児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

10ヶ月間の師弟関係に基づく多数回の強制わいせつ行為の損害賠償として約440万円を認容した事例(東京地裁h21.12.7)

 うち慰謝料は350万円。

東京地裁平成21年12月7日
1 被告は,原告に対し,440万0600円及びこれに対する平成18年10月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用はこれを3分し,その1を被告の負担とし,その余を原告の負担とする。
4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。
請求
被告は,原告に対し,1280万9360円及びこれに対する平成18年10月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
事案の概要
1 事案の要旨
本件は,原告が,平成17年12月から平成18年10月までの間,クラリネットの個人レッスンの講師である被告から,個人レッスンの際に,キスをする,着衣を脱がせて全裸にする,乳房をもむ,乳首をなめる,陰部付近を触る,陰部に指を入れる,被告の陰茎を握らせるなどのわいせつ行為を受けたなどとして,不法行為に基づき1280万9360円及びこれに対する不法行為日の後である平成18年10月31日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めている事案である。
なお,本件は,刑事損害賠償命令事件が,民事訴訟に移行した事件であるが,原告は,本件訴訟において,請求の原因を変更し,刑事被告事件の訴因となった事実以外の事実を含めた被告の一連のわいせつ行為について不法行為に基づく損害賠償を請求している。
2 前提事実(以下の各事実は,当事者間に争いがないか,掲記の各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる。)
(1) 当事者
ア原告は,平成18年当時,神奈川県立a高校(以下「a高校」という。)の高校生であり,吹奏楽部に在籍していた。(甲7,弁論の全趣旨)
イ被告は,b音楽大学を卒業し,ハンガリーの音楽院への留学経験もあるプロのクラリネット奏者であり,原告がa高校吹奏楽部に在籍していた当時,同部の外部講師を務めていた。(甲4,7)(2) 原告は,音楽大学へ進学するために,平成17年11月から平成18年11月までの間,被告からクラリネットの個人レッスンを受けていたが,被告は,個人レッスンの際に,原告に対し,キスをする,全裸にさせる,乳房をもむ,乳首をなめる,陰部付近を触る,陰部に指を入れる,全裸の写真を撮るなどのわいせつ行為を繰り返した。(甲7,8,13)(3) 平成18年10月中旬ころ,被告の自宅での個人レッスンの際,被告は,原告を怒鳴るなどして脅して全裸にさせた上で,原告に対し,乳房をもむ,乳首を触る,乳首をなめる,陰部付近を触る,陰部に指を入れる,自己の陰茎を原告に握らせるなどのわいせつ行為を行った(以下,上記(2)及び(3)の被告の一連のわいせつ行為を指すときは「本件各わいせつ行為」という。)。(甲1,2,4,7,8,13)
(4) 平成18年11月,原告は被告の個人レッスンを止め,音楽大学の受験をすることもあきらめ,高校卒業後は短期大学に進学した。(甲8,10)
(5) 平成19年12月10日,原告は,原告の父親に対し,被告から本件各わいせつ行為を受けていたことを打ち明け,平成20年10月ころ,警視庁昭島警察署長に対し,前記(3)の被告の行為が強制わいせつ罪に当たるとして被告を告訴した。その後,被告は逮捕・勾留され,平成21年2月10日,同行為について,強制わいせつ罪で東京地方裁判所八王子支部に起訴された。被告は,公訴事実について認め,同年4月21日,東京地方裁判所立川支部において懲役3年の実刑判決を受け,同判決は確定した。
なお,原告は,平成21年3月27日,犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律17条1項に基づき,東京地方裁判所八王子支部に対し,損害賠償命令の申立てを行った(同支部平成21年(損)第4号)が,第2回審尋期日において,4回以内の審理期日では審理を終結することが困難であるとして,同法32条1項により,同事件を終了させる旨の決定がされ,本件訴訟へ移行した。(以上につき,甲1ないし4,10,弁論の全趣旨)