児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

児童ポルノ過去最悪=被害者倍増、男児も−上半期まとめ・警察庁

 撮影が伴う176条後段とか177条後段の事件に、製造罪をくっつけたような事件が多いですね。
 適用可能な罰条をフルに使うということで、それはそれで構いませんが、罪数処理に困ります。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100805-00000030-jij-soci
被害児童の内訳は、中学生が最多で126人(42.7%)。次いで高校生95人(32.2%)で、小学生以下も63人(21.4%)いた。男児が被害者となるケースも全体の1割を超え、増加傾向にあるという。
 ネットを利用した事件は329件(69.6%増)で、全体の54.9%。このうちファイル共有ソフトを使い、不特定多数などを相手に違法画像のやりとりをしていたのは62件で、18.8%を占めた。 

 それなら強要して撮影・送信させるのも強制わいせつ罪+製造罪でいいような気がします。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100805-00000534-san-soci
 一方、警察庁がまとめた上半期の少年非行等の概要によると、児童ポルノ事件の送致件数は599件で前年同期比63.2%増、被害児童数は295人で同99.3%増といずれも過去最多になった。被害児童のうち未就学・小学生が152%増の63人と増加が目立っているという。

 例えば脱がせて撮影する強制わいせつ罪後段の事例は、従来

平成22年8月5日午後3時ころ,大阪市北区マンション側階段付近において,A(当時6歳)に対し,同児が13歳未満であることを知りながら,同女に対し、そのズボンと下着を脱がせて下半身を裸にして、これを携帯電話機付属のカメラで撮影し、もって13歳未満の女子に対し,わいせつな行為をした

として176条後段の罪のみで処理されていましたが、
警察庁からハッパがかかり、生活安全課と刑事課が連絡取って、児童ポルノ罪も立てることになって、

平成22年8月5日午後3時ころ,大阪市北区マンション側階段付近において,A(当時6歳)に対し,同児が13歳未満であることを知りながら,同女に対し、そのズボンと下着を脱がせて下半身を裸にして、同女の陰部を露出させる姿態をとらせ、これを携帯電話機付属のカメラで撮影し、もって13歳未満の女子に対し,わいせつな行為をするとともに、衣服を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造した

という観念的競合の訴因で起訴されることになった。処断刑期は同じ。
 もともと強制わいせつ罪となっていた事件に児童ポルノ罪をくっつけたので、児童ポルノの検挙件数が増えます。未就学・小学生の被害児童数は増えますが、強制わいせつ罪のそれと重複しています。
 だから、新たに発生したというより、事件を掘り起こしたという感じです。
「まさに児童ポルノ性的虐待である事例」ということを示しているのですが、それは従前から強制わいせつ罪で処罰されてきた行為で、それなりに検挙されて処罰されていました。

少 年 非 行 等 の 概 要
( 平 成 22 年 上 半 期 )
http://www.npa.go.jp/safetylife/syonen/syounennhikoutounogaiyou220805.pdf
児童ポルノ事件の被害児童(上半期)
H22 
未就学 18
小学生45
・・・・・・・・・
(2) 児童ポルノ事件
ファイル共有ソフトCabos」等を利用した児童ポルノ公然陳列事件(千葉・愛知)
21 年2月から10 月までの間、会社員(32 歳)等48 人は、ファイル共有ソフトCabos(カボス)」等を利用して、児童ポルノであり、かつ、わいせつな画像を不特定多数の利用者に閲覧可能な状態に設定し、公然と陳列した。22 年1月までに、会社員等48 人を児童買春・児童ポルノ禁止法違反で検挙した。
イ 首都圏を拠点とする組織的な児童ポルノ等製造・販売等事件(北海道)
20 年1月から21 年11 月までの間、無職男性(31 歳)等10 人は、東京都及び埼玉県に3カ所の拠点を設け、インターネット上に児童ポルノであり、かつ、わいせつな画像であるDVD等の販売サイトを複数開設し、約2万6,000 人に対し、同DVD等約54 万枚を販売して、約2億5,000 万円の利益を得た。22 年2月までに、無職男性等10 人を児童買春・児童ポルノ禁止法違反等で検挙した。
ウ 会社員による中国における児童ポルノ製造事件(兵庫)
21 年5月、会社員(47 歳)は、中華人民共和国内のホテルにおいて少女(推定12〜15 歳)のわいせつな姿態等を撮影して、児童ポルノを製造した。22 年2月、会社員を児童買春・児童ポルノ禁止法違反で検挙した。
エ 保育士による児童ポルノ製造事件(広島)
20 年1月、保育士男性(28 歳)は、勤務先の保育園において男子児童(2歳)の裸の写真を撮影し、児童ポルノを製造した。22 年3月、保育士男性を児童買春・児童ポルノ禁止法違反で検挙した。
暴力団組員等によるインターネットを利用した児童ポルノ等販売事件(和歌山)
21 年1月ころから11 月ころまでの間、暴力団組員(33 歳)等9人は、インターネット上に児童ポルノであり、かつ、わいせつな画像であるDVD等の販売サイトを複数開設し、同DVD等を不特定多数の者に販売した。22 年5月までに、暴力団組員等9人を児童買春・児童ポルノ禁止法違反等で検挙した。
カ アメリカ人英会話塾経営者による児童ポルノ製造等事件(福岡)
15 年6月ころから21 年4月ころまでの間、アメリカ人英会話塾経営者(逮捕時69 歳)は、同塾の女子生徒複数人に対し、わいせつな行為を行い、その状況を撮影し、児童ポルノを製造した。22 年5月までに、アメリカ人英会話塾経営者を児童買春・児童ポルノ禁止法違反等で検挙した。
キ インターネット掲示板を利用した児童ポルノ公然陳列事件(東京)
21 年10 月ころから22 年2月ころまでの間、男子高校生(17 歳)等31 人は、児童ポルノであり、かつ、わいせつな画像を、それぞれ自己の使用する携帯電話機等からサーバコンピュータに送信して記憶・蔵置させ、同画像をインターネットを利用する不特定多数の利用者に閲覧可能な状態に設定し、公然と陳列した。5月までに、男子高校生等31 人を児童買春・児童ポルノ禁止法違反で検挙した。
ファイル共有ソフト「Share」を利用した児童ポルノ公然陳列目的所持事件(京都)
22 年5月、会社員(24 歳)は、ファイル共有ソフト「Share(シェア)」を利用して、児童ポルノであり、かつ、わいせつな画像を不特定多数の利用者に閲覧させる方法で公然と陳列しようと企て、自己所有のパソコンの外付けハードディスクに同画像を記憶・蔵置させ、公然と陳列する目的で同画像を所持した。同月、会社員を児童買春・児童ポルノ禁止法違反で検挙した。