児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

法律の広場2010.2 再犯防止施策の充実

 情状証人・被害弁償の効用
 弁護人が汗をかけば再犯も減ると言うことですか。

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監督誓約がない場合は再犯率が高いのに対して、監督誓約がある場合は、就労のいかんにかかわらず再犯率が低くなることを明らかにしている。この指摘は鋭い着眼点と評価したい。一般的には、弁護士は裁判の流れに沿って、事実認定については争わないで、あえていえば罰を軽くするために情状証人を立ておくというように、機械的に発想し手配する傾向がないとはいえないように見受けられる。家族や親族などの身内や知人が出てきて証言台で弁護士の質問に答えて述べる言葉は、それを傍聴席から聞いているとなんだか空々しい内容で、単なる儀式を行っているというように受け取られがちである。しかしながら、家族、親族あるいは知人などがまがりなりにも法廷で一言述べることが、再犯の有無という結果にこれほどの違いをもたらすということは非常に重要な指摘であり、法曹にとって教訓としても実践的指針としても十分に役立つものである。

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犯罪白書では、被告人によって単に被害品の一部を返還するのに留まるのではない、金銭賠償や慰謝料などの積極的な
弁償がなされているかどうかによって、再犯に差が出てきていることを明らかにしている。さらに白書では、被害者による宥恕があるかないかによって再犯にが出ててきていることを明らかにしている。いうまでもないことだが、被答者が被告人の寛大処分を嘆願又は了承する宥恕は、積極的弁償の措置がなされている場合がほとんどであろう。
このことは、あえていうならば、裁判の迅速化のスローガンの下で、公判請求した裁判でさえも、事実関係を争わない「軽微」な犯罪、「簡単」な刑事事件については、人定質問から判決までを即日で行ってしまおうという傾向がある裁判所に対して、重大な警告を発しているということができる。被害者に対する賠償や慰謝を促し、おそらくこうした事件を担当する弁護士は国選弁護人が多いと思われるが、形式的要件を満たすだけの弁護をするのではなく、被告人の内省を促すとともに、被告者に根気よく連絡を取り、弁償を行ったり慰謝の措置を受け入れてもらえるように交渉したりし、その結果を法廷に伝え、判決に反映させ得るように努力することが、再犯の防止に役立つということである。

P24
監督の有無 
監督誓約者(調査対象事件の裁判において、証人出廷又は書面提出の上、釈放後の被告人に対する監督を誓約した者)の有無別に再犯犯率をみると、窃盗事犯者では、監督誓約 あり13.5%、なし34.0%、覚せい剤事犯者では、監督誓約あり18.9%、なし44.8%であり、いずれも誓約者がいた場合には、いない場介の半分以下に再犯率が抑えられており、更生に協力する者の存住が、再犯抑止要囚として極めて改要であることがうかがわれた。 
また、監督誓約と就労状況を組み合わせてみると、窃盗及び覚せい剤事犯者共に、監督誓約者がいない者は、監督誓約者がいる者と比べ、就労状況がいずれであっても、再犯率が高く、無職であっても監督誓約者がいる行は、安定就労ではあるが監督誓約者がいない者と比べても再犯率が低かったものであり、監督者の存在が大き再犯抑止力を有することがうかがわれた(図4参照)。

積極的弁償措置等 
窃盗事犯者において、積極的弁償措置の有無別に再犯率をみると、これを行っている者の再犯率は13.3%であり、行っていない者(25.2%)と比べ、顕著に低かった。また、監督誓約者がない場合でも、積極的な弁償措置を行っている者の丙犯率は12.9%と相当に低くなっており、監督誓約者がある者と変わらなかった。 さらに、被害者の宥恕が得られている場合の再犯率は10.0%であり、得られていない場合(26.6%)と比べ、顕著に低かった。