児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

福祉犯の被害弁償は被害者を傷つけるか?

 こういって実刑にしてくれる弁護人(国選でも私選でも)がいますが、傷つかないように配慮すれば、減軽事由となります。確かに気を遣います。
 そういう配慮とか手間とかいう努力をしたかが評価されるのだと思います。
 ただし、事案の軽重にかかわらず、むやみにやらないでください。本当に必要な事案で効かなくなります。そういう見極めは弁護士に相談してください。

4 被害弁償
(1)児童買春罪などの福祉犯について被害弁償により減刑した事例
 福祉犯被害は性的自由の侵害ではなく健全育成に悪影響を与えるという意味で、また必ずしも被害感情が伴わない被害であるという意味では、必ずしも金銭賠償にはなじまないという考え方もあるが、被害者不在の法廷での口先の謝罪に比べれば、被害の内容・程度を理解した上で格段に深い謝罪・反省に至っていることを示しているから、もしくは多少なりとも被害感情が生じているからそれが填補されると考えれば、被告人にとって有利な事情として考慮されるべきである。
 裁判例をみても、刑事司法の分野では、原判決後に被害弁償が行われた場合、量刑不当による破棄事由となることが明かである。
 多数被害者に広く薄く弁償された場合でもそれなりに減軽されていることに注意していただきたい。
?名古屋高裁金沢支部H14(児童買春)
 しかしながら,当審における事実取調べの結果によれば,原判決後,児童買春の相手方となった児童らの保護者のうち弁償金受額の意思を示した者1名に対し○○万円を支払い,その余の者らに対する弁償金支払の代わりとして,合計○○万円の購罪寄附をしたこと,原判決を受けて被告人はさらに反省を深めていることなどの事情が認められる。そこで,原判決当時から存在した前記諸事情に原判決後に生じた上記事情を併せて考察すると,犯行の件数,態様などからして,現時点においてもなお本件は執行猶予を付すべき事案とはいえないが,原判決の量刑はその刑期の点で重すぎるに至ったというべきである。

?大阪高裁H18(児童福祉法違反)
しかしながら,当審における事実取調べの結果によると,原判決後,被告人は,被害児童13名のうち8名に対して,各○○万円ずつ合計○○○万円を送金したことが認められ,かかる事情に前記の諸事情をも併せ考慮すると,現時点においては,原判決の量刑は刑期の点でいささか重過ぎることになったというべきである。

?東京高裁H17(児童福祉法違反)
他の理由で破棄自判した
(量刑の理由)
本件児童ポルノ製造の犯情については,別件淫行罪と実質的に重複しない限度で考慮すべきであるところ,被告人が,当審においても,更に反省の気持ちを深めている様子も見受けられること,結局は受領を拒否されたものの,弁護人を介して,あらためて被害者側に対して被害弁償の一部として金○○万円を送付し,被告人なりに謝罪の意を表そうとしたこと,また,反省の気持ちを表すべく別途金○○万円の贖罪寄付をしていること,被告人にはこれまで交通関係事犯による罰金前科がみられるにとどまることなど,これらの被告人のためにしん酌し得る事情等を総合考慮して,主文の刑を定めた。

?大阪高裁H13(児童買春)
しかしながら、当審における事実調べの結果によると 原判決の言渡後被告人は・・・関係者が被告人に代わって各被害児童らに直接会って謝罪し、うち二名は被告人に対する寛大な判決を求める旨の嘆願書を作成するに至っていること、右二名の被害児童に対し、慰謝料として各金○○万円を支払うとともに財団法人法律扶助協会に金○○万円を.贖罪寄附するに至っており、原審に.おいて行ったものと併せると 同協会に対する嬢罪寄附の額は合計金○○万円に上っていることなどの事実が認められ、右事情に加え、被害児童の保護者をも交えた正式な示淡交渉を持つことができなかった点については、本件被害の詳細を親に知られたくないという被害児童の意向に配慮したものであって、本件事案内容に鑑みるとやむを得ないとみられる面のあることも否定できないこと,・・・等 所論指摘の諸事情をも併せて 再度被告人の量刑について検討すると現時点においては 被告人に対して実刑を科すのは些か酷といえる状況に立ち至ったというべきであり、今回に限り その刑の執行を猶予し、社会内で自力更生の途を歩む機会を与えるのが相当であると考えられるところである。

 3つくらい、高裁判決を並べておけば、奥村弁護士独自の見解とは言われないでしょう。