の罪に係る罰金以下の刑の既決犯罪通知を行っていないので,検察庁にこの前科の有無を照会し, その回答を受けて証明を行わなければならない(注30)。
(注30) 市区町村からこの照会を受けた検察庁では,市区町村備え付けの犯罪人名簿の整備に協力する趣旨で回答するものである。
なお,検察庁に道交犯歴の照会を行う場合には,照会書の適当な箇所に.OOOの資格調査のため道交犯歴の有無の回答が必要である」等回答書の使用目的を具体的に記載しておくとよい。