東京高裁にも同旨があります。他の控訴理由については東京高裁と違うのに、ここは踏襲。
どういう事実を秘匿すれば、詐欺になるのかが不明確ですがな。
控訴理由
しかし、口座開設時の金融機関の関心は①自己の用途に使用するか
②同総合口座通帳及びキャッシュカードを第三者に譲渡する意図であるかにはなく、通常そのような確認は行われないから、その点を告げる義務もなく、その点で虚偽の事実を告げたこともないから、その点を秘していたとしても欺罔行為とは言えない。
たとえ、預金約款で第三者利用が禁止されていたとしても、申し込みの際に、具体的に確認がされて、虚偽の事実を告げたのでない限り、欺罔行為とは言えない。約款例
第8条 譲渡、質入れ等の禁止
この預金、この預金にかかる預金契約上の地位その他この取引に関するいっさいの権利は、譲渡、質入れその他第三者の権利を設定すること、または第三者に利用させることはできません。 第三者に利用させることはできません。また、金融機関等による顧客等の本人確認等及び預金口座等の不正な利用の防止に関する法律
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H14/H14HO032.html
は本人確認を求めているが、禁止されているのは通帳の譲渡だけであり、口座開設目的の確認(第三者に利用させる目的ではないこと)も求められていないし、そもそも違法な使途の口座開設であっても口座開設は禁止されていない。第十六条の二 他人になりすまして金融機関等との間における預貯金契約(預金又は貯金の受入れを内容とする契約をいう。以下同じ。)に係る役務の提供を受けること又はこれを第三者にさせることを目的として、当該預貯金契約に係る預貯金通帳、預貯金の引出用のカード、預貯金の引出し又は振込みに必要な情報その他金融機関等との間における預貯金契約に係る役務の提供を受けるために必要なものとして政令で定めるもの(以下「預貯金通帳等」という。)を譲り受け、その交付を受け、又はその提供を受けた者は、五十万円以下の罰金に処する。通常の商取引又は金融取引として行われるものであることその他の正当な理由がないのに、有償で、預貯金通帳等を譲り受け、その交付を受け、又はその提供を受けた者も、同様とする。
2 相手方に前項前段の目的があることの情を知って、その者に預貯金通帳等を譲り渡し、交付し、又は提供した者も、同項と同様とする。通常の商取引又は金融取引として行われるものであることその他の正当な理由がないのに、有償で、預貯金通帳等を譲り渡し、交付し、又は提供した者も、同様とする。
3 業として前二項の罪に当たる行為をした者は、二年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
4 第一項又は第二項の罪に当たる行為をするよう、人を勧誘し、又は広告その他これに類似する方法により人を誘引した者も、第一項と同様とする。さらに、金融機関は、通帳を詐取されたといいながら、その口座に入金された金員を運用して利益を得ており、財産的被害はない。
口座開設行為には欺罔行為も財産的損害も無いのに、詐欺罪の成立を認めた原判決の法令適用には誤りがあるから原判決は破棄を免れない。
大阪高裁H18.9.21
論旨は,原判決は,詐欺につき,被告人がBと共謀の上,同女が開設した口座を自ら使用する意思はなく,かつ,交付を受けた預金通帳及びキャッシュカード(以下「通帳等」という。)を被告人に直ちに譲渡する意図を秘して,金融機関から自己名義の通帳等をだまし取った事実を認定し,本件詐欺の事実につき被告人を有罪としたが,口座開設時の金融機関の関心は,当該口座開設者が通帳等を自己の用途に使用するか,第三者に譲渡する意図であるかという点にはなく,また,通常そのような確認は行われていないから,口座開設者においてこれを告げる義務もなく,たとえその目的を秘していたとしても詐欺罪の欺岡行為には当たらない,それにもかかわらず,上記事実につき詐欺罪の適用を認めた原判決には,刑法246条に関する法令の解釈適用の誤りがある,というのである。しかしながら,通帳等を預金口座名義人以外の第三者に貸与ないし譲渡してはならないことは通常預金規定上明記されている上,近時マネーローンダリングを防止する観点から,預金口座の名義人とその実際の利用者との一致が求められ,口座開設時における本人確認の徹底が図られていることにも照らせば,名義人のみが預金口座及びその通帳等を利用し,それ以外の者が利用しないことは,金融機関にとって極めて重要な事項といえる。
そうすると,もし,通帳等を他人に譲渡する目的で預金開設を申し込んだことが当初から判明していれば,金融機関として当該預金口座の開設に応じないのは当然であって,このような目的を秘し,自ら利用するかのように装って口座開設及び通帳等の交付を申し込む行為が,金融機関に対する欺岡行為に当たることは明らかである。
なお,所論は,本件が不作為による詐欺に当たることを前提に,口座開設者において第三者に譲渡する意図を告知する義務はないから,これを秘していたとしても詐欺罪の欺岡行為には当たらない,と主張する。しかし,本件において,Bは,前記のとおり真意と明らかに矛盾する外観を積極的に装ったものであって,作為による詐欺と評価すべきものであるから,所論はその前提を欠くというべきである。
この論旨も理由がない。