児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

出会い系アプリがインターネット異性紹介事業に該当しない理由を説明せよ」という京都新聞からの取材

 いきなり聞かれてもわからんので、回答を書いておく。
 LINEのIDとかメールアドレスを書き込まれただけでは「役務提供」にならないわけですね。管理者が電気通信まで提供してないとだめなんですね。

インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H15/H15HO083.html
(定義)
第二条  この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一  児童 十八歳に満たない者をいう。
二  インターネット異性紹介事業 異性交際(面識のない異性との交際をいう。以下同じ。)を希望する者(以下「異性交際希望者」という。)の求めに応じ、その異性交際に関する情報をインターネットを利用して公衆が閲覧することができる状態に置いてこれに伝達し、かつ、当該情報の伝達を受けた異性交際希望者が電子メールその他の電気通信(電気通信事業法 (昭和五十九年法律第八十六号)第二条第一号 に規定する電気通信をいう。以下同じ。)を利用して当該情報に係る異性交際希望者と相互に連絡することができるようにする役務を提供する事業をいう。
三  インターネット異性紹介事業者 インターネット異性紹介事業を行う者をいう。

逐条出会い系サイト規制法(福田正信他・立花書房・平成21年5月)P11
? 「その他の電気通信」とは、電子メールと同様に相互に連絡する機能を有する電気通信手段である。
? 「相互に連絡することができるようにする役務」とは、他人が書き込んだ「異性交際に関する情報」を閲覧した異性交際希望者(以下「閲覧者」という。)が当該情報を書き込んだ異性交際希望者(以下「書込者」という。)に返信することをきっかけとして閲覧者と書込者が相互に連絡することができるようになる機能を利用することにより、異性交際に関する情報を載せた異性交際希望者とこれを見た者との闘で相互に1対1の連絡(インターネット異性紹介事業者が介在する場合を含む。)ができるようにすることをいう。
具体的な方法としては、
O 返信ボタンをクリックさせる等して、事業を行う者が電子メールを中継する。
O 閲覧者側の端末機器に書込者のメールアドレスを通知するとともに、そのメールソフトを立ち上げて、メールを送信できる状態にさせる。
といったものがある。インターネット上の空間に、2人しか入れない仮想の「個室」を設け、そこに入った2人の問だけでメールのやりとりをさせるツーショットチャット形式は、相互に連絡することができることからこれに含まれる。他方、公開された場のチャットや、いわゆるレス方式(ウェプサイト上で、書き込まれた情報に対する返答・意見が順次記載されていく方式)については、当事者間の1対1の通信ではないことからこれに当たらない。
なお、書込者が書き込みの中に勝手にメールアドレスを記載しても、当該事業を行う者が「相互に連絡することができるようにする役務」を提供しているとはいえないが、事業を行う者が、書込者がメールアドレスや電話番号を入力しないと当該書き込みを公衆が閲覧することができないようにしていることにより、書込者の電子メールアドレスや電話番号を閲覧者が知ることができ、1対1で連絡することが可能であるものについては、「相互に連絡することができるようにする役務」といえる。

http://www.npa.go.jp/cyber/deai/business/images/01.pdf
「インターネット異性紹介事業」の定義に関するガイドライン
「相互に連絡することができるようにする」とは、サイト開設者が提供する、他人が書き込んだ「異性交際に関する情報」を閲覧した異性交際希望者(閲覧者)が当該情報を書き込んだ異性交際希望者(書込者)に返信することをきっかけとして閲覧者と書込者が相互に連絡することができるようになる
機能を利用することにより、異性交際に関する情報を載せた異性交際希望者とこれを見た者との間で相互に一対一の連絡(サイト開設者が介在する場合を含みます。)ができるようにすることをいいます。
○ したがって、「異性交際希望者」同士が電子メールや2ショット・チャット等の電気通信を利用して相互に連絡することができるようにする機能を備えていないサイトは「インターネット異性紹介事業」に該当しません。
○ また、チャット等のうち公然性を有するものは、一対一の連絡ではないことから、「相互に連絡」には該当しません。

 なお、児童ポルノ画像を交換するサイトとかアプリは、異性紹介事業じゃない。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130417-00000013-kyt-l26
捜査関係者によると、児童ポルノをやりとりしていたのは、逮捕された高校生ら少年を中心に20人以上に上る可能性があるという。府警は、中高生ら低年齢層がこのアプリを利用してポルノを入手、提供していた可能性があるとみて実態解明に乗り出す。
 家宅捜索を受けた3人は、神奈川県の中学2年の少年(13)、福岡県の少年(18)、愛知県の30代男。
 捜査関係者の説明では、逮捕された高校生は3月ごろ、掲示板アプリで知り合った愛知県の男に児童ポルノの動画を提供した疑いが持たれている、という。

追記2013/07/05

http://www.npa.go.jp/cyber/deai/business/images/01.pdf
「インターネット異性紹介事業」の定義に関するガイドライン
「相互に連絡することができるようにする」とは、サイト開設者が提供する、他人が書き込んだ「異性交際に関する情報」を閲覧した異性交際希望者(閲覧者)が当該情報を書き込んだ異性交際希望者(書込者)に返信することをきっかけとして閲覧者と書込者が相互に連絡することができるようになる機能を利用することにより、異性交際に関する情報を載せた異性交際希望者とこれを見た者との間で相互に一対一の連絡(サイト開設者が介在する場合を含みます。)ができるようにすることをいいます。
○ したがって、「異性交際希望者」同士が電子メールや2ショット・チャット等の電気通信を利用して相互に連絡することができるようにする機能を備えていないサイトは「インターネット異性紹介事業」に該当しません。
○ また、チャット等のうち公然性を有するものは、一対一の連絡ではないことから、「相互に連絡」には該当しません。

・・・・
(3)「相互に連絡することができること」の該当性(1の③の要件)
問 サイト開設者がいわゆる返信機能を提供しなくても、利用者が書き込みの中にメールアドレスを記載すれば、「相互に連絡することができる」ことになるのか。
(答)
利用者が書き込みの中に勝手にメールアドレスを記載しても、サイト開設者が「相互に連絡することができるようにする」役務を提供しているとは言えないことから、このようなサイトは「インターネット異性紹介事業」には該当しません。
問 サイト開設者がメールアドレス、電話番号等の連絡先を書き込まなければ書き込みそのものをできないようにしている掲示板等のサイトは、「相互に連絡することができる」ことになるのか。
(答)
サイト開設者において、書込者がメールアドレス、電話番号等の連絡先を書き込まなければ書き込みそのものをできないようにし、書込者の連絡先を閲覧者が知ることができ、1対1で連絡することが可能であるものについては、「相互に連絡することができるようにする」役務を提供していることになります。ただし、書込者がメールアドレス、電話番号等の連絡先を書き込まなくとも書き込みが可能であり、「相互に連絡することができるようにする」役務を提供していない場合は「インターネット異性紹介事業」には該当しません。

警察公論第65巻第10号
出会い系サイトの4要件
1 異性交際目的
面識のない異性との交際を希望する者{異性交際希望者)の求めに応じて,その者の異性交際に関する情報をインターネット上の電子掲示仮に掲載するサービスを提供していること「異性交際」とは性的な感情に基づく交際のことをいうが,ここで「性的」 というのは,相手が自分と異なる性であることへの関心が重要な要素となっていることを意味する。したがって,性交等を目的とする交際に限られず.メールだけのバーチヤルな関係や性的交渉を目的としない交際であっても.男性にとって相手が女性だからあるいは女性にとって相手が男性だからという点に関心が置かれている場合は,異性交際に該当する。
事業者が,利用規約等により異性交際目的での利用を禁止していても.それが形式的な責任逃れであり実際には異性交際目的の書き込みがあることを知りながら放置するなど,サイト開設者がその実態を許容していると認められるときは.異性交際目的があるとされる場合がある。
2 公衆閲覧性
異性交際希望者の異性交際に関する情報を公衆が閲覧できるサービスを提供していること不特定文は多数の者が異性交際に関する情報を閲覧することができることをいう。
3 相互連絡可能性
インターネット上の電子掲示板に掲載された情報を閲覧した異性交際希望者が,その情報を掲載した異性実際希望者と電子メール等を利用して相互に連絡することができるようにするサービスであること
閲覧者と書き込み者が相互に連絡できる機能を利用して.相互に一対ーの連絡ができるようになっていることをいう。電子メール.いわゆるミニメール. 2ショット・チヤツトなどの機能をサイト開設者が提供していればこれに当たる。レンタル掲示板サービスを利用して開設された掲示板の場合は,掲示板自体に特別な機能は組み込まれていないことが多いが,書き込み者がメールアドレスや他のサイトに誘導するURLを記入することによってそれを使った一対ーの相互連絡が可能になるので.相互連絡可能性があるとされるのが通常である。
4 事業性(反復継続性)
有償,無償を問わず,これらのサービスを反復継続して提供していること
利用者に課金していなくても,広告収入等を得ていなくても.事業性はある。好奇心やいたずらから立ち上げた電子掲示板であり.そこから何ら経済的利益を得ていなくても,反復継続して提供されている限りは,事業性が認められる。

古条管部
というのが4要件の大筋だ。詳しくは『インターネット異性紹介事業』 の定義に関するガイドライン」 に示されているから,事例化に当たっては必ずこのガイドラインを一読しておくように