児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

児童虐待事件への対応について(捜査研究717号)

 発覚したときには、数年間性的虐待が行われていることが多く、重い量刑になるのですが、訴因としては、立証可能な数個の虐待行為のみが記載されているので、被告人・弁護人もそんなに重くないと勘違いすることがあるようです。
 数回の淫行が包括一罪になるということで、1個の訴因で最初から最後までの性的虐待が評価される(むしろ起訴されていない余罪で量刑が決まる)ということを弁護人は忘れないようにしてください。

児童虐待事件への対応について
警察庁生活安全局少年課課長補佐宮城貴
(3) 児童虐待の特質
児童虐待は, 主に家庭の中で起きており,被害児童が加害者の庇護なしでは生活できない弱い立場にあるため 被害児童が加害者を庇う例が多々みられるほか,虐待の日常化により,被害児童に自分が被害者であるという自覚が乏しい場合が少なくなく このため 自主的な被害申告が望めず潜在化し,早期に発見することが極めて困難となりがちである。
また. 反復・継続して行われる場合が多く, 児童に重大な被害が生じるおそれがあるほか,本来,保護してくれるはずの保護者から虐待を受けることで,被害児童の身体, 知的発達に加え, 情緒,心理・行動等の発達や対人関係の構築等に様々な影響を与え. 心身に深刻な被害をもたらすといわれている。
3 児童虐待事件の捜査
児童虐待の端緒情報を得た場合の対応の基本は.児童の安全の確認及び安全の確保であり,行政上の措置も極めて重要である。本稿では,それを前提としつつ.紙面の関係上,特に捜査上の留意事項について説明したい。
(1) 児童虐待事件捜査の特殊性

ア 捜査を困難にする要因
先に述べた特質に加え,保護者側にも精神障害(アルコール依存,薬物依存等), 自殺未遂歴等.特有の事情が存在する場合があるほか.次のような事情が捜査を困難にすることがある。
密室で行われ. 目撃者がいない。
 重大な事案では.加害者により現場が破壊されやすく.証拠(品)が隠滅されやすい。
 低年齢の児童からは詳細な供述が得られにくい。
 保護者(実母)が被害児童より加害者(養父,継父等)を庇う場合
がある。
 性的虐待に関しては 被害児童の心情等を考え, 関係者が事件化を望まない場合がある。
イ 被害児童の心理的特性
被害児童は,最も安全であるはずの家庭において.無条件で愛してくれるはずの保護者から継続的に拒否され 心身を傷つけられていることから, 大人に対する不信感や恐怖感に加え, トラウマ体験によるフラッシュパックや激しい気分変調などといった心的外傷後ストレス陥害 (P T SD) を抱え込む場合がある。
また, 保護者が躾の一環と称して虐待を行う場合も多いことから, 被害児童は 「自分が悪いから.仕方ないことだ。」と考えがちであり,特に,性的虐待を受けた低年齢児童の場合は, その行為が何を意味するのか理解できない場合も多い。 さらに. 虐待を受けながらも保護者の庇護の下で生活しているため, 虐待事実を話すことによって, 親と分離させられたり家族全体に影響が及んだりすることを心配し, 事実を話せないと感じていることがある。