児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

強制わいせつ罪(176条後段)被告事件で、量刑理由で撮影行為を認定している事案(山形地裁H24.1.25)

 同一児童で近接日時だから、包括一罪を主張してもよかったと思います。

強制わいせつ被告事件
山形地方裁判所平成24年1月25日
(犯罪事実)
 被告人は,A(当時4歳)が13歳未満であることを知りながら,同児にわいせつな行為をしようと企て
第1 平成21年6月29日午後3時10分ころ,山形県村山市(以下省略)の株式会社B園内において,同園園児であるAに対し,同児の陰部を手指でもてあそぶなどし
第2 同年7月6日午後3時10分ころ,前記場所において,Aに対し,同児の陰部を手指でもてあそび
第3 同月14日午後3時10分ころ,前記場所において,Aに対し,同児の陰部を手指でもてあそび
第4 同月29日午後7時ころから同日午後7時30分ころまでの間に,前記場所において,Aに対し,同児の陰部を手指でもてあそぶなどし
もってそれぞれ13歳未満の女児に対しわいせつな行為をしたものである。

(量刑の理由)
1 本件は,保育士である被告人が,自己の勤務する保育施設に通う女児に対し,園内で,4回にわたり,その陰部を手指でもてあそぶなどしたという強制わいせつの事案である。
2 被告人は,被告人の父が経営し園長を務める保育施設に副園長として勤務し,平成21年4月からAのクラスの担任となったが,Aが素直に被告人の指示に従い,甘えてくる様子や,Aの母親Cに対する好意などから,Aに対し性的欲求を持つに至り,本件各犯行に及んだものと認められる。犯行に至る経緯に何ら酌むべきものはなく,動機は破廉恥であって強い非難に値する。
  犯行態様は,おもらしやおねしょの処理を名目にしてAの陰部をもてあそんだほか,陰部等の写真を撮ったり,ディープキスをしたりもしている。また,わずか1か月の間に合計4回にわたりこのような行為に及んでいることからすると,本件は常習的犯行といわざるを得ない。被告人は,保護者の信頼のもとに園児を預かり保護する保育士という立場にありながら,Aがまだ物事をよく理解できない幼児であることにつけ込み,その性的自由を踏みにじる行為に及んでおり,非常に悪質である。本件犯行による被害は深刻なものと認められ,Aの今後の成長に与える精神的影響も憂慮される。Aの母親Cは,一度事実を認めておきながら否認するというのは納得できない,被告人が反省しないのであれば厳罰に処してほしいと述べているが,極めて当然のことである。
   そして,被告人は公判廷で自己の犯行を否認し,Aの供述について「子供だってうそはつきます。」と述べるなど,反省の情を見出すことはできない。被告人らが告訴を取り下げてもらうための便宜上のものだったと主張する謝罪文を除き,A側に対する慰謝の措置も何らとられていない。
3 以上によれば,被告人の刑事責任は相当に重いが,他方では,前科前歴がないことなど,被告人のために酌むべき事情も認められる。
   これらの事情を考慮すると,被告人に対しては主文の刑を科すのが相当である。
(求刑・懲役4年)