児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

ハンス・ヨアヒム・ヒルシュ「行為主義刑法一十分に尊重されている基本原則であろうか?」

 こんなんみつけました。

http://dspace.wul.waseda.ac.jp/dspace/handle/2065/2603
http://dspace.wul.waseda.ac.jp/dspace/bitstream/2065/2603/1/A03890546-00-079040237.pdf
松原芳博〔外国文献紹介〕ハンス・ヨアヒム・ヒルシュ「行為主義刑法一十分に尊重されている基本原則であろうか?」
 ところで、近時の日本の刑事立法においても、危険社会論を背景にして、抽象的危険犯という形式による処罰の早期化傾向が顕著となっている。ここでは、本来の法益侵害との関係では予備ないしそれ以前の段階にとどまる行為が独立の抽象的危険犯として処罰の対象とされ、しばしば犯罪に用い得る一定の物ないし情報の提供・取得や所持・保管を構成要件化する立法形式が採用されている。
 たしかに、これらの立法でも外部的な身体の動静は必要とされている。しかし、こういった「所持」や「保管」等に代表される前置化された構成要件が、真に行為の社会的外界への作用としての法益の侵害・危殆化を処罰根拠とするのか、それとも行為者の悪性を処罰根拠とするものなのかについては、なお慎重な検討を要するであろう。「所持」や「保管」は、本来、社会的外界に顕現する以前の私的領域にとどまるものであって、その犯罪化には行為主義との関係で特別の正当化を必要とするように思われる。

(15)所持の犯罪化が行為主義との関係で問題を含んでいることにつき、松原・前掲注(10)26頁参照。特に児童ポルノ禁止法の改正をめぐって議論されている単純所持・保管の犯罪化には問題があるように思われる。なお、「所持」の行為性については、行為主体の関与という観点からも問題がある