児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

「刑事事件,少年事件に関与する者には,証拠の評価,殊に自白と客観的証拠との関連性につき慎重な判断が求められることを示す一事例として,実務に警鐘を鳴らすものと言えよう」という裁判官田原睦夫の補足意見

 評論家か判例評釈みたいですね。
 「・・・注意・警戒すべきである。」で締めてほしいところです。

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080714090540.pdf
裁判官田原睦夫の補足意見は,次のとおりである。
・・・中略・
8 おわりに
本件において,送致事実に沿う証拠としては,少年らの自白及び仲間の伝聞供述しか存しないところ,上記のとおり少年らの自白の信用性に重大な疑念が存する以上,本件送致事実を認めるには合理的な疑いが存するとした第1次抗告審決定,及びそれを受けた受差戻審の決定には,事実誤認はないというべきである。
9 補論
本件送致事実に実行犯として関与したとされる少年らの自白は,捜査の初期の段階から比較的矛盾なくそろい,また,それを裏付ける仲間の供述もあり,さらには,共犯とされた少年の兄は,自らの審判手続でも一貫して関与を認めて中等少年院に送致されているのであって,それらの事情からすれば,本件は,少年らの犯人性に疑いを差し挟む余地はほとんどないとも言える案件である。
ところが,たまたま,共犯とされるAらの公判手続中に本件メールの存在が明らかになり,また,その結果が本件審判手続に顕出されたことによって,上記のとおり,少年らの自白の信用性が根本的に疑われるに至り,8で述べたとおりの結論に至ったのである。本件は,事件関係者が,客観的証拠と明らかに矛盾する事実について,捜査機関の意向に迎合して,比較的安易に自白することがあり,殊に少年事件においては,そのような危険性が高いことを如実に示す一事例であり(本件では,送致事実には全く関与していないことが後に明らかとなった少年も,一旦自白している。),刑事事件,少年事件に関与する者には,証拠の評価,殊に自白と客観的証拠との関連性につき慎重な判断が求められることを示す一事例として,実務に警鐘を鳴らすものと言えよう