児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

窃視罪の「ひそかにのぞき見る」とは見られないことの利益を有する者に知られないように物陰や隙間などからこっそり見ることをいう(軽犯罪法新装第2版伊藤栄樹・勝丸充啓)

 リベンジポルノにも関連しますが、隠し撮りの場合の、プライバシー保護の罰則です。刑法的にはこの程度の保護しかされていません。

軽犯罪法
第1条〔軽犯罪〕
左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
二十三 正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者
刑法
第16条(拘留)
拘留は、一日以上三十日未満とし、刑事施設に拘置する。
第17条(科料
科料は、千円以上一万円未満とする

P167
本号の趣旨
正当な理由がなくて,人の住居,浴場,更衣場,便所その他人が通常衣服を着けないでいるような場所をひそかにのぞき見た者が処罰の対象である。
本号は,人の個人的秘密を侵害する抽象的危険性のある行為を禁止しひいては,国民の性的風紀を維持しようとするものである。
本号に相当する規定は,警察犯処罰令にはなかった(注1
(注1) 立案者は,本号の立案趣旨について次のように説明している(第2回国会参議院司法委員会会議録第6号5頁)。
「人の私生活の秘密,特に肉体を人に見られないという権利は,これは厚く保護きれなければならないのでありますから,妄りに他人の隠すべき肉体の部分を覗き見るということは,この権利を侵しますし私生活の平穏を害するものである。そこでこのような規定を設けることにいたしました。この罪は性的犯罪の一種だと見ることができょうかと思います。」

P168
3 禁止される行為
禁止される行為は,正当な理由がなくて,ひそかにのぞき見ることである。
(1) 『正当な理由がなくて』
「正当な理由がなくて」の意義については,第l号の解説3参照。本号の行為の主たる部分は,ひそかにのぞき見るという,それ自体違法性のあることが明らかな事柄であるので,本号の行為が正当な理由に基づく事例は,犯罪捜査の必要上ひそかにのぞき見るような場合以外には,ほとんど考えられない。
(2) 『ひそかに』
「ひそかに」とは,見られないことの利益を有する者に知られないようにすることをいう。見られる者以外の者に知られると否とを問わない。不特定多数の人の面前で、行っても,見られる者に知られないようにすれば,「ひそかに」のぞき見たことになる。見られる者の承諾があれば,「ひそかに」には当たらないことはいうまでもない。
(3) 『のぞき見る』
「のぞき見る」とは,物陰や隙間などからこっそり見ることをいう。何の作為もしないのに,自然に見えてしまったような場合は,「のぞき見る」には当たらない。望遠鏡で見ることはもちろん,カメラやデジタルカメラ,ビデオカメラ,それらの機能を備えた携帯電話機によってひそかに写真や動画を撮ることも「のぞき見る」に当たるものと解する(注2)。この場合,のぞき窓や機器に映し出された画面を通してのぞいた時点で「のぞき見た」といえるであろうから,その時点で既遂に達するものと解することができょう。
カメラやビデオカメラをトイレ内に隠して設置し行為者が直接視認しないまま隠し撮りや遠隔操作の方法で撮影し,その後,記録媒体を回収してから再生するような場合には,「のぞき見た」といえるかが問題となる。この点については,直接視認することによりのぞき見られた場合でもカメラ等で撮影された場合でも,被害者のプライパシーが侵害されたことには変わりがなく,むしろ,カメラ等で撮影された場合の方が,繰り返し何度も見られたり,第三者にデータが渡ったりする危険性があり,プライパシー侵害の程度が高いのであるから,人の個人的秘密を侵害するような行為を禁止するという本号の趣旨からは,カメラ等による撮影自体が「見た」に当たり,撮影の時点で既遂となると解すべきであろう(注3.4)。
なお,のぞき「見る」ことを要するから,隠しマイク等によって話し声,物音等をひそかに聞き,あるいは録音する行為は,本号に当たらない。

(注2) なお.女性が一般の入浴客のように公衆浴場に入り,持参のカメラをタオルで隠して,他の入浴中の女性らの裸体を撮影する行為については,本号が本来予想した類型の行為ではないが,「浴場をひそかにのぞき見た」ものに当たるといえよう。

4 他罪との関係
人の住居をのぞき見るため, その囲緯地, つまり, 庭先などに立ち入ったときは, 本号のほかに住居侵入罪( 刑法第130条) も成立する。この場合の両罪の関係につき, 最判昭57.3 .16刑集36巻3号260頁は, 牽連犯となるとする(注5)。