児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

法務省には淫行防止条例とか児童ポルノ、児童の福祉を害する罪等をどうにか一本化するという御検討の考えはない

 会長さんの「法務省が刑法177 条の保護法益について、確定的に公表した、公式な見解というのはあるのでしょうか。強姦罪の保護法益についての政府見解を伺いたい」「公序であるとか、勿論、昔いわれていたような女性の貞操とか、そういったところから変わってきたと認識されている。これは国際的な圧力によって変わってきたと認識されている」というのもピントがずれた発言ですね。

第61 回 男女共同参画会議女性に対する暴力に関する専門調査会
議 事 録
○根本委員 時間が余りありませんのに、申しわけございません。
最初に私がこだわった点、閣議決定の部分についても検討されているという説明をいただきましてありがとうございました。
1点だけ教えていただきたいのですが、実は先ほど暴行・脅迫という概念を書き換えるのか書き換えないのかわかりませんが、資料1−2の答申の中では、記述としましては、「被害者の意思に反する」ような事例は、おおむね暴行又は脅迫行為の認定が可能であるため、この問題はむしろ暴行又は脅迫があったと認められるか否かの事実認定の問題ではないかと考えられる。
こう書いてあるのですが、今回この点について検討するに当たっては、まさにこの表現は変えないという話で持っていくのか。
それとも、この表現の暴行・脅迫というのを外してしまいますと、物すごく難しい書き方になってしまうと思うのです。
しかし、それを書き加えたまま、更に書き込まれていくというのも、これも難しいのではないか。
その辺はどんな話になっているのか。
まだそこまで考えていないよという話なのかもしれませんが、お教えいただければありがたいなと思います。
○保坂企画官 適切なお答えかどうかわからないですが、仮に改正するにしても、今までと比べてどうすることを目指すのか、結果どういうことになるのかということを絶えず考えていかなければいけません。
その裏腹として、今の規定だと何が問題なのかというところだと思います。
今、裁判例で、これだと暴行・脅迫に足りないと言われているものですとか、あるいはこの程度でも暴行・脅迫なのだというもの、両面あるわけでございます。
かなり精査しないと、どの事案だとどう救われ、今までより成立範囲を広くしたいのか、今までどおりでわかりやすくしたいのかによると思います。
そういった意味で、事実認定が前提となった上で、この程度でも暴行・脅迫だという当てはめをしていく部分が裁判例の中にございますので、そういったものでどんな事例なのかというのを探しながら考えているというのが現状でございます。
○辻村会長 ありがとうございました。
簡単にお願いいたします。
○宮園氏 調査や判例の分析とかはなさらないのでしょうか。
各国はかなりそれを充実してやっているのです。
あと、特別法の問題なのですが、特別法があるから、逆に今、混乱を来しているのではないかと私は思っているのです。
淫行防止条例とか児童ポルノ、児童の福祉を害する罪等の問題です。
むしろ、それをどうにか一本化するという御検討の考えはないのでしょうか。
○保坂企画官 ちょっと役所的な言い方で申し上げると、法務省が持っているのは刑法でございます。
そのほかの法律というのは、それぞれまた所管の役所がある。
だから、我々が何もしないという趣旨ではなくて、今お話もございましたけれども、トータルでどう対応していくかということになりますと、それは政府全体でカバーしていくことであり、そのために男女共同参画という観点からすると、この会議があったり、内閣府の方でそれを所管されているので、トータルでどういう救済方法があるのかという観点からは、そういうところからも考えていく必要がございます。
我々が自分たちで所管しているところについて改正するときには、特別法を取り込んだ方がいいのかという視点は当然持っています。
それは刑法しか持っていないから、ほかの法律を見ないということはなくて、一緒にした方がいいのか、それとも今の仕組みがいいのかということは、当然検討の対象にはなるだろうと思います。
○辻村会長 ありがとうございました。
私もいろいろ伺いたいことがあるのですが、最後にもう一度確認なのですが、法務省が刑法177 条の保護法益について、確定的に公表した、公式な見解というのはあるのでしょうか。
強姦罪の保護法益についての政府見解を伺いたいと思います。
○保坂企画官 何をもって政府見解と言うかというところはございますけれども、まず申し上げれば、性的自由であるという判例がございますし、我々実務家が勉強するときに使う教科書でも性的自由と理解しております。
○辻村会長 それは「女性の」ですか。
○保坂企画官 強姦ということで言いますと、被害者は女性ということに今の規定ではなります。
○辻村会長 刑法では。
○保坂企画官 ええ、女性の性的自由ということで理解しています。
○辻村会長 公序であるとか、勿論、昔いわれていたような女性の貞操とか、そういったところから変わってきたと認識されている。これは国際的な圧力によって変わってきたと認識されている、ということでしょうか。
○保坂企画官 前にどうだったかというところは、私は必ずしも詳しくは存じ上げませんが、そういう批判というか、そういうふうに見えるではないかという御意見があったとは承知しておりますが、前にモラルに対する罪ということを公式見解としたことがあったという認識はなくて、少なくとも言えることは、我々としては性的自由に対する罪である。これが判例でもあり、いわゆる通説的な見解だという認識でございます。
○辻村会長 わかりました。刑法自体は明治のものですから、明治のときから性的自由という概念があったかというと、恐らくなかったので、比較的最近の動向だと思います。どの段階から、どういう理由によって性的自由になったのかということについては、若干関心がありますが、この辺りはまた機会がありましたら教えていただくことにします。ほかにいかがでしょうか。では、最後の質問にさせていただきます。

○種部委員 現場のいろいろなケースを見ていますと、告訴にすごく大きなハードルがあるのはたしかで、告訴の取り消しの割合が減っているということは、逆に告訴しない人が増えているとか、あるいは届け出すらしたくないという人が増えたということでしょうか。またその割合はどのぐらいで変わっているかとかがわかれば教えてください。
それから、告訴を取り下げた人、告訴をしなかった人、届け出すらしなかった人たちの中の年齢の構成はわかりますか。より若年で自分では決めることができなくて、そういう交渉もなかなかできない人の割合が増えているとしたら、その辺の精査をしないと議論ができないのではないかと思いますが、研究はされていますか。それをお聞きしたいのです。
○保坂企画官 親告罪をどうするか。今の趣旨が被害者の保護である中で、その保護する規定が負担になっているとすれば、それは考えなければいけないことだと思います。先ほど申し上げたように、韓国については若年について規定をひっくり返すようなことをしているというのもあって、おっしゃるとおり、あるいは年齢層とか、どういう事情で告訴が取り消されたか、あるいは告訴についてのハードルが高いかという辺りは、当然何らかの形で調査をしていかなければいけないと思っております。
それを、まず課題、調査の対象とどういう見方でやるのかというところも見据えてやらないと。その中では、勿論被害者の方の相談を受けておられるところ、これは、顕在化していないケースだろうと思いますので、そういったところからもお話を伺ったり、参考になる資料をいただいたりする必要はあると思っております。
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○辻村会長 ありがとうございました。また御意見をお聞きする機会があるかと思いますが、法制審議会の刑法部会というのがあると思うのですけれども、まだ刑法改正といった具体的な方向に向かって調査しているという認識ではないということでしょうか。国際機関からいろいろ見直しの勧告等が大分前から出ているのですが、これに対する法務省の対応としては、ごく最近になって調査をして、まだ法改正を見据えた具体的な動きではないという理解でよろしいのでしょうか。これはお答えできる範囲で結構ですが。
○保坂企画官 今の検討のステータスというのは、今日発表させていただいたものでございまして、御案内のとおり法制審議会、仮に改正するとすれば、当然そういうことになりましょうし、その中身にもよるわけでございます。それがいろいろな時点があり得て、法改正によらないとできないことなのかどうか。改正するとなると、どういう立法事実があるのかということがまずあります。
結局、変えたはいいけれども、余りよくならなかったというのでは、ただ言われたから変えるというのも、これまた知恵のないというか、芸のない話でございます。変えるからには、よくならなければいけない。そのためには、何がどう不足している、あるいは何がどう問題なのかということをきちんと詰めてやる必要があるというのが、我々の考えでございます。

 法務省としては、親告罪が被害者の負担になっているというケースを知らないようです。